爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)


第九十五話 タケノコが汗かく(2005年4月10日掲載)

【出雲弁】

「戻ったじ。茂さんとこ寄ったら、タケンコ、ごいちゃってのー」

「おまえさんもかねー。おちも、まーましたじね」

「もらーやんなーと、えっしょんなーがのー」

「ありがたいことですがね」

「ババ。ここ、タケンコの煮しめが汗かいとーじ」

「あらら。ほんな、捨てましょかね。まんだ、なんぼでもあーますけん、世話やいて食ってごしなはいね」

「しゃんこといったてて、毎日タケンコの煮しめで胃の調子がおかしんなーわ」

「きょうは、ちょこし、ちがーますけんね」

「ソサバでも出てくーかいの」

「タケンコご飯ですけん、えっぱい、食って、ごしなはいよ」

「なんだー、たいした、かわーせんがや」

「しゃんこといーと、バチばちがあたーましじね」

「おらは、タケンコねあたーやなわ」


【共通語訳】

「帰ったよ。茂さんのところへ寄ったらタケノコを頂いてねー」

「おまえさんもですか。私も頂きましたよ」

「もらうようになると一緒になるよなー」

「ありがたいことですよ」

「お婆さん。このタケノコの煮しめは腐っているよ」

「あらまあ。それじゃ、捨てましょうね。まだ、いくらでも有りますので頑張って食べてくださいよ」

「そんなこといったって、毎日タケノコの煮染めで胃の調子がおかしくなるよ」

「きょうは、少し違いますからね」

「塩サバでも出てくるかい」

「タケノコご飯ですから、たくさん食べてくださいよ」

「なんだ、あんまり変わらないじゃないか」

「そんなことをいうとバチがあたりますよ」

「おれはタケノコにあたりそうだよ」


(解説)
 時季になるとあちこちからタケノコをもらいます。竹山を持っている人が冗談で言っていましたが、最盛期にタケノコを持って歩いていると人が避けて通るそうです。

(参考)
 「汗をかく」は共通語で、表面に水滴が生ずる状態をいいます。出雲地方では食物が腐敗して表面に水滴が生ずる状態にも使います。

奥野栄

 

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