爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)


第百九話 がんじょ(2005年11月13日掲載)

【出雲弁】

「あらら、オジジ。きょうも、歩くのやめらいましたかね」

「一日一万歩、歩かなえけんだども、ちょっこ、かざきでのー」

「ここんとこ、がんじょして、歩るかいたね。また、かわきやまいが、わりんなーましじね」

「おんおん。わかっちょーが」

「きのうも、歩るかんこでしたがねー」

「出らかともったら、おっその隠居さんが来ちゃってのー。碁、打っちょったら日が暮れてしまったがー」

「おとついもですじね」

「出しなに、となーのオジジにつかまってのー。熊さんは来てだし、とーとー、ばんげまで話がはじんでのー」

「さきおとついもでしたじね」

「あの日は、雨が降ってのー」

「ワッハッハ。よー、そげん、なんだいかんだい、あーますねー」


【共通語訳】

「あらまあ、お爺さん。きょうも、歩くのをやめられましたか」

「一日一万歩、歩かないといけないけれども、少し風邪っ気でねー」

「このところ、頑張っていたのに。また、糖尿病が悪くなりますよ」

「はいはい。分かっているよ」

「きのうも、歩るいていませんでしたよね」

「出ようかと思っていたら、後ろの隠居さんが来られてねー。碁を打っていたら日が暮れてしまったよー」

「おとといもでしたよ」

「出しなに隣のお爺さんにつかまってねー。熊さんも来るし、とうとう、夕方まで話が盛り上がってねー」

「さきおとといもでしたよ」

「あの日は、雨が降ってねー」

「ワッハッハ。よくも、そんなに、いろいろとありますねー」


(解説)
 ウォーキングやダイエットなど、こつこつと実行していたことが崩れるときはできない理由があれこれと出てくるようです。

(参考)
 共通語の「がんじょう(頑丈)」は人や物ががっしりしていて丈夫なことをいいますが、出雲弁では「がまん強い」「辛抱強い」「勤勉に行うこと」「頑張る」という意味でも用います。


 

奥野栄

 

表紙ページ