初めの真実

〜師匠編〜





俺は幾つかの運命的な出会いを経験している・・・

その内の一人・・・師匠・・・

そもそも師匠とはどうやって出会ったのかお話しよう・・・





1年の2学期になるかならないかのある日・・・




俺は一人で外の通路を通っていた。

すると正面から見知った顔が俺の方に向いて歩いてくる。

相手は俺に気づいていなかったが、近づくにつれ相手が俺と気づき声をかけてきた。



M「よう!J.J」

俺「おう!M!」


彼とは中学時代から付き合いだ。

クラスは違うが普段休みの日などは良く遊んでいる。

二人とも自然と立ち止まった。


M「どこに行くんだ?」

俺「教室に戻るところ。」

M「そうか。なんか学校で中々会わないからここで会うとちょっとびっくりするな。」

俺「そうか?中学でもこんなもんだったやろ。クラスも違ってたし。」

M「そうだけど・・・他に知ってる人っていないからな。だからかな・・・」


そんな話をしているとMの後ろから声が聞こえた。


「おい!M何してるんだ?」


俺とMは声をかけて来た生徒を見る。

師匠だった・・・


M「いや、友達に会ったから話をしてたんや。」


師匠は俺を見た。そしてM君に話かける。


師匠「こいつ?」

M「うん。J.Jって言うんだ。中学からの付き合い。」

師匠「ふ〜ん・・・」

俺「じゃ、俺は教室に戻るから。」

師匠「戻って何するん?」

俺「いや、別に・・・何もないけど・・・」

師匠「そうか。M、俺先に食堂に行ってるわ。」

M「おう!」


師匠はそのまま立ち去った。


俺「一緒に行けよ。同じクラスの友達だろ?俺も行くから。用事ないやろ?話することも。」

M「そうやな。休みの日にも会うしな。じゃ、行くわ。」

俺「じゃな。」



そして、数日後・・・


授業も終わり電車に乗っていた俺は椅子に腰掛けウォークマンで曲を聴いていた。

すると、俺と同じ制服を着た生徒が隣の車両から移ってきた。

良く見るとそれはMと師匠だった。

初めは俺から離れたところで立って吊り革を持ちながら話をしていたが、師匠が俺に気がついたらしく俺を見ながらMに声をかけ
2人で俺を見ている。

Mが俺に手を挙げた。

俺も手を挙げ返したところで2人はこちらに歩いてきた。


M「よう!座ってるんやな。」

俺「たまたま空いてたからな。」


俺は出来るだけ隣の人との間を詰めて席を勧めたが、1人分しかスペースがない。

M君が師匠に席を譲ろうとすると師匠は拒んだ。


師匠「ええよ。立ってるよ。」

M「座ってくれたらいいで?」

師匠「1人分しかないやん。自分座れよ。」

M「じゃ、俺も立ってるわ。」

俺「師匠はどこまで帰るん?」

師匠「俺はこの電車の終点で乗り換えて3つ程行ったところ。」

俺「遠いな〜。学校に行くまでしんどくない?」

師匠「まぁな。でも慣れるよ。今はそんなにしんどくはないかな。」

俺「へぇ〜・・・普段何してるの?」

師匠「そうやな・・・漫画読んだり、テレビ見たり、釣りしたりかな。」

俺「釣りしたことないけど楽しい?」

師匠「釣れたらな。釣れない時はすぐに帰るけど。」

M「俺もしたことなわ。」


そんな話をしながら自分が降りる駅に着いたので、そこで別れた。

その以来ほとんど顔を会わすことがなかった。



そして、高校2年の夏休み前のある日・・・



俺は教室で休憩時間にクラスの友達2人と話をしていた。


A「もうじき夏休みだな。」

俺「うん。」

A「J.Jは何か予定はあるのか?」

B「あるはずないやん!」

俺「うるさいな〜。」

A「なんかどっかに行きたいな〜!どっかないか?」

俺「彼女とはどっか行く予定とかないのか?」

A「ない!全然ない!金もない!」

B「この前どこかに行ったって言ってなかった?」

A「うん?あぁ!行った!!だけど、遠出でもないしな・・・J.Jどっかないか?」

俺「う〜ん・・・」

B「J.Jの家ってのはどう?泊まりに行くとか。」

俺「いや!狭いし!誰も来たことないしな。」

B「じゃ、俺らが初めて行ってあげるわ!」

俺「いいよ〜。来ていらん!」

A「どっか考えておいてくれ。」

俺「何も思いつかないぞ。」

A「任せたぞ!」

俺「おい!何処もないって!俺だって金ないし!」


冗談なのか本気なのかは分からないが、半ば強制的に任された形で話は終わった。

その夜、俺はMの家に電話した。
M「おう!どうした?」

俺「すまんな。夜分に。」

M「いいよ。まだ8時やし。どうしたん?」

俺「いや、実は今日は同じクラスの友達と夏休みどこかに行こうと言う話になってな。」

M「ふ〜ん・・・」

俺「どこか良いところないかなと思って。」

M「俺もあんまり知らないしな〜。お金はあるの?」

俺「ない。どうする?自分もどこか場所決まったら行くか?」

M「どこかにもよるけど・・・やめておくわ。」

俺「そうか。分かった。ありがとう。」


それから数日後・・・

俺は金のかからない場所として親の実家・・・お祖母さんの家にしようと連絡をとり、許しが出たのでA、B君に話しをした。

A、B君ともに「真面目に考えていたのか!?」と驚きつつも行こうと言う結果になり、師匠にも話をした。


話は予想外に大きくなって行く・・・

最終的にはA君カップルにB君、同じクラスの女子1人に同じクラスの顔見知りの男子C君・・・そして師匠とその友達D君が集まった。

自分を含め男6人、女2人の計8人。




そして、夏休みに入り出発日・・・




俺は待ち合わせの駅の切符販売機の前に居た・・・

時間は12時過ぎ・・・

人が俺の周りを行き交う中、見知った顔がないか見回すが見当たらない。


俺(ま、予定より早く俺が来過ぎたからな・・・)

内心そう思いつつその場で待った。

目的地を確認したり、時計を見たりとしていると、A・B・C君が俺を見つけて近寄って来た。


A「おっす!早いな!」

俺「あれ?3人?彼女は?」

A「もう一人の友達と一緒に来るみたい。」

俺「そうか。しかし、3人で待ち合わせして来たのか?」

B「たまたま。Aとは一緒だったけど、Cとは本当偶然。」

俺「そうか。皆いつ来るかな。」


そう言ってると女2人も来た。


A「おう!遅かったな!って今来たところだけど!これだったら、5人で来た方が良かったんちゃうん?」(笑)


メンバーが集まるにつれて全員のテンションが上がってるのが分かった。

残りはD君と師匠だ・・・

しかし、予定の時刻が迫ってるにも係わらず来る気配がない。

待ってる内にもう電車が来る5分前になっていた。

少しずつ場が沈んで行く・・・


A「おい!あの2人は?」

俺「分からない・・・」

A「来るって言ってたんだろ?」

俺「あぁ・・・ちょっと電話してくる。」


公衆電話に走りこみ、師匠の自宅に電話した。


プゥルルルル・・・


いないのか?・・・と、言うことは遅刻かも知れない。

俺は受話器を置き、皆の所に戻り、電話に出ないことと遅れてるのかも知れないとの考えを伝えた。

皆は仕方ないなと1本電車を見送った。


待ってるのは辛いだろうと、俺は次の電車が来るまで好きなことしておいていいと言い、待ち合わせに戻ることを再確認して
全員がバラバラになった。


俺は師匠が来るといけないので、その場にて待機していた。


そして、次の電車の到着予定時刻の10分前・・・


バラバラになっていたメンバーが戻って来た。


A「来てないのか?」

俺「あぁ。」

B「もう行かない?時間どんどん遅くなるし。」

俺「そうだな・・・もう一度電話してくる。出なかったら出発だ。」



しかし・・・やはり出なかった。

皆少し不機嫌になる。


A「もう行こう!待ってられない!」

俺「分かった。行こう。」


電車に乗り、目的地の駅に向かうまでの2時間の間、皆話しながら盛り上がり、景色が田舎に近づくにつれ
背の高い建物が少なくなり景色が木々の多い風景へと移り行く・・・


しかし、そんな中俺は師匠達のことが気にかかっていた。

目的地に着いた皆は電車を降りた第一声は、「あ〜!疲れた!田舎やなぁ〜!」だった・・・

俺は降りてすぐさま皆に電話すると言い公衆電話に向かった。

出ないかなと思いつつダイヤルを押す。


プゥルルルルル・・・



ガチャっ!



師匠の母「もしもし?」

俺「もしもし、師匠のお宅でしょうか?」

師匠の母「はい、そうですが。」

俺「J.Jと言いますが師匠はいらっしゃいますか?」

師匠の母「ちょっと待っててくださいね。」

J.J「はい。」


内心出ないだろうと思っていたので、軽い驚きを覚えつつ師匠が出るのを待っていた。



すると・・・




師匠の母は呼び掛けた。



師匠の母:師匠電話やで!



すると遠くの方で師匠の声が聞こえたッ!

俺は心の中で叫んだ!


俺(いた!!文句言ってやらないと!!)


すると師匠は驚きの一言を言い放つ!





























師匠:誰?J.Jだったら居ないって
言っておいて〜!
























え??( ゚听)























師匠の母:J.J君やで!出なさいよ!


師匠:いいから、いいから。























師匠の母「ごめんね〜。居るかと思ったんだけど、どっか出かけてるみたいで居てないんよ〜」




俺はあまりの驚きに言葉が出なかった・・・


師匠の母「もしもし?」

俺「すみません。えっと・・・居ないのですか?」


また奥にいる師匠に声をかける。



師匠の母:本当にいいんか?

師匠:J.Jやろ?いいよ!言ってくれ!





師匠の母「<やっぱり>居ない
みたいなんよ〜。」



























師匠のお母さん・・・


























何かと全開ですよ?(TT;)

























しかし、良〜く分かりました・・・
























ただせめて受話器口を押さえて
くださいませんか?

























大雑把過ぎますッ!!(T_T)



























それに聞けば聞くほど俺のハートがボロボロになるので、もう聞かないでください!!




















ちゃんと<ほぼ>直接本人からバッチリ
聞いてますッ!!
(T▽T)イイカラ、イイカラ・・・



















<やっぱり居ない>のなら仕方ないこと
ですからぁ〜!(TдT) シクシク

























俺「・・・分かりました・・・ありがとうございました・・・」

師匠の母「ごめんねぇ〜。」

俺「いえいえ。では、失礼しました。宜しくお伝えください。」




俺はあまりの驚きとショックに怒ることもままならず、受話器の重みで元の位置に戻した・・・



A「おう!どうだった?居たのか?」

俺「分からん・・・」

A「え?分からんってどういうことだ?」

俺「あ・・・いや・・・居なかったよ・・・何してるのか分からないってこと・・・」

A「そうか・・・ま、行こう。待ってられない。」

俺「そうだね・・・あははは・・・」



こうして師匠とその友達を除くメンバーで楽しんだ・・・

一応思い出となり良かったのだが・・・


後日・・・師匠を追求・・・


俺は当日家にいたのを知っていることを伝えた・・・

軽く驚いたようだが、あっさり居たことを認めた・・・

ただ・・・正直な理由が分からず迷宮入りとなって幕を閉じた・・・

















俺はこの時初めて「図太い神経」と言うのを身近に感じたのだった・・・