プロレスにはドラマがある

殴る、蹴るだけの喧嘩じゃない! 
そこには様々な人間模様があるのだ・・・

遠くにあった三冠のベルト

2000年、三沢らの大量離脱による全日本プロレス崩壊の危機によって生まれた「佐々木健介 vs 川田利明 」。
新日本 vs 全日本、いわば猪木、馬場の代理戦争といえる大きな試合があった。
あれから7年、再び両者は激突することになった。
しかも全日本のリングでの三冠戦。


健介には1985年にデビュー後、143連敗という記録が残っている。
まったく勝てない日々が続き、健介は道場に暗い影を落とす。
そんな健介に馬場の奥さんである元子夫人に励まされたことがあったという。
まるで恩義を返すかのように全日本を盛り上げ、柱となり戦い続けている。


対する川田は1983年にデビュー後、205連敗。
とりわけ全日本という団体は高身長の選手が多く、川田は際立って小さかった。
身長の小ささを気合でカバー。
鶴田も「気迫が凄い!」と言わしめる程に見る者に張り詰めた緊張感が伝わるファイトで徐々にトップへと上り詰めてゆく。


当時は誰もが2人が全日本の頂点に立つなどとは考えもしなかったことだろう。
全く勝てない日々が続くプロレス人生を味わった2人。
この2人が三冠のベルトをかける。


年齢は共に40歳を越え、肉体的にはピークを過ぎている。
それでも試合は素晴らしいものだった。







感情と感情のぶつかり合い。
ロープワーク一切無しのどつきあい。
華麗な技など無く、何年も使い続けている自分の持ち技をお互い出していく。
危険な技をかけられても、精神力でフォールを返す。
何十年と酷使したその体で。









健介の猛攻により川田は試合中に左目が見えなくなっていた。
最後はノーザンライトボムにより健介の勝利。



試合終了後、2人は大の字のまま暫く動けなかった。
壮絶な試合だったことを物語るファンへの無意識のメッセージであろう。
川田は嗚咽を漏らしながらもマイクを握り締める。


「健介、昔からある全日本のベルトだ。大事にしろよ」





連敗続きだった頃から見続けてきた三冠のベルト。
その時に見た三冠のベルトはとても遠く、そして眩しいほどに輝いて見えていただろう。
ベルトの元に辿り着くまでの道のりは険しかったことだろう、川田にとっては。








そして今度は健介が三冠のベルトを輝かせる番だ。






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