爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)
第三十話 だーが洗濯すー(2002年7月28日掲載)
【出雲弁】
爺「夏休みは、孫らちが、えのちに、おって、にぎやかで、えがのー。」
婆「朝ま、とーから、晩かたまで、あげん、よー、あそばいて、えわ。」
爺「隆史が、がいな、フナ、釣って、戻った、げなの。」
婆「そーが、また、たいへん、でした、わね。」
爺「ババ。えらい、機嫌が、わりが、どげぞ、したかや。」
婆「たんびに、どろまみれで、戻って、くーだけん、け、ほんね・・・。今日は、こーで、三度目でしじね。洗濯もんが、あばかんがね。」
爺「そとで、あそんてて、え、ことだがや。」
婆「なにね。だーが、洗濯すーと、おもっちょ、らっしゃら。」
爺「しゃんこと、いわんこに、おらおらと、遊ばせて、やーだわや。」
婆「孫らち三人が、日に三度わて、着替えて、みなはい。どらほどの、たきが、あーか・・・。おかさんは、勤めが、えそがし、てて、戻って、来てだ、あーせんし。」
爺「おかさんも、せいっぱい、やっちょってだわや。」
婆「オジジ。夏休みは、おちも、えそがし、でしけんね。ちた、てご、して、ごしなはい、ませよ。」
【共通語訳】
爺「夏休みは、孫たちが家にいて、にぎやかでいいよなー。」
婆「朝早くから夕方まで、あんなによく遊べていいですよ。」
爺「隆史が大きなフナを釣って帰ったそうだね。」
婆「それが、また、大変でしたよ。」
爺「お婆さん。たいそう機嫌が悪いけど、どうかしたかい。」
婆「いつも、泥まみれで帰ってくるものだから、もう、ほんとうに・・・。今日は、これで三度目ですよ。洗濯ものが(多くて)かないませんよ。」
爺「外で遊ぶって、いいことだよ。」
婆「なに言ってるの。だれが洗濯をすると思っているの。」
爺「そんなこと言わずに、笑顔で機嫌よく遊ばせてやりなさいよ。」
婆「孫たち三人が、日に三回ずつ着替えてみなさいよ。どれほどのかさがあるか・・・。お母さんは勤めが忙しいといって帰って来ないし。」
爺「お母さんも精いっぱいやっているから。」
婆「お爺さん。夏休みは、私も忙しいですからね。少しは手伝ってくださいませよ。」
(参考)
出雲弁では「り」、「る」、「れ」の発音が苦手で長音化します。「だれが洗濯する」と発音するところを、出雲弁では「だーが洗濯すー」となります。「あります」は「あーます」、「にぎりめしは」は「にぎーめし」と発音します。また、「あらう(洗う)」を「あらー」、「いう(言う)」を「いー」のように、「う」も長音化することがあります。
(奥野栄)