chapter-129 商店街の盛衰

[2023.10]

■商店街の数・・・・・


PALM
[武蔵小山PALM(2019年):長いアーケード]


最近のTV番組は予算が厳しいのか、東京近郊を巡る旅番組が多いように感じます。
鉄道や路線バスで目的地まで行く途中、乗り換えの待ち時間でその土地のお店に入り買物をしたり、食べたり飲んだりおしゃべりしたりと、誰にでも楽しめそうなプチ旅行として紹介されています。
鉄道やバスなど公共交通機関が多いところは建て込んだ地域が多いためか、商店街や街角のお店がよく紹介されています。


コルソ
[コルソ(2019年):再開発により駅前商店街が移転]


商店街は明確な定義はないそうで中小企業庁が行った「令和3年度 商店街実態調査」では、次項を満たすものを対象としています。
  ①小売業、サービス業等を営む者の店舗等が主体となって街区を形成している
  ②これらが何らかの組織(法人格の有無、種類を問わない)を形成している 
この条件を満たせば商店街としているので、ショッピングセンターやショッピングモールも該当し、駅ビルや寄合百貨店はビルひとつで商店街になれます。
都道府県が把握している商店街は全国に13,408あり、最も多いのが東京都の2447、2位が神奈川県の927、3位が大阪府956で、人口1万人に1商店街といった感じです。
埼玉県は4位で814ですが、平成13年の1183をピークに減少傾向が続いています。
埼玉県より人口の多い愛知県は555、最も少ないのは鳥取県の28でした。


前地
[前地商店街(2019年):一方通行の狭い道]


中小企業庁が行った調査のほかに埼玉県による「令和3年度 商店街経営実態調査」という似たような調査もあります。どちらも商店街にアンケートを行うもので、国と県が同じような調査を行う必要があるのでしょうか?


■商店街の種類・・・・・


銀座
[銀座(2013年):超広域型商店街]


商店街は小さなお店だけが集まったもの、大きなショッピングセンターにつながっているもの、銀座のように超有名店が集まっているものまで様々な形態があり、一般的に4つのタイプに分けられています。

巣鴨
[巣鴨地蔵通商店街(2018年):インバウンドも来る観光地]


広域型商店街や超広域型商店街となると大都市の繁華街、駅前に立地する商店街で、最近はインバウンドも多く訪れる観光地に近い存在です。
また、交通量が多い道路沿いの商店街は、多くの人が思い浮かべる商店街のイメージとはかけ離れています。


■近くに欲しい商店街・・・・・


戸越
[戸越銀座(2019年):戸越銀座駅付近の人通り]


近くにあるといいなと思う商店街は、サザエさんが下駄をはいて買い物に行く商店街や、ちびまる子ちゃんがたまちゃんと買い物に行くような商店街です。
東京近郊の旅番組などで紹介されるのもこのような地域密着の商店街です。
また、雑誌やネットなどで人気の高い商店街として取り上げられるのは、道幅が狭く歩行者専用や車両の通行規制があるような道に沿っている商店街で、4つのタイプの分類では近隣型商店街、地域型商店街に該当します。
サザエさんやちびまる子ちゃんでも安全にお買い物ができる商店街です。
車道と歩道が分離されているような広い道路沿いは、商店街としては人気がないようです。


浦和 中山道
[中山道(2019年):地域密着の商店街とは言い難い通り]


数字の上では埼玉県内のいたるところに商店街があるはずですが、あまり実感できません。
「令和3年度 商店街経営実態調査」によると、街区は形成していないが商店会組織として活動している商店街が25%もあります。
さらに「路線型商店街」であっても国道や県道のような交通量の多い道路沿いにあり、地域密着が感じられない商店街が多いのかもしれません。
商店街の名称が入ったのぼりや旗、横断幕でもあれば、ここは○○商店街だと分かるのですが、活気のない商店街では期待できません。
目印は街路灯です。
埼玉県内の商店街の64.5%では環境整備として街路灯を付けているので、お店が少なくて商店街に見えない通りでも街路灯があればそこは商店街です(でした)。


浦和
[さいたま市内(2019年):お店は減ったが街路灯は残る]


■商店街の衰退・・・・・


シャッター通り
[シャッター通り(2017年):近くにショッピングモールができた]


商店街の最近の景況は、衰退している又は衰退の恐れがあると考えている商店街が7割近くあります。
その中でも、立地している市町村の規模が小さいほど景況が悪く、5万人未満の都市では8割以上が衰退と答えています。
またタイプ別では近隣型、地域型はそれぞれ75%、65%が衰退している又は衰退の恐れがある答えていますが、広域型、超広域型でも50%、40%と、衰退に対する危機感を持っているようです。
大都市の超広域型や広域型の商店街は繁栄し、中小都市の近隣型商店街、地域型商店街は衰退という、昨今の大型店の出店や大都市への人口集中の影響が商店街の景況に現れていましたが、新型コロナによる行動変化が広域型や超広域型の商店街にも影響を及ぼしているようです。


戸越公園駅前
[戸越公園駅商店街(2019年):道路拡幅で左側の商店は移転する]


景況が良さそうなのに、風前の灯と思える商店街もあります。
近隣型や地域型の商店街があるところは、住宅が密集し道路は狭く救急車などの通行さえ不便なことがあります。
これを解消するために、道路を拡幅したり新設する都市計画が定められ、計画に基づき道路が整備されていきます。
狭い道を拡げるためには営業中の店舗移転が必要ですが、後継者不足が懸念される状況では移転後の営業が覚束ない店もあります。
また、造られる道路は車道と歩道が分離された広い道になるでの、今までの人情味ある商店街の雰囲気から激変します。
広い道路ができあがったあとどんな商店街に変貌しているのでしょうか。


事業認可
[事業認可の看板(2019年):道幅が3倍に広がる]


都市計画道路が造られたことで、繁栄していると思える商店街もあります。
商店街とほぼ並行して道路が整備され、商店街から自動車が排除されて歩行者専用となるケースです。
たとえば、武蔵小山PALMは南側に並行して都市計画道路補助第26号線があり、計画幅より少し狭いものの歩道と車道が分離され自動車の通行に全く支障はありません。
PALMは歩行者と自転車(降りて押す)の道になったので左右両側のお店に安心して立ち寄れます。
都市計画道路補助第26号線は環状6号と環状7号の間を通る環状道路で、板橋から京浜運河までの長い路線です。
中野駅前の中野サンモールの西側の道路も補助第26号線です。


クレアモール
[クレアモール(2019年):人通りが1km以上つづく]


同じような事例は川越市にもあります。
県内でも有数の賑わいがあるクレアモールは、川越サンロード商店街振興組合と川越新富町商店街振興組合による商店街で、川越駅付近から北に約1kmにわたりお店が軒を並べています。
この商店街があるのは川越城前から所沢方面へ向かう古くからある道で、明治期迅速測図でも両側に家屋が立ち並んでいます。
1936(S11)年にクレアモールの西側に幅員11mの都市計画街路2-3-2中央通北谷線が決定され、終戦までに完成しました。
自動車交通が増える前に道路が完成していたので、自動車交通が増えても車は中央通北谷線、歩行者はもクレアモールと自然に歩車分離が進んだようです。


中央通北谷線
[左:1929(S4)年 右:1967(S42)年]
(赤点線が中央通北谷線、黄色点線がクレアモール)


都市計画街路2-3-2中央通北谷線は、1962(S37)年の都市計画見直しの際には完成していたこともあり廃止され、現在の都市計画図を見ても都市計画道路としての記載はありません。
都市計画道路は商店街の敵になったり味方になったりのようです。


■おまけ・・・・・

陶花
[洋食工房 陶花(2019年)]

戸越銀座にある洋食屋さんです。
漢字で書かれた名前だけだと中華料理のお店のように思えますが、メニューに中華はありません。
店内は明るく地元の方々で賑わっていました。
オムライスが有名だそうですが、いただいたのはカキフライです。





<参考資料>