小額訴訟制度


■小額訴訟制度とは

(1)小額訴訟制度の特徴
  小額訴訟制度は、これまで債権金額が小さく通常の訴訟を起してまで回収するほどでもなく、回収を見送っていた債権を簡易、迅速に回収を図れるように1998年に民事訴訟法に新設された制度です。

@60万円以下の金銭支払に関する訴訟が対象となります。
ただし、請求金額が60万円以上であっても、金銭を分けて複数回の小額訴訟を起すこともできます。
A小額訴訟は金銭の支払を求める訴訟に限られます。
<活用例>
・商品を納入したのに代金を支払ってもらえない場合
・借金を返してくれない場合
・敷金を返してくれない場合
・交通事故などの損害賠償を支払ってもらえない場合
・アルバイトなど給料を払ってもらえない場合      など 
B原則として1回の審理で双方の口頭弁論を行い、その日のうちに判決が下されます。通常の民事訴訟のように何度も審理が行われ、その都度裁判所に出頭する必要がありませんので、非常に迅速です。
C証拠となる書類や証人は、原則として審理の日にその場で確認できるような簡易なものに限定されます。証拠調べが複雑だったり、証人が複数存在する場合など、とても一日で審理を終わらせる事が困難な場合には、通常訴訟に移行となる場合があります。

(2)小額訴訟の効果
 小額訴訟の判決で原告側の訴えが認められれば、必ず仮執行宣言が付くので被告側には支払い義務が生じます。それに従わない場合には、判決内容の強制執行が可能です。
 「この程度の金額なら裁判沙汰はないだろう」と甘くみている相手方に対して小額訴訟は非常に効果的で、裁判所から訴状が届いただけで、審理当日を前に「和解」という形で金銭トラブルが解決するケースがほとんどです。
 なお、相手が正当な理由なく審理を欠席したら原告の不戦勝になります。

小額訴訟審理の様子
 小額訴訟の法廷では、裁判官、原告、被告などすべての当事者が丸いテーブル(ラウンドテーブル)を囲んで座り、対話をするような雰囲気で審理が進められますので、精神的な苦痛が無く安心です。

小額訴訟のデメリット、向かないケース
・相手方の所在が分からないと訴訟提起できません。
・反訴の禁止 : 判決に不服でもその上の裁判所(地方裁判所)に控訴できません。(当該判決を下した簡易裁判所への異議申し立ては認められます。)
・被告が通常の民事訴訟に移行するよう求めた場合は、小額訴訟はできません。
・かかった経費を負けた側に請求する事はできません。
・金銭の請求以外には利用できません。
・相手方に支払能力がないと判断される場合には向いていません。

小額訴訟の注意点
・小額訴訟は年間10件まで利用可能です。
・審理一回限りの勝負ですので、訴訟を起す前に充分な証拠を用意しましょう。
・通常の民事訴訟に移行される可能性があることを念頭に利用しましょう。

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