爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)


第三十七話 おびなおし

【出雲弁】

「しもどなーは、ことしゃ、おびなおし、だげなじね。」

「ほーん。こないだ、産まれ、ちゃった、やなね、もはい、そげん、なって、かいの。」

「よそさんは、じき、おおきん、ならいましがねー。」

「去年は、むこどなーが、おびなおし、だったね、わっしぇちょって、大変だったがのー。」

「おかさんが、しちょってだと、ばっか、おもっちょー、ました、だけんね。」

「ワッハッハ。あげだったのー。」

「笑い事だ、あーしませんじね。はちかしや、はちかしや。えごはごはぐれて、祝い、持って、いきました、けんね。」

「そげん、おこらでも、えわや。」

「ことしゃ、かたから、おちが、持って、いきまし、けんね。」

「ばば。ちとわてでも、おかさんに、世間させな、えけんじ。」


【共通語訳】

「下隣は、今年、七五三だそうですよ。」

「ふうん。この間産まれたようなのに、もう、そんな年になるのかね。」

「よそさまは、すぐに大きくなりますよねー。」

「去年は、お向かいが七五三だったのに、お祝いを持っていくのを忘れていて大変だったよなー。」

「お母さんが、しているとばかり思っていましたからねー。」

「ワッハッハ。そうだったねー。」

「笑い事じゃないですよ。恥ずかしいのなんのって、ありませんでしたよ。時期外れにお祝いを持っていきましたからね。」

「そんなに怒らなくてもいいじゃないかい。」

「今年は最初から私が持っていきますからね。」

「お婆さん。少しずつでもお母さんに世間づきあいをさせないといけないよ。」


(注釈)
 十一月十五日は七五三といって、数え年四歳の子が氏神様にお参りをし、お宮でお札と千歳あめの入った袋をいただきます。記念に写真を撮る姿がよく見られます。

(参考)
 出雲地方には、「おびなおし」とか「ひもおとし」といって、数え年四歳のときに今まで着ていた着物のひもを落して四つ身の着物に帯を締める習わしがあったそうです。

(奥野栄)

 

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