佐藤 聖の冒険(前編)
『月曜日についての考察、あるいは佐藤聖の自主休講について』
全ての月曜日は憂鬱である、と述べたのは誰だったろうか、と私は思った。
何人かの人物に見当をつけてみたが、とても言いそうにない人物ばかりが浮かぶ。
一番言いそうにない候補は塩川財務大臣だった。
あるいは述べたのは私かもしれない。
とりあえず私は、月曜日が憂鬱であるのは真実だと判断して自主休講し、
昼過ぎに起きて電車を乗り継いだ。
目的の駅にはまだ三駅ほどある。
彼女からの手紙が届いたのは先週の木曜だった。
彼女は私の高校時代の後輩で、どちらかと言えば私の信奉者と呼ぶのが近かった。
信じられないかも知れないが、高校時代の私には信奉者と呼ぶしかない人達がいて、
彼女はその一人だった。
その信仰心はチョコエッグのおまけを家宝にするぐらい滑稽な行為だったが、
私よりはチョコエッグのおまけの方が価値があるかも知れない、と思った。
目的の駅から降りて改札を出ると、遠くに建設中の大きなマンションが見える。
駅前のゴミゴミした商店街から見ると、
それは突然空から降ってきたみたいに周囲から浮いていた。
彼女の借りているアパートは、そのマンションの傍だという。
車道しか歩けないくらい歩道は狭く、路上駐車の車も多かった。
私はほんのすぐ傍を通る車を警戒しながら歩かざるをえなかった。
彼女からの手紙は長く、内容は多岐にわたっていたが、要点は三つだった。
つまり、私は職場で浮いている、私は職場が嫌いで退職したい、あなた以外に相談したくない、
の三点だった。
なぜよりによって私なのか、彼女の手紙を論理的に見れば全く分からなかったが、
それはより正確に言うと、論理的に見れば彼女の手紙の全てはまったく訳が分からなかった。
ただ、彼女の感情を読み取るよう努力すれば(それは実際、とても骨の折れる作業だったが)
彼女が私を未だに信奉していて、彼女は私がマリア様のように彼女を救えると信じているのは
分かった。
その手紙を読んだ時の感情を率直に言えば、ドクターペッパーを飲んだ時の気分に似ていた。
それは類人猿と人間程度の類似具合だけれど。
ただ私は、彼女のどうしようもない程の必死さに、仕方ないし暇だから行ってみようと思った。
私はどうしようもなく暇だったし、大学に行くよりはスリリングだ。
いくらか進んだ所に小さなアパートがあり、彼女は二階の部屋に居ると聞いていたので、私が
インターフォンを鳴らすと、ドミノが倒れるようなパタパタという音が聞こえた。
「はい?」
「ええと、佐藤です」
私は少し緊張したが、ドアを出てきた彼女は、感激で気絶しちゃうという主張を表情にくっつけ
ていた。
「来てくれたんですね白薔薇さま!」
私はその呼び方に少し恥ずかしさを覚えた。あなたがもし、私の高校の出身者でなく、あだ名
に白薔薇さまなどとつけられたら羞恥心を覚えないだろうか?ただ、私はその羞恥心の中に、
ある懐かしさを覚えていた。
「ええ、暇だったんで来てみたの、私に相談したいと書いてあったし」
「でも、本当に来てくれるなんて…」
それは私も驚いているぐらいだ。何故わざわざ来なければならなかったのか?もし、今日の講
義にひとつでも好きなものがあれば、こうはならなかっただろう。
それから部屋に招かれた私は彼女の悩みを聞いた。
彼女は、相当な私の信奉者であることを強く感じた。
彼女の主張を要約すれば、私は職場が大嫌い、となる。
「飲み会に無理矢理、無理矢理ですよ!?無理矢理参加させられるんです!そこではずっと説
教みたいな話を聞かされるし、下ネタを言うオッサンまでいるんです!だから私は出来る限り飲
み会を断るようにしてるのに、それを協調性がないみたいに…直接は言ってこないんですけど、
そういう空気なんですよ!仕方がないから、誘われた時には、まえまえから日時を指定してもら
えば行くと答えて、当日に言われた時は参加しないようにしたんですけど、それも駄目だって」
私は、彼女を飲みに誘って断られるシーンを想像してみた。「今日、飲みにいかない?」
「前もって予約してください」、リゾートホテルみたいだな、と思った。
大学生の、同世代との飲み会とは、やはり違うのだろうな、とは思う。
「周りの人達は本当につまらない人達ばっかりで、全然私の気持ちなんて分かってくれないんで
す。私に、お前辞めろとか言う人までいるんですよ!お前なんかいらんとか…」
彼女は、きっと繊細なんだろう。
高校時代、彼女は夢見る少女だった。親が無理して入学させたお嬢様学校、彼女は夢見るま
まに卒業して、苦しい家計は彼女を就職させた。そして女子高あがりの彼女が中年の人々に受
け入れられないのは、彼女自身が中年の男を受け入れられないからだろう、と私は思った。
それはちょうど、掃除当番で誰よりも速く窓を拭いて、誰も窓拭きを手伝ってくれないと責め立
てるような感じに似ていた。
「大丈夫、きっと時間が解決してくれるわ」
もっと気の利いたセリフを探したが、見つけられなかった。しかしそのような、実に凡庸な言葉
でも彼女はみるみる目を輝かせて、そして泣いた。
彼女がどれくらい追い詰められていたか、私は知らなかったけど、それを感じることだけはで
きた。
泣きやんで落ち着いた彼女に、うまくかける言葉も見つからなかったので、私は熊の話をした。
「知り合いの女の子に、熊のぬいぐるみを大切にする女の子がいてね。子供の頃は、それはも
うずっと肌身離さずもっていたんだって。でも小学校にあがって、熊のぬいぐるみを持ってきては
いけないって先生や親に言われて、彼女は熊を捨てに家からは少し遠いゴミ捨て場に行ったん
だ。彼女もプライドがあったからね。周りの子に白い目で見られて、大人には怒られて、熊のぬ
いぐるみを持つのが恥ずかしくなった。でも結局、彼女は熊を捨てられずに家に帰った」
「はい」
「でももう学校にはぬいぐるみを持っていかなくなった。そして年月が経って、今では熊のぬいぐ
るみがどこにいったのかも分からない。彼女は時々熊のことを思い出すけれど、昔のような激し
い思い入れは蘇らない。そういう風に、少しづつ、人間って何かから離れていくんじゃないか
な?」
彼女はもう落ち着いていた。
落ち着いた彼女は面白く、賢い、感じの良い女の子だった。
私はだんだん高校時代の気分を思い出し、また、彼女の高校時代の様子も鮮明に蘇ってきた。
それは懐かしい感覚で、少しだけあの学園に帰った気分になった。
だから日が落ちたことにも気づかず、かなりの時間を過ごしてしまった。
帰ろうとする私を彼女が引き留めた。
それは正確には引き留めたというより、立ちふさがったという方が近かった。ドアに鍵がかけ
られ、彼女は私に抱きつく。
「泊まっていって下さい白薔薇さま!」
「それは悪いでしょう」
「悪くありません!おねがいですから泊まって下さい、もし、白薔薇さまが帰ってしまったら、私は
明日の朝、どうしても会社に行けない気がするんです!」
彼女は本気だったし、必死だったと思う。
「白薔薇さまがいるだけで、私は勇気をもらえるんです!お願いですから、明日の朝まで勇気を
ください!それとも、なにか予定があるんですか」
「ないよ」
「それなら!」
本当を言うなら予定はあった。それは予定と言えるほど明確なものじゃなかったけれど、私に
とって大切な人であるケイのところに、泊まる『かも知れない』と伝えてあったのだ。
『かも知れない』と言うものの、私はそう伝えた時には、ほぼ100%泊まりに行っていた。
ただ私は、少なくても形式上は、かも知れないと述べた予定を理由に、目の前の必死な女の
子を振り切ることはできなかった。
私は状況に流されて彼女の部屋に泊まることになり、徐々にそれがどうもまずい判断だった
気がして、落ち着かなくなってきた。
互いにシャワーを浴びて出てきた時、なにかやましい感じを覚えた。それはうまく説明できない
けれど、浮気をしている夫というのは、こういう感じだろうかと思った。
彼女が私から『勇気を分けてもらう』ために抱きついてきたとき、風呂上がりの彼女がタンクト
ップの下に何もつけていないのが分かった。私は、率直に言えば、少し、興奮していたかも知
れない。
同じベッドで眠る提案を、私は断れなかった。
それについて言い訳はしないが、断る理由がなかった。
彼女が私に、抱いてほしいと言ったとき、それがどういう意味なのか図りかねた。つまり、どう
いう意味での、抱く、なのか。
いや、本当は分かっていた。かなり完全に理解していた、だがとぼけた。
彼女は、はっきり言って可愛かったし、高校時代の彼女は確かに夢見る少女だったが、賢か
ったし、やはりとても感じがよく、手紙を書いてしまった彼女や、今日の始めの頃の彼女の方
が、やや錯乱した状態であって、きっと時が経てば後悔し、いつもの彼女に戻るだろう、
と私は思った。
何故そんなことを思う?これから先も彼女と関わっていくことについて検討するみたいに?
「いま、ほんの少しだけ勇気を下さい」
私はずっと誘惑と戦い続けた。彼女の膨らみをはっきりと意識したし、彼女からするとても良
い匂いも私を苦しめた。
こういう時、どう対処していいか分からなかった。
正確には、一つだけとても簡単な方法があったが、私はその可能性を捨てるのに必死だった。
結論から言えば、私は彼女を抱かず、月曜日は終わった。
『カトウ・ケイの怒り、父親の失踪』
私は引き留める彼女を振り切り(もし、振り切れなければ私は確実に取り返しがつかないこと
をしただろう)大学に向かい、講義を受け、昼休みにケイと話をした。
「何故、昨日来なかったの?電話したのよ私」
私はケイに昨日の事情を説明するのがとても困難に思えた。
しかも、私が家に帰っていなかったことをケイは電話で確認している。
私はゲームセンターや漫画喫茶で遊んで終電を逃したと嘘をついた。
だが、この嘘はたちまちバレてしまった。
私はゲームセンターなんてもうずいぶん行ってないし、電車を逃すほど漫画喫茶に夢中になっ
たことなど一度もなかった。
なによりまずかったのは、私に彼女から手紙が来た時、それをケイに話していて、「月曜日に
でも行こうかな」と言ったのをケイが覚えていたことだ。
仕方がないので正直に喋った。
彼女は押し黙り、今まで見たこともないぐらい、とてつもなく不機嫌な顔をしていた。
「いや、ケイが思っているようなことは何もなかったから、本当だって、信じてよ」
彼女はこちらをきっと睨んだ。それは、本当にキッとしか言いようのない睨み方で、しいて言え
ばギロチンが落ちる感じに似ていた。
「ねえ、セイ。あなたが言うのは、私は昨日自分を信奉してくれる女の子と抱き合いながらベッド
で寝たけど、何も疑う必要はないからご飯でも食べよう、ということなのよ」
「そうね…でもそうとしか言いようがないのよ」
「じゃあ何故嘘をついたの?あなたは、嘘をついたのよ。そのあなたの、何を信じればいい
の?」
彼女は立ち上がり、この場を去った。
なにか彼女を引き留める言葉があるだろうか?
ない、そんなものは私の中には存在しない。
打つべき手は思いつかなかった。全く、思いつかなかった。
全ての講義が終わると、私はケイと話すのはしばらく不可能だと判断せざるをえなかったので、
大学をまっすぐ出ることにしようと歩き出した。
だが構内で真っ青な顔をして立ち尽くす女の子が、知っている顔だったので話しかけることに
した。
この子はちょっとシニカルなところがあり、人が失敗した時に「アキャキャキャキャ」と笑う癖が
あり、正確にはそれは笑いではなくセリフだった。それは人を効果的にからかう為に使われる。
私も、講義で教授に当てられ寝ていた時に言われたことがある。
その彼女が顔面蒼白になっているのだ、話しかけずにいられない。
彼女が私に気づいた。
「佐藤さん!お父さんが行方不明になったの!」
「アキャキャキャキャ」
彼女が怒りのあまり黙った。それは気詰まりな沈黙だった。
そしてそのあと、私は猛烈な抗議を受けた。それは大学中に響き渡るのではないかというぐら
い大音量で、もし怒りを数値化して比べられれば、世界ランキングに入れる怒りぶりだった。
どうも彼女は、昔の私の知り合いに似ているところがあって(その子はユミちゃんという)表情
がコロコロ変わって、からかうと楽しい。
しかし楽しがり続けても彼女の怒りはおさまらないし、いい加減注目を集めはじめていた。
「まあまあ、落ち着いてよ。あんまり必死な顔をしていたから、こうやって気分転換した方がいい
と思って怒らせたのよ、怒る、という別の感情を持つことによって、さっきまでとらわれていた
感情に対して気分転換になるでしょ」
彼女はようやく周囲の視線に気付いて黙ったが、私に対する視線は冷たい。
「お父さんが行方不明になったって、どういうこと?」
彼女は渋々話し出した。
父親が二日前から帰ってこないこと、職場にも出ていないこと、行方不明になる前には様子が
おかしかったこと…
それは思っていたよりずっと長い話になった。
もう三十分は超えている。
彼女は喋りながら心配し、興奮し、あるいは悲しんだ。
私はその親子愛みたいなものが上手く把握できなかった。
それは私の感性に何かが決定的に欠けているせいだと思う、その何かは、私の手を通り過ぎ
てしまって、もう二度と手に入らない。
「お父さんがおかしくなったのは、叔父さんが自殺してからだと思う」
「自殺?」
「うん、N県で教師をしていたんだけど…」
彼女の叔父さんはN県で公立中学の教師をしていて、彼女のお父さんとはとても親しく、彼女
自身も叔父さんの娘や叔父さんと交流があった。
そして叔父さんは自殺したが、その事情を誰も彼女に説明しなかった。父親も母親も何かを知
っていたが、娘に対して暗く重い秘密の扉を設けて、そこには鍵穴すらない。
続けて、父親は行方不明になった。そこには何かがある、そう考えても不思議はない。
「お父さんは○○税務署で働いていて、職場の人達はお父さんの行方不明の事情を知らないっ
て言うんだけど、私には分かるわ、何かが、決定的に隠されているのよ」
「何かって?」
「何かよ」と彼女は言った。
私はしばらく上を向き、首がいたくなったので言った。
「まだ、今の段階ではなんとも言えないわ。案外、帰ってくるかも知れない。ちょっと職場でいじめ
られて嫌になったのかも知れないし…」
「お父さんはそんな人間じゃないわ」
「たとえよ。何がどうなってるか分からないんだし、余り深刻に考えると辛いでしょう」
彼女は答えなかった。
実際、何かまずいことになっているのかも知れない。しかし、私に出来ることがあるだろうか?
何もない。
これは只の事実に過ぎない。私にできることなど何もない。
そして、帰ってくるかも知れない、という以外の、どんなセリフがあるだろう?『何か大変なこと
が起きているかも知れないわ』そう、それは真実かも知れない。でもそれだけだ。
私は何もできない。
家に帰ったら歯磨き粉が切れていた。
『土曜日への楽天的展望、吸えない煙草』
土曜日には大抵の問題は解決している、少なくても週の最初の方に起きた問題は解決してい
る筈だ、そうでなければどうやって人生を乗り切っていけるだろう?
だからケイの正当な怒りも父親の失踪も切れた歯磨き粉も、全て土曜日には解決している
筈だ。
私は大学に向かう途中に煙草の自販機を見つけ、何故か立ち止まった。
不意に、とても煙草が吸いたくなったのだ。今まで吸ったことなどなかったのに、私は外国で
めずらしいみやげ物を見つけた時のように、自販機に吸い寄せられていった。
お金を入れてボタンを押すと、何かが倒れるような些細な音がして煙草が出てきた。
矢がデザインされている、シンプルな感じのものだった。
自分でもよく分からないうちに煙草を買っている、しかしそれは全く訳が分からないのでは
ない。
私は明らかに動揺しており、頭の中にはずっとケイのことがあった。
ケイは煙草を吸わない。私の親しい人達は大抵、吸わない。高校時代からそうだ。
高校時代、私はやや異端児だった。しかしそれはお嬢様学校での異端児に過ぎない。煙草さ
え吸ったこともないような、優良な異端児だった。
それがいま、少し気に食わなかった。
そして何か踏み外してしまえと思い、煙草を吸おうとしたが火をつける道具など持っていなかっ
た。
だから私は諦めて、鞄に煙草を入れて大学に向かった。
私はずっとひっかかっていたあることを思い出した。
父親がいなくなった彼女に、お父さんはいじめられていたのかも知れない、というたとえを
言ったが、その発想はどこから来たのかということだ。
それは、ケイが私との関係を疑っている、後輩からの連想だった。
彼女は税務署に勤めていたのだ。
署こそ違うものの、失踪について税務署が何かを隠しているなら、彼女から探りを入れる
のは悪い発想ではなかった。
昼休みに大学の構内から彼女の携帯に電話すると、簡単に彼女と繋がった。
「佐藤です」
「え!」
沈黙があった、私だと分かっていないのだろうか?佐藤という名はありふれている。
仕方がないので分かりやすく名乗った。
「あなたの白薔薇さまですよー」
「えええええ!」
「元気してた?」
「は、はい」
「全然無理しなくていいんだけど、いま大丈夫?」
「はい!いつも一人で昼は食べてますから」
そんなことを元気よく言うなよ、と私は思う。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」
「はい、何でも聞いて下さい」
「○○税務署の職員が、行方不明になった話知ってる?」
「ええ、少しだけ耳に挟んだことがあります」
「詳しい?」
「いいえ、殆ど知りません、そういう事実があったとしか」
「ちょっと詳しい事情を知りたいのよ。全然、本当に無理しなくていいから、ただ好奇心で
聞いてるだけだから、何か分かったら教えてくれない?」
「分かりました!」
大体用件は終わったので、軽く世間話をして電話を切った。
私はまだ昼食を食べていないので、急いで食堂に向かう。
その日の午後、彼女から電話がかかってきた。
「さ、さ、佐藤さんのお宅でしょうか」
彼女の声はうわずっていたし、携帯電話なのに『お宅でしょうか』はおかしいと思った。
何だか、からかいたくなってくる。
ちょっと沈黙してみた。
「あの、もしもしー、もしもーし」
ほっといてみる。
「もしもしー、もしもしー」
ちょっと可哀想なので、答えることにした。
「あの」
「はい?」
「番号間違えてますよ」
「ええーーー!!!」
電話を切ろうとしたので大急ぎで名乗る。
「うそ、うそうそ、ごめん、私です佐藤です、あなたの白薔薇さまですよー」
「ろ、白薔薇さま!ひどいですよ!」
「ごめんごめん、可愛かったからつい、それで、何かな?」
「あ、ええとですね、行方不明の件なんですけど、それについて知ってる人と話をつけたので、
お暇でしたら喫茶店でその人と 会っていただいたらいいかなーって」
「うん、いいよ」
「駅前のジェイズカフェというところで、今日の6時です。私、とても残念なんですけど行けない
んです、その人は背の高い、痩せた、50歳ぐらいのお爺さんで、間宮さんっていいます」
「えらく、早く話がついてるね」
「ええ、頑張りましたから」
頑張らなくていいのになあ…正直、ちょっと心配になってきた。かなり無理して話をつけたん
じゃなかろうか?
「目印とか、私しなくていいのかな?」
「ええ、間宮さんは、ジェイズカフェに若い女の子が来たら分かるって、言ってました」
用件は終わったので、またもや世間話をして切った。だんだん、彼女が心配になったり、可愛
く思ったり、ほっとけない感じを覚えたり、なんというか私内好感度が上がっている気がする。
そりゃ、ケイに怒られるよな。
私は着替えて、ジェイズカフェに向かった。