遺言


■遺言の性質

(1)要式行為
遺言は、必ず法律に定める方式に従わなければならず、これに反する遺言は効力を生じない。
(2)相手方のいない単独行為
遺言は、相手のいない単独行為とされている。従って、遺言によって適式な意思表示がなされれば、遺言者の死後にその効力を生じ、相手方の受領・承諾を要しない。

■一般的な遺言の種類と特徴

一般的な遺言の種類には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がありますが、次の通りそれぞれ長所と短所があります。

種類 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法 本人が自筆で遺言の全文、日付、氏名を書き、押印します。
日付のない遺言は無効になります。又、「平成17年4月吉日」といった書き方も無効となります。
本人が口述し、公証人が筆記します。
その内容を本人と証人に読み聞かせて遺言作成します。
本人が作成し、署名押印して封印します。
その後、公証人の前で本人が住所、氏名を述べ、公証人が日付などを記入します。
証人 不要 2人以上 2人以上
検認 必要 不要 必要
長所 作成が簡単
費用がかからない。
紛失、変造、偽造の危険がありません。 変造、、偽造の心配がありません。
内容を秘密にできます。
短所 紛失、変造、偽造の危険があります。
内容が不備で無効になる危険があります。
手続きが面倒です。
費用がかかります。
内容を秘密にできません。
手続きが面倒です。
費用がかかります。
内容が不備で無効になる危険があります。
その他 @ワープロ、パソコンで書いたものやビデオは無効になります。
A遺言が何通かある場合には、日付の一番新しい遺言が有効になりますので、どの遺言が有効かを判断する上でも日付は大変重要です。
B印鑑は必ずしも実印である必要はありません。認印や花押でも有効です。
C遺言書は封筒に入れることや封印することは法的には決められていません。個人の自由意思でO.Kです。

@ワープロ、パソコンで書いたものでもO.Kです。ただし、、署名は自筆でなければなりません。

公正証書遺言等の方式の改正について
(1)現行の公正証書遺言の方式
 現行民法は、公正証書遺言の方式について、「口授」、「口述」及び「読み聞かせ」を必須の要件としており(第969条)、かつ、秘密証書遺言のような例外規定(第972条)を設けていないため、現行民法の解釈としては、手話通訳又は筆談によることはできず、聴覚・言語機能障害者は公正証書遺言をすることができないものとされている。
このように、現行民法は、フランス民法と同様、遺言意思の真正および正確性の担保の観点から、遺言の方式について特に厳格な高等主義を採用している。

(2)民法改正の必要性
 聴覚・言語機能障害者についても、手話の発達した状況等にかんがみ、近年、公証人の関与による遺言の適法性の担保、公証役場における証書の保管(滅失、改ざんの防止)、家庭裁判所の検認の省略等のメリットを有する公正証書遺言を利用することができるようにすべきであるという社会的要請が高まりを見せている。
 そこで、法務省は、平成10年1月、聴覚・言語機能障害者が手話通訳または筆談により公正証書遺言をする途を開くための民法改正案を平成11年の通常国会に提出する方針を公表した。これを受けて、法制審議会は、民法部会の身分法小委員会において、手話通訳をめぐる現在の状況、公正証書遺言に関する諸外国の法制等に関する調査研究の結果及び関係団体等のヒヤリング結果を踏まえて、民法改正についての審議・検討を行い、平成11年2月16日の総会において改正要綱を決定し、法務大臣に答申した。法務省は、法制審議会の答申に沿って立案作業を進め、同年3月12日の閣議決定を経て、成年後見制度の改正と一括の民法改正案を第145回通常国会に提出し、平成11年12月1日、第146回国会において修正なく成立した。(同月8日公布)

民法の一部を改正する法律(平成11年法律第149号)の概要
(1)公正証書遺言方式の改正
  民法第969条の改正及びその特則規定の新設により、聴覚・言語機能障害者が次の方法により公正証書遺言をすることを可能にした。
  (a)聴覚・言語機能障害者は、「口授」に代えて、「通訳人の通訳(手話通訳等)による申述」、又は「自書」(筆談)により、遺言の趣旨を公証人に伝える。
  (b)公証人は、「読み聞かせ」に代えて、「通訳人の通訳」又は「閲覧」により、筆記した内容の正確性について確認をする。
  (注)公正証書遺言一般について、「読み聞かせ」と「閲覧」の選択を可能にした。
(2)秘密証書遺言、死亡危急者遺言及び船舶遭難者遺言の方式の改正
  上記1の改正に伴い、口頭主義を原則とする秘密証書遺言、死亡危急者遺言及び船舶遭難者遺言についても、聴覚・言語機能障害者が「通訳人の通訳」(手話通訳等)によりこれらの方式の遺言をすることを可能にするため、民法第972条、第976条及び第979条の各規定に所要の改正を加えた。

検認について

遺言者が死亡した後、遺言書を保管している人、あるいは遺言書を発見した人は、遺言書を遅滞なく家庭裁判所に提出して、検認を受けなければなりません。
検認とは、裁判所が遺言書の存在とその内容を確認するために調査する手続きのことをいいます。ただし、公正証書遺言では検認の手続きをする必要はありません。
封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのうえで開封しなければなりません。
検認の手続きは、遺言が有効かどうかを判断するものではありませんので、検認手続きを行った遺言であっても後日無効になることはあります。

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