-栽培ワンポイント-
「芽の黒ずみ防除」
芽が黒ずむのを防いだり、すでに黒ずんだものを治療する方法がある。
この黒ずみは複数の病原菌が芽の表の細胞を壊死させることで起きている
症状で、その芽は活発に細胞生長ホルモンを分泌しており、芽全体として病
原菌と戦っている状態を表している。だから枝枯れのような色になるのであ
り、細胞壁の破壊をくいとめるための葉の細胞の戦いとは別の色となる。
もしも黒ずみが芽全体へ及ばず、芽が伸長を続ければ、薔薇の側が有害菌
を撃退している証であり、負ければほとんど伸長しない。したがって耐病性
増進のためにも、伸長してきたらその部位へ薬剤を施すことはやめよう。見
ているのがつらくとも。
さて、予防と治療の簡便な方法はある。それは冬期に使用した石灰硫黄合
剤を、刷毛や筆で直接塗布することだ。希釈倍率は50~300倍。予防は
1000倍でもよい。ただしその日の最高気温が25℃以内であること、直
射日光が当たらないようにして塗布することが条件。乾燥後は直射があって
も問題ない。つまり夕刻や夜間に塗れば確実。硫化カルシウムもアルカリ性
も病原へ直接作用し、殺菌力を持つ。しかも芽の細胞を傷めたり、ホルモン
の動きや酵素の移動を妨げない。ただし他の農薬とは絶対に混合・併用して
はならない。そのようなことをすると芽全体の細胞が死ぬことがある。
記述をはばかられることだが、硫化カルシウムが病原に触れると、そこに
いる菌類が自分たちの身を守ろうとする働きで逆に硫化水素が生じる。実は
これによって彼らは死滅してしまう仕組みになっている。つまり助からない
のだ。もちろんこの硫化水素はガス化せず、わたしたち人への害はない。
環境や品種によっては一度の塗布では効果が低いことも多い。目安として
は三日間を観察期間とし、塗布から四日目に効果を判断する。黒ずみに改善
が見られず、しかも伸長もないようなら、再度濃度を上げて塗布する。これ
は何度塗布してもそのこと自体は弊害にはならないので、対象が多いときに
は芽を絞り込もう。そして根気よく繰り返す。5~8割の確率で芽は伸びて
くる。
この防除法を行った後、四日目にその芽に触れると乾燥した合剤が粉のよ
うになって剥がれ落ちる。爪などでそっとこすってみられたい。そしてその
芽がやわらかければ、回復にあると判断でき、やがて伸びてくる。丸いだけ
でなく固いままであればまだ戦いの真っ最中である。再度塗布するかどうか
の判断に迷ったときは、思い切って塗布しておこう。そうしてまた、四日後
に触れてみるのだ。その薔薇を愛するあなたの想いが、指先から薔薇へ伝わ
る瞬間の一つだ。
