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* 1994年5月、わたしはこの薔薇と出逢った。正確にはその3年前
であるが、本通ハミルトンガーデンで200本の薔薇を世話し始めて、こ
の年のこの月に彼女の比類無い色と姿に出逢い、感動した。たった一輪の
この花のすばらしさを独り占めできず、店にいた両親をその場へ呼んだ。
二人とも同じように感嘆の声を上げながら見つめた。その翌年今度は京成
バラ園から取り寄せて自宅の庭へ植えた彼女が、これも胸打つ一輪を咲か
せた。秋の夕暮れだったにもかかわらず、わたしは夢中でシャッターを切
った。10月5日のことだった。
* 5月中旬から咲き始める中咲き。花保は8~11日間で、花期は短く
て約2週間~20日間。どの花も発色は揃うものの、写真のような成型花
になることは稀。それだけにこうした花を見ることができた瞬間は、こと
ばにできない幸福感を感じる。ステムはほどほどに長く、硬度はやや良。
花弁が雨をたっぷり含むと、花首が折れることもある。この花色が秋にや
や濃くなるのは、底に”青”を秘めているからではないかと独り感じてい
る。”赤”ではなくて”青み”がかったピンクなのだ。
* 生育は旺盛だが分枝は少ない。つまり腋芽がさほど伸びない。基本的
に直立性が強く、時に横へも張り出す。いずれの場合も立ち姿全体は端然
としているという表現がぴったり。剪定後の成長に特に変わった個性はな
く、シュートの出も少ない。全体におとなしい。しかし開花は雄大だ。
* 元肥は通常通りでよい。NPKすべてたっぷりと施してもタイミング
がまちがっていなければ、多すぎることにはならない。しかし礼肥や追肥
が多すぎると、必ず花に悪影響がある。花型が乱れる。有機肥料のみを与
え、木酢やEM、HBをしっかり施用すると生育は安定する。ただし、ど
んなに丁寧な手入れを行なっても、それに単純に応えた勢いというものを
決して見せてくれない。その意味で自己主張の強い薔薇と言えるかもしれ
ない。
* 4月9月という月に水分が少ないといじけてしまう。安定感が崩れる。
その安定感確保のために、植底に日向石・木炭・ミリオンを必ず入れる。
ボカシ肥料を土と混ぜた後に、さらにくん炭もたっぷり混ぜるとよい。く
ん炭はミリオンの働きを穏やかにまた持続的に高めてくれる。
* 剪定はそれまでの枝の勢いを見て判断し、強弱を決める。「初恋」や
「プリンセス・オブ・ウェールズ」( Fl )がときおり見せるような、花
枝が極端に短いままに蕾をつけてしまうことはない。だから切るポイント
に迷わないはずである。花殻摘みは基本通りに行い、あまり深く切りつめ
ないようにしないと、その後の整枝がやりにくくなる。
* ガン腫病に対してはじめはあまり耐性がないが、年々少しずつ克服し
ていく可能性を見せる。その他の病気にはもともと耐性があり、あまり衰
弱しない。ボトリチスに犯されることはまったくないし、葉に発生したベ
ト病も翌年からはまったく見ないことになる。よほどのことがない限りう
どん粉病にも罹らず、メイアン自身がそれを保証している。「アンチ・ミ
ルデュウ」の代表花だと。
害虫はすべて来る。この薔薇を好まない生物は地上にいないかのようだ。
コガネの幼虫による根の食害が特にひどいので、地植だとそばに生えた雑
草の数本を放って置いて育つままにし、十分な大きさになったところで根
を残して地上部だけ刈り取る。こうすると雑草の根のそばへ暮らしの拠点
を置いているミミズたちがそのまま繁殖を続け、コガネの卵を片っ端から
食べてくれる。また、容器植の場合は、寒冷紗で表土を覆っておけば産卵
そのものを防げる。爪の構造が成虫を身動きできないようにさせてしまう
のだ。簡単に捕殺できる。ナメクジによる生葉の食害があったときは、気
の抜けたビールを底の浅い容器に入れて夜間株のそばへ置き、中へ誘殺剤
もいくらか入れておくと退治できる。
* 灰白色のいわゆるホワイトリーフのものなら、セネシオ・レウコスタ
キスやラムズイヤーの豊かな茂みが似合う。だがこの薔薇のコンパニオン
として最もふさわしいのは、有毒植物ならエニシダ、ハーブならレモンバ
ーム。彼らの葉も花もマリアとともに眺めると美しさが増してくる。
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(ミリオン=珪酸塩白土……下記の栽培
ワンポイントを参照)
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