爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)


第二十四話 ここーそどがない(2002年4月28日掲載)

【出雲弁】

「わけもん、らちゃ、孫ちぇて、あさま、とーから、出かけたのー。」

「連休で、渋滞、すーか、もっしぇん、てて、おかさんが、言っちょーましたけんね。」

「ババ。おらやちも、愛宕山(平田市)に、行って、みらこい。」

「そげ、でしね。ほんな、にぎーめしなと、つくーましょかね。」

「おらは、畑いって、シカのえさ、採ってくーわ。」

・・・・・爺と婆は愛宕山にやってきました・・・・・

「ババ。あしこ、見てみた。シカがおーじ。」

「オジジ。あしこね、カンガルーが、おーましじね。」

「シカに、ニンジン持って来たけん、ちょっこし、やってみらかの。」

「おまえさん。あしこ、クジャクが、まげに、広げちょーましじね。」

「あいけ、おまえと、くーと、ここーそどがなて、えけんわ。」


【共通語訳】

「若い者たちは孫を連れて、朝早くから出かけたねー。」

「連休で渋滞するかもしれないと、お母さんが言っていましたからね。」

「お婆さん。私たちも愛宕山(平田市)に行ってみようよ。」

「そうですね。それじゃ、にぎり飯でも作りましょうかね。」

「私は畑へ行ってシカのえさを採ってくるよ。」

・・・・・爺と婆は愛宕山にやってきました・・・・・

「お婆さん。あそこを見てみなさいよ。シカがいるよ。」

「お爺さん。あそこにカンガルーがいますよ。」

「シカにニンジンを持って来たから、少しやってみようかね。」

「おまえさん。あそこでクジャクが見事に羽を広げていますよ。」

「ああもう、おまえと来ると落ち着かなくていけないよ。」


(注釈)
 平田市の愛宕山公園には「動物の広場」があり、シカ、オオカンガルー、クジャク、ハムスター、ハト、アヒル、ガチョウなど、たくさんの動物がいます。五月の連休は家族連れの人たちでにぎわいます。

(参考)
 「ここーそどがない」は「落ち着きがない」とか「せわしない」の意味です。鳥取県西伯郡でも使われているそうですが語源については不明です。

(奥野栄)

 

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