出雲地方の慣用句


 

 

 

 


たー さかな
[樽料 魚料]


(説明)

祝宴へ持参する金包み(樽料 肴料)です。

最近は婚礼も棟上も ただ「御祝」一本になりました。


(用例)

建瑞ほどではえけん。よばれーけん たーさかなも包んでごいた。

(用例訳)

建瑞だけではいけない。祝宴に招かれているから樽料・肴料も包んでくれ。

 


森山[湖陵]

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えっぱぇちゃ は えけんわね
[一杯茶はいけないよ]


(説明)

急ぎの客にお茶を勧めるときの常套句でした。

一杯茶、一膳飯、一杯汁は、仏様のお供えで縁起が悪いとされていました。

一杯茶同様、例え満腹の時でも一膳飯を忌み嫌い、二杯目のお茶碗にほんの一口添えて食べさせられたものでした。
 


(用例)

そげん おばさん なんぼ えそがしてて えっぱぇちゃ は えけんわね おちらとして もーえっぱぇ のんで ごしなぇ。

(用例訳)

そんなにおばさん いくら忙しいからといっても 一杯茶は いけませんよ ゆっくりして もう一杯 飲んでくださいよ。


 


f-k[加茂]

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おしまず、おしまず
[
惜しまない 惜しまない]


(説明)

子供の頃慌てて食事をしてむせると、祖母が仰るように「おしまじ(ず)おしまじ(ず)」と‘さんのじ’を軽く叩いてくれました。

ひとの食うものを「惜しまない 惜しまない」の意だと言っていた記憶があります。 /森山[湖陵]
 


(用例)

食事中にむせる人がいると、周りから「おしまず、おしまず」 と声をかけました。

(用例訳)

「惜しまない 惜しまない」


 


遠藤[大東]
 

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きつね まんのせたやな
[狐を馬に乗せたような]


(説明)

落ち着きのない人。

厳粛な式典などにキョロキョロしたり、寄り合いなどでは話に一貫性がなく、いつもソワソワしている人の例えです。

猿か犬でもよさそうですが、何故狐なのか解りません。今もつかいます。
 


(用例)

隣のおっつさんは あれしみたーこれしてみたー ほんねきつねまんのせたやな しだ。
 

(用例訳)

隣の小父さんは あの仕事したりこの仕事したり 本当に落ち着きの無い人だ。
 


森山[湖陵]

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ちんがくしゃみしたやーな顔
[チン(犬)がくしゃみをしたような顔]

(説明)

目、鼻、口を一箇所に集めたような醜い顔


(用例)

ありゃー、ちんがくしゃみしたやーな顔だが。


(用例訳)

あいつは、目、鼻、口を一箇所に集めたような醜い顔だよなー。


児玉[横田]

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えかさま たこさま あしはっぽん
[如何様 蛸さま 足八本]

(説明)

【えかさま】の「えか」(出雲訛りで烏賊)と「蛸」とをかけた言葉遊びで、なにかの拍子に「えかさま(なるほど)」といった途端に、この言葉を囃し立てた。

【えかさまたこさま】は、泉・辞書登録ずみで、「なるほどなるほど」と聞き入る時の慣用句にも使われた。
 


(用例)

悪童A   カーブはの こげなえね にぎーだが そげせな まがーへんは な

悪童B   えかさま の

他の悪童 (一斉に)えかさま たこさま あしはっぽん   

 

(用例訳)

悪童A   (野球の)カーブはね このように握るんだよ そうしないと曲がりはしないよ

悪童B   なるほど ね

他の悪童 (一斉に)如何様 蛸さま 足八本用 


f-k[加茂]

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げなげなばなしはおそだげな
[伝え聞いた話(うわさ話)は嘘だそうだ]

(説明)

【げなげな話】の「げな」と、【おそ(嘘)だげな】の「げな」をかけた言葉遊びで、「〜だげな」と得意げに噂話などを話し出した悪童を、この言葉でけなして、たしなめたりした。

【〜げな】(泉・辞書登録済み)は、古語の助動詞「げな」で、その様子である意「〜らしい」と、伝聞を表す意「〜そうだ」の方言化したもの。


(用例)

悪童A   こんど こらえー しぇんせ は べっぴん だげな じ

他の悪童 (すかさず一斉に)げなげなばなしは おそだげな


(用例訳)

悪童A   今度来られる(赴任される)先生は べっぴんだそうだよ

他の悪童 (すかさず一斉に)げなげな話は嘘だそうだ


f-k[加茂]

 

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よんだがちゃがね
[呼んだが お茶がない]

(説明)

主に、悪童の言葉あそび。

用事も無いのに相手の名前を呼んでおいて、返事をしたらこの言葉を浴びせ返しました。

出雲では、お茶や食事に人を招くことを【よぶ】といいます。

この【よぶ】と人の名を【呼ぶ】とをかけた言葉遊びです。

相手がまんまと引っかかるのを楽しみました。

大人一般も、十分なご馳走がない場合や、十分なおもてなしができない場合などに「せっかく来てもらっただーも、ヨンダガ チャガ ネハ」というような言い方で使っていました。



(用例)


     悪童A おい ○○ちゃん
     悪童B なに?
     悪童A よんだが ちゃが ね


(用例訳)

     悪童A おい ○○ちゃん
     悪童B なに?
     悪童A 呼んだが お茶が無い


f-k[加茂]

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あとのからしがさきねたつ
[後の烏が先に立つ]

(説明)

 後から来た客が先に帰る場合などに言います。共通語に、これとよく似た慣用句「後の雁が先になる」がありますが、これは「油断すれば後から来るものに先を越される(広辞苑)」ことで、語意・用法が随分違います。


(用例)


おらよー あとからきて もーえなっしゃーかや。あとのからしがさきねたちね


(用例訳)

私より後から来て もう帰るのですか。後の烏が先に立つね。


f-k[加茂]

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あとのかんさんつめ(ちめ)がんさん
[後の神さん、つめ神さん]

(説明)

 悪童数人が、【ざしき】や【まや】など、遊び場からいっせいに飛び出す時、最後の者に戸を閉めさせるために、この言葉を囃し立てました。


(用例)


(悪童たちが、部屋からいっせいに飛び出すとき)

一同「あとのかんさん ちめがんさん。(繰り返し)」

ガキ大将「あっ ○○ちゃんがドンベだ ○○ちゃん と しめてこえや」


(用例訳)

一同「後の神さん つめ神さん(繰り返し)」

ガキ大将「あっ ○○ちゃんが最後だ。○○ちゃん、戸を閉めて来いよ」


f-k[加茂]

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えちもとらじにもとらじ
[
一も取らず、二も取らず]

(説明)

 あれもこれもと狙って一物も得られない。欲を深くして失敗する様を言い、今日の共通語【虻蜂取らず】の同意語です。


(用例)


大学受験を控えた孫にオジジから・・・

「そげん たかのぞん(高望み)ばっかーしとーと えちもとらじにもとらじ ね なーじ」


(用例訳)

「そんなに 高望みばかりしていると 虻蜂取らず に なるよ」


f-k[加茂]

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まのこのただあるき
[
馬の子のただ歩き]

(説明)

子馬が仕事をせずに歩いていることから転じて役に立たないという意味に


(用例)


子供の頃 母に「まの子(馬の子)の ただ歩きだがな」と よく言われました。畑でも 買い物でも、親に まぶれさばっちょったので、きっと 鬱陶しかったのでしょう。てごにだぁ なんだぁ ならせの!って。

 

miyake[東出雲]

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ならにゃおやだせ
[成らなければ(出来なければ)親を出せ]

(説明)

未熟を笑って、老練な人などが代わる時によく使った。


(用例)


まーじ け しちかち しちかち ばっかーで。ならにゃ おやだせだわ。ちょんぼー てごして やーけん、おらの やーかた よね みとかっしゃえ よ 


(用例訳)

「本当にもう 手間取ってばかりで。成らにゃ親出せだ。少し手伝ってあげるから、俺の遣り方を よく 見ておきなさいよ」


f-k[加茂]

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えこた こねんじ
[良いことは 小人数]


(説明)

何か美味しいものがあって、少ししかない。

皆で分けると僅かだか、幸い今居るのは、ニ〜三人。


(用例)


「おい だれんも が もどーと 数が足らんじ。食ってしまわこい」
「おー やらかいて しまわこい」
えこた こねじ てて 言ーけんの」
「そげ そげ・・・」


(用例訳)

「おい 皆が 帰ってくると 数が足らないよ。食べてしまおうよ」
「おー 食ってしまおうよ」
良いことは 小人数が良いと言うからね」
「そう そう・・・」

 

松尾[湖陵]

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牛の糞ねも段々がある
[物事には序列がある]

(説明)

まだ私が若くて、職場に沢山の先輩がおられた頃の話しです。

仕事のことで私がいろいろと意見を言うと「まあ オマエは だまっちょった。 ウシのクソねもダンダン てて いいけんの」と、よく言われました。

初めて聞いたときに「さ どぎゃん 意味 ですか?」と聞きました。

「オマエは ウシのクソ 見たこと 無いかい。ボタッと落ちたクソは 下んはが ダンダン(段々)ね なっちょって 上ね向かって盛りあがっちょーだーが。そーと えっしょ で 物事ねも じんばん(順番=序列)が あー つことだわの」と教えられました。

松尾[湖陵]

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えべっさんに甘酒を供えたやな顔
[破顔一笑]

(説明)

恵比寿様はいつもにこにこしていらっしゃいます。そのうえ甘酒を供えれば・・・


(用例)


よんべの寄付のよりで話がなかなかつかんもんで、一杯やーかちことねなったら、みんながえべっさんに甘酒を供えたやな顔ねなってのー

(用例訳)

夕べの寄り合いで話がなかなかつかないもので、酒でも飲もうかということになったら、みんな笑顔になってねー

森山[湖陵]

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よーねだーまねだーあーせん
[用にも間にもあわない]

(説明)

早はやの間に合わないことです


(用例)


こなね、ものを頼んだてて、よーねだーまねだーあーせん


(用例訳)

彼に、頼みごとしても、はやはやの間に合わない

森山[湖陵]

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はやーめなら こぞめでもえー
[流行なら眼病でもよい]

(説明)
流行を追う者への皮肉をこめた言葉です。

私達の子供の頃は極端に物資不足の時代でした。

(用例)
だが物は不足でも不足なりに、着るものや遊び道具の流行があり、目あたらしいものをせがむと祖母が「はやーめなら こぞめでもえーててな、なんでもかんでも はやーめのもんにとびつくもんだない」と戒められました。

流行に飛びつくのは今も昔も変わりません。

(参考)

「こぞめ(こぞーめ)」は流行性の眼病のことです。

トラホームだったか結膜炎かはっきりしませんが、家内中や学校ではクラスの大半が感染しました。

森山[湖陵]

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さんねんじょいでにしめたいな
[ひどく汚い]


(説明)
三年間仕込んだ濃い醤油で煮しめたような酷く汚れた様子を表します。

(用例)
け、か、だーの、てのごいかいのー。さんねんじょいでにしめたいなやつだが。

(用例訳)
もう、これは誰の手ぬぐいだろうかねー。ひどく汚いものだが。

やまが[八雲]

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味噌に骨のあるやーなことを言う
[遠回しに当てつけを言う]

(説明)
柔らかな中に固いものがあることから、遠回しに当てつけを言う意味になる。

(用例)
ありゃー皮肉屋でいけんのー。何時も味噌に骨のあーやーな言い方ばっかし してからーに。だけん嫌われちょってだわ。

(用例訳)
あの人は皮肉屋でいけないね。いつも遠回しに人をあてつけるようなことばかり言われるからねえ。だから嫌われなさるよ。

児玉[横田]

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たいげしぇたもんだわ
[たいてい知れたもんだよ]

(説明)
今でも田舎へ帰った時には必ずといっていいほど耳にします。いい意味でも、悪い意味でも、「あきれた場合の表現」に使い、物を頂いたときは「恐縮した表現」になります。私はこのフルフレーズの小気味よさが実に気に入っています。

(用例)
(息子の退院祝いを貰った時)
あいけ、そぎゃんことしてもらってかーね、たいげしぇたもんだわ。だんだん。

(用例訳)
あー、もー、そんなことして戴いて何とも大変恐れ入ります。有難うございます。

今岡[加茂]

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きたやまがくらむ
[泣き出しそうな顔]

(説明)
ある日、お母さんが子どもを叱っていました。来客用に用意しておいた、お茶菓子がなくなっていたのです。時間的にもおやつの時間帯。お母さんは子どもが食べたのだと思い込みました。

「あんたが とって くったでしょーが。こら お客さんに ださかともって 用意しちょったいちだにかーに。」(貴方が とってたべたのでしょう。 これはお客様に出そうと思って用意しておいたものなのに)

と、しつこく子どもを怒っていたので、だんだん子どもは泣き出しそうな顔になっていきました。みかねたおばあさんは、

「も えだないかねー そろそろ きたやまがくらんできたじねー」(もう いいじゃないの そろそろ 今にも泣き出しそうな顔になってきたわよ)

と言って孫に助け舟を出しました。

岡田よ[斐川]

平田では「たぶっさんがくらむ」と言います。/奥野[平田]

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大きな顔をする
[ふくれっ面をする]

(説明)
”ふくれた”ときは頬が膨らんできます。出雲人の表現力に乾杯です。(^^ゞ
なお、「いばった顔つき」、「悪いことをしながら平然とした様子」は共通語でも使います。

(用例)
こなは また おっけな顔 しちょーかいのー。困ったもんだのー。

(用例訳)
あいつは また ふくれっ面を しているかい。困ったものだねー。

奥野[平田]

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炬燵とすもーとる
[炬燵に当たりっぱなしでいる]

(説明)
炬燵とがっぷり四つになって相撲をとっているのでしょか

(用例)
え わけもんが ひーひなかかー こたつとすもーとっちょって どげすーだかね ちた てごでもすーだわね。

(用例訳)
いい若者が まっぴるまから炬燵にあたりっぱなしでどうするの 少しは手伝いでもしなさいよ。

 

金沢[松江]

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ごねんのえった〜かならじかならじ
[ご丁重な〜けっしてけっして]

(説明)
慶事でお祝いを頂いたときの常套句

(用例)
この度は ごねんのえった頂戴もんをしましてね〜。も かならじかならじ こげなこと してごしなはえますなよ〜。だんだん。

(用例訳)
この度は ご丁重なお祝いを頂きましてね〜。もう けっしてけっして このようなことを していただきませんように〜。ありがとうございます。

 

金沢[松江]

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かげがめえん
[影がみえない]

(説明)
いつもいる人の姿が見えないときに使います。

(用例)
おしろの えんきょはん えらい かげがめえんやなが どげぞ あーだらか
えきてみて せんぜにゃ えけめかいの

(用例訳)
後ろの(家の)お爺さん、ずいぶん姿が見えないようだが、具合でも悪いのだろうか行ってみてあげないといけないだろうかね

KEN[八雲]

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刃研いで待つ
[はをといでまつ]

(説明)
「刃を研いで待つ」は「切ろうとして刃を研いで待つ」ということで、「手ぐすねを引いて待つ」という意味です。

(用例)
こないだの お返し(囲碁、将棋の勝敗の) しょかともって 刃を研いで待っちょったね おっつあん ざんぎょうで もどちゃーねかね。

(用例訳)
先日の(負けの)お返しをしようと、てぐすね引いて待っていたのにおじさんは残業で帰られないのですか。

KEN[八雲]

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おんだはながあえたとだいえってこん
[うんともすんとも言ってこない]

(説明)
「膿んだ鼻があえたとも〜」即ち「鼻の先のちょっとしたおできの膿が
あえたとも言わない」という表現で「うんともすんとも言ってこない」

(用例)
ぜね送ってやったね、おんだはながあえたとだいえってこんのー。あいちゃつまらんやつだのー。

(用例訳)
お金を送ってやったのに、うんともすんとも言ってこないね。あいつも愛想のないやつだねー。

KEN[八雲]

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お前の子だなし孫だなし
[お前の子でもない孫でもない〜]

(説明)
子供同志のいがみ合い言葉。喧嘩でもないが、なにか気にいらないことが生じると、次のように歌うように相手に叫ぶ投げ言葉。時には数人の合唱になることも。

(用例)
「えがえが なんだえ えがなんだえ おまえの子だなし孫だなし えんで おかかに えっちゃーけん」

(用例訳)
「いいよいいよ なにも いいよなにも お前の子でもない孫でもない 帰ってお母さんにいいつけてやるから」。

金沢[松江]

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1.しいらぼのさきばしり
2.しいらごのさきばしり

[考えのない者ほど真っ先にチョロチョロすることのたとえ
転じて=小者のお先棒かつぎ]

(説明)
 1.2.のどちらも同じ意で用いられる。地域によって違うだけである。
【しいら】とは「粃米」の「しいら」で中身がないことを表す。
つまり田んぼで「先に頭を出して伸びる稲穂」は「しいら」であることが多いことからいわれる。
それが転じて「中身のない人」「頭が空っぽの人」を嘲って云う慣用句となった。
出雲地方では主として「しいらぼの〜」であるが木次、仁多などでは「しいらごの〜」という。
これは湖陵などでいう「しいらもん」と同じく「〜ご」という蔑称の接尾語で表したものである。
 これが「しいら」の意味を知らない松江では語呂会わせで「魚のシイラ」に置き換えられ「シイラ」は子供が先頭を走り真っ先に食べられてしまう」と誤訳されて伝わっている。

(用例)
  またあのだらじがチョロチョロしちょーわ、はん、“しいらぼのさきばしり”とはこのことだわ。

(用例訳)
 またあのバカがチョロチョロしているよ、ふん、“小者のお先棒かつぎ”とはこのことよ。

金沢[松江]

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論にだえ算にだえかからん
[論にも算にもかからない]

(説明)
論ずることも算用することもできない。即ち「話しにならん」の意。「問題にならん」「箸にも棒にもかからない」の意に用いることも。

(用例)
店主「おまえやち、ものごとにゃしめちめてーもんがえーてーことがわかっちょーかや。だけん、きゃんことになーわな。もーけー、論にだえ算にだえかかったもんだねわ。ああーん !」

店員「また、だんさんのせっきょが始まったでー。はいじりかがんやにして聞いちょらえけんの」。

(用例訳)
店主「お前たちは物事にけじめがいる、ということがわかっているのか。だから、こんなことになるんだよ。えーもう、箸にも棒にもかかったもんじゃないね。あーん!」

店員「また、だんさんのお説教が始まったよ。平身低頭している風にして聞いておればいいからな」。

金沢[松江]

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聞きますりゃ、こちらさんでは
[お聞きしますと、こちら様では]

(説明)
出雲地方での祝儀不祝儀の訪問時の切り出し言葉。

(用例1)
聞きますりゃ、こちらさんでは、男んこさんが、おまれさっしゃったげねしてね、なによーのことで、こざぇんしたわねー。
こーで、かかーごさんが、出きられましただけん、ごあんどのことで、ございましょねー・・・。
(用例訳1)
お聞きしますと、こちら様では男の子さんがお生まれになったそうでして、なによりのことでございましたねー。
これで、跡取りさんがお出来になられましたから、ご安心なさったことでございましょう・・・。

(用例2)
聞きますりゃ、こちらさんのお婆さんには、とうとう、おとりなおしが、なかったげねしてね・・・、みなさんして、よー、みてあげなさぇんしたにねー・・・。
(用例訳2)
お聞きしますと、こちら様のお婆さん、とうとう、お亡くなりになられたそうでして・・・、みなさんで、よく看病してあげられましたのにねー・・・。

金沢[松江]

 

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提灯よか棒が太んなー
[提灯より柄の方が大きくなる]

(説明)
本筋より末節の方が大きくなること。即ち“本末転倒”のたとえ。

(用例)
「ちょっこー れーに きただけだね こらまー ごげん ろもろーちきなほど とび もらや よーね 提灯よか棒が太んなーますがね」。

(用例訳)
「ちょっと お礼に きただけですのに これはまー こんなに 沢山なほど お返しを 貰えば 本当に 本末転倒になってしまいます」。

KEN[八雲]

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ねんたがさばー
[眠気が差す]

(説明)
[ねんた:眠気]+[さばー:さわる、まとわりつく]=「眠気が差す」の意味で使います。

本来、人の感覚でしかない「眠気」を擬人化した、面白い表現です。
他に、「ぞんぞがさばー」(寒気がする)という言い方もあります。

(用例)
受験勉強さないけんに、ねんたがさばってさいくにならん。

(用例訳)
受験勉強をしなきゃならないのに、眠気が差してしょうがない。

(森下)

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弁当わっしぇても、傘わっしぇーな(Tel−P)
[弁当忘れても、傘を忘れるな]

(説明)
八雲立つ出雲地方は雨降りが多く、傘を忘れないように強調する慣用句です。
誰かさんは、傘より弁当が大切かも・・・(^^ゞ

(用例)
「えなげな雲が出てきちょーぢ、弁当わっしぇても、傘わっしぇーだねぢ」

(用例訳)
「変な雲が出ているよ、傘を忘れるんじゃないよ」

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はなん下からさき生まれた
[口からさき生まれた]

(説明)
はなん下からさき生まれた=口からさき生まれた→お喋り屋さん
    
    −−−を養う→生計をたてる
    −−−がたつ→口がたつ
(用例)
「おまえははなん下からさき生まれたはで、えちなんどき喋っちょーのー」

(用例訳)
「貴方は、口からさき生まれたようで、何時も喋っているね」

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まいもかぐらも終わってから
[舞いも神楽も終わってから]

(説明)
舞いも神楽も終わってから=全て終わってしまってから
出雲平野の神楽は、スサノヲノミコトの大蛇退治が主流です。(^_^)

(用例)
まいもかぐらも終わってから、しゃんこと言ったてて、どげねだい なーしぇんがや」

(用例訳)
「全て終わってしまってから、そんなことを言っても、どうにもならないよ」

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菓子めいでがっしゃい(田部)
[菓子を壊してください]

(説明)
菓子を壊す=菓子を食べる。
出雲地方の人々はこのように間接的に表現するのが得意です。(^_^)v

(用例)
「遠慮さんこね菓子めいでがっしゃい

(用例訳)
「遠慮せずにお菓子を召し上がってください」

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へそがあかんべしーほどよばれー
[臍が逆さまにめくれ出る程にご馳走になる]

(説明)
腹一杯食べると臍(へそ)が出てきます。
出雲地方の人々はユーモアたっぷりに表現するのが得意です。(^_^)v

(用例)
「飯、替えてごしなはいましぇ」

「だんだん だんだん、もー、へそがあかんべしーほどよばれーましたけん、ごっつおさんさしぇてごしなはいましぇ」

(用例訳)
「ご飯を、おかわりしてくださいね」

「ありがとうございます、もう、臍が逆さまにめくれ出る程にご馳走になりましたので、ごちそうさまをさせてください」

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のどしじふっぱってしゃべー
[喉筋が出るような剣幕で喋る]


(説明)
一生懸命喋ると、喉に筋が出ます。
出雲地方の人々は相手を観察することが上手かもしれませんね。(^ム^)

(用例)
「そげん、のどしじふっぱってしゃべらんこね、おちらとしゃーべーだが」

(用例訳)
「そんなに、喉筋が出るような剣幕で喋らずに、ゆっくりと喋ってよ」

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猿が柿嫌ったやなふー
[猿が柿を嫌ったようなふり]

(説明)
仲の良かったものが急に他人行儀になったときに使います。
由来は「猿かに合戦」だと思います。
童話を慣用句にしてしまった出雲地方の人々です。 \(^o^)/

(用例)
「そげん、猿が柿嫌ったやなふーさんこね、上がってお茶なと飲んで行きなはいましぇ」

(用例訳)
「そんなに、他人行儀しないで、座敷に上がってお茶でも飲んで行きてください」

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フナがゴミね酔ったやな顔
[鮒がゴミに酔ったような顔]

(説明)
疲れ切った顔です。
鮒が汚い川で口を開けてアップアップしている姿を想像してみてください。
出雲地方の人々の観察力には感心します。 m(__)m

(用例)
「えまんごのわけもんは、ちょんぼ田んなか仕事しても、じきフナがゴミね酔ったやな顔しー」

(用例訳)
「今頃の若い者は、少し田仕事しても、すぐに疲れ切ったような顔をする」

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足の裏をかいさめねしてせわをやく
[足の裏が裏返るように仕事をする]

(説明)
足の裏が表になってよく見えるほどによく仕事をする。
旅館の女中さんがお膳を忙しく運んでいる姿を想像してみてください。
ユニークな表現ですね。(^^ゞ

(用例)
「盆ね子や孫がかえーちーと、おちは足の裏をかいさめねしてせわをやかなえけましぇんわ。」
「おばば、ちた嫁やちねてごさしぇーだわね」
「こなまいさん、あーやちゃふさしぶーね帰ったけんてて海だ、花回廊ねえかなえけんちーもんだけん、よーいいましぇんだけん」

(用例訳)
「盆に子や孫が帰省すると、私は足の裏が表になってよく見えるほどによく仕事をしなければならないんですよ」
「お婆さん、少しはお嫁さん達に手伝ってもらったら」
「いやいや貴方、あの人達は久しぶりに帰ったといって海だ、花回廊に行かなければというものだから、そんなこととても言えませんので」

 

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