危険だ!ヨッシー君!!(前編)








あぁ〜ヨッシー・・・

何故に君はそうなのか・・・

何をしても俺には分からない・・

どうして結末がそうなるのか・・・

彼の破天荒な話をご覧ください・・・








俺「あ〜・・暑いな・・・今日は降るのかな・・・妙に蒸せる・・・」


俺はそう独り言を言い、部屋の冷房を入れた。

昔懐かしい窓枠に取り付けるタイプの冷房・・・

スイッチを入れるとブーンと音を立てながら冷たい空気を送り始めた。

曇り空で夕日は出ていない・・・厚い雲に覆われた空は段々と暗くなり始めていた。


俺はジーパンに半袖の黒のTシャツ、その上から赤のチェックの半袖のシャツと言った格好で、一息つくために畳の上に胡坐を書いてタバコに火をつけた。

するとそこに自宅の電話が鳴った。

俺は顔をしかめて渋々台所にある電話機に向かう。

受話器に手をかけた時何だか嫌な予感がした。

きっとあいつだ・・・そう思いつつ静かに受話器を持ち上げ耳に当てる。


俺「・・・もしもし・・・」

「おう。俺や。」


この口調と最初の言葉で全てを察した俺はため息をついた。


「もしもし?どうした?ため息なんぞついて。」

俺「お前からの電話はいつもろくでもないことばかりだからな。」

「光栄に思え。わざわざかけてやってるんやぞ。」

俺「やかましわ!で?今日は何の用だ?まぁ師匠が電話してくるってことは暇だから遊ぼうってことしかないだろうけどな。」

師匠「違う。忙しいけど遊んでやろうって話や。」

俺「忙しかったんならわざわざ俺と遊んでくれなくてもいいよ。全く。俺は仕事を終えてだな・・・」

師匠「暇なんだろ?今からそっちに行く。」

俺「あのな〜・・・俺はこれからゆっくりとする所なの!」

師匠「お前に選択の余地はない。行くから時間見計らって降りて来い。」

俺「もし、仮にだ。本当に用事があったとしたらどうする?」

師匠「そっちに行く」

俺「なんでやねん!それはともかく俺降りるのか?部屋で遊ばないのか?」

師匠「おう。出かけるぞ。」

俺「どこに?」

師匠「その辺」

俺「はぁ?良く分からんな。まぁ、いいわ。金は持って行った方がいいのか?」

師匠「おう。俺にくれ。」

俺「なんでお前にやる為に金を用意しないといけないんだ!」

師匠「ないから。」

俺「俺もないわ!」

師匠「俺よりある。」

俺「疲れるなぁ〜・・・分かった、分かった。とりあえず金は持って行ったらいいんだな?じゃ、とりあえず見計らって降りて行くわ。」

師匠「おう。待っておけ。着いたら歓迎しろ。」

俺「へいへい・・・」


受話器を置いた俺は、自分の部屋に戻り机に置いてあった時計を見た。


夜の7時前か・・・着くのは7時30分くらいかな・・・


そう考えた俺はとりあえず中途半端な待ち時間を持て余さない様に何回か読んだ漫画本を何冊か本棚から取り出し、座ってタバコを吸いながら読み始めた。

俺は本を読み始めると集中してしまう・・・あっと言う間に30分になっていた。

俺は慌てて1Fの駐車場に行き、辺りを見回して師匠が来てないのを確認すると、ジッポでタバコに火をつけた。

ジッポで火をつけた時の香りが鼻をくすぐる。

外はジメジメしていて気持ち悪い。

空を見上げながら煙を吐き、タバコを地面に落とし足で踏み消した。

雨降らなければいいのになどと考えてると一台の車が俺の前に止まった。

助手席の窓が開く。

師匠が顔を出した。


師匠「おっす。」

俺「おっす。あれ?助手席?」

師匠「おう。今日はこいつの運転や。」


俺は運転席を覗くようにかがんだ。

そこには・・・






目が細く・・・


顔の一部が突出して・・・




笑い方が素敵な・・・





そう・・・運転席にはヨッシーが座っていた。

俺を見たヨッシーが「ムフフ」と笑った。



いつもの通り気持ち悪い・・・



俺「あ〜・・・え?ヨッシー??まさか・・・」

師匠「おう。そうや。こいつの運転でドライブに行くぞ。」

俺「すまない。俺自殺志願者じゃないので失礼するわ。」

ヨッシー「心配するな。ムフフ!真っ直ぐ前に走るよ!」

俺「真っ直ぐあの世には行かないだろうな。」

師匠「まぁ、その時はその時や」

俺「マジで?」

師匠「おう。大真面目や。行くぞ。」

俺「え〜・・・」


俺は助手席のドアを開き何とも言えない心境で座席に座る。

そしてヨッシーを見ると・・・何故か違和感を覚えた・・・

何かがおかしい・・・引っかかるが何が原因か分からない・・・

見られてるのを察してかヨッシーは俺見て笑顔で言った。


ヨッシー「よし。行くぞ。」


マニュアル車だ。ギアをバックに入れる時顔ごとシフトを見ながらRに入れる・・・

そして・・・



ブゥーーーーン!!




俺「おい!!」

ヨッシー「しまった。ふかしすぎた!」

俺「行き成り全開でバックするな!怖いやろ!」

師匠「あはは!!良い感じだな!」

俺「あほか!」

ヨッシー「ムフフ!良い感じやろ!」

俺「本当に大丈夫かよ・・」



何度か切り返しをしながら何とか舗道に出る。



俺「あのさ・・・車ってこんなにガクンガクンするものだっけ?」

ヨッシー「俺のテクニックや。」



俺はあまりにくだらない返事に愛想をつかし無言になる。

車の流れはスムーズだった・・・

5分ほど走り左手には川が見え、その向こうには建物の明かりが灯っている風景になる・・・

俺はその風景を頬杖をつきながらしばらくぼーっと見ていたが、無言の車内にいるためか少し睡魔に襲われた。

その時・・・




師匠「おい!J.J!!寝てないだろうな?」

俺「うん?そんな訳ないだろ。起きてるよ。」

師匠「嘘や・・・静かになって寝息が聞こえてきたけど、外を見てた振りして寝てたやろ!」

俺「違うって!外を見てたんだよ。」

師匠「おい!ヨッシー!!こいつ寝てたよな!」

ヨッシー「うん?」


そう言って俺を見る・・・

俺はヨッシーの太ももを思いっきり叩いた!


ベシッ!!


ヨッシー「いった〜〜!!!」

俺「顔ごとこっちを見るな!!車体が左寄りになったぞ!危ない!!前を見ろ!!!」

ヨッシー「まじか!危ないな!ムフフ!」

俺「ムフフじゃない!師匠もヨッシーに話かけるな!!」

師匠「お前が寝るからや。」

俺「あほか!お前こいつと一緒に死にたいのか?」

師匠「死なばもろ共って言うやろ。」

俺「お前はあほやッ!!」

師匠「そ・・・そんなストレートに言わんでも・・・」

俺「お前俺とヨッシーと一緒に死んで本当にそれで本望なのか!」

師匠「一人でなければ・・・」

俺「マジかよ・・・しかも本気で言うな!」

ヨッシー「心配するな!死ぬ時は一瞬やよ!!ムフフフ!!!」

俺「そういう問題じゃない!俺は嫌だぞ!!彼女がいてれば、その人と死ぬなら本望だがこんなつまらんことでは死にたくない!!」

師匠「まぁまぁ・・・人間何が理由で死ぬか分からんもんや。」

ヨッシー「そうそう。それに大丈夫やって!死ぬことはないやろ。軽く事故するかも知れないけど。」

俺「かなり怪しいんだが・・・」


信号が赤になり車は止まる。


師匠「おい・・・ヨッシー。」

ヨッシー「ん?」

師匠「お前それで後ろ見えてるか?」

ヨッシー「何が?」

師匠「いや・・バックミラーの向きおかしいぞ・・・」

ヨッシー「ほんまや。分からんかったわ。」

師匠「お前今まで見てなかったんか!」

俺「中々ファンキーやな・・・」


信号が青に変わり車は動きだす。

しばらく走られせて行く内に緑が身近に感じた・・

良くあたりを見回してみると細くくねった山道を走っていた。


俺「あのさ・・・一つ聞きたいんだが・・・」

師匠「いくらくれる?」

俺「これって何か目的があって走らせているのか?山に入ったようだが・・・」

ヨッシー「うんにゃ」

師匠「そういえばさ。この辺って最近事故があったみたいやぞ。確かこの山道に入る前にあった交差点もそうだったな。」

ヨッシー「そうなんや。」

師匠「おう。衝突で3台くらい巻き込んだらしい。」

ヨッシー「それは怖いな〜!ムフフ!」

俺「そんな不吉な話はやめろ!わざとやろ!これからどうするんだ?いつまで走らせるつもりだ!」

師匠「そうや。走りに行こう!この先って走り屋が良く来るところやろ。」

俺「ま・・・まじか・・・って、おい・・・・」


俺は視線を正面に向けて見るとフロントガラスに水滴がついている。

雨が降り出したのだ・・・


俺「お前雨やぞ。ヨッシー雨の時走ったことあるん?」

ヨッシー「いいや。」

師匠「それで走りに行くんが男や!」

俺「そんなので走りに行かなくても俺たちは男だ!引き返そう!」

師匠「いや〜・・・これはちょっと無理かもな。」


見る見る雨量が増えてきた。

車を叩きつけんばかりに振っている。


俺「凄いな・・・前が見えん・・・ガードレールも見にくい・・・これは一旦どこかで雨宿りしたほうがいいかもな・・・」

ヨッシー「J.J」

俺「なんだ?」

ヨッシー「すまんが左見ておいてくれ」

俺「なんで?」

ヨッシー「う〜ん・・・道幅が分からん。見えてない。両方な。」


道幅は車同士がすれ違うのがやっとって言う程だ。


俺「おいおい・・・勘弁してくれよ・・・要は見えないからぶつからないように見てくれってことやな?」

ヨッシー「そうや。しかし雨の音うるさいなぁ〜。」

俺「俺それよりも怖い・・・」


かなり危険な運転だった。

カーブするのかどうかの判断もヨッシーはかなり反応が遅れてる・・


俺「おいおいおいおい!危ない!左にカーブするぞ!ハンドルを切れ!」

ヨッシー「そうか?あ、ほんまや。」

俺「おいおいおいおい!今度は左に寄りすぎ!!溝にはまる!!それにぶつかるぞ!!スピード落とせ!」

ヨッシー「う〜ん・・・感覚が分からん・・・」


雨は止む気配もなく激しさを増すばかりだ・・・

それにいくら走らせても車を止めておけるような場所が見当たらず良い加減うんざりして来る・・・

下手な場所で止まると後続車にぶつけられそうで怖い・・・

それから数十分後ようやく道幅が広がり始めた。


俺「とりあえず止めろ。もう無理だ。運転どころじゃない!なぁ!師匠!」


俺は後ろを見ると・・・


師匠:グ〜・・・・グ〜・・・















寝ていた・・・


















ピシッ! (*ー"ー)ノ☆)゚ロ゚)ノ グハッ!!






俺「貴様ぁ〜!!人に寝るなとか言って置きながら自分が寝るな!」

師匠「仕方ない。暇や。」

俺「暇って・・・良くこんなデンジャラスな状況で寝れるな・・・」

師匠「おう。俺は天才だからな。」

俺「何の関係が・・・」

師匠「そんなことよりここはどこだ?」

ヨッシー「道。」

師匠「どうして止まってる?」

俺「運転するのにはきついやろ。この状況は・・・」

師匠「おお・・・凄い雨だな。止みそうにもないな・・・警報出てないか?ラジオつけろ。」

ヨッシー「おう。」


ヨッシーがラジオをつけてしばらくラジオに耳を傾けていると天気情報が流れてきた。


師匠「警報は出ていないみたいだな・・・しかし凄いノイズだな・・・」


そこに雷が鳴る・・・


俺「おい・・・雷鳴ってるぞ・・・」

師匠「ヨッシー!!アゴ隠せ!!危ないぞ!!!」

ヨッシー「なんでやねん!ムフフ!」

師匠「お前知らんのか?背の高い物に落ちやすいんだぞ。それだけ伸ばしてたら雷が落ちるかも知れん。」

ヨッシー「そうなんか!じゃ、隠さないとな!ムフフ!」

師匠「そんなんじゃ追いつかん!切れ!」

ヨッシー「無茶苦茶言うな〜!」

俺「そんなことよりもう9時は過ぎてるが・・・俺たち戻れるのか?朝までに・・・」

師匠「大丈夫や。」

俺「ほう・・・なんでそんなにはっきり言える?理由は?」

師匠「なんとなく!」

俺「・・・」

ヨッシー「まぁ俺もいけると思うぞ。」

俺「どうして?」

ヨッシー「なんとなく・・・」

俺「はぁ〜・・・」

師匠「少しでも雨が降るのマシになったら、この先峠を登って行ったらパーキングあるからそこで休憩しよう。」

俺「それまでずっとこのままってのも窮屈やな・・・」

師匠「暇やな。J.J歌え!」

俺「なんでやねん・・・お前が歌えよ。」

師匠「何を歌うんな?」

俺「知らんがな・・・好きなの歌え。」

師匠「♪チビ太のおで〜〜ん、チビ太のおで〜〜ん、チビ太のおで〜んはサークルKぇ〜」


シーン・・・辺りは静かになる・・・

俺は後部座席にいる師匠を見ると、師匠は視線を外し外を見た。


師匠「降ってるな〜」

俺「お前この空気どうするつもりだ。」

師匠「ヨッシー!踊れ!外に出て踊るんだ!」

ヨッシー「それは無理やろ〜!ムフフ!」

俺「あはは!ひかれるぞ!」


そんな話をしばらくしていると、雨音がマシになり師匠が運転してパ−キングエリアについた。

外に出ると皆車から降り、ジュースを買って飲み体を伸ばす。


俺「あ〜、なんか疲れたな〜。」

師匠「まだこれからやぞ。」

俺「マジで走るのか?こんな雨上がりの路面・・・ウェット状態で?」

師匠「おう。心配するな。俺が最初攻める。しばらくすると道自体が緩やかな感じになるから、そこからはヨッシーやな。」

ヨッシー「俺行けるかな〜・・・」

師匠「心配するな。緩やかになれば皆そんなに攻めないし、第一お前が下手でも走りに来てる奴は上手いから向こうがなんとかするよ。」

ヨッシー「なるほどな・・・」

俺「まじか・・・」

師匠「よし!行くぞ!俺の車改造はまだしてないけど。」

俺「え?行けるのか?」

師匠「無茶しないよ。心配しなくても。一人なら多少は無理するけどな。」


不安に駆られながら車に乗り込む。

そして・・・いざ峠の降りを攻め始めた・・・

どんどんカーブが多くなり始め・・・細くなり・・・



キィィィィ!!!




狂ったようなタイヤの摩擦音・・・

目まぐるしいハンドルさばき・・・

障害物が次々と迫り、流れていく・・・


師匠「おお・・・後ろからMR−2が・・・ついてくるな・・・」


確かに後ろにぴったりついて来ていた・・・

煽ってくる・・・


師匠「くそ!無理か!」


いくら突っ込み気味にカーブに入ろうが、何しようが離れることはない・・・

パッシングの嵐だった・・・


師匠「やっぱ無理!さすがにノーマルじゃ無理だわ!」(笑)


車を端に寄せ道を空けた。

凄い勢いで追い抜いていく・・・



師匠「今度サス変えようかな・・・」

俺「無茶するなよ・・・」

ヨッシー「お前のテクでも無理か!俺ならとっくの昔に抜かれてるかもな!ムフフ!」

俺「その前に崖に転落してるだろ・・・」



その後は後ろから車は来ることなくも、快調に下って行く。

師匠は周りを見ながら、多少広くなった道路や前後等を見て「この辺りでいいだろ。交代しよう」と言って路肩に車を停めた。

ヨッシーと師匠は車から降りた。

そして・・・

ヨッシーが運転席に・・・師匠は後部座席に座り・・・


隣に座ったヨッシーを俺は不安げに見た。


ヨッシーは笑顔で俺に向けて言葉を発する・・・


ヨッシー「そう心配するな!大丈夫やから!ムフフ!!!」


その不気味な笑顔を見つつ・・・また出かける時に感じた違和感を感じた・・・



何故だ・・・何が俺の中でひっかかってるんだ・・・



俺は気合を入れてハンドルを握るヨッシーの横顔を暫く見続ける・・・

やはり分からない・・・


俺はヨッシーに言った・・・






俺「慎重にな・・・何だか変な予感がするから・・・」












この時・・・原因が分かっていればと後悔する理由になると知らずに・・・



















<後半に続く・・・・>