爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)
第十二話 いけずご(10月28日掲載)
【出雲弁】
爺「おーい。ババ。柿、もしって、きたじ。」
婆「だんだん、だんだん。なんと、がいね、もしらっしゃったね。腰は、えてこと、ねかね。大丈夫かいね。」
爺「おん、おん。(孫の)奈緒美が、てごして、ごいただけん、助かったわや。ほんね、え、てごしーやん、なったわ。ババ。あとで、えけん、ちょっこし、ふねって、ごいたの。」
婆「はい、はい、分かったけんね。今市の、あんさんがとこに、持ってえかともーけん、そこん、段ボール箱に、詰めらかね。」
婆「・・・・・」
婆「あいけ、オジジ。甘柿の中に渋柿がまじっちょーじね。」
爺「あっちゃ。奈緒美に、やらいたわ(ワッハッハ)。おらが、はさんばで、もしっちょーときに、なんだい、ごそごそ、しちょったけんのー。あいちゃ、ほんね、いけずごだけんのー。」
婆「あげ、あげ、ほんね、こな子は、いけずごだがね(ワッハッハ)。だーね、似ただいね。」
【共通語訳】
爺「おーい。お婆さん。柿をもいできたよ。」
婆「ありがとう。ありがとう。なんと、たくさんもいでこられましたね。腰は痛くないですか。大丈夫ですか。」
爺「はい、はい。(孫の)奈緒美が手伝ってくれたから助かったよ。本当に、良い手伝いをするようになったよ。お婆さん。あとでいいから、少し(腰を)マッサージしてよ。」
婆「はい、はい、分かりましたからね。今市(出雲市)のお兄さんのところへ持っていこうと思うので、そこの段ボール箱に詰めましょか。」
婆「・・・・・」
婆「ああもう、お爺さん。甘柿の中に渋柿が混ざっているよ。」
爺「あらあら。奈緒美にやられたよ(ワッハッハ)。私が挟み棒でもいでいるときに、何やらごそごそしていたからねー。あの子は本当にいたずらっ子だからねー。」
婆「そう、そう、本当に、あの子はいたずらっ子だよね(ワッハッハ)。誰に似ただろうかね。」
(注釈)
出雲地方では、ほとんどの農家に柿の木が植わっていました。「合わせ柿」、「じくし」、「あまんぼし(つるんぼし、ちりんぼ)」、「しーしび」など、いろいろな味覚が楽しめます。
(参考)
「いけず」は関西地方をはじめ広い範囲で使われています。出雲地方では”いたずら”、関西地方では”いじわる”の意味で用いられることが多いようです。
(奥野栄)