爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)


第六十九話 とらげる(2004年3月14日掲載)

【出雲弁】

「オジジ。ツクシがでちょーましたじね」

「そげかや。え、天気だがのー」

「布団、干しましょや」

「おんおん。そげだのー」

「コタツ、とらげましょかねー」

「まんだ、さむ日が、あーかもっしぇんじ」

「なに、いっちょらっしゃら。も、じき、彼岸さんですがね」

「となーは、まんだ、だいちょってだがや」

「あしこは、おっきゃん、オババが、おらいけんですわね」

「も、ちょんぼし、様子みたが、えことねだらのー」

「オジジ。とらげーと、きさきさと、しますじね」

「あいけ、おまえも、いーだいたら、聞いてだねだけんのー」

「ワッハッハ。そーが、わかっちょーなら、さっさと、とらげなはいませ」


【共通語訳】

「お爺さん。ツクシが出ていましたよ」

「そうかい。いい天気だよなー」

「布団を干しましょうよ」

「はいはい。そうだねー」

「コタツを片付けましょうかねー」

「まだ、寒い日があるかもしれないよ」

「何をいってるの。もうすぐ彼岸さんですよ」

「隣は、まだ出しておられるよ」

「あそこは、大きいお婆さんがおられるからですよ」

「もう少し、様子をみたほうがいいじゃないかい」

「お爺さん。片付けるとさっぱりしますよ」

「ああもう、おまえも言い出したら他人の意見を聞かないからねー」

「ワッハッハ。それが、分かっているなら、さっさと片付けてくださいよ」


(解説)
 3月も中旬になると日差しの暖かい日がありツクシが春を告げます。しかし、彼岸までには寒い日もありコタツと分かれる決心がつきません。

(参考)
 「とらげる」は「かたづける」とか「整理整とんする」という意味です。語源は「取り上げる」で「とらあげる(広島県豊田郡大崎上島)」「とりあける(愛媛県)」「とりゃげる(広島県佐伯郡)」と言う地域もあります。

(奥野栄)

 

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