寒い冬には欠かせない、あったか〜い掘りゴタツのお話です。
これは、Tel-Pの地元、出雲市に於いては標準的というか、
どの家にも当たり前のように設置されているものなんですが。。。
出雲以外の地方では、あまり見かけられないタイプのモノらしく、
友達から珍しがられる事が多いので、この場をお借りして
改めて御紹介させていただきたいと思います。

Contents
掘りゴタツの作り方
掘りゴタツの温度調節
掘りゴタツ/ア・ラ・カルト

ここでは、Tel-Pんちのコタツをモデルに話を進めていきます。
Tel-Pんちでは、今もこの掘りゴタツが現役で活躍中です。
今時の電気ゴタツや電気カーペットもあったかいんですが、
やっぱり掘りゴタツが一番あったかい!
なんせ、直火ですから。。。


☆掘りゴタツの作り方☆

1:床の穴

 
どの家にもある、標準的な六畳間では、畳は図1のように配置されている事と思います。

<図1>

<図2>
出雲の家庭では、真ん中の畳(図1で、印のついている畳)が、図2のような形をしています。
その小さい畳をはずすと、床に深さ40〜50cmの四角い穴が現れます(図3)。冬になると、小さい畳をはずし、その位置に掘りごたつを設置するのです。
<図3>
 
マメ知識:
この床の穴は、「来待石(きまちいし)」を刳り抜いて作ったものが主流だったと思います。来待石は、宍道町来待で採れる凝灰質砂岩で比較的加工のしやすい石材です。現在は石灯籠の材料として用いられています。(By奥野)
参考:
宍道町来待ストーン
URL:http://www.miracle.ne.jp/sinji/kimachi_s/kimachi_s.html

<図4>
ちなみに、コタツの下に敷く敷物(敷き布団とでも言うのでしょうか?)も、ちゃんと真ん中に穴が開いています(図4)。
2:灰、炭、たどん
床の穴に、一番最初に入れるのは、です。
これは、掘りゴタツの温度調整に非常に重要な役割を果たします。穴の深さに対して、大体6〜7分目くらいまで入れれば良いでしょう。
 
次に、真っ赤に焼けた炭を入れます。Tel-Pの実家では、炭を焼く時に、片手鍋の底に小さい穴がたくさん開いたようなやつを使っています(図5)。
この鍋に砕いた炭を入れて、コンロにかけて焼きます(図6)。

<図6>
 
<図5>
炭が焼けたら、床の穴に入れます。
さらに、その上からと「たどん」を入れます。火を長もちさせるためです。
たどんとは?
たどんの原料が何なのか、Tel-Pは知りません(知ってる人いたら教えて下さい〜)が、まあ、炭のようなモノです、たどんって。
大きさと形は、ちょうど野球のボールくらいです。色は黒く、火をつけると真っ赤に燃えます。燃え尽きると白い灰になります。通常は、掘りゴタツの中の温度を保つために使われますが、時として、雪だるまの目玉として用いられることもあります(図7)。
 
 <図7>
炭とたどんを入れたら、金網を乗せて穴にフタをします。
この網は、コタツに当たる時にうっかり足を灰に突っ込んで火傷をしてしまうのを防ぐ為に必要な物です。
 
マメ知識:
この金網を「しきたつ」と言っていたような気がします。(By奥野)
3:やぐら、ふとん
 
コタツの下に敷く、穴開きの布団(図4)を敷きます。敷物の穴と床の穴をきちんと合わせましょう。
敷物がずれないように、四隅をピンで止めて畳に固定する家庭もあるようです。

次に、穴のサイズにピッタリのやぐら(図8)を設置します。
床の穴は、ふちにみぞがあるので、そこにやぐらの足をはめ込む形で設置します。

やぐらの上から、掛け布団をかけます。その上から、カバーをかけます(布団を汚さないため)。

 
<図8>

これで完成!
 
 
<図9>掘りゴタツ完成の図
 
<図10>掘りゴタツ断面図

さて、ここまで読んだ方の中には、
「コタツの中で、足が網焼き(炭火焼き)になるんじゃない?」
と思われた方もいらっしゃることでしょう。
でも、不思議な事に、足が焼けることはないんです。
ほんとに不思議。。。

☆掘りゴタツの温度調節☆

1:熱過ぎる時

炭やたどんが燃え過ぎています。上から灰をかぶせましょう。
でもあまりたくさんの灰をのせると、冷め過ぎたり、火が消えてしまうので注意しましょう。
2:ぬる過ぎる時
灰の中に埋もれている炭やたどんを掘り出しましょう。
炭やたどんは燃え尽きると灰になってしまいます。火種を絶やさないように、定期的に炭やたどんを追加します。
3:お出かけ前、夜寝る前
長時間の外出や、就寝前には、コタツの中の炭やたどんに、しっかりと灰をかぶせておきましょう。つまり、火のついた炭やたどんを灰の中に埋めてしまうのです。火のついた炭やたどんが顔を出したままの状態で長時間放置しておくと、火事の原因になります。
外出先から戻ったら、灰を掘ればまた火が復活します。
 
マメ知識:
たどんとか炭とかを総称して「熾き(おき)」と呼びます。炭やたどんが赤く熾(おこ)っている状態のものだと思います。昔は炭を用いる方が多かったような気がします。(By奥野)
そう言えば、コタツの中の火が消えてしまった時、「熾きが無くなった」などと言いますね。(By Tel-P)

灰を掘ったり埋めたりする時は、
火箸やスコップみたいなの(名前が分からん)を使います。
どちらも金属製なので、たまに熱くなっていて
触ると火傷しそうになることもあります。

 
マメ知識:
この、スコップのような物の名前は、「じーの(十能)」と言います。(By奥野)

☆掘りゴタツ/ア・ラ・カルト☆

1:コタツ板

お茶を飲んだりご飯を食べたりする時は、上からコタツ板を乗せます。
コタツ板の裏面はフェルト地(緑色)になっているので、家族でトランプや花札、麻雀などをやる時はコタツ板を裏返して使います。
2:洗濯物
出雲は日本海側に位置しているため、冬は雪が多く、洗濯物が外に干せなかったり、乾きにくかったりします。
そんな時は、やぐらの上に湿った洗濯物を乗せます。こうすると、す〜ぐ乾いちゃいます。
3:タブー
出雲の掘りゴタツは、その中で、炭やたどんが燃えています。紙切れや布きれなど、燃えやすいものをうっかりコタツの中に落としたりすると、たちまち火がついて、火事になってしまいます。だから、コタツ付近で紙を切ったり布を切ったりするのは厳禁です。爪を切るのもいけません。
お正月のしめ飾りや「こより」を作る時も、コタツから離れてやっています。

Tel-Pは小学生のころ、図工や家庭科の宿題をコタツでやっていて叱られました。

4:換気
くどいようですが、掘りゴタツの中では炭やたどんが燃えています。そして、一酸化炭素が発生しています。こまめに布団をめくって、コタツの中の換気をする必要があります。
5:せ、せまい!
冒頭の(図2)からもお察しいただけるかと思いますが、この掘りゴタツの大きさは、畳の1/8ほどです。一畳が大体、180cm×90cm位だとすると、コタツは45cm四方ほどの大きさになります。
体の大きい人や大家族の団欒には、ちょっときついモノがあります。
6:保温
Tel-Pんちだけかも知れませんが、天津甘栗や焼き芋、甘酒などをコタツの灰に埋めて保温することがあります。
7:冬が終わると。。。
やぐらなどを外し、床の穴から灰を全て取り除き、また畳でフタをします。

いかがでしたか?
出雲の(ってゆーかTel-Pんちの)掘りゴタツについて
分かっていただけましたでしょうか?
掘りゴタツに興味の湧いた方は、冬に、
出雲地方に古くからあるお宅を訪ねてみると良いでしょう。
最近建った、新しい家屋には、掘りゴタツは無いようです。

 
マメ知識:
掘りごたつは、国語辞典に載っていますから全国的に有ったものではないでしょうか。電気ごたつの普及とともに見られなくなっただけかもしれませんね。以前は鳥取市近郊でも使用していたそうです。(By奥野)
 

制作者:Tel−P

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