初めの真実
〜ヨッシー編〜
俺は幾つかの運命的な出会いをしている・・・
しかし、その内の一人・・・
そもそもヨッシーとはどうやって出会ったのか・・・
お話したいと思う・・・
そう・・・あれは高校1年の3学期の始め頃・・・
♪キーンコーンカーンコーン・・・
休憩のチャイムが鳴ると皆が一斉に立ち上がり、思い思いのことをするために教室を出る。
俺は一人の男に目が留まった。
あれ?あんな奴俺のクラスにいたのかな・・・
見覚えのない後ろ姿・・・
俺はどちらかと言うと席は後ろの方だから、大体の人の後ろ姿は毎日の様に見るのだが、その男の後ろ姿は誰か分からない。
確かに何人かは登校拒否で出てきていない生徒も何人かいたが・・・
その中の一人か・・・と思いつつ皆より遅れて席を立ち、教室を出て何をするでもなく廊下の窓から外を眺めた。
誰も居ない教室に一人で居るのは居心地が悪い・・・かと言って10分程度の休憩で何をしていいものか分からない・・・
そんなことから大体いつも教室を出てすぐの窓から外を見るのが習慣となりつつあったのだが・・・
「ここで何してんの?」
俺「え?」
俺は窓の外を見ていたので廊下には背を向けていた状態だ。
後ろから声がしたので振り返るとそこには見知らぬ男がいた。
よくよく見ると雰囲気的に俺が気になった見知らぬ生徒のようだ。
俺「え?いや外見ていただけだけど・・・」
俺はぱっと見ただけだが、やはり知らない・・・
「そうなんや。俺ヨッシーって言うんや。」
俺「やっぱり・・・何人かいつも来ていない生徒がいたけど・・・その名前は聞き覚えあるよ。どうして休んでたの?」
ヨッシー「家のゴタゴタがあってな。学校に来る気にならなかったんや。知ってる人もいないし、来にくいやん?」
俺「何となく分かる。別に家のことは聞かないけど、何でまた来ようと思った?」
ヨッシー「このままだと駄目な気もするし・・・高校くらいは出ないと駄目だとも思う・・・でも、来てもパシリに使われるだけだから・・・
いじめられてるしな・・・」
俺「ふ〜ん・・・確かにヤンキーは多い。だから君もその口かと思ったんだけど、違ったんだな。しかし、高校くらい出ないとって言うのはどうかな・・・俺は中学卒業してから就職したかった口だから・・・」
ヨッシー「へ〜・・・そうは見えないな。頭良さそうだからそんなに考えてた何て以外や。」
俺「見た目で決めるなよ。頭悪いからここにいるんだろ。そう言う人だっているってことだから、考え方は色々あると思うぞ。」
ヨッシー「でもさ、就職も不利やん。」
俺「だったら、休むな。ま、俺は何となく早く働きたかっただけなんだけどね。」
ヨッシー「そう言うなよ。俺だって休みたくて休んでるんじゃないんだから。」
俺「嘘言うな。自分が休もうと思うから休んでるんだろ?誰かに行くなって言われてるのか?」
ヨッシー「う〜ん・・・そうだけど・・・」
俺「俺だって好きで来てるんじゃないんだから。それに本気で来たくなかったら、中退でもしてるだろ。何人か俺たちのクラスにいるぞ。
中退した生徒。」
ヨッシー「そうなんや。知らなかった。」
俺「そら休んでるから、分からないだろ。それに働こうと思えば何かあるんじゃないか?就職先は。」
ヨッシー「新聞配達とか?でも、そんな甘いもんじゃないで。」
俺「そうかも知れないけど、まぁ休むなってことやな。」
ヨッシー「うん・・・」
俺「これから先も休みつづけるのか?」
ヨッシー「分からない。」
俺「そうか・・・」
その後少しお互い喋らなかった。
ふとヨッシーの表情を見る。
するとひげが伸びていた。
それに感づいたのかヨッシーをニヤリと笑って話始めた。
ヨッシー「今、あご見たやろ?」
俺「え?いや・・・ひげ伸びてるなって・・・剃らないのか?」
ヨッシー「いや、今の目は明らかに違うこと思ったやろ。」
俺「いや、違うって。何も思ってないよ。」
ヨッシー「アゴ長いとかって思ったやろ?」
俺「プッ!思ってないって!ヨダレ出そうになったわ。」
ヨッシー「構へんねん。前から良く言われてたし、あだ名も<アゴ>やったしな!」
俺「あはは!そうなんや!でも、マジで思ってなかったぞ!」
ヨッシー「でもな、これだけは言っておくで。」
俺「何を?」
ヨッシー「アゴが長いんじゃない!面長なんや!」
俺「それは無理あるやろ。」
ヨッシー「なんで即答やねん!」
ヨッシー「俺が言い終わるか終わらないかってタイミングで言うなよ!」
俺「いや〜、だって・・・言われてから気がついたが・・・確かに面長だがな・・・」
俺はもう一度じっくりと顔を見た。
俺「いや、やっぱり長い」
ヨッシー「そうかな〜・・・そうでもないと思うけど・・・」
俺「測ったらいいやん。」
ヨッシー「どうやって?定規とか嫌やで。」
俺「別に道具使わなくても指で解る。ほら・・・」
俺は自分のアゴに指を横にしてあてた。
俺「俺で2本ちょいや。それでお前が・・・」
俺が指をあてようとするとヨッシーは俺の手を払いのけた。
ヨッシー「いいよ!しなくても!もうええねん!」
俺「お前が言い出したことだろ?いいからじっとしていろ。」
ヨッシーは俺を見つつ顔をしかめて渋々測ることを承諾した。
俺「見てろ・・・まずは2本・・・な?まだ出てるだろ?」
俺は指の本数を増やして更に測る・・・
結果・・・
俺「ほれみろ!!3オーバーや!!アハハ!!!」
ヨッシー「なんかのスポーツのスコアみたいな言い方するな!」
俺「ゴルフだ。」
ヨッシー「ムフフ!!そうやった!」
俺「ムフフって・・・」(-_-;)
しかし、ヨッシーは諦めない。
意味不明な反論する。
ヨッシー「実際はそうでも見た目解りにくかったらいいねん!!」
俺「お前昔からアゴって言われてたんだろ?って事は
アゴが目立つからじゃないのか?」
ヨッシー「・・・でも、解らないかも知れんやん!!」
俺は休憩終了間際に教室に戻ってきたT君に気がついた。
彼も個性があるのだが・・・何気に気に入ってた。
中々面白い奴だからだ。
俺は呼び止めた。
俺「おい!T君ちょっと協力してくれ!」
T「何?」
T君は独特な動きで近寄ってきた。
俺「おい。彼はヨッシー君だ。」
T「ふ〜ん・・・」
ヨッシー「何?何をするんな?」
俺「もちろんさっきの話の証明だ。T君に協力してもらう。」
ヨッシー「どう言うことだ?」
俺「おい。Tは彼を見てどう思う?」
するとT君は言った・・・
T「アゴがお長ごう御座います」(*- -)(*_ _)ペコリ
ヨッシー「やかましいわ!」
俺「ぶぁわははははは!!!さすがTだ!!
ナイスだ!!!」
俺「アハハハ!腹痛い・・・ほれみろ!これで
面長でアゴが出ているのは証明された!!」
ヨッシー「うるさいなぁ!」
T「わ〜い、アゴが出ている奴がここにいる〜!」
ヨッシー「お前はガキか!」
T「お前はアゴか!」
俺「アハハハ!まぁまぁ!落ち着け!」
そこでT君は満足したのか教室に戻る。
ヨッシー「全くなんて奴や!ムフフフ!」
俺「どっちもな。」
こうしてヨッシーとの付き合いが始まり
数々の話の開幕となるだった・・・