爺と婆の世間話
(山陰中央新報セールスセンター発行の「りびえーる」に掲載したものです。)
第九十七話 みりんぼ(2005年5月8日掲載)
【出雲弁】
婆「オジジ。ボタンが見事に咲きましたねー」
爺「あげあげ、ことしゃ、わけて、見事だがのー」
婆「きょねんは、ちんがちんが、しとーましたにねー」
爺「大根島のおばさんが、肥やしが足らんだねかてて言っとっちゃったが、ほんとだったのー」
婆「そげいわ、ここんとこ、顔が見えませんねー」
爺「黄色のボタン、持って来てごすてて、言っとっちゃったねのー」
婆「おまえさんは、みりんぼで、じきかわいますけん、じょーつけさんだにねー」
爺「ババ。おまえだてて、シェンベ屋のおばさんが、来ちゃったとき、みそシェンベだの、ゴマシェンベだの、みーもんごて、買っとっちゃったじ」
婆「おちのは、孫らちの、おやつですけんねー」
爺「こないだ、となーのババと、バリンバリンいわせて、食っとっちゃったがや」
【共通語訳】
婆「お爺さん。ボタンが見事に咲きましたねー」
爺「そうそう、ことしは、特に見事だよなー」
婆「きょねんは、貧相にしていましたのにねー」
爺「大根島のおばさんが、肥やしが足らないじゃないかと言っていたが本当だったねー」
婆「そういえば、このところ顔が見えませんねー」
爺「黄色のボタンを持って来ると言っていたのにねー」
婆「おまえさんは、見たら欲しくなってすぐに買う、上得意なのにねー」
爺「お婆さん。おまえだってセンベイ屋のおばさんが来られたとき、みそセンベイ、ゴマセンベイ、見るもの全て買っていたよ」
婆「私のは孫たちのおやつですからねー」
爺「こないだ、隣りのお婆さんとバリバリいわせて食っていたじゃないか」
(解説)
ボタンといえば大根島、年間300万本の苗を出荷するそうです。大輪の黄色いボタンは貴婦人の薫りが漂っています。
(参考)
「みりんぼ」とは見たものは何でも欲しがる人のことで、主に出雲平野で使われている言葉のようです。「ちんがちんが」は貧相とか弱々しい、「じょーつけ」は上得意、「みーもんごて」は見るもの全てという意味です。
奥野栄