師匠&J.Jvs?&ヨッシー君!!(前編)

<The last story 3>



















師匠「マジかよ!」

俺「あ〜、マジだ!」

師匠「ブッ!アハハハ!あいつ本当に大丈夫か〜?」

俺「さぁ〜な!聞いた時は腹壊しそうになる程笑ったぞ!」

師匠「あいつほんま凄過ぎるわ!俺だったら何があっても布団なんぞに120万も出さんぞ!どうせあれじゃないか?
訪問とかで買わされた口じゃないのか?どこで買ったんだ?」

俺「そう言えばそこは聞いてなかったな・・・」

師匠「しかし120万のローン組みました。何のローンですか?答えは布団です・・・はぁ?って感じちゃうか?」



ヨッシーから電話があった数日後・・・

俺は自分の部屋で唐突にかかってきた師匠と携帯電話で話して盛り上がっていた。



俺「アハハ!本当だな!普通信じられないぞ!まぁ〜またかかってきた時にでも聞いておくわ」

師匠「おう、聞いてみな。絶対買わされてるから!それにさ、彼女と同棲とかって話ないんだろ?
なんでわざわざそんな高い布団買うのか意味わからん」

俺「同棲はする予定はないって言ってたな。俺だって意味分からないが、よくよく考えて見るとあいつのすることに
意味が分かったこと1つとしてあったか?あ、そうそう。それと今後面白いことになりそうだぞ」

師匠「ん?どういうことだ?」

俺「実はな・・・これも2日前かな・・・ヨッシーから電話あった時の話だなんだけど、あいつこっちに一度帰ってくるらしいぞ!」

師匠「おお!やっと帰って来るのか!」

俺「うん。しかもだ・・・なんと彼女も連れて来るらしいぞ!!」

師匠「マジか!?それは楽しみだな〜!」

俺「俺も楽しみだ。確か12月中とか言ってたかな・・・」

師匠「ほぅ・・・分かった。んで、どうする?どっか食ったり飲みに行ったりとかするか?」

俺「そうやな。折角帰って来るんだし、次いつ帰って来るかも分からないしな」

師匠「そうだな。まぁ〜また何か分かったら電話くれ」

俺「おう。また電話するわ」



その日から数日後にはヨッシーから連絡が入り日程を聞いた俺は師匠と予定を組み当日前夜を迎えた。


いよいよ明日か〜・・・


俺は自分の部屋で寝転がりながらそう思っていた時、携帯電話が鳴った。

手が届く範囲に携帯を置いていたので、寝ながら携帯を取る。

師匠からだった。



俺「もしもし」

師匠「おう。明日のことでちょっとな。今いけるか?」

俺「おう。大丈夫や。それでどうした?」

師匠「明日彼女も来るみたいや。連れて行っていいか?」

俺「彼女?またどうして」

師匠「いや、一応ヨッシーの話はしてたんや」

俺「まぁ〜してもおかしくないわな。どこまで話してるんだ?全部?」

師匠「そうやな。ほとんどは話してると思うけど・・・それでな、ヨッシーと一度会ってみたいな〜と言う話は聞いてたんや。
それにほら、向こうもカップルで来るし釣り合いとらないとアカンやろ?」

俺「しかしなぁ〜・・・」

師匠「どうした?何か問題あるのか?」

俺「問題・・・ないのはないんだが・・・」

師匠「どうした?なんかまずいことあるなら、別に連れて行かないが・・・」

俺「なんかさ・・・ヨッシー彼女連れて来るやん?」

師匠「そうやな」

俺「で、師匠も連れて来るとするだろ?」

師匠「おう」

俺「な〜〜〜〜〜んとなく俺居辛いな〜・・・なんてね」

師匠「あ〜!それは気にするな」

俺「あのな・・・俺が言うなら分かるがお前が俺にかける台詞ではないぞ・・・俺は気にするだろ・・・時期も時期だし・・・」

師匠「時期?」

俺「おいおい・・・そこまで言わすかな〜・・・ほら、クリスマスとか近いだろう・・・こう盛り上がり始めるこの時期にだな・・・カップル2組に挟まれて
俺一人で行くのは寂しすぎるだろう・・・イベント前から寂しい思いするのはな〜」

師匠「あはは!そう言われてもな〜!仕方ないだろう。まぁ〜・・・なんとなく心境は分かるけど・・・じゃ〜こうしよう」

俺「何思いついたんだ・・・」

師匠「お前も彼女作って明日連れて来たらいいやん」

俺「あのな・・・どう考えたって無理だろう・・・」

師匠「じゃ〜諦めろ」

俺「要するにもう既に彼女連れて来るのは決定なんだな・・・」

師匠「そうやな」

俺「はいはい・・・明日俺はどうすればいい?」

師匠「一応予定はまず喫茶店で待ち合わせになってるから、お前は○○駅の周辺に駐車場あるだろ?あそこまでバイクで来い。
そこから歩いて店に来たらいいわ」

俺「OK・・・ヨッシーはどうするんだ?」

師匠「あいつはレンタカー借りて彼女と一緒に来るみたいだ」

俺「なるほど。しかしいよいよ明日か〜」

師匠「そうやな。どんな人連れて来るのか楽しみや」

俺「案外まともな人だったりして!」

師匠「まぁな〜・・・あいつがおかしい奴だとしても彼女までそうだとは限らないからな。しかし、まともだったらちょっと残念だな」

俺「どうして」

師匠「そう思わんか?ヨッシーやぞ?普通の人連れて来たらちょっとガッカリちゃうか?」

俺「あはは!分かるよ!ま、お楽しみは明日だな」

師匠「おう!じゃ、明日夜7時30分頃に会おう」

俺「うん、じゃ〜な」

師匠「ほい」



ピッ・・・


携帯を切って布団に横たわる。

布団は冷え切っていた。

その冷たさが現実に引き戻そうとするが、俺はすぐにまた明日への想いが巡り始めた。


いつかはあると思ってたけど、本当に彼女出来て連れて来るんだなぁ〜・・・


俺はしみじみとそんな事を思っていた・・・

明日がどんな日になるのかも知らずに・・・




そして当日の夜




俺は待ち合わせの喫茶店に近い駐車場にバイクを停め立っていた。

外は相当寒い。

吐く息が白く風も吹いてたから尚更寒かった。

腕時計を見ると19時を指している。

辺りは暗いが駅にも近い為ビルやら店やらの明かりがあるから暗いのは暗いが雰囲気は明るい。

人の行き来も多く、車の往来も激しい・・・

話し声や車の往来の音・・・そしてクリスマスの定番の曲もどこからか聞こえる。

独り身をひしと感じる一瞬である。

そんな中俺は革手袋に革ジャンと言う格好で、世の中の喧騒に揉まれていた。

道を挟んで真ん前に目的の喫茶店がある。

待ち合わせの時間は19時30分前後である。

店に入って待ってようかと思った時携帯が鳴った。

師匠からの電話だった。

もうすぐ着くとの知らせだ。

何となく外で待つことにした。


もうすぐって5分くらいかな・・・

今年のクリスマスは雪が降るんだろうか


そう思いながら辺りの風景を見る。

何故だろう・・・そう思いながら見る周りの環境や人々を見ると、自分が一人でいることがつくづく空しくなる。

そんなことを考えてると・・・


ブォォォォ!!


他の車とは明らかに違う一際大きい音を発しながら、左方向の遠くから近づいてくる車が一台・・・

その車をじっと見てみると・・・それは師匠の車だった。

片側一斜線の道路である。

しかも師匠の車は限定車のスポーツカー・・・

確認するのは容易かった。

それにしても早い・・・

時計を見ると電話をもらってから、2分後の到着。

早いに越したことはないが、5〜10分と心つもりをしていたので拍子抜けだ。

師匠は俺の前を通り過ぎる前に、俺をじっと見ながら通り過ぎ狭い路地へと入って行く。


車停めに行ったんだな・・・


そう思いつつ俺は師匠の車が入った狭い路地の方をじっと見ながら待っていた。

しばらくすると狭い路地から師匠が姿を現した。

紺のパーカーにジーパンといった恰好で、ポケットに両手を突っ込みながら歩いてきた。

師匠は店の前に立つと俺に向かって来いというジェスチャーをしている。

俺は車の流れが途切れたのを見て、走って一気に道を渡った。


俺「おっす」

師匠「おいす」

俺「あれ?彼女は?」

師匠「あ〜、あいつは遅れて来る」

俺「そっか」

師匠「あぁ!寒い!!中に入るぞ!」


お世辞にも大きいとは言えない店の扉を開けて中に入る。

入ってすぐにあるテーブルに俺と師匠は目をつけ、そこに座るかどうか目で互いに確認してそこに決めた。

テーブルは白い小さい机だった。

椅子は4つあり、師匠と俺は向かい合わせに座る。

それを見た店員が注文をとりに来た。


店員「いらっしゃいませ。注文は?」

師匠「俺はホットコーヒー。お前は?」

俺「じゃあ俺はアイスコーヒー一つ」

師匠「いつも思うけど、お前このくそ寒い日に冷たいコーヒーよく飲めるな〜」


俺は年中コーヒーは冷たいのしか飲まない。

熱いのは苦手という訳ではないのだが、自分でも理由は分からないがわざわざ冷ます手間が嫌いだった。

極稀に飲むくらいだ。

それが若さだということに気づくのはずっと後の話である。

何気に店内を見回してみた。

店内には机が全部で5つ。

その奥にはカウンターがある。

壁は一面真っ白で何も飾られていない。

素っ気のない店内だった。


師匠「ここ来たことある?」

俺「ここに喫茶店があるのは知ってたけど、入ったことはなかったな」

師匠「俺は一回か二回くらいかな」

俺「そうか」


俺と師匠はこれから来るだろうヨッシーのことと彼女の話をネタに盛り上がっていた。

しばらくすると師匠は腕時計を見る。


師匠「ヨッシー達も遅いな〜」

俺「もう20時か・・・そう言えば師匠の彼女も遅いな」


そんなことを話していると・・・


ガチャ!


ドアの開いた音がした。

店員の「いらっしゃいませ」と言う声が聞こえる。

俺と師匠はドアの方をちらっと見た。

女性が一人入ってきた。

俺たちの横を通り過ぎた女性は奥に進んでいく。

俺と師匠はなんとなく黙る。

すると奥から店員と女性の会話が聞こえてきた。

カウンターに近いテーブルに座ったその女性は注文を聞きに来た店員に向かって
「注文は後から待ち合わせしている人が来るので、その時にお願いします」と言った。

それを聞いた俺と師匠は顔を見合した。


師匠「おい、ひょっとしてあれじゃないか?」

俺「うん・・・多分そうじゃないかと思う。そう言えば彼女の特徴とか師匠は聞いてないのか?」

師匠「聞くの忘れてたけど、あれだろう・・・ちょっと行ってくる」


俺が返事しないうち師匠は立ち上がって女性の方へと向かった。

奥の方で師匠がその女性に話しかけていた。

声をかけられた女性は、始めは驚いた顔をしていたものの、話が通じたのかその後の会話は2人とも笑っていた。

女性が中腰になってテーブルを探している素振りを見せたかと思うと、師匠を先頭に俺のいるテーブルまで歩いてきた。

思わず俺は立ち上がり会釈する。

師匠は自分の飲みかけのカップを持って俺の左の席へと移し、女性に自分がいた場所の席を勧めた。

そして改めて対峙し挨拶をする。


女性「えっとヨッシーのお友達の方ですよね?はじめまして。S子と言います」

俺「初めまして。ヨッシーと仲良くさせてもらってるJ.Jと言います。今日はお邪魔させてもらいますけど、宜しくお願いします」

師匠「俺も遊び仲間の師匠です。宜しく〜。とりあえず座りません?」


3人は席に着いた。

全体的にふくよかな体型の女性ある。

眼鏡に長い黒髪、目は一重で唇は薄い。

しかし・・・


<雰囲気に違和感を覚えた>



師匠「えっと・・・ヨッシーは?」

S子「多分実家に行ってると思うんだけど・・・」

師匠「え?実家に?」

S子「何か用事があるんだって。すぐに戻るって言ってたけど・・・」

師匠「俺の彼女も来るんで、それまで飲み物でも飲みます?」

S子「そうですね」


師匠は店員を呼んでジュースを注文してあげた。

S子「あのヨッシーとは良く遊んでたんですか?多少は聞いてますけど」

俺「よく会ってましたよ〜。いつからか遊ぶ回数は減りましたけどね」

師匠「昔はよく遊んでたけどな〜」

S子「何して遊んでました?」

師匠「くだらんことばっかりやってたよな?」

俺「へっ・・・本当だな・・・まともな遊びと言えばカラオケくらいか」

師匠「そうやな・・・カラオケも6時間耐久とかやってたな」

S子「6時間!?凄いね〜!歌とか沢山知ってないともたないでしょ?」

師匠「最後の1時間くらいは番号適当に押して、寝ながら歌ってたな!」

俺「うん。あれは疲れた」

S子「お金とか凄いかかったんじゃない?」

師匠「大丈夫!遊ぶ金は全部J.J持ちだった」

俺「それを大丈夫と言えるのかどうかは定かではないけどな」

S子「え?J.Jさんってお金持ってるんだ?」

師匠「違う、違う(笑)家に金いれる以外は全部遊びに回してただけ。まぁ人並みかな。どっちかと言うと貧乏かな」

俺「お前が言うことじゃないだろ!」

師匠「まぁな。俺とヨッシーは働いてなかったからな」


そんな他愛無い話をしているとジュースが運ばれきた。

師匠は興味津々な眼差しで話している。

俺は適当に相槌をうっていた。

S子さんがジュースを飲み終わるころ・・・

店の扉が開く。

冷たく強い風が吹き込んだ。

その拍子に何気なく扉の方を見るとそこには・・・



細い目に時代遅れの黒縁眼鏡・・・



昔から着ている色あせた緑と白のツートンのセーター・・・



膝の部分がぽっかりと開いたボロボロのジーンズ・・・



鶏の雛の出来損ないのような中途半端に短い髪・・・



そして・・・



長く突き出した世界に誇る立派なアゴ・・・



そう!そこにはヨッシーが立っていた!!

俺と師匠はヨッシーに声をかけ、席に座らせると飲み物を頼んだ。

若干テンションが上がってくる。


師匠「久しぶりやな〜!」

ヨッシー「そうやな!むふふ!」

俺「アゴ元気にしてたか!」

ヨッシー「元気だよ!むふふ!」


相変わらずの不気味な笑いだ。


師匠「すまんけど、彼女もう少しでつくと思うから待ってくれ」

ヨッシー「おう。いいよ」

俺「しかし本当変わらないな!」

ヨッシー「お前もな!むふふ!」

師匠「休みの日とか何してるの?」

ヨッシー「う〜ん・・・あんま行くところないけどな」

S子「ないよな〜。けど、あんまり出かけたくないから別にいいんだけど」

師匠「え?なんで?インドア派なん?家とかで遊んでるとか?」

S子「違うんだけど・・・インドア派と言えばそうなるんかな?」

師匠「あ〜、寒いからとか?それで出るのが嫌だったり?」

S子「別に寒いのはいいんだけど、外に出るのが怖いんだよね」

師匠「え?外に出るのが?怖い?なんで?」


S子「う〜ん・・・外に出るとね・・・




S子さんの次の一言で俺と師匠は頭から足の爪先まで衝撃が走った!!


























S子「見えるのよ」

師匠「え?何が?」
























S子 『幽霊が』



























俺と師匠



ド━━━(゚ロ゚;)━━ン!!


























これはかなりキテる!

何かを間違いなく感じるッ!!



















俺と師匠

「グゥッ・・・」



























しかし不意打ちのこの重いボディーブローは卑怯すぎる!!






















じわじわ効いてくるではないかッ!!




























思わず唸ってしまった俺はできるだけ自然を装いながら口を塞いだ!

(な・・・なんだ今のは・・・いかん!く・・・苦しい・・・やばい!
今のはやばかった!!笑いたい!!)

俺は心の中で笑いながらひたすらに耐える!!






















師匠は唸った後は何とか耐えしのぎ心を立て直した


そして師匠は僅かに震えを帯びた声でS子に問う!



























師匠「え?幽霊って・・・外出たら見えるの?」

S子「うん」

師匠「でもそんな頻繁に見えるもんなん?」

S子「そこら中に見えるよ。歩いてたら電信柱の影とかその辺に
一杯いるよ」

師匠「そ・・・そうなんだ」

S子「うん。だから本当はそんなに出歩きたくないんだよね」

























じゃ〜何故貴方はここにいるッ!!





















師匠「そ・・・そっか・・・それは大変だね〜」


そう言って俺と師匠は、氷が解けた飲み残していたコーヒーを
顔をふせながらすする。


手が僅かに震えていた。


















OK・・・師匠・・・

どうやらお互い思うことは同じのようだ・・・




















見える人には見えているのだろう

しかし見える見えない自体が問題ではない・・・


不安の一かけらすら見せず平気で言い放つ幽霊が見えるS子さん・・・

そして立派なアゴをもって横に並ぶヨッシー・・・













俺と師匠は瞬時に嗅ぎ取ったのだ!



























この2人は同類だ!!!

<向かう所敵なし!!>に違いないとッ!!























このカップルは手ごわい!!























何故神様はこの2人を引き合わせたのか理由はよく分かる















この2人は巡り会うべくして巡り会ったのだッ!!
























こうして華々しくデビューしたS子を面子に加え戦いの幕が上がった・・・


俺と師匠は波乱の予兆を感じ・・・

眼鏡カップルの師匠とS子は本領発揮せんとオーラを放つ・・・



過去の歴史の中で類をみない大戦争になるであろうこの戦の
結末は誰にも分からない・・・


分かる筈はないのだ・・・


俺と師匠は終焉を迎えるまでたたひたすらに
戦うしかないのであった・・・