-栽培ワンポイント-
「枯死後の処置について」
言うまでもない、薔薇の一株の枯死とは全身全部位の細胞死を言うのであって、
一部分が枯れたからといってそのまま死を意味しない。地上部が枯れても根が少し
でも生きていれば、その株はよみがえる。ただしわたしたちが何もせず放置すれば、
山林や川辺に自生しているものでなく栽培株の場合、ほとんどそのまま死に至る。
だからまず蘇生を試みなくてはならない。
容器植であれば数日間、できれば一週間から十日間ほど根を水へ浸けっぱなしに
しておくとよい。ときおり新鮮な水にとりかえる。するとかなりの確率で新しい根
が生まれて伸びてくれる。地植であるときはまず流水で根を洗い、それから傷んで
いる根だけを切り取って白根を残す。そして水にしばらく浸けておき、十分に水揚
げができてから庭土ごと容器へ植え直す。気温の高い時期であれば何度もその容器
を水に沈め、くりかえしたっぷりとした吸水をさせてやる。それから地に下ろす。
この間を一か月ほど見た方がよいことも多い。詳細は鉢植講座第3回の冒頭にあ
るから再読を。
以上が蘇生の基本だ。ただ枯れてきた原因や環境、気候などの複雑な要因が重な
りあっていて起きたことだから、そそくさと事を済ませて原因と蘇生法を単純に企
まない方がよい。実際にどのようにすればよいかはかなりの知識と熟練が必要であ
り、多くの人たちは迷いながらの実践となろう。だが失敗を怖れずに懸命に試みる
ことだ。経験を積むしかない。わたしはこれまで延べ51株の薔薇を蘇生させた。延
べというのは、二度枯死しかけた株が二株あったからで、そのようなことも起こり
うる。自然相手に万全ということはない。
さて、それでも枯死してしまった後、皆さんはどうしているか。ゴミとして、捨
ててはいないか。捨てることは消却であり削除だ。経験したことを次へ活かすだけ
でなく、枯死した株に生きている株のために役立ってもらった方がよい。
( 1 )その一株の全身をくまなく丁寧に観察する。粗雑な捨て方をするだけでは何
も得られないしわからない。特に丁寧に見るべきは枯れた根の先端とクラウンの底。
地でも鉢でも土から抜いたときに根の先端が切れたり傷んだりするものだ。だから
ゆっくりと丁寧に抜く。そして先端が土の中にあったままの状態で見えるようにと、
荒くでも土が少し付いている状態で抜くとよい。抜き終わったら何かの容器に溜め
ておいた水で静かに洗う。土を落とすのだ。それから先端を見る。できればルーペ
を使う。すべての根を見る必要はない。数本を選んでじっくりと先端を観察する。
( a )つるっとしているとき……その根も地上部もゆっくりと枯れていったこと。
つまり枯死の原因が何であったとしても寿命が尽きるように徐々に弱って
いったとわかる。
( b )根毛があったとわかるようにごつごつとしていたり、または切れ切れな状
態であるとき……その株が急速に枯れていったことを示している。水分不
足や病死であったことを示す。特にルーペで拡大してみたとき、根冠がぼ
ろぼろの状態に見えれば、まず病死であったことは疑えない。
次にクラウンの底について 栽培年数が5年を超えていると、この底は少し
も平坦でなくごつごつしている。凹凸の凸の長さを見よう。小指一本分ぐらいの突
起であれば、その株はまだ成熟していなかったか、成熟し始めだったことを物語っ
ている。そして一本以上の長さであったならすでに成熟期へ入っていて、枯死した
原因はそう多くはないとわかる。そこで手入れや手抜きに原因があったかどうかを
丁寧に振り返ろう。思い当たることがあれば以後気をつけねばならない。またこの
底の手ざわりで、いかにもその凸が根本であったものだったときにはそれぞれの植
わっていた土を見直したり検めねばいけない。根が生長伸長と同時に別に根枯れも
進行していたことを語っているからだ。必ず原因がある。この場合地植であったな
ら天地返しをしておいた方がよい。鉢植えであったなら植わっていた用土を再利用
せず、日光消毒の上しばらく寝かせておく。
( 2 )根や枝は鋏で、大きいクラウンはノコギリで、できるだけ細かくする。この
とき、前もってしておくのは高温期であればゴミ袋等に入れて密封し、太陽光にさ
らして温度による消毒をし、それ以外の季節にはHB101などを垂らした水に30
分程度浸けておく。それから遺体を細かくする。そして根頭ガン腫病でなかったと
きには庭土へそのまま混合してやり、もしその病死であったのなら他の堆肥づくり
の時に混合する。ただしこの場合も温度消毒を事前にしておくように。そしてもし
もガン腫病死であったなら、燃やして後の灰をアルカリ資材として用いてやる。こ
のとき灯油などをかけて燃やしたりしないように。
細かくなった薔薇の遺体も灰も土や堆肥の中でどうなっていくか 土にな
る。生きている間に土から得ていたものを、土へ還してやるのだ。微生物たちはよ
ろこんで分解してくれるが、それは自分たちが育てたものでもある薔薇だからだ。
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