爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)


第八十二話 ほがみ(2004年9月26日掲載)

【出雲弁】

「サンマは、こげやって、しちりんで焼いたが、えっちまいがのー」

「宣伝カーがあるいちょーますが、なんですだらかねー」

「秋の交通安全週間だげなじ」

「むかしゃ、ダイハチやリヤカーだったね、えまごらダンプがでれんでれんいっちょーますだけんね」

「ババ。となーのわけしは、ほがみ運転して車ぶつけちゃったげなじ」

「あらら。どげな具合ですかいね」

「あいまちは無かったみたいだども、車がえけんやんなったげなわ」

「なんで、また、しゃんこと」

「携帯電話が鳴って、出らかと思ってほがみしたら、け、前の車にコッチンコしたげなわ」

「あいら。そーでも、あいまちがなて、なんよーでしたね」

「『ほがみ運転事故のもと』てて、よー言ったもんだがの」

「オジジ。サンマがくぎれちょーますじね。ほがみさんこに、しゃんしゃんみちょってごしなはいよ」


【共通語訳】

「サンマはこうしてしちりんの火で焼いたのが一番おいしいよなー」

「宣伝カーが走っているけど何でしょうかねー」

「秋の交通安全週間だそうだよ」

「昔は大八車(だいはちぐるま)やリヤカーだったのに、今ごろはダンプカーが大きな音をたてて走っていますからね」

「お婆さん。隣の若い人は脇見運転して車に追突したそうだよ」

「あらまあ。どんな様子でしょうか」

「けがは無かったようだけれども車が駄目になったそうだよ」

「どうして、また、そんなことを」

「携帯電話が鳴ったので出ようかと思い脇見したら、つい、前の車に突き当たったそうだよ」

「あらあら。それでもけがが無くてなによりでしたね」

「『脇見運転事故のもと』とは良く言ったものだよね」

「お爺さん。サンマが焦げていますよ。脇見せずにしっかり見ていてくださいよ」


(解説)
 秋の交通安全週間が始まります。”となーのわけし”は携帯電話に気を取られ追突事故だったようです。運転中の携帯電話の使用は非常に危険です。

(参考)
 「ほがみ」は脇見のことで外見(ほかみ)が変化したものです。出雲地方を中心に使われており鳥取県では「ほかみ」「ほかめ」と言うことが多いそうです。

(奥野栄)

 

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