爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)
第四十話 へそが、あかんべ、すーほど、よばれる(12月22日掲載)
【出雲弁】
爺「ババ。今年も、年越しそば、うたな、えけんの。」
婆「あげでしね。」
爺「そば粉は、用意して、あーかいの。」
婆「まんだ、はえでしじね。そばは、ひきたてが、えっち、まい、でしけんね。」
爺「ことしゃ、え、ぐあいに、切って、ごいたよ。」
婆「おまえさん、こそ、まんまるに、のばかいて、ごしなはい、ませよ。」
爺「去年は、ふて、やちや、ほせほせ、やちが、あって、まいこと、ゆでられん、だった、がのー。」
婆「そげん。モミジの、葉っぱ、みたいに、あっち、くびれー、こっち、くびれーに、のばかいて、まったてて、まいこと、切れ、しません、わね。」
爺「こないだの、”出雲全国そばまつり”で、よー、みちょいたけん、ことしゃ、せわね、わや。」
婆「”わんこそば”、くわな、えけん、てて、何時間も、ならんどらいたが、よー、そぎゃん、時間が、あーましたね。」
爺「あげ、あげ。あねさんが、なんぼでも、えて、ごすだけん、へそが、あかんべ、すーほど、よばれたが。」
【共通語】
爺「お婆さん。今年も年越しそばを打たなくてはいけないね。」
婆「そうですね。」
爺「そば粉は用意してあるかい。」
婆「まだ、早いですよ。そばは、ひきたてが一番おいしいですからね。」
爺「今年は体裁よく切ってくれよ。」
婆「おまえさんこそ、丸く延ばしてくださいよ。」
爺「去年は太いのや細いのがあって、うまくゆでられなかったよなー。」
婆「そういったって。モミジの葉のように、あっちくびれ、こっちくびれに延ばしてもらっては上手に切れませんよ。」
爺「先日の”出雲全国そばまつり”で、よく見ておいたから、今年は大丈夫だよ。」
婆「”わんこそば”を食べないといけないといって、何時間も並んでおられたけど、よくもまあ、そのような時間がありましたね。」
爺「そう、そう。そば屋のおねえさんがいくらでも入れてくれるから、お腹いっぱいにごちそうになったよ。」
(参考)
「へそが、あかんべ、すーほど、よばれる」は”お腹いっぱいにごちそうになる”という意味です。お腹いっぱい食べるとへそが出てきます。出雲の人々はユーモアたっぷりに表現するのが得意です。
(注釈)
都会でも”そば打ち”が、はやっているそうです。あなたも”そば打ち”に挑戦してみませんか。
今年も、ご愛読いただき、ありがとうございました。どうぞよい新年をお迎えください。
(奥野栄)