爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)


第三十八話 しもーくせ

【出雲弁】

「ここんとこ、なんぼでも、葉っぱが、落ちて、えけんがのー。」

「しゃんしゃん、はいちょいて、ごしなはいませよ。」

「掃いても、掃いても、きりがねがや。」

「おまえさんは、そーが、仕事でしけんね。」

「おんおん、わかっちょーがー。」

「あら。風向きが、変わーましたね。」

「あい、け。けんたて、えけんわ。」

「手、休めて、芋なと、くいなはいませ。」

「ほんな、よばれらかの。」

「あちが、ごっつおですがね。」

「だども、なんだい、しもーくせ、の。」

「おじじ。そーが、また、えとこ、ですわね。」


【共通語】

「このところ、枯葉がたくさん落ちていけないよなー。」

「しっかり、落ち葉を掃除してくださいよ。」

「掃いても、掃いても、きりがないよ。」

「おまえさんは、それが仕事ですからね。」

「はいはい、分かっているよー。」

「あれ。風向きが変わりましたね。」

「ああ、もう。煙たくていけないよ。」

「手を休めて、芋でも食べませんか。」

「それじゃ、ごちそうになろうかね。」

「熱いのがおいしいですよね。」

「だけど、なんだか、煙の臭いがするね。」

「お爺さん。それが、また、いいところですよ。」


(参考)
 「しもーくせ」は「しもりくさい」のことです。「しもり」の「り」が長音化するのは以前にも書いたとおり出雲弁の特徴の一つです。
 さて、「くさい」が「くせ」となるはどうしてでしょうか。「くさい(kusai)」の(ai)が(e)に変化して「くせ(kuse)」となります。他に、「高い(takai)」→「たけ(take)」など、たくさんあります。
 こうした変化は(a)と(i)のように母音が重なったときに見られる出雲弁の特徴の一つです。「寒い(samui)」→「さみ(sami)」、「遠い(tooi)」→「とえ(toe)」などにも現われます。

(奥野栄)

 

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