爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)


第九十一話 よつかえん(2005年2月13日掲載)

【出雲弁】

「ババ。たこ糸、知らんかや」

「おちゃ、しーませんがね」

「拓也がのー。たこ揚げができんてて、はいごんしとったじ」

「こな子も、おまえさんと一緒で、しまつがわりだけんねー」

「そげかー」

「そげいわ、奈緒美があや取りのひもがねかてて、縁側、ごそごそ、しとーましたじ」

 ・・・・・

「あった、あった。ババ。あったわー。だどものー。よつかえん、ことんなっとーじ」

「なんごとですかいね」

「縁側ね、あったどものー。ここ見てみた」

「あらら、がいね、もちらかいてー」

「奈緒美は、にょーばんこだね、ざまくだのー。だーね、似ただいのー」

「だーだもんでね。おまえさんですわね」

「おんおん。わりこた、みんな、おらに似とーけんのー」


【共通語訳】

「お婆さん。たこ糸を知らないかい」

「私は知りませんよ」

「拓也がねー。たこ揚げができないといって騒いでいたよ」

「あの子も、おまえさんと一緒で後片付けをしないからねー」

「そうかい」

「そういえば、奈緒美があや取りのひもがないかといって縁側をごそごそしていましたよ」

 ・・・・・

「あった、あった。お婆さん。あったよー。だけどねー。大変なことになっているよ」

「なにごとですか」

「縁側にあったけれどもねー。これを見てくれよ」

「あらまあ、随分と絡みついてしまってー」

「奈緒美は女の子なのに乱雑だねー。だれに似ただろうかねー」

「だれでもありませんよ。おまえさんですよ」

「はいはい。悪いことはみんな私に似ているからねー」


(解説)
 お婆さんがあまりにもこき下ろすものだから、お爺さんはいじけてしまったようです。
 たこ揚げ、こま回し、あや取り、お手玉などで遊ぶ子どもを見かけなくなりました。昔の遊びを子どもたちに伝えていくことも必要かもしれません。

(参考)
「よつかえん」は「寄りつかれない」が語源で近寄れない、大変なこと、という意味で使われます。「ざまく」は粗雑とか乱雑いう意味です。

奥野栄

 

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