爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)


第三十四話 なくさん(2002年9月8日掲載)

【出雲弁】

「ババ。道路ばたに、コスモスが、咲いちょったじ。」

「秋に、なーましたね。」

「こないだまで、のくて、あばかん、てて、いっちょったねのー。」

「あげでしがねー。”暑さ寒さも彼岸まで”てて、いーましだけんね。」

「食いもんは、まいし、秋が、えっち、えがのー。」

「オジジ。どこぞ、なくさんに、行きましょや。」

「おん、そげだの。」

「ワイナリーで、なんだい、感謝祭が、あーげな、でしじね。」

「なにや。さ、おもっそさげなの。」

「け、ほんね。酒の話になーと、目の色が、ちがーまし、だけん。」

「あしこは、なんぼでも、試飲が、できーけんの。」

「大社さんに、みゃってからでしじね。」

「わかっちょーが。ババ。そーで、電車は、なんじばんが、あーかいの。」

「ワイナリーの感謝祭は来月でしけんね。」


【共通語訳】

「お婆さん。道ばたにコスモスが咲いていたよ。」

「秋になりましたねー。」

「この間まで暑くてかなわない、と言っていたのになー。」

「そうですよねー。”暑さ寒さも彼岸まで”と言いますものね。」

「食べ物はおいしいし、秋が一番いいよなー。」

「お爺さん。どこか、遊びに行きましょうよ。」

「うん、そうだね。」

「ワイナリーで、感謝祭があるそうですよ。」

「何かい。それは、おもしろそうそうだね。」

「もう、ほんとうに。酒の話になると目の色が違うんだから。」

「あそこは、いくらでも試飲ができるからね。」

「出雲大社に参ってからですよ。」

「分かっているよ。お婆さん。それで、電車は何時の便があるかい。」

「ワイナリーの感謝祭は来月ですよ。」


(注釈)
 「暑い暑い」と言っていた夏も過ぎ、あっという間に彼岸がやってきました。道ばたに咲くコスモスが手を振ってくれます。島根ワイナリー最大のイベント「2002ワインまつり・ぶどう収穫感謝祭」は十月十八日(金)〜二十日(日)に行われるそうです。

(参考)
 「なくさん」は「慰み、気晴らし、遊び」の意味で用いられ、「慰み(なぐさみ)」が語源です。出雲弁では「かみさま(神様)」を「かんさん」と言うように、「み」を「ん」と発音することがあります。

(奥野栄)

 

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