爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)
第七十九話 のーらん(2004年8月8日掲載)
【出雲弁】
婆「ミンミンゼミがにぎやかですがねー」
爺「きょうは、わけてのくがのー」
婆「じっとしちょっても汗が出ましがー」
爺「よーね、のーらんしーやなわ」
婆「ひーめしは、ソーメンにしましょかねー」
爺「そーが、えのー」
婆「おっその畑からキーリとシソ取ってきてごしなはい」
爺「この、のくたらしに畑やなんか、えかいせんわやー」
婆「なにいっちょらっしゃら。おちゃ、ふおこいて、ゆでな、えけませんけんね」
爺「分かったがや。えんま、えきてくーがや」
婆「あらら、ネギもあーませんわ」
爺「も、ほかに、用事はねかいの」
婆「もどーしに、井戸から、ちべて、水くんで来てごしなはいね」
爺「ソーメンくーのも楽だねのー」
【共通語訳】
婆「ミンミンゼミがにぎやかですよねー」
爺「きょうは、特に暑いねー」
婆「じっとしていても汗が出ますよー」
爺「もう、狂いそうだよ」
婆「昼食はソーメンにしましょかねー」
爺「それが、いいねー」
婆「後ろの畑からキュウリとシソを取って来てください」
爺「この、暑いのに畑には行けないよー」
婆「何を言っているの。私は火を起こしてゆでなければならないのですよ」
爺「分かったよ。いま、行って来るよ」
婆「あれあれ、ネギもありませんよ」
爺「もう、ほかに用事はないかい」
婆「帰るときに井戸から冷たい水をくんで来てくださいね」
爺「ソーメンを食べるのも楽じゃないねー」
(解説)
盆までの2〜3週間は「あちて、のうらんしーやな日」が続きます。食欲が落ちたときはのど越しのいいソーメンが最高ですが栄養のバランスに気を付けましょう。
(参考)
悩乱(のうらん)は平安初期(約1,200年前)の仏法説話集「日本霊異記(にほんりょういき)」に載っている言葉だそうです。広辞苑や高校生などが使う国語辞典にも載っていますが「気散じ(きさんじ)」などとともに出雲弁としたい言葉の一つです。
(奥野栄)