『すれ違い』
心底、不愉快で嫌なことというのはある。
人間が集まれば、互いに悪意はなくても、傷つけあってしまう。
書くということは、自己療養のささやかな試みである、と言ったのは誰だったろうか。
しかし、私は書くことさえできないのだ。
「セイ、どうしたの?」
「なんでもないよ」
と私は私の大切な人であるケイに言う。
「ケイはさ、ブルーになったとき、どうやって気分転換する?」
「そうね…本を読むかしら」
「適当な本がなかったら?」
「セイに会うかもね」
それは是非とも実行してみたかったが、世界中で私にだけはできない気分転換方だった。
「じゃあ、私はケイに会えばいいのかしら」
「そうよ、今もそうしてるじゃない」
その通りだ。
まったく、その通り。
「ケイ、こっちにきてくれる?」
「なに?」
洗い物をしていた彼女は手を拭いてこっちに来る。
私は彼女を引き寄せて抱きしめた。
「いきなり、なに?」
「気分転換させてもらおうと思って」
「私、ユミちゃんじゃないんだけど」
「ユミちゃんじゃなきゃ、抱きしめていけない理由はない」
「どうしたの?セイ」
「何でもないよ」
「ずるいわね」
「そうさ」 私は母親に甘える幼子のように幼稚なことをしている自覚があったが、こうやってケ イに甘える
以外に良い方法が思いつかなかった。
私は傷つけられた子猫のように、ケイに体を預けた。
「ケイが居て、良かったと思うよ」
「誰にでも言ってるでしょ」
「そうだよ、でも今のは本心だよ」
「分かってるわ」
私はケイにくちづけた、そして、体を離す。
「洗いものの続きがあるから、布団敷いてくれる?」
「わかった」
こうやって、傷を抱えたり、癒されたりしながら生きていくのだろう。
互いに礼儀をつくしても、すれ違ってしまうことはある。
考え方の違い、というものは、変えられない。
本当は、どんな傷も、一人で抱えて生きていくものなのだ、とは思う。
でも私は弱いから、きっと誰かが必要なんだ。
その日は、同じ布団で手をつなぎあって眠った。
私には、ケイが必要だ。
了
あとがき
超個人的ssです。
THE MOON OF TWILIGHTさまに寄贈しました…
なんか、望月さまに感想を書いてあげてほしい気もします。
辛そうだなあ、と胸が痛いですね。
2chって怖いなあ、と思う日々なのでした。
あ、ぜんぜんこれのあとがきになってねえ。
これを拾ってくれた望月さまに感謝します。ではでは