爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)
第二話 よいたんぼ(5月27日掲載)
【出雲弁】
婆「ぽちぽち、ちまきを、巻かな、えけんけん、ササ採って、きて、ごしなはいよ。」
爺「おんおん。わかっちょー、わや。」
婆「ことしゃ、早めね、採ってきて、ごしなはいよ。去年は『まんだ、はえ。まんだ、はえ。』てて言わっしゃって、とーと、よそんしが、ごっと、採って、いかっしゃった、けんね。」
爺「ババ、そげ、言わっしゃー、だどもの、おらは、たんなかの、しぇわや、なんやかやで、えそがして、そぎゃん場だなかったわや。」
婆「なに言っちょらっしゃら、おちだてて、畑の草取りや、なんやかやで、えそがしじね。おまえさんは、こないだも、じげの、花見だけんてて、飲んだ飲んだで、よいたんぼ、しちょらいたども、おちは、しぇんたくや掃除で、えそがしかったじね。」
【共通語】
婆「ぽちぽち、ちまきを巻かないといけないので、ササを採ってきてくださいよ。」
爺「はいはい。わかっているよ。」
婆「今年は、早めに採ってきてくださいよ。去年は『まだ早い。まだ早い。』と言って、とうとう、他人が全部採っていってしまったからね。」
爺「お婆さん、そう言われるけれども、私は田んぼの仕事等で忙しくて、そのような場合ではなかったよ。」
婆「何を言ってるんですか、私だって畑の草取り等で忙しいですよ。あなたは、この前も地域の花見だといって、飲んで酔っぱらいだったけれども、私は洗濯や掃除で忙しかったんですよ。」
(注釈)
出雲地方には端午の節句に「チマキ」を作る習慣があります。昨年は「チマキ」に用いるクマザサを他人にごっそり持っていかれたのが、ババには悔しくてたまらないようです。婆にせかされた爺が反発してみたのですが・・・くわばら、くわばら。逆らうと二言も三言も返ってきます。
(参考)
平田では「よいたんぼ」と言いますが、出雲市の一部では、「よいたくじ」だそうです。
(奥野栄)