* 日本原産の重要な原種「ロサ・ウクライアナ」( テリハノイバラ )を先
祖とする、きわめて伸長力の強いランブラー。咲き始めはコーラルローズ色
で、しだいにライトローズ色になる。花芯は黄色。暖地では微香だが、冷涼
な気候の長いイギリスなどでは「もぎたての林檎の香り」を放つ。しなやか
な蔓と丈夫な木部を持ち、全体に優美な姿が親しまれている。蔓の老化はか
なり早く、開花後二年で花付きは極度に悪くなる。しかし非常に育てやすい。
初心者が真っ先に植えればよい品種。ウィーピングを楽しめる。2~5輪の房
咲きになり、一斉に開いたときの華やかさはみごと。
* 5月下旬から咲き始める遅咲き。花保は7~12日間。花期はおよそ3週
間。返り咲きは100%しない。
* 元肥は、冬よりも夏の元肥を増やす。そして冬のKは草木灰とし、夏の
Kは硫酸カリで与える。Nについては、冬はPよりも少し減らし、夏は逆に
PよりNの方を少しだけ増やす。これは、花後の栄養成長にかなり多量のN
を欲しがるから。9月または10月に、消石灰を一度だけ表土と良く混合する。
追い肥の種類は何でも良いが、2回に1回はうすめでよいから微量要素を補
給する。マグネシウム・亜鉛・ホウソ・モリブデンの欠乏を起こすと、その
後の生育に大きな影響が出やすい。くん炭を表土にすきこんだ上から塩化カ
リの水溶液を2000倍で注ぐのも効果が高い。アルゴフラッシュ等化成液肥
への反応は凄く早い。
* 剪定は基本的な蔓薔薇の切り方で。花後の枝を長く残す切り方をしても
意味がない。
* 耐病性は強い。たいへん密に繁るので風通しを良くする整枝をこまめに。
病気では黒点病だけが問題。耐性が増進しない欠点はあるが、治療すれば抑
えられる。害虫ではアブラムシとシャクトリの害。ただ発生初期に退治しや
すい。モッコウバラに次いでアシナガバチがよく来てくれて害虫を捕食する。
そのためか、捕殺してくれる小蜘蛛たちが敬遠する。
* シュートは気温と日照が十分で肥料切れもなければ、いつまでも伸び続
ける。これほどの伸長力があるのは、テリハノイバラを母親に持つからだろ
う。10mを超えることも多い。根の張り方は、細いままでもしっかりした根
をかなり長く伸ばすタイプ。
* 満開のとき、コーラルとライトローズの二つのピンクが混ざり合い、か
なり華やかな雰囲気になる。少しだが結実することがあるので、ほとんどの
花が終わったとき、早めに花殻摘みをする必要がある。そのときにはもう来
春に花を咲かせるシュートが、少なくとも一本は伸びはじめているはず。先
端をゾウムシにやられないように。 |
|
|
|
|
|

 |
|
-栽培ワンポイント-
「花後の栄養生長」
植物と動物のさまざまな違いの中にリン酸に対する反応のことがあって、
わたしたち栽培をする者の耳目を集める。
リン酸が薔薇の生殖生長における、つまり花を作りひらかせる重要な栄養
素であることは誰しも知っていよう。わたしたちの血液中にもあり、わずか
な量に過ぎなくとも生体細胞の活動には欠かせないものとなっている。
ところが、このリン酸を外部から直接取り入れたり吸入すると人間にも動
物にも有害であり、そのことはこちらで確認できる。薔薇はもちろん平気で
あるどころか葉面等から吸収して利用するほどである。
この違いは薔薇が言わば雌雄同体であり、その役目を花が持ち、生殖生長
と栄養生長のどちらを優先させているかによってリン酸要素の役割も変わる
ことと関係がある。それに対して人間等では雌雄が別であり、雄の精子が雌
の生殖器官内へ入らなければ生殖が始まらない。したがってリン酸の役割も
一生を通じて変わらず、生殖を左右しないし、栄養摂取による身体の成長、
細胞の新陳代謝などとも直接関係しない。
しかし薔薇にあっては花後にわたしたちが切ることで、生殖から栄養生長
への優先順位の変化が起こる。切ったところの芽が動き、花梗として生長し
ていく段階で両生長が並行しながら、しばらくは栄養生長が主たる動きとな
ってそこには窒素が重要要素となる。リン酸も絶えず生長点へ送られていて
も、そちらが主となるのは花の形成に段階が進んでからだ。
ここでわたしたち栽培する者が知っておかなくてはならない最もたいせつ
なことは、アデノシン二リン酸が薔薇の体内でアデノシン三リン酸となって
いる時点で、生体活動のエネルギーとしての役割、働きはまったく変わらず、
しかもそれまでの生体全体の形成エネルギーから生殖のためのエネルギーへ
と目的を変えていることだ。蕾がふくらんでいくのも、花弁が開くにつれて
大きくなっていくのも、生体形成と考えて必ずしもまちがいではないものの、
実態は生殖可能な仕組みを作るための消耗エネルギーとなっている。栄養生
長が主である間の枝葉の生長と、生殖生長が主となっている間の花梗におけ
る枝葉の生長とでは見た目の大きさ、太り方、伸び方すべてにおいて異なり、
生殖生長の間はさほど枝葉は大きくならないし、伸びない。細胞を大きくす
るのもその数を増やすのも、花へ集中しており、アデノシン三リン酸はその
ために使われているのだ。このことは小輪を咲かせる品種ほど理解しやすく、
大きくなるタイプではわかりにくい。花の形成のダイナミズムにより、枝葉
もリン酸を多く得て大きくなったり伸びたりするからだ。
皆さんはシュート処理をしたときに、残した頂芽がなかなか動かないとい
う経験をしたことがあるはず。それは生殖生長に多大なリン酸が費やされて
いる最中に、急に鋏によって栄養生長への転換が図られたからに他ならない。
このときそのシュートでは何が起きているのか。太くなりながらぐんぐん伸
び続けていたシュートほど極めて多くの酵素が窒素から作られたタンパクに
よって生まれていて、それらから栄養生長に必要な酵素への大転換が行われ
ている。それはもちろん新しい花梗を形成して花を取り戻すためだ。思春期
の間や、成熟期の初期にはシュート処理されたところの芽はだいたい1週間
以内に動き始める。しかし成熟期に本格的に入ってしまった薔薇のシュート
では、しばしばそれ以上の期間を経てから動く。花後の栄養生長を開始する
までにそれだけの時間を必要としている。
なぜそのような転換が起きるのかと言えば、必ず茎頂で作られるホルモン
であるオーキシンに関連する。つまり切ることで突然茎頂が喪われれば、オ
ーキシンの生産部位を変えなくてはならない。その変化対応の仕組みが作ら
れるまでの時間、作られてから生長を開始するまでの働き始めに時間を要す
ることになる。酵素はホルモンにコントロールされているからだ。
ともあれ、花後の処理によってから始まる枝葉の生長は、当分の間栄養生
長を主としていることになる。それは新しい花を作り出すための、繁殖のた
めの、準備期間であり、しかもその花々にふさわしい樹の姿を作り出すため
の活動に他ならない。
▲
|
[国際化学物質安全性カード] |
|
|
 |
-栽培ワンポイント-
「花殻摘みと咲き殻摘みの違い」
花後の手入れとして、通常この二つの言葉は同じ意味で使われており、区別されていな
い。しかしより丁寧な手入れとするためには区別し、そのときに応じて摘み方を変えた方
がよい。
花殻摘み……房咲きになったときやもともと房でしか咲かない品種の花後に行うやり方。
房のほとんどが開ききったり咲き終わったとき、まだ蕾や開きかけが残って
いる段階で摘む。病害虫による何らかの被害を残りの花が受けているケース
もある。
四季咲き品種であれば次番花を早く、あるいは咲きそろわせるために行うこ
とになり、一季咲きであれば実を成らさせないために行う。
房のうち、まだいくつかを残して花を開かせよう、楽しもうという目的で全
摘せずにおくのは、一季咲きでは大きな影響はないが、四季咲きでは影響が
ある。つまりそうして残した花は、総花数の多い品種ほど小さくなりやすく
また気温や湿度によっては開花しないままになることもある。そして新しい
花梗の充実を遅らせやすい。
したがって、四季咲きでは房のほとんどが散り始めたら、株が若い間ほど房
を摘みとった方がよい。逆に、丈夫で立派に育った成熟株にあっては散るつ
ど一輪ずつを摘みとるようなやり方でよく、もはや大きな影響は受けない。
なおジュランビルのような一季咲き品種では、一株のすべての花が散り終わ
るころに摘むと、すでに生殖生長で種子の形成に入り始めているのでよくな
い。その状態で摘む手入れをするとシュートの伸びに影響がある。やはり房
の花のうち主な数輪が散ったら一斉に房摘みを花殻摘みとして行うべきだ。
咲き殻摘み……花殻摘みが整枝の意味合いが濃いのに対し、咲き殻摘みは整枝の意味を持
たない。すなわち、一輪ずつや一房ずつ順に日数をかけて摘んでいくのは、
樹勢に大きな影響を与えないのであり、刺激としてもたいへん小さい。
したがって実を成らせることを防ぐ意味も低く、一輪ずつの鑑賞期間を長く
とるためとの意味が強い。
ただ、一季咲き・四季咲きの別なく、一株の全輪が散るのを待つのは整枝の
目的を兼ねることになるので注意。つまりそのような摘み方はシュートの伸
長を盛夏や晩秋にずらせ、気温の安定にシュートの充実とクラウンの肥大を
託す栄養整枝の狙いを持たせることになる。それは一種の賭けであり、気温
の安定や降雨への期待ができないときは行うべきではない。
特に鉢植えで一輪ずつの咲き殻摘みを順次行うのは、樹としての成長リズム
を狂わせやすい。すると全体の成長力も定まらず、条件によってはみすぼら
しい樹で推移してしまう。だから初めは一輪ずつの摘み方をしても、花期の
終わりになる前にすべてを摘み終えるようにしよう。そうすれば地植よりも
むしろ安定した成長を見込める。
▲
※なお、礼肥追肥のタイミングは、いかなる場合も咲き殻摘みの時ではなく花殻摘みの時である
のが原則。
 |
-栽培ワンポイント-
「ランブラーを切りすぎたとき」
ランブラーを育てていて、花後に「つるが長すぎるから」と切りつめる人がいる。この場合、
タイミングが、切りすぎ後の手入れの違いとなる。
(1) 冬の休眠期に切りすぎたとき……つるの総数を減らす切りつめであったなら、コンパク
トなランブラーになるだけであり、生育への大きなダメージはない。ただし成長力への
ダメージはあり、減った葉数を取り戻そうとするシュートの発生は減ることになる。コ
ンパクトな樹形を維持しつづけて、寿命も短くなる傾向がある。植え位置や鉢の置き場
所を見直そう。
(2) 閉花後すぐに、花を咲かせたつるの全長を短くしすぎたとき……剪定と同じである。シ
ュートが出やすくなるも、サイドシュートは短く止まる傾向にある。2~3mがその場
にふさわしいのであれば、そのサイドシュートまで付け根から切除したり、さらに短く
したりしないように。そのような処置はマイナスの刺戟となる。ランブラーはラージク
ライマーのように、ベーサルや他のサイドへのプラスの反応を起こさない。
(3) 伸び続けて長くなったシュートへ交代させる目的で、秋や初冬に短くしすぎたとき……
何も問題はない。しかしそれは中途半端な整枝であり、どうしても切る必要があるなら
夏に付け根から切除しておくようにしよう。剪定である。もしもその時点でベーサルシ
ュートが出ていなくても、そのときにあるつるのほとんどを短くするのでないかぎり、
シュートを出させやすくなる刺戟となる。
(4) ウィーピングであるかどうかにかかわらず、つるの総数が多すぎるからと減らしたとき
……春に切除するのは問題ない。ただし総数の1/3以内の減らし方にとどめよう。春
に減らしすぎると、全体に「何だか変だ」という後悔をしやすい。
(5) 花後に礼肥を与えると同時にすべてのつるを少しだけ短くした……最善の手入れである。
ただしシュート処理に当たるようなことは決してしてはならない。ランブラーはシュー
トを切らないのが原則で、このようなタイミングでシュートまで切ると、見た目にわか
りにくくともランブラーローズはかなり大きなダメージを受ける。ブッシュ性がないか
らこそランブラーになれたのだ。その生長点を摘むのは、その薔薇の美の源を断つに等
しい。ブッシュやシュラブであれば残された部位全体の充実が始まる。だがランブラー
はまずそうはならない。

|
| ▲ |
|
|
|
|
|