注:野球中継のため延期になった分を、詰めて放送させていただいております。ぴんぽんぽんぽーん

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                      …

 

 

祐巳さん、一人で大人にならないでよ。

自分の言った言葉が、わだかまるように由乃の中に残っている。

「どうして、あんな風に言っちゃったのかな」

由乃の自室。

由乃は寝転がって、何度もその言葉を反芻している。

祐巳さん、一人で大人にならないでよ。

あの時、祐巳さんが急に大人びて見えて、遠くに行くような気がして……。

私だけなのかな、こうして、何だか、将来の事とか、先の事が不安なのは。

「一人で大人にならないでよ、かあ……」

由乃は呟く。

「大人って、なにかな・・・」

 

凄まじいギターの音(イントロ)

 

新オープニング

 

『業罰〜ギルティ〜』

作詞 KIYO

作曲 HIROZY

 

あてのない希望(ゆめ)ばかり渦巻く都会(まち)は

絶望ばかり並べる展示室(ギャラリー)

僕と貴女(あなた)はそこで溶け合う

一対の磁器人形(ビスクドール)として

嗚呼 忘れてしまった罪と悪が

この身を炎焔(ほのお)で焼き尽くす

業罰(ギルティ)

失くしてしまったのは

業罰(ギルティ)

心だけなのでしょうか

業罰(ギルティ)

今溶けているのは

業罰(ギルティ)

私でしょうか、あなたでしょうか

 

注:タイアップ曲です。

 

 

第五話

『その背を追って』

 

 

朝の通学路を志摩子さんが歩いています。鞄の中から、聞こえるのは猫の声。

「航空戦では位置エネルギーが大事になる、つまり、上を取った方が有利なんだね。これは箒による闘争の場合も同じだ。マジックミサイル自体は重力加速度の影響を受けないものの、箒は受けるからね」

「朝から航空戦の話はちょっと……」

と志摩子は流石にいやそうな顔をした。

「何言ってるんだ、次に現れる敵は箒ぐらい操ってもおかしく……おっと」

志摩子の行く手に由乃さんが見えたのでサロは黙ります。

喋る猫とかバレたら大変そうですからね。

志摩子は大人しくなったサロに一安心して、由乃に声をかけようとするのですが、何だか由乃さんの様子が変です。

いつもハイテンションな由乃さんなのに、今日はがくっと肩が落ちているように見えます。

「由乃さん?ごきげんよう」

「あ、ごきげんよう、志摩子さん」

スカートのプリーツを乱さず振り返って答える姿も、どこか元気がありません。

「どうしたのかしら?由乃さん、元気がないようだけど……」

「ん、そうかな、そんな事ないよ」

と由乃さんは無理に笑うのですが、志摩子がそれを不審に思って尋ねても、結局教室について別れても、その理由は教えてもらえなかったのでした。

 

志摩子と別れて、由乃が教室に入ると祐巳さんの姿が見えた。当然だ。毎朝見ている姿。

それなのに由乃は、何故か声をかけるのをためらってしまう。

ごきげんよう、って一言いうだけなのに、どうしちゃったのかな、私。

一度声をかけそびると、祐巳さんが大人に見えて、知らない人みたいで、ますます声をかけられなくなっていく。

「あ、由乃さん、ごきげんよう」

と言って笑いかけてくれる祐巳さんはいつも通りで、余計に自分が変に思えてしまう。

「ごきげんよう、祐巳さん」

向こうから声をかけられたら、返事はできるのにな。変なの。

どうにも調子が狂うので、由乃は祐巳さんの顔をマジマジ眺めてみる。

うん、いつもと変わらない。大丈夫大丈夫。

「どうしたの由乃さん?じろじろ見て」

不思議に思った祐巳さんが小鳥みたいに首を傾げて覗き返してくる。

それが何だか可愛いような小憎らしいような気がして。

「えい」

頬をつついてやった。

「ちょっと由乃さん!何するのよ!」

「えいえい」

「もう!由乃さん!」

祐巳さんの反撃の人差し指をかわして、由乃は笑う。

なんだ、楽しいじゃないか。

由乃も祐巳さんもまだまだ子供だって、きっと、絶対。

でも、いつまでこんな風にじゃれあえるんだろう。

いつからだろうか、楽しい事が心底楽しいと思えなくて、いつか来る終わりを想像してしまうようになったのは。

「由乃さん?」

また首を傾げる子狸、えいえい、とつつく前に始業のベルが鳴る、楽しい時間は終わりだと告げるように。

 

授業中、ふと思いだす。

昔、薔薇の館に初めて来た頃、由乃はそこに上手く馴染めなかったこと。

あの頃は、リリアンにだって馴染めていたとは言えない。

すぐに病気で休んで、クラスではいつもお客様で。

どこでも『病気の子』ってレッテルで、悔しいことがたくさんあって。

学校にはたまにしか行かないから、いつも、ちゃんとしなきゃって気を張っていた。

でも祐巳さんが来て、手術をして、この場所に居ていいんだと思えた。

祐巳さんや令ちゃんは、あの手術に力を貸してくれた人だ。

由乃にとってはそうだ。絶対そう。誰が何と言ったって!

凄く凄く感謝してる。

おかげで由乃は、今までにないくらい、リリアンの高等部では『高校生』している。

学校生活楽しい?って聞かれたら、絶対絶対、楽しいって今は答えられる。

でも…。

「由乃」

廊下で物思いに耽っていた由乃は、自分が呼ばれたことに気付く。

「令ちゃん」

「朝から元気なさそうで、どうしたのかなって」

何でもお見通しって訳?

「どうもしない」

そう言って由乃はそっぽを向く。何だか心配されるのが癪だった。

「どうもしないことないでしょ、そんな顔して」

「そんな顔って何よ。顔はうまれつきだもの」

「そういう意味じゃなくて……」

令ちゃんはどこか困ったような顔をしている。

その顔を見ていると、由乃は一瞬甘えるような苛つきを覚えたが、次の瞬間、言葉にならないような様々な感情がこみ上げてくるのを感じた。

もう、この顔を自由に見られるのも、残り僅かなんだってこと。

要約すればそういうことだ。

「由乃が、なんか悲しそうというか、寂しそうというか、そんな顔をするから」

と令ちゃんが言って、由乃は気付く。

そうか、私、寂しかったんだ、って。

どうしてこんな事に気付かなかったんだろう。

令ちゃんが大人になろうと、由乃から離れて、それで由乃は祐巳さんに、大人にならないでって……。

それはきっと、みんなどんどん大人になって、この場所を去って、いつか私は一人になるんだって、分かっているから。

将来が怖くて、どうしていいか分からなくて、でも令ちゃんは遠くへ行く。

きっと、令ちゃんだって怖いのに。

私より、ずっとずっと怖くて寂しい場所で、きっと令ちゃんは頑張っている。

それなら私は、令ちゃんに寂しそうなんて言われてちゃ駄目だ。

何も不安に思わずに、令ちゃんには遠くに行ってもらわなきゃいけないから。

「大丈夫だよ、ちょっとおなかの調子が悪かっただけだから、じゃあね、令ちゃん、教室戻るから」

私は精一杯元気な顔をして、急いで教室へ戻ろうとする。

動揺した顔を見られたくなかったから。

一人で大人にならないで、じゃきっと駄目なんだ。

一緒に大人になっていければいいんだ、きっと。

大人になっていく人たちの、背中を追いかけるようにして。

自分の足で、一歩、私は教室へ向かう廊下を歩き出した。

令ちゃんを振り返らず。

というまあ、一人で大人にならないでよ、って言った由乃の心情は令が去る事とも関係しているに違いないという、原作穴埋めss式Aパートですけど、ついてきてますか皆様?

しかし蛇足ながら、当然、由乃はこうも思います。

ずっとこうしていられたらいいのに。

みんなが居て、ずっと、リリアンで……

 

──その願い、かなえよう

 

「え!?きゃああああああああああ!!」

 

 

〜〜〜〜〜〜アイキャッチ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

クレイアニメで、粘土のサロが走り回る。

ゴロンタも出てきてぐるぐる走って、魔法少女志摩子の文字に

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今日も一日授業が終わり、帰り支度を志摩子がしていると……

突然の魔法ビームが志摩子に直撃、あっという間に場面は薔薇の館!

「志摩子さん、ごきげんよう」

と微笑む由乃さんの周囲には前薔薇さまも含めて勢ぞろい。

蓉子さまも、江利子さまも、聖さまも、制服を着て皆この場に居て、乃梨子もいる。

「こ、これは一体!?」

見ていると、聖さまがいきなり祐巳さんに抱きついた。

「うーん、ぷくぷくー、いい抱き心地だー」

などとセクハラし放題である。

すると、祥子さまが速攻で怒り始めた。

「ちょっと!私の祐巳になにをしてるんですか白薔薇さま!」

「私の、っていつから祥子のものになったのさ!祐巳ちゃんもこれ嬉しいよねー?」

「こ、困りますよ白薔薇さまー!」

「え、困るの、悲しいよ祐巳ちゃーん」

などという小競り合いを見ていると、志摩子は何故か、とてつもなくそれに参加したくなってきた。

「いくらお姉さまと言えども、祐巳さんを自分のものにしようとは許せません」

などという言葉がすらすら出てきて、何故か更に。

「祐巳さんは私のものですから」

などと言ってしまう。とにかくテンションが上がって、そういう風にひっかきまわしたくてたまらないのだ。

「正体現したなこの黒志摩子さんー!祐巳さんは私のものなんだから!」

と言って名乗り出るのは島津由乃である。何だか雲行きがあやしいですね。

令さまも挙動不審になって、ショックを受けているように見えて、さらりと、とんでもない発言をします。

「わ、私も、祐巳ちゃんが私のものだったらいいなあ、なんて」

「「あなた(令ちゃん)は黙ってなさい」」

江利子さまと由乃さんのダブルパンチで令さまは沈黙です。

余りにも酷い令の扱い。

そんな風に争ってる間に、乃梨子ちゃんはこっそりと、聖さまの魔の手から抜け出してきた祐巳さんに紅茶を出していたりします。

「いろいろ大変ですね祐巳さま」

「ありがとう乃梨子ちゃん」

「ところで祐巳さまは、年下の女の子ってどうですか?」

「え?乃梨子ちゃん」

などと、いい雰囲気になるからさあ大変、志摩子はとても見せられない般若の形相に変わります。志摩子ファンの皆様すいません。

「いくら乃梨子といえども、祐巳さんに手を出すのは許せないわね……お仕置きしなきゃ」

「ゆ、許して志摩子さーん!」

などと争っている間に、蓉子さまがちゃっかり祐巳さんの傍へ移動しています。

「祐巳ちゃん、おばあちゃんが守ってあげるからね」

そう言って蓉子さまは祐巳さんを抱きしめます。いかにも後輩を心配して、といいたいんですが、どうも手つきが邪です。

「蓉子さま……」

温かいな、などと祐巳が思っていると、いきなり机の下から瞳子ちゃんと可南子ちゃんが現れて抗議の声です。

「なんでそんなところに?!」

なんて突っ込みは無視無視。祐巳ちゃん大好き病って怖いですね。

「上級生だからって横暴です!祐巳さまは私のものです!」

「いいえ!私のものです!」

と下級生2人は勝手に喧嘩を始めてしまうし、江利子さまはこっそり祐巳ちゃんにお菓子をあげてるし、薔薇の館は今日も大忙し。

「って何じゃこりゃあああああああああああ!!」

と読者の皆様もお思いのところで、黒猫ズバッと参上、ズバっと説明。

「言うまでもないことだが志摩子、これは魔法の仕業だ。というか、志摩子まで魔法に巻き込まれてるのか、おお志摩子よ、巻き込まれてしまうとは情けない」

という訳で、サロはラインゴールドに呼びかけて志摩子を正気に戻します。

「ラインゴールドを持ってるのにやられるとは、敵の魔法力も上がっているな」

「さ、サロちゃん、これは一体」

今でも目の前では祐巳争奪戦が繰り広げられています。

「これは俗に言う、祐巳総受け現象……」

「そんなこと聞いてない!?」

「恐らく、様々な思念を統合した結果、望まれるリリアンの姿の一つなのだろう。でもこれは現実じゃない」

と、いきなり場面が体育祭になって、志摩子は背中に籠を背負っています。籠の中にはサロ。

「うわ!?っとと、なんだこれ!?」

サロが籠でもがいているのですが、志摩子が様子を見ようと振り返ると、当然籠も回転するので見えません。

「目が回るー!」

とサロは苦情を言うのですが、それどころではないのです、なぜなら、目の前では由乃が悪鬼羅刹の表情でボールを振りかぶっているのですから。

「こ、これは体育祭の!」

「くらえ、風魔流手裏剣術!!」

掛け声と共に、怒涛のようにボールが飛んできます。悪夢再来!

「よ、由乃さんが怖いーー!!」

風を切るボールの音と、籠の中から潰れた猫の悲鳴が聞こえますが、必死に走って逃げます。

そんな超テンパってる志摩子の心に、誰かの声が聞こえてきました。

(はしゃいだ体育祭、本当に楽しかったよね。ずっとこんな日が続けばいいのに……そう思わない?志摩子さん)

暖かに落ち着いたその声は、確かに親友の声で……。

「いえ!これが楽しいのは由乃さんだけです!サロちゃん!サロちゃーーーん!!」

「ぎゃあああああああ!!」

すれ違う心は埋まらない。人間って悲しい生き物だね。

ぱっとまたもや画面が変わって、由乃と志摩子と祐巳が、こたつに皆で足を突っ込んで勉強しています。

「あー、試験範囲はこれかなあ?」

と祐巳さんは不安そうで、志摩子はにこやかに問題をすらすら解いて、由乃さんはところどころつっかえながらやっています。

「ちょっと志摩子さん、ペース速すぎ、優等生みたいな事して!」

「あら、そうかしら?」

「どう?この余裕ぶり、劣等生代表の祐巳さん、文句言ってやって」

「劣等生代表!?」

ここからはバンバン画面切り替わりますよー。今度は聖と志摩子と由乃。

下校中の帰り道、聖がガバっと由乃に抱きつきます。

「おお、新鮮な感触!」

「ちょ!?そういうのは祐巳さんにしてくださいよ!」

「いやー、由乃ちゃんと絡むのが少なすぎたかな、と思って。寂しかったでしょ?」

「何言ってんですか白馬鹿さま、あ、いい間違えた、えへへ」

「いや、白薔薇だけど、ロサギガンティアだから言い間違う訳ないよね、これがツンデレか」

「性さまにデレはありません」

「あれ?なんでだろう、自分の名前なのに違う意味が込められてるみたいな気がする。それってやっぱり、祐巳ちゃんと比べて薄くて固いからかな?」

「何がですか」

あからさまに体に触りながら聖さまは言う。

「ご想像にお任せします」

こいつ、上級生とはいえ我慢ならねえ。

「ちょっと志摩子さん!見てないで引き取ってよ!あんたんとこの人でしょ!」

志摩子は微笑みながら答える。

「あらあらそうですね。お姉さま、私なら厚くて柔らかいですよ」

「「おい」」

いくつもの愉快な風景。ふざけ合い、はしゃぎ合うことが無制限に許される一瞬の時間。

過ぎてしまえば、もう二度と戻らない。

志摩子も、由乃の心が望むことが、だんだん分かってくる。

いつか離れ離れになって、皆のことも忘れてしまうのだろうか?

何もかもが通り過ぎた思い出に?

志摩子も、不意に悲しく、寂しくなってしまう。

私達はこの学園に立ち止まり続ける事は出来ないということ。

それは、どうしても、出来ない。

でもあなたも、あの人も、みんなみんなずっとずっと、このメンバーのこの学園を見ていたいんじゃないのだろうか?

志摩子は、由乃の世界に惹かれていく自分を止められない。

「志摩子!しっかりしろ!こんなものは偽者だ!これは停滞に過ぎない!全ての夢見る繰り返しは偽者なんだ!人は卒業し、新たな出会いは姉妹の絆を作り、そして皆去っていく。ここは一時の宿なんだよ!」

「でもどうして、望む場所だけ夢見続けることがいけないの?」

可南子ちゃんも瞳子ちゃんも薔薇の館の一員で、前三薔薇さまも卒業しなくて、でも乃梨子も菜々ちゃんもいて、それで何がいけないの?

そういうものをみなが望んでいる。

みなが。

「でもそれは偽者なんだよ。未来を切り開いて、人間は大人にならなきゃいけない」

ふと脈絡なく、志摩子は思い出す。遠い昔のこと。

「幼稚舎の時……ずっと一生友達でいようねって約束して転校していった子……もう、名前も顔も思い出せない」

その幼い時は、本気で永遠の友達だと思って、別れの時に涙したというのに。

「ねえ、サロちゃん……」

何もかもが過ぎ去ってなくなってしまうなら。

「……大人になるって、どういうことなの?」

サロは急いで、早口で答えた。ただ現実的に。

「そんなこと僕が知るか、いいから魔法を唱えるんだ」

「私は答えが知りたい、でなきゃ、納得できない」

「後で幾らでも悩めばいい、でもこれは、倒さなきゃいけない悪の魔法なんだ!」

志摩子は到底納得できなかった。

「サロちゃん、わたし……」

何か言いたげな瞳、サロは言葉に詰まりながら言う。

「僕に、聞くなよそんなこと……僕だって分からないよ!わからないけど、こんなの変だ!おかしい!志摩子、本当に分からないのか?このままずっと、理想的な学園に閉じ込められてたら、死んでるのと同じじゃないか。ずっとずっとこれの繰り返しなんて、どこへも行けない、何者にもなれない、それじゃもう、生きているとは言えないんだ。分かってくれ!志摩子!それに、他の人間まで巻き込んで、これは絶対に許せないことなんだ!」

サロの目は真剣だった。

──そうだ、しっかりしなきゃ、祐巳さんや、お姉さまや、乃梨子や、みんな巻き込まれてしまっている。

「ごめん、サロちゃん……」

「さあ!呪文を!」

志摩子が覚悟を決めて、腕を天に掲げて叫びます。

「ロサロサギガギガギガンティア〜」

あっというまに、あっというまに、あっというまに魔法少女志摩子。

まあ、そんな感じでいつもの白いドレス姿です。

その志摩子の姿を見て、即座に由乃が周囲の魔法力を自分に結集した!

「このまま簡単に、魔法を祓ってもらう訳にもいかないのよね」

なんと、結集した魔法力によって、由乃は白いローブ姿になっている。さしづめ、白魔道士と言った姿。

「やばいぞ、向こうも変身するなんて……」

と焦るサロの前で、由乃が虚空から箒を取り出しまたがる。

「志摩子さんの魔法力の源、壊しちゃえばいいのよね」

「まずい!志摩子!シューティングモードだ!」

とたちまちサロの魔法で杖は箒に変わり、志摩子も由乃も大空へ同時に飛び上がります。

凄まじい速さで双方雲の中へ突入し、志摩子はたちまち由乃の姿を見失った。

「上がればいいのよね?!位置エネルギーが…」

「違う!罠だ!」

止める間もなく雲から飛び出た瞬間、待ち伏せしていた由乃が志摩子をロックオンする。

「FIRE!」

飛んで来るのは超音速のマジックミサイル!

「志摩子!急降下しろ!」

「由乃さんっ……!」

慌てて志摩子が急降下する。その速度、マッハ1.4!

「いいか、ぎりぎりまで引き付けて、地面にミサイルを激突させろ!タイミングがずれたらおだぶつだ。速すぎても、遅すぎても駄目だ!」

後ろからはぐんぐんミサイルが迫ってくる。

「神さま……!」

眼前には物凄い勢いで迫ってくる地面!

視界一杯に広がるコンクリート。

サロが呟く。

「南無三!」

地面にぶつかるすれすれで急展開、地面と平行に滑ると、そのまま急上昇。

「サロちゃん!ミサイルは!?」

と志摩子が叫んだ瞬間、背中に熱さと風圧を感じて、志摩子は箒を手放しそうになる。

「大丈夫だ!地面にあたった!」

殆ど直角に近い角度で箒は急上昇して、雲の切れ間へと突っ込んでいく。

「駄目だ!こんな角度であがったらSTALLする!」

「スト?なに?」

いきなり箒が失速し、きりもみで操作不能になって、志摩子は目を瞑った。

あっという間に箒は浮力を失い落ちていく。

「手を離すな!目を瞑るな!」

サロの叫びに、志摩子は目を開け、ただただ必死に箒を握る。

「まだ立て直せる!落ち着け!」

言われた瞬間姿勢が戻り、志摩子の念が箒に伝わり、動かせるようになった。

そしてその瞬間、視界の隅に由乃が見えた。

「居たわ!」

「ロックオンされる!雲の中へ入れ!」

言われるまま、志摩子は雲の中へ突撃した。由乃の姿もたちまちに消えた。

「STALLしてかえって助かったな、待ち伏せされてた」

「なんなのあれ?」

「細かいことは説明できない、あんまり無茶な急角度で上がっちゃ駄目だって覚えといてくれ」

雲の中を飛びながら、サロが後方をチラチラみている。

「本当は360度見えるようになる魔法が搭載されているが、いまやっても混乱するだけだろう。……僕の見たところ、相手の箒はDR−23、マンドラゴラだった。志摩子、バックアップするから、旋回して戻れ、真正面から突っ込む」

「大丈夫なの?」

「考えがある」

志摩子は言う通りに旋回し、一直線にさっき由乃を見たあたりに戻ろうとする。

その戻るスピードが、ただ只管に凄まじいスピードで、音速をあっという間に超えた。

こんなに恐るべき力なのか、魔法、と志摩子は思う。するとサロがいきなり呟いた。

「タイムスケール1second=1minutes」

サロがそう唱えた瞬間、周囲の時間の流れが遅くなった。

超音速で飛んでいるのに、雲の一筋一筋まではっきりと見えるほどに。

そして……

「タリホー!見えたぞ」

真正面に見えるは箒にまたがった由乃、マジックミサイルの赤い光が、既に光り出しているのが見えた。

「サロちゃん!!撃たれる!!」

「エンゲージ!このまま突っ込め!!」

流れる冷や汗、聞こえる由乃の声

「志摩子さん!楽園のために堕ちて!」

止まることなく志摩子は、追突コースに由乃めがけて突っこんだ。由乃が叫ぶ。

「FIRE!!」

志摩子目掛けて、音より速い死の閃光が突き進んでくる!!

「サロちゃんっっ!!!」

「任せろっっ!」

サロが叫ぶ!

「マジック・チャフ!!」

パパっとその瞬間、志摩子の周囲に光の花火が咲いた。

それは美しいだけではなく、赤い死の閃光を弾き飛ばす気高き花だ。

光に触れた途端、ミサイルは方向を失い飛び去る。

「ミサイルの制御に魔法力を割かないから!」

サロの叫びを耳にしながら、真正面の由乃を、志摩子は完全にロックオンしたのを知った。

絶好の位置、これなら……!

「由乃さん!!目を、覚ましてええええっ!!」

ロック!

「FIRE!!」

志摩子から放たれた白い閃光が由乃に直撃する!

「きゃああああああああああ!!」

「やったぞ!命中!命中!」

サロの叫びを聞きながら、志摩子はきりもみしながら落ちていく由乃を見た。

すると途端に場面は学校の廊下に早代わり。

志摩子も由乃も制服姿に戻っています。

由乃さんは項垂れ、しゃがみこんで壁に背をつけていた。

志摩子は立ち上がって、声をかける。

「由乃さん……」

肩に手を置こうとして、そのまま手は半端な位置で止まる。

態度で、由乃さんが拒絶していたから。

「いいのよ、志摩子さん、私も、こんなの無理って分かってた。ずっとこのままとか、ずっと子供とか、無理だよ。いいとか悪いとかじゃなくて、無理なんだよ……」

「違うわ、由乃さん」

「違う?」

由乃はきつく志摩子を見上げてきます。

「皆、離れても何もなくならないわ。ずっとこのままなのよ、どこへ行っても、どうなっても、私達の心から、この場所はなくならない、そうでしょう?」

志摩子だって、不安なことや、怖いことが一杯あって、でも、でも。

今の感情を信じて生きていく。

志摩子の真剣な表情をじっとみて、由乃が納得するように一つ頷くと、すっと悪の魔法の気配は消えていったのだった。

 

 

翌日。

「ごっきげんよー!!」

志摩子の背中をばしばし由乃が叩いてくる。

もう、わざと過剰に元気なんだから。

でも、由乃さんらしいかも。

「ふふ、ごきげんよう」

「志摩子さん、今日も穏やかだね、あ、令ちゃんだ、令ちゃーん!」

走っていく背中を見ながら、志摩子は思う。

「昨日のこと、全て忘れてしまったのかしら?」

「いや、暗示で忘れてるだけだからね、心の底では覚えて、理解してるよ」

「そう……」

由乃の背中を見ながら、志摩子は一つ頷いて歩き出した。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜エンディング〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

作詞・甲珍花 作曲・大林阿世

『哀愁の魔法少女』

 

♪悲しいことがあったとき

♪桜の木へと駆けていく

♪あなたはそこで待ってるの

♪私の愛する……銀杏

♪銀杏銀杏銀杏をたべーるとー  (さかなさかなさかなー、の感じで)

♪銀杏銀杏銀杏ー 銀杏中毒になるー

♪ぎーんなーんぎーんなーん、つーぶつぶーぎーんなーん (たーらこーたーらこー、の感じで)

♪ぎんなーんつぶつぶ ぎーんなーんがやーってくーるよー

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

次回予告

 

志摩子「かしらかしら、ご存知かしらー」

サロ「海で水着で百合かしらー」

志摩子「でもあれよね、ご存知かしら」

サロ「なにかしらなにかしら」

志摩子「次週『海での戦い』、ご期待かしら」

サロ「ほんと元ネタうろおぼえだ」

 

 

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第五話あとがき