俺は愕然として思考が止まる・・・


俺「そ・・・そんな理由で・・・」

師匠「全く・・・迷惑かけるからこんな事になるんや。」
















殺意の真実






高校2年になって間もないある日・・・


俺は友達と外にある食堂の横の自販機でジュースを買い、教室に戻ろうとしていた。



簡単な配置図


食堂→ □
           l○○l
           l↓↓l
           l   l
           l   l
           l↑↑l
           l●●l

校舎
 □


○は俺達   ●は女性達  lで区切ってる部分は野外廊下   校舎が俺達の目的地





A君「おい・・・J.J・・・」

俺「え?何?」


A君は黙ってある方向を目で指していた。

視線を辿ると・・・

俺達の進行方向から2人の女子が歩いて来てるのだが・・・


一人は身長160cm位の茶髪の体格のガッシリとした、ロングスカートをはいている見た目に「素行のよろしくない」方と判る女・・・

もう一人は150cm位だろうか・・・

同じ臭いのするミニスカートの体格は細い女・・・

その二人が何故か思いっきり・・・






俺を睨んでいた!!





怨念漂うその「眼力」・・・

そして、ペンが挟めそうな程眉間に皺を寄せ・・・

何かあれば喰ってかかりそうな緊張したオーラを放っている。

その2人は俺達とすれ違うまで「ガン(眼)」を飛ばしていた。

すれ違った後そっと振り返ると・・・

立ち止まって、力の限り俺を睨みつけていた。



A「お前何かしたのか?」

俺「いや・・・記憶にない・・・話したこともないし・・・」

A「あれはあからさまにお前を睨んでいたよな?」

俺「多分な・・・ま、別に相手することはないだろ。俺は何も悪いことはしてないんだから。」

A「お前が気がついてないだけじゃないか?」

俺「さぁね。でも、それだったとしても何か言ってくるまでどういようもない。見当もつかないんだから。」

A「大丈夫か?勘違いされてるかも知れないぞ。誰かに聞いて見たらどうだ?」

俺「いいよ。気にしない、気にしない。」

A「だったらいいけど・・・」






そんな話から数日後・・・






俺は放課後に教室の掃除を終え、いつもの下り坂を歩いて駅に近づきつつあった。


夕日が空を赤く染めている。


こんな時間になってしまった・・・まともに駅に着いても電車来るまで少し時間あるし、ジュースでも買うか・・・


腕時計を見ながらそんな事を考えていると・・・

何だか気配がする・・・


俺は勢い良く振り向く!


すると・・・そこにはあの2人が俺の後ろを歩いていた。

そして・・・やはり睨んでいる。



なんだ?何でそんなに俺を睨むんだろう・・・



訝しげに思ったが、無視をすことにして前を向いて普通に歩き、それ以降2人を見ることなく電車に乗り込み無事に帰った。





しかし、それは短期間だけの話で終わらなかった・・・


運動場でも・・・体育館でも・・・食堂でも・・・廊下でも・・・

何処で見かけても俺をいつも睨みつけている。

もちろん一向に理由が思いつかない。



3年生になっても続く・・・



そしてある日・・・


俺は帰りの電車で師匠と話をしていた。

長椅子が車両の両側に並んでいるタイプである。

そこに横並びに座り、世間話等をしていたのが・・・俺はちょくちょく気になっていた例の女生徒の話をふと思い出し、師匠に聞いてみることにした。


俺「そうそう。そう言えば、お前のクラスにいつも2人で歩いている女いるだろ?茶髪の・・・」

師匠「うん?2人で歩いている茶髪の女??」

俺「ほら!背の高い、ぽっちゃりというのかな・・・その人と痩せた色黒の女・・・名前は知らないんだけど・・・」

師匠「おお!そう言えばいてるな!お前と同じ苗字の女と馬鹿っぽい女だろ。」

俺「同じ苗字なのか?どっちが?」

師匠「太ってる方や。あの2人がどうかしたのか?」

俺「それが、ある日から睨まれてるんや。」

師匠「睨まれる?どうして?」

俺「知らん。同じ組やからその辺の事情知らないかと思ってな。」

師匠「知らん。お前本当は手を出したんじゃないか?」

俺「それはない。女で話をしたことがあるのは、俺と同じクラスの友達の彼女と同じ写真部の女の子の2人しか話したことないからな。
お前じゃあるまいし、俺には恋愛なんて無縁だしな。」

師匠「しかし、睨まれるってことは何か原因があるんだろ?」

俺「分からないから聞いてるんだろ。さっぱり分からない・・・」

師匠「俺に聞かれてもなぁ〜・・・噂にも聞かないしな。ましてや、お前やろ?何で地味なお前が睨まれるんだ?」

俺「地味って言うな。気分悪いぞ。しかし・・・去年からずっとだからな・・・いい加減にしてほしいよ。」

師匠「そんなに睨まれてるのか?よっぽどお前酷いことしてるんじゃないか?それか、喧嘩買ってやれよ。」


俺「意味もないことはしたくないよ。」


師匠「俺が調べてやろうか?」


俺「あほか。どうせ金取るつもりなんだろ?」

師匠「当たり前やないか。誰がタダでするんや。」

俺「お前なぁ〜・・・つくづく良い友達を持ったと思うよ。」(-_-;)


師匠「とにかく放っておくしかないだろ。」

俺「まぁな。何か聞いたら教えてくれ。」

師匠「ジュース1本で引き受ける。」

俺「はいはい。どうせジュースなら大体俺が奢ってるんだからかまわないよ。」





しかし、それ以降も卒業するまでずっと睨まれ続けていたが、原因は解らず・・・

だが、実質的に被害はない為次第に忘れ話題に出なくなった・・・










そして・・・卒業してから7年経った・・・





俺と師匠は俺の部屋で遊んでいた。

畳の床に横並びに座って何だかんだと話をしていた時、昔話になり花を咲かせていた。




師匠「高校時代が懐かしいなぁ〜。」

俺「本当だな。あっと言う間にもう7年かぁ〜。色々あったな。」

師匠「ヨッシーとかな。」

俺「何が思い出になってる?」

師匠「そうだな・・・先輩を職員室前で殴ったとか、後は友達の弁当が毎日一緒だったとか、誰か忘れたが電車乗る前にモメて殴ったら前歯が折れたとか・・・それに初めて喰らった謹慎が無期謹慎だったとか・・・」

俺「はいはい・・・全くろくな思い出がないな。前歯折ったのは覚えてるよ。お前の拳に痕が残ってるだろ。」

師匠「そう言うお前は何があった?」

俺「ヨッシーの振られ方とか、俺が初めてお前を田舎の家に誘って遊びに行こうと思ったら、行くと言ってた癖に当日ドタキャンされた上に
自宅に電話したら、お前の親が電話に出てその向こうからお前が『J.Jだったら、
俺いてないと言ってくれ』と言う声が聞こえて居留守使われた事とか・・・」

師匠「そんなこともあったな。忘れてた。お前も俺と変わらんやん。」

俺「後は・・・そうや!!あの訳解らんお前と同じクラスの2人組の女に睨まれたこととか!」

師匠「おお!!そう言えばそんなこともあったな!エライ迷惑したから覚えてるぞ。参ったな!あれは!」


俺「へ?迷惑??何が?」

師匠「あれ?俺言ってなかったっけ?」

俺「何のことだ?大体睨まれてる理由解ったら教えてくれって当時言ってただろ?」

師匠「そうか?知らん。理由言ってなかったなぁ〜・・・じゃ、今も理由は知らないのか?」

俺「知らない。全く聞いてない。」

師匠「あれはな・・・実はお前と同じ性の女の方あるだろ?Aさん。」

俺「うん。いてたな。背の高い方だろ?」

師匠「そうそう。2年になる前かな・・・放課後に呼び出されてな。」

俺「お前が??何で?」

師匠「貴様のせいや!俺も何で呼び出されたか解らなかったから驚いたぞ。それで、図書室だったかな・・・もう一人の背の低い方のBさんが図書委員してたから、図書室が都合がいいとか言って3人で図書室にいてた時の話や。」


俺「ふん。それで?」













回想







図書室のドアを開くとすぐ右手にカウンターがあった。


左手の方はそのカウンターから人の通る分の幅をあけて、大きい長方形の机があり、机を挟んで師匠と2人組は座っていた。

人気はもうなかった。



Aさん「Bさんが聞いたんだけど、師匠の友達にJ.Jっていてるやろ?」

師匠「J.J?・・・お〜!そう言えばそんな奴もいてたな!友達かどうか知らないが。」

A「知らない?友達じゃないの?」

Bさん「私、聞いたで。A君に。」

師匠「そうか。それで、何?」

A「実はな。手紙書いて欲しいんよ。」

師匠「はぁ〜〜〜???何で?誰に?」

A「J.Jに。友達になって欲しいかなって思って。色々話聞くし。だけど、あんまり見かけないから、いざ会った所でいきなり話かけにくいやん。
でも、文章書くの下手だから・・・」

師匠「ちょっと待て。そんなの上手い、下手なんて関係なく本人が書くから意味があるんだろ。俺は嫌や。字でバレるし、
第一お前J.Jと話したことあるのか?向こうはお前を知ってるのか?」


A「多分知らない。話もしてないけど・・・きっかけ欲しいんやけどな。とりあえずあんたから話するか、
そう言う内容の手紙で何とかして欲しいねん。」


師匠「話かけたらいいやん。そっちが早い。あいつは毎日暇で時間を持て余してるし・・・それに余計なことかも知れないが、
あんな奴よりもっと良い奴いるぞ。」

B「書いてあげてよ。折角あんたにお願いしてんのに。」

師匠「お前なぁ〜。友達って知ってるんなら、俺に頼むなよ。俺があいつにそんなもん書いてたら、途中で吐いて死んでしまう。」

A「とにかく頼んでおくね。」

師匠「おい!嫌だって!!待てよ!!」


しかし、師匠の声に反応するでもなくそのまま2人は立ち去った・・・












俺「ちょっと待て。突っ込み所満載やな。誰が毎日時間を持て余してるんな?暇人の様に言うな。しかも、あんな奴ってどう言う意味だ?
それに手紙は愚か、お前からそんな話聞いてないぞ。」


師匠「まぁ聞け。それからもちょくちょく手紙はどうなったと聞かれてな。書いてないって言った。だけど、あんまりにも言われたから、『手紙は勘弁してくれ。その代わりJ.Jの好みを教えるから。そのポイントさえ押さえれば間違いなく仲良くなれる!』って言ってようやく開放されたんや。」


俺「おい。俺は女性の好みなんぞ貴様に話をしたことは1回もなければ、女性に関した話もお互いしたことなかったやろ!」

師匠「メガネの女の話はしたやろ。」

俺「あんなのは貴様が、勝手に仕組んで俺に迷惑かけただけの話やないか!で・・・何て言ったんだ?」






















次の師匠のセリフを聞いた俺は説明不可能な感情が溢れんばかりの声となり吠える!!























師匠「あいつは暇人や。平凡な生活に飽きてる。だから、刺激が欲しいんや。それに<眼つきの鋭い子>が好みやから、鋭ければ鋭い程いい。思いっきり睨まれればそれだけであいつは好印象を持つぞ。」

























俺 ・・・・・・























ちょっと待たんかぁぁぁぁぁぁいぃぃぃ!!!(激怒!)





















更に!まだ続く!!!

そして俺は宇宙にすっ飛ぶ程の衝撃がはしり、廃人と化す!!





























師匠「後は常にJ.Jを仇と見て、殺す程の緊張感が大切や。それさえ伝われば、友達所の話じゃない。もうメロメロやな。きっと命の危険を感じた時にJ,Jは日々の張り詰めた緊張感に酔いしれるぞ!
これでバッチリや!!」


























なんじゃぁぁぁぁそぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
(怒髪天ッ!!)

















なんじゃそりゃ!なんじゃそりゃ!なんじゃそりゃぁぁ!!!

















やっぱりお前が犯人かッ!!!!!!(−−x)










俺「じ、じゃ、それが原因で俺は<2年>という月日を
睨まれ続けてきたんか・・・」




















何しても酷過ぎる!!号(┳◇┳)泣



俺の好みなんて全く関係ないことを言われた上に、
見事に全て間違ってる!!




俺の人格を思いっきり無視しているじゃないか!!!







適当過ぎるのにも程があるッ!!(−−x)











師匠「卒業まで睨まれてたんか。凄いな。どうな?
ちゃんと伝わってたか?」


俺「お、おい・・・思いっきり他人事の様な話方やな・・・一体誰のせいでそんな目にあったと思うんな。第一お前に睨まれてる理由
聞いたことあったよな?」


師匠「?あったか?知らんぞ。その時俺は何て返事した?」


俺「し、知らんて・・・お前は解らないって言ってたぞ!」

師匠「だったら、俺は既に被害を免れて解放されたから、
忘れてたんやな。」


俺「そんなアホな・・・じゃ、何で2人から相談されたその時に俺に話なり、手紙なりしなかったんな?」


師匠「話って、お前に合わないうちに次第に忘れた。
手紙は書くの嫌だったし。」


俺「忘れたのは百歩譲って解ったとして、手紙は内容適当に書くなり、なんなりスッと書いて渡してくれたら忘れたりしなかっただろうに・・・」

師匠「嫌や。面倒くさい。」


俺「め、面倒くさい!?それさえちゃんと話してくれたら
解決してたのに・・・」


師匠「今更言っても仕方ない。」


俺は愕然として思考が止まる・・・






俺「そ、そんな理由で・・・」

師匠「全く・・・迷惑かけるからこんな事になるんや。」







俺「お、俺が悪いのか?何も知らなかったんだぞ・・・それなのに・・・」

師匠「まぁ、当然の報いやと思うんやな。それにあの2人が
<俺に相談した時点>で既に間違ってる。」



俺「そ・・・それは確かにそうや・・・一つ質問していいか?」

師匠「いくらくれる?」


俺「お前が言った<殺す程の緊張感が大切>って所だが、万が一<本当に殺す>つもりで俺に<何か>あった場合お前はどうする
つもりだったんだ?」
















師匠「それはお前、その時はその時やろ。」


























Noぉぉぉ!!なんかちっっがぁ〜う!!
☆<( ̄□ ̄;)>☆



そんなんで簡単に済ますなぁぁぁ!!!(TдT)










俺「お、お前と言う奴は・・・しかし、あの2人も良くそんな話を信じたな・・・」

師匠「最初は疑われてたけどな。俺とJ.Jが友達だと信じるなら、俺の言う事を信じろ。って言ったからな。信じてしたんやろ。」

俺「お〜ま〜え〜は〜!!」

師匠「無事に生きてるんやからいいやろ。終わった話やし、あの頃は俺も若かったと言うことで・・・」




俺:ナンデヤネン!!(;==)ノ☆);><)


師匠「痛ッ!慰謝料払え。」

俺「もういいです・・・」(;´д`)








しかし、そんな理由だったとは・・・めちゃくちゃだ・・・




俺は知らない所で、そんな理由で命の危険に晒されてたのか・・・



7年後に知った真実に愕然とし、師匠の恐ろしさを改めて知った俺は、ただただ落胆するしかなかったのだった・・・