それ行けッ!ヨッシー君!!







あ〜ヨッシー・・・

どうしてそうなるのか・・・

どうしてそんなことするのか・・・

俺にはどうしても分からない・・

彼は何時、何をするのか誰にも分からない・・・


彼の生き様をご覧ください・・・



























<思いもよらぬ事>はいつも<突然>訪れるもの・・・






























それは普段意識される事はないが誰もが知ってる事でもある・・・































そして・・・その<思いも寄らぬ事>が訪れたのである・・・






































トゥルルルルルル

トゥルルルルルル





夜8時頃・・・自宅の電話がなった・・・



俺は電話の受話器を持ち上げ耳に当て、いつもの通りの言葉を相手に送る。


俺「もしもし、○○ですけどどちら様でしょうか?」

ヨッシー「○○と言いますが、J,J君はいてますか?」

俺「そんなアゴの長い人何て存じ上げませんが〜」

ヨッシー「お前か!ムフフフ!!」

俺「どうした?珍しい。またアゴでも伸びたか!」

ヨッシー「そんなもん伸びるか!」

俺「それで?どうしたんだ?」

ヨッシー「う〜ん・・・あのな、もし俺がどっか行ったらどうする?」

俺「どっか?なんじゃそりゃ?」

ヨッシー「いや、俺と遊べなくなったらどうするかな〜って。」

俺「いまいち何が言いたいかさっぱり分からんが、どうするかな〜・・・考えた事なかったからな〜・・・」

ヨッシー「そっか。ムフフ!」

俺「いつも変だが、今日はまた磨きがかかって変だぞ。何か言いたいことあったら言えよ。」

ヨッシー「う〜ん・・・あのな・・・」

俺「うん。」

ヨッシー「俺な・・・」

俺「うん。」

















ヨッシー「旅に出るんや」


































俺「え?・・・」




































思いも寄らない言葉に俺は一生懸命意味を理解しようと頭をフル回転させて考えた。


ヨッシー「どうした?」

俺「ちょっと待てよ・・・今俺の聞き違いかな・・・一生懸命考えてるんだが・・・意味が分からんのや。」

ヨッシー「俺の言ったことか?何て聞こえたんや?」

俺「いや・・・俺が聞こえた言葉は・・・」























俺「《アゴが出るんや》と・・・」




























ヨッシー「違うわ!!!!」

俺「なんだ、違うのか・・・そうよな・・・最初から出てるから何を今更言ってるのかと思ってな・・・」

ヨッシー「どんな聞き間違いやねん。」

俺「お前の言葉聞き取りにくいねん。マジで聞き間違えたぞ。」

ヨッシー「ちゃんと聞けよ!旅に出るって言ってるんや!ムフフ!」

俺「ちゃんと言えよ。で、旅に出るって?あ〜、どっか旅行か?ま・・・まさか・・・」

ヨッシー「ん?」

俺「またフラのか!最近その手の話は聞かないと思ってたが・・・残念や・・・でも、お前なら大丈夫!」

ヨッシー「違う!好きな人もいてない!ムフフ!」

俺「じゃ、何だって言うんだ?さっさと言えよ。」

ヨッシー「いや〜・・・北海道に行こうかと思ってな。」

俺「ほ〜。北海道に旅行ねぇ〜・・・で、何泊の予定なんだ?」

ヨッシー「いや、ずっとやねん。」

俺「ん?ずっと?そんなに長いのか?戻って来るんだろ?」

ヨッシー「旅行って言うより、まぁ〜住み込みの仕事なんやけどな。」

俺「仕事!?なんでまた北海道なんだ。しかも突然・・・」

ヨッシー「実はちょっと前から考えててな。」

俺「マジか!知らなかったな。何の仕事するんだ?」

ヨッシー「馬育てるねん。競争馬なんやけどな。ほら競馬とかで走ってるやろ?ああ言う馬を育てないなって思ってな。動物好きやしな。」

俺「馬育てる??まさか一から育てて走って馬に勝つつもりか!アゴ使ったら勝てるかも知れないけど・・・」

ヨッシー「競争する為に育てるんちゃう!それに勝てるか!全くもう〜!ムフフ!動物好きで、本当に育てるの!」

俺「いや・・・そりゃ動物好きなのは知ってるよ。○○専門学校にも行ってたしな・・・て、言うか向こうに行ってやっていけんのか?」

ヨッシー「今の暮らしでも良いって言えば良いんやけどな。でも、まぁバイトよりも面白そうやしな。やって見ようと思ったんや。やっていけるかどうか分からん!ムフフ!!」

俺「分からんって・・・お前そんな簡単なもんじゃないぞ?真剣に考えたのか?」

ヨッシー「まぁな〜・・・でも、やって見たいねん。」

俺「なんかな〜・・・どうも、俺から見ると軽い感じにしか感じないんだが・・・まぁお前のしたいことだから、俺はとやかく言わないけど・・・」

ヨッシー「ムフフ!なんか悪いな!ムフフフフ!」

俺「別に謝らなくてもいいんだけど・・・いつ向こうに行くんだ?」

ヨッシー「まだ色々準備中だから、1ヶ月先かな。」

俺「一ヶ月後か・・・年末とかでも戻って来ないのか?」

ヨッシー「そうやな〜。多分よっぽどの事じゃないと戻らんと思うぞ。正月とか帰りたいけど、仕事上無理っぽいしな〜。」

俺「そっか〜・・・なんかイマイチ実感沸かないな〜・・・お前が北海道に行くなんて・・・」

ヨッシー「まぁな。俺も知り合いがいなかったら、北海道なんて行けなかったからな〜。その人に仕事紹介してもらったしな。」

俺「そうだったのか・・・」

ヨッシー「専門学校行ってた時から実はそんな話は出たことあったんや。だけどな、その時は自信もなかったしな。それにゴタゴタしてたから。で、最近その事思い出して連絡して紹介してもらったんや。」

俺「ほぅ・・・まぁ・・・分からないでもないな。ゴタゴタって何があったんだ?」

ヨッシー「まぁ、いいやん。な!ムフフ!」

俺「何でもいいが向こう行っても頑張れよ・・・。」

ヨッシー「おう。電話とかするとは思うけどな。」

俺「そうか。分かった。」

ヨッシー「じゃ、またな。」

俺「うん。また。」









その電話から数日経ったある日・・・













俺はいつものように部屋でくつろいでいた。

そこに自宅の電話が鳴った。


俺「もしもし、○○ですけどどちら様でしょうか?」

師匠「俺や。」

俺「おう、どうした?」

師匠「お前知ってるか?」

俺「何を?」

師匠「ヨッシーや。北海道行く話。」

俺「おお〜、聞いたよ。」

師匠「何だ、知ってたのか。理由は聞いたか?」

俺「おう。知ってる。」

師匠「なんだ、つまらん。」

俺「しかし、驚いたな〜・・・まさか北海道に仕事行くなんてな〜・・・突然何を言うのかと思った。」

師匠「マジであいつやっていけるのか?俺にはやっていけるような気がしないぞ。第一あ〜言う仕事はきついぞ〜。」

俺「う〜ん・・・俺も不安だから本人に聞いたらいけるらしいぞ。そう言うんだから俺達には何も出来ない。」

師匠「いや〜・・・止めさせた方がいいんじゃないか?」

俺「あいつは変に頑固な所あるからな〜・・・」

師匠「そうなのか・・・」

俺「以前ヨッシーの部屋にA君と泊まりに行ったんだ。」

師匠「ほー」

俺「それで深夜まで遊んで、畳の部屋の方でAと寝てたんだが・・・」

師匠「あ〜、テレビのない方だな。」

俺「そう。それで朝何となく目が覚めて壁に積み上げてるダンボール箱を何気なく見てると何だかおかしい。」

師匠「おかしい?何が?」

俺「最初は気づかなかったが何かの気配がするんだ・・・で、壁をじーっと見てみるとそこにあったのは・・・蛇だった・・・」

師匠「ぶッ!!マジか!あはは!まぁ〜、別にそんなに珍しいものじゃないけどな!(笑)」

俺「まぁな。しかし、目覚めに蛇がいたから驚いてな。Aにも見せてやろうかと思って、起こしたわけや。」

師匠「ほうほう。」

俺「で、Aに『おい!あそこ見ろ!蛇いるぞ!食われる!』って言ってやったんや。Aも驚いてたぞ。それでな、急いでヨッシーにも見せようと
起こしたんだ。」


師匠「お〜。何て言ってた?」

俺「それがな・・・あいつ蛇を見たはずなのに、しきりに『そ〜か〜?』って言っててな。もう一度良く見ろって言ってたら、
蛇に逃げられてしまったんだ。」


師匠「あはは!あいつ蛇もわからんのか!」

俺「驚くのはその後や。ヨッシーは『あれは蛇じゃない!』と言い出して・・・じゃ、あれは何だったんだって聞いたら<ネズミ>だとさ!」

師匠「ぶはは!幾ら何でもネズミはそこまで体細くて長くもないだろう!(笑)」

俺「俺もそう言ったんだ。それにA君も見たって。それでも『違う。蛇じゃない。いるわけないだろ』と言って聞かない。」

師匠「良く分からん奴やな!大体こうもりがいたりするのに、蛇がいてもおかしくないだろ。何であいつはネズミとかは認めて蛇は
認めないんだ(笑)」


俺「分からん・・俺には分からん・・・とりあえずそれ以来その話をした時はそれはない!と言い張ってる。」

師匠「そ・・・そうか・・・じゃ〜何か?俺達が何を言っても聞かないのか?」

俺「その可能性はあるな。」

師匠「そうか・・・止めない方がいいのか?どっちがいいんだろ。」

俺「分からん・・・」

師匠「う〜ん・・・あいついないと暇になるかもな〜・・・」

俺「そうか?以外とあんまり変わらないと思うぞ。最近ほとんど遊んでなかったしな。」

師匠「そう言えばそうか・・・とりあえず一応止めるだけ止めて見る。」

俺「OK。頑張ってくれ。」

師匠「じゃ、またな。」


























そして1ヶ月が経った・・・旅立つ前日の夜・・・



俺と師匠は送別会を開こうとしたが、ヨッシーは忙しいから時間がないと言って結局旅立つ前日の夜まで会えなかった。

俺とヨッシーと師匠は、ヨッシーのバイトの先の駐車場にいる・・・

まだ寒い夜・・・白い息を吐きながら俺はヨッシーに言った・・・


俺「今からでもどっか飯くらい行けないのか?」

ヨッシー「すまんな。まだ荷物これからまとめきらないとアカンのや・・・」

師匠「明日の夜出発だろ?明日にすればいいんじゃないのか?」

ヨッシー「間に合わん。バタバタして遅れたらまずいしな。」

俺「そっか・・・てことはこれが最後か・・・」

ヨッシー「まぁな・・・ムフフ!戻って来れたらまた連絡するよ!」

師匠「お前アゴだけは気をつけろよ。迷惑かけないようにな!刺さるかも知れない。凶器にもなるから。」

ヨッシー「大丈夫!カバーつけるから!・・・って、なんでやねん!ムフフ!」



俺「うわ〜・・・寒ぅ〜・・・」
師匠「うわ〜・・・寒ぅ〜・・・」


ヨッシー「こらこら、ヒクなよ!お前ら!最後まで全く!ムフフ!」

俺「カバーなんぞしても、威力は変わらん。」

ヨッシー「そっちかい!」

師匠「向こうに行ってもアゴは磨けよ!」

ヨッシー「お前らはアゴの心配しかしないのか!ムフフ!」





















そして少しの間(ま)があった・・・

たった数秒かも知れない・・・







































その間は意味がないような・・・意味のある間だった・・・



















ヨッシーは気まずそうにその間を繋ぐ・・・





ヨッシー「ほんじゃ、行くわ」

俺「おう。元気でな。」

ヨッシー「おう。お前らもな。じゃ!」


ヨッシーは手を上げて俺達に背を向け歩き出した・・・




































ヨッシーの姿が姿消えるまで、俺達は静かに見送っていた・・・


俺はその後ろ姿を見ながら色々思い出す・・・
































そう言えばあいつに返し損ねた物があったな・・・

もう返せないのか・・・











交通量の多い道路の傍らにいるはずなのに俺には無音の世界が包んでいた。






別れはいずれ必ずやって来る・・・


だけど・・・ヨッシーと会えなくなるなんて考えもしなかった・・・


だけど・・・俺には不思議と悲しさはなかった・・・


自分でも分からないが・・・

こんなもんか・・・


そう思った。






















今まで一応ありがとう・・・

ヨッシー・・・元気で頑張れよ・・・















言葉にすることなく・・・無音の世界で俺はそうヨッシーに言葉を送った・・・



















さようなら・・・ヨッシー・・・



今度逢う時は墓場かもな・・・







後はヨッシーの姿が消えれば、これがヨッシーとの終わりだと思いつつ・・・隣にいる師匠を見た・・・




































































無表情で見送ってた師匠がぽつりと言った


師匠「行ったな〜・・・」

俺「行ったな。しかし、あっさりしたもんや。それにある意味凄い奴や。」

師匠「まぁな。普通あんな理由で行かないぞ。行く奴もいるだろうが、ヨッシーのは別物や。あいつ本当に大丈夫か・・・」

俺「止めても同じだったんだろ?それに理由は普通の方じゃないか?あいつにしては・・・」

師匠「いや〜おかしいやろ。信じられない。」

俺「ん?誰でもあいつみたいな希望は持つだろ。あんな仕事してみたいとかな。お前もあっただろうに。」

師匠「そりゃあるよ。だけど、お前だったらあの理由で北海道まで行くか?」

俺「前から馬とか育てる仕事したかった。だから、専門学校にも行ってた。それが今になってチャンスが来た。実際にそう言う環境でないと
分からないな〜」

師匠「え?」

俺「え?って?どうかしたか?」

師匠「お前・・・あいつそんなこと言ったのか?他には聞いてないないのか?」

俺「いや・・・それ以外は聞いてない・・・何で俺に嘘をつくんだ?本当の理由って?」

師匠「う〜ん・・・さすがのあいつでも正直に言うのは恥ずかしかったのかな・・・本ッ当に聞いてないんだな?」

俺「なんだ!?一体何の理由があるんだ?」

師匠「おい・・・まじかよ・・・あいつが北海道に行くって理由は・・・」




俺は次の師匠の言葉をじっと待った・・・































師匠「お前、グルー○ンUPって名前かな・・・知ってるか?」

俺「ん〜・・・ん?なんのタイトルだ?」

師匠「確か牧場か?何かで働いてるその主人公とヒロインか?が恋愛する・・そんな漫画知ってるか?俺は詳しくは知らないんだが・・・」

俺「ん〜・・・あ〜!あるな〜!最終的にその2人は結婚するだろ。その漫画。確か週刊誌でやってたな。それがどうかしたのか?」

師匠「ふむ。結婚するかどうかは知らないが・・・どうやらそれっぽいな。」

俺「それがどうかしたか?」































師匠から聞いた真の理由を聞いた俺は頭の中が真っ白になる!!



























師匠「その主人公が働いてる仕事ってのは馬が出てこないか?」

俺「ちょ・・・ちょっと待て・・・ま・・・まさか・・・」





















師匠「そうや!あいつはその漫画に影響されて北海道に行くんや!!」
































俺「はぁ〜〜〜〜〜?????」






















俺「じゃ・・何か?その漫画で出てくるような事を思い描いて競走馬を育てるその仕事を選んだのか?た・・・確かに設定は北海道で育てるのも
競走馬だが・・・嘘だろ・・・」


師匠「しかもだ・・・それだけじゃない・・・」

俺「待て待て・・あいつ動物好きで専門学校行ったんだろ?それが一番の理由じゃないのか?」

師匠「それはそうだが、考えて見ろ。本当にその仕事したいならもっと早くあいつならしそうじゃないか?それにあいつが行くと決め手になったのは・・・あいつの最終的な目標は・・・」

俺「う・・うん・・・」




























師匠「その仕事をしながら、その漫画の様な
<恋愛結婚>するまでが目標らしい!!!!」

































俺:ぶわぁははははははははは!!!!
(o_ _)ノ彡☆ギャノヽノヽノヽノヽ!! ノヾンノヾン!

















腹痛いぃぃぃぃぃ!!!
ぎゃははははは
_(T-T)ノ彡☆ばんばん!





















何を考えてるんだ!あいつは!!















ただでさえ「過去に色々」あったのに!!!!



























その上漫画の様な恋愛って・・・

何かが歪み過ぎている!!
_(T▽T)ノ彡☆ばんばん!



















それにそれじゃまるで
<仕事>より<恋愛>目的じゃないか!




















師匠「本当に凄い奴や・・・俺は自分では行動力あると思ってるがあいつの訳の分からん行動力には負ける・・・」


俺「は・・・腹痛い・・・俺には・・・俺にはそんな
理由で北海道なんぞ行けない・・・」(T▽T)アハハ!


師匠「俺でも無理だ!そんな恋愛に憧れるみたいな事も言ってたが・・・あまりに理想と現実が
離れすぎてる!」


俺「それに動機が軽すぎやしないか?ぶッ・・・
あははは!恋愛って!!」


師匠「だろ?・・・本当に凄いわ・・・止められなかったが・・・これで良かったんだろうか・・・」

俺「いいだろ!あいつは何処でも
やって行ける!心配無用だ!」

師匠「だな。これからどうする?」

俺「食いに行くぞ!何だか馬鹿馬鹿
しくなってきた!祝おうぜ!」

師匠「おう。しかし、つくづく分からん
奴だった・・・」

俺「この先分かる日なんて来ないだろ!
行くぞ!」

















俺「しかしそれじゃ〜ヨッシーは永遠に戻って
来れないな・・・」


師匠「あぁ・・・まぁな・・・」







二人はかじかむ両手をポケットに
突っ込みながら車に向かう。

白い息を吐き笑いながら・・・


こうして普段の生活に戻っていく・・・









ヨッシーよ!素晴らしい思い出有難う!!
























<そして・・・また会う日まで>