爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)


第八十三話 さばー(2004年10月10日掲載)

【出雲弁】

「けさがた、となーのわけしが、駅、向かって歩いちょらいましたじね」

「よんべ、飲んで帰っちゃっただらかのー」

「おちんわけもんも、車が、たんびに、会社で泊まーますがねー」

「おい、ババ。となーは車があーじ」

「あらら、ほんとですね。そげいわ、ここんとこ、車に乗っちょらいとこ見ませんわ」

「警察のだんさんに、運転免許、とーあげらいちゃっただらかのー」

「待ってごしなはいよ。こないだ、夫婦(めおと)づれでウオーキング教室にえかいたてて、聞きましたじね」

「ほーん、そげかや。まんだ、わけことだね、かわきやまいでもさばっただらかのー」

「オジジ。そげだねわね」

「なんがや」

「健康づくりで、歩いちょらいますわね」

「健康づくりてて、さ、なんかや」

「あいけ、普段からウオーキングしたり、食事に気ちけたーして、まめんなーことですわね。おまえさんも、たまにゃ、役場の健康教室にいきなはいませよ」

「ババ。なんで、おらが、怒られなえけんかいのー」


【共通語訳】

「けさ、隣の若い人が駅に向かって歩いていましたよ」

「夕べ、飲んで帰ったんだろうかねー」

「わが家の若い者も、車がしょっちゅう会社で泊まりますよねー」

「おい、お婆さん。隣は車があるよ」

「あれまあ、本当ですね。そういえば、このところ車に乗っておられるところを見ませんよ」

「警察官に運転免許証を取り上げられただろうかねー」

「待ってくださいよ。この間、夫婦でウオーキング教室に行かれたと聞きましたよ」

「ふうん、そうかい。まだ若いのに糖尿病にでもなっただろうかねー」

「お爺さん。そうじゃないですよ」

「なにがかい」

「健康づくりで歩いておられますよ」

「健康づくりって、それは何だい」

「ああもう、普段からウオーキングをしたり、食事に気を付けたりして、健康になることですよ。おまえさんも、たまには役場の健康教室に行きなさいよ」

「お婆さん。どうして、おれが怒られなけばいけないのかねー」


(解説)
 毎年、10月は「健康づくり月間」です。この月間に併せて各地でウオーキング教室などが行われます。あなたも参加してみませんか。

(参考)
 「さばる」には@手すりにさばる(触る)A手紙を書きさばる(始める)B悪霊や病気がさばる(取り付く)などの意味があります。

(奥野栄)

 

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