爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)
第十五話 だんべ(12月9日掲載)
【出雲弁】
婆「えらい、寒なったが、なんぞ、ふーもんが、しちょら、せんかいね。」
爺「だんべが、ふっちょーじ。」
婆「やっぱ、そげかね。こぎゃんときゃ、電気ごたつよま、本ごたつが、えがね。」
爺「ババ。ちと、のりこたねかや。メメジが、でーやなじ。くゎっくゎと、おこいて、ごいた。」
婆「ジーノは、そっちに、あーましけん、おまえさん、ほじくって、ごしなはい。」
爺「ほねや。」
爺「・・・・・」
爺「ババ。シキタツの上に、足があって、じゃまで、えけんがの。」
婆「ごめんごめん。寒もんだけん、け、足だいちょったがね。」
婆「よっこらしょ。・・・プッ。」
爺「・・・・・」
爺「あいけ、ババ。こたつん中で、おもすだねがや。」
婆「(ワッハッハ)、こらまたなんだら。えもの、おもいたが、あんま、まて、ヘソが、あかんべ、すーほど、よばれたもんだけん。」
【共通語訳】
婆「ずいぶん、寒くなったけど、何か降っていないだろうかね。」
爺「ぼたん雪が降っているよ。」
婆「やはり、そうですか。こんな時は電気ごたつより掘りごたつがいいよね。」
爺「お婆さん。(こたつが)少しぬるくないだろうか。ミミズが出るような(感じ)だよ。カッカと炭をおこしてくれ。」
婆「ジュウノウはそっちに有りますから、おまえさん、灰を掘って(オキを出して)ください。」
爺「そうかい。」
爺「・・・・・」
爺「お婆さん。シキタツの上に(お前の)足があって、じゃまでいけないよ。」
婆「ごめんごめん。寒いものだから、つい、足を出していましたよ。」
婆「よっこらしょ。・・・プッ。」
爺「・・・・・」
爺「ああもう、お婆さん。コタツの中で屁を放らないでくれ。」
婆「(ワッハッハ)、こらまたどうしたことだろう。芋の蒸したのが、あまりおいしくて、ヘソがめくれ出るほど食べたものだから。」
(注釈)
昭和30年頃の暖房は本ごたつ(掘りごたつ)、ネコゴタツ(やまとごたつ・おきごたつ)や火鉢が主流でした。本ごたつには、ヤグラ・ジーノ(ジュウノウ)・シキタツ等が必要でした。
(参考)
堀ごたつにまつわる面白い表現として「メメジがでーやな」、「あげごたつ」、「火をいける」、「火をほじくる」、「火をうめる」などがあります。
(奥野栄)