chapter-117 リニューアル

[2021.08]

■神宮外苑・・・・・



[国立競技場がない(2015年):神宮外苑から新宿が見える]


2020年東京オリンピックを前に、都内ではいろいろな施設がリニューアルされました。
代表格は国立競技場でしょう。
前回1964年大会の開会式に使われた競技場ですが、建設から半世紀が経過し、メイン会場とするためには施設の老朽化対策や国際大会を開催できる規模への改修が必要であり、建替えることになりました。
新競技場の着工までは、デザインや費用、費用の負担などの問題が大きくクローズアップされ、デザイン再検討などに予期せぬ時間がかかりましたが、2019(H31)年11月30日竣工しました。



[先代の国立競技場(2014年):取壊される直前]


前・国立競技場の建設から半世紀も経つとアスリートの競技場に対する要求も変わり、また建築物自体の老朽化も避けられません。
一方、競技場の収容定員は、1964(S39)年の東京オリンピック開催時に48,000名から71,328名にまでスタンドが増設され、閉会式では74,383人の入場者あったそうです。
その後、改修工事や椅子の更新が行われるたびに収容人数は減少し、2015年の取壊し直前の収容定員は54,224名でした。
新国立競技場の収容人数は約60,000席(80,000席まで増設可能)なので、前・国立競技場も規模としてはかなり大きな施設でした。


■リニューアルした南池袋公園・・・・・



[南池袋公園(2018年):芝生が広がる]


2020東京オリンピックに向けてと言うわけではありませんが、埼玉県民が愛する池袋にリニューアルされた南池袋公園があります。
池袋駅東口の駅前通りを進み「南池袋公園」交差点を右折すると50m位で公園入口に着きます。
こちら側から見るとカフェレストランが目立ち解放感に欠けた感じがしますが、公園の中に入ると足元には緑の芝生、頭上には空が広がる空間が待っています。
カフェレストランの前にはパラソル付きのテーブルとイスが置かれ、屋外でもお茶が楽しめます。



[公園の夜(2018年):芝生の感触を楽しむ]


この公園は、地下にある東京電力の変電所工事と公園整備のために5年ほど閉鎖されていましたが、2016(H28)年4月に全面リニューアルオープンしました。
以前はこんもりとした木々の緑が上空を覆うように広がる薄暗い公園で、陽が落ちたあとは怖さで公園内に入る気にはなれませんでした。
それが今では夜になっても芝生に敷物を敷いて、おじさんのみならず若い女性グループや男女ペアもくつろいでいられます。
飲食店が連なる繁華街の隣にある公園といえば、酔っ払いが寝込んでいたり『池袋ウエストゲートパーク』に登場するような若者が屯していそうですが、そのような想像とは全く違った光景を目にします。
リニューアルによって視線をさえぎる植え込みや樹木が取り去られ、園内が見渡せるようになり、街灯の光も全域に届くので陽が落ちても安心できます。



[ベンチもある(2018年):生垣の外は墓地]


南池袋公園は、戦災復興の土地区画整理事業によって1951(S26)年に開園した約7,800㎡の公園ですが、公園になる前はお寺の境内地だったようで、今も公園の二辺はお寺と墓地に接しています。
このため隣接地に高層ビルが建つことはなく、ビルによる圧迫感や閉塞感から免れています。
公園から見ると墓地は見えないようになっているうえ、公園のある街区を囲む道路からも墓地はほとんど見えません。
お墓の存在を気にすると夜が怖くなってしまいます(大都会では幽霊より人間の方が怖い?)。



[マンホール(2018年):この上に簡易トイレが建つ]


平時の安心感のほかに、地震などの有事への備えもあります。
有事にまず困るのがトイレ。
停電や断水でトイレが使えなくなっても、出したくなるモノには我慢の限界があります。
こんな時のために簡易トイレが置けるマンホールが備えられ、カフェレストランには帰宅困難者一万人分の食糧備蓄倉庫もあります。
カフェレストランは普段でも多くの人に利用され、震災時などは炊き出しの拠点にもなります。
埼玉県内から豊島区へは約6万2000人が通勤・通学しているので、帰宅難民になってしまう埼玉県民にとっても有難い施設です。



[カフェレストラン(2018年):有事は炊き出しに使う]


公園の南側には1084台を収容できる地下駐輪場への出入り口があり、カフェレストランとあわせて常時人が往来するようになっているのも、公園の安心感を高める上で役立っています。
南池袋公園は以前の面影を全く残さないリニューアルが行われましたが、地下駐輪場新設を含めこれらの費用は、地下に変電所を占用している東京電力からの復旧費などで賄われました。
また管理も東京電力や東京メトロからの占用料(東電だけでも年1500万円)で賄われるという羨ましい公園です。
さすがに24時間利用は難しいようで、開園しているのは8:00~22:00なのでご注意を。


■浦和でもリニューアル・・・・・



[リニューアル前の常盤公園(2018年):木に囲まれている]


浦和駅から歩いて10分程度の住宅街にある公園です。
公園になる前は地方裁判所があった土地で、裁判所があった時のレンガ塀が公園の外周を取り囲んでいます。
公園のオープンは1976(S51)年5月なので、古いというほどの公園ではありません。
中山道から公園正面に向かう道はきれいに整備され、昔は市場が開かれていたことを示すモニュメントが置かれています。



[開設時の常盤公園]


公園はほぼ100m四方の正方形で、リニューアル前は中央部が掘り込まれて周囲より低くなり、周囲は掘った土を盛って平坦な土地に起伏を創り出しています。
掘り込まれたところは小さな広場になり落差6mの人工の滝があり、土を盛ったところは約60種の樹木が植えられ広場を取り囲んでいました。
このほかに、滑り台やブランコなどの遊具を置いた幼児用の一角があり、子供連れのママさんで賑わっていました。
公園の周りは、近年は戸建ての住宅が減り十数階はある大規模なマンションが増えています。
浦和は文教都市と言われ、住宅地として人気の高いところです。
常盤公園周辺には、「○○○浦和常盤公園」「△△△常盤公園」など、マンションの名前に使われ良好な住環境を代名詞のように使われています。



[リニューアル前の石灯篭(2018年):子供が座っている]


常盤公園は今回のリニューアルまで、改修された様子はありません。
リニューアル前は、日本庭園があったことを物語るように大きな石灯篭が立っていたり、何のために造られたのか分からない石組みが残っていました。
子供たちは、日本庭園も洋風庭園も関係なく木々の間を走りまっわているので、低木の植込みは少なくなりましたが、おかげで雑草も少ないようでした。
公園の中央部の掘り込んだ部分は、ちょっとした雨でも水溜りになり幼児の泥遊びにはいいのですが、長靴でも履かない限り歩くことができません。



[雨のあと(2018年):水たまりが残っている]


常盤公園は南池袋公園の7,812㎡を上回る9,669㎡もの面積があるのに、リニューアル前は大きくなった樹木が多く地表に起伏をつけているためか狭く感じました。
周りは住宅地なので地震時に帰宅難民が生じることはありませんが、自宅がが倒壊したり損傷した住民の避難場所になることはありそうです。
現状では片隅に小さなトイレがあるだけで、そのほかの有事に対する備えは見当たりませんでした。
2018年、公園の入り口に「改修実施設計に伴って公園内の地質調査を行う」旨の張り紙がありました。
高級住宅地浦和の”常盤公園”にふさわしい姿へのリニューアルが始まりました。



[地質調査のお知らせ(2018年)]


■常盤公園のリニューアル後・・・・・



[工事が始まる(2020年):樹木の伐採が行われている]


リニューアルの工事は2019(R1)年12月から始まり2022(R4)年10月14日に全面オープンしました。
指定緊急避難所でもあるため、防災四阿、かまどベンチ、災害用トイレなども設置された公園に変身しました。
最初の工事は、遊具のある一画を残し既存の樹木の伐採と基盤の平坦化作業が行われていました。



[完成した常磐公園(2022年)]


起伏のあった地面は平坦になり、上空を覆っていた木々はシンボリックな大木を残して伐採され、広々とした開放感のある公園に変わりました。
中央には瓢箪の形をした芝生の広場が造られ、その周囲に設けられた園路は一周200mでジョギング向けのゴム舗装がされています。



[完成した常盤公園(2022年)]


児童公園的な施設も南側に残されていますが、ネットで囲まれたボール遊び場も設けられました。
また、北側には文化の小径ゾーンとして地被類と中低木の植栽がされていますが、こまめに手入れをしないと雑草の畑になっていそうです。
あらゆる年齢層に対応しようとするため、欲張った機能導入を目指したように思えますが、結果として少々中途半端なレイアウトになったように感じます。



[仮設トイレのマンホール(2022 04)]


写真の手前に見えるのが防災用トイレのマンホールで、周辺のマンション密度を考えると少ないような気がしますが、
それでも公園の少ない浦和の市街地にあっては貴重な防災施設です。




<参考資料>