爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)

第五話 えにょば(7月8日掲載)


【出雲弁】

「おかさんが、えらい、えにょばして、出かけらっしゃったが、どこへ、えかっしゃーだいの」

「け、オジジ。おまえさんは、ふとの話を、聞いちょってだねね。よんべ、晩飯んときね”明日は参観日で通信簿とーねえく”てて、おかさんが、いっちょったがね。」

「おんおん、そげだったのー。奈緒美も、やらやっと、一学期が終わーの。」
「奈緒美は、おちに似て、えにょばに、なーじね。目鼻立ちが、おちに、そっくりだわ。」

「そげかや?おらは、おかさん似だと、おもーがの。」

「け、なに、いっちょらっしゃら。おちも、わけこら、えにょばだったらがね。」

「・・・・・・」

【共通語訳】

「お母さんが、たいそう着飾って出かけられたが、どこへ行くのだろうかね。」

「もう、お爺さん。おまえさんは人の話を聞いていないね。夕べ、晩飯のときに”明日は参観日で通信簿もらいに行く”と、お母さんが言ってたでしょうが。」

「はいはい、そうだったね。奈緒美もやっと一学期が終わるね。」

「奈緒美は私に似て美人になるよ。目鼻立ちが私にそっくりだよ。」

「そうだろうか?私はお母さん似だと思うがねー。」

「もう、なに言っているの。私も若いころは美人だったでしょうが。

「・・・・・・」



(注釈) 
 この春、小学校に入学した孫の参観日のようです。普段とは違う「えにょばした」お母さんを見つけVサインを出している子がいます。

(参考)
 「えにょば(名詞)」は「良い女房」がなまったもので、”美人”とか”気だてのいい女性”という意味があります。「えにょばする」と動詞になると、”着飾る”とか”化粧する”という意味になります。「にょぼう」を使った出雲弁として、「にょ
うばんこ(女の子)」、「にょうばし(女の人)」があります。

(奥野栄)

 

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