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 1998年から2003年にかけて、わたしの薔薇栽培に対する理
 解は急激に深まったと考えている。この品種からも実に大きな示唆を
 受け、栽培実践を通して薔薇の、特に「工夫」に近づいた。
  春よりも秋の花の方に美しい姿が集中しやすい薔薇には、共通して
 言えることがある。それは気温の上昇期よりも下降期において安定し、
 寒冷地での栽培に向きやすいということだ。事実標高の高いところで
 育つと、蕾の緩やかな生長過程も含めたみごとな花の開きを見ること
 ができる。花付きに勢いはない。しかし開き始めてから開ききるまで
 の花弁の質と色彩のすばらしさは比類がない。
  暖かく、土壌もすべてのバランスがよい状態で養分もたっぷりある
 と、この薔薇はやや華奢な感じですくすくと枝を伸ばす。ところがそ
 のような枝であっても、栽培のベテランが手で触れればすぐにわかる
 はずだ。よくあるような、しなやかでしっかりしてもいるシュラブの
 枝ではないと。むしろ細いままに固くまっすぐに立つ枝立ちをする。
 これはブッシュローズの枝であると。
  そのような品種を育てるに当たっては、ブルボン一般がそうである
 ように、多肥に傾いてはならない。抑え気味の施肥をしなくてはいけ
 ない。多肥にすると樹形が容易に乱れ、枝の強弱が雑な姿に現われ、
 花容も崩れる。じっと見ていられないほどぶざまな花になるし、発病
 性も高まる。よいことは少しもないのだ。
  そこで、春の生育を抑えるような手入れをし、まず冬の元肥を欲張
 らないでおく。夏の間は萎れない程度に乾かし気味に育てて乗り切り、
 夏の元肥をたっぷりと施して秋の花に期待する。冬は魚粕と熔燐を各
 200g( 鉢植えでは各100g、ぼかしであれば200g )、夏に
 硫安250g、骨粉300g、草木灰50g( 鉢植えなら各100g、
 150g、20g )とし、さらに9月中に苦土石灰100g( 鉢30
 g )を与える。
  夏から秋にかけて寒地ほど頻繁にマルチを交換し、そのつど表土を
 耕す。
  8月の終わりに秋剪定し、強めに切っておく。そして蕾ができる頃
 までは水分を切らしてはならない。小雨はそのままとし、特に補充し
 なくてもよいが。また夏の間に生長が思わしくなかったら、9月の終
 わりに炭カルを200g( 鉢50g )与える。これはカルシウム施肥
 でもあるがむしろその中の苦土( マグネシウム )の効きに期待する。
 さらに暖地にあっては秋の開花期に連日暑さが続くと予想されるとき、
 炭カルではなく貝化石を一握りずつ3,4箇所へ施そう。これがカル
 シウム施肥である。鉢では一握りのみ。そして標準地では貝化石を施
 すときにはカニ殻を200g( 鉢80g )を一緒に与える。
 灰色カビ病には意外と強く、発病は稀だ。しかしその他の病気には
 総じて弱く、ブルボンのひ弱さが普通に出る。花付きが極度に悪くな
 ることも多い。日当たり、排水等、何か一つ悪い条件が環境にある場
 合、ぼかし施肥をして、しかもむやみに堆肥を増量しないでおこう。
 それよりも栽培地の一角で根が伸びてきていると思われる箇所の土を
 新しい土に入れ替える方がよい結果が出る。
 害虫ではこの薔薇を後回しにするものはいない。この品種だけが集
 中されることもない。そこで定期的な予防を心がけ、根や土へダメー
 ジを与える強い農薬だけは控えよう。そうすれば次第に丈夫になって
 いき、ゾウムシなども木酢程度で十分防げる。
 剪定の基本はHTの剪定法に準ずるが、春の花後に何本の主幹が立
 っているかでその年全体の生長が左右される。つまり、一年間の樹の
 成長が見えにくい。通常のオールドローズ剪定をすると、逆に樹の姿
 がみすぼらしくなることも多い。そこでできるだけ切ることと残すこ
 ととの兼ね合いがたいへん難しい。前年の同時期の姿を必ず覚えるよ
 うにしたい。前年よりも弱い枝が減り、強い枝が増えていれば成功だ。
 であればこの品種はどんどん安定していき、毎回すばらしい花を咲か
 せてくれる。
 土のpHにも気をつけたい。この薔薇が最も好むのはpH6.3前
 後だ。そこから中性へと土が傾いていかないようにしよう。PH6.
 8ほどになったら酸化を促すためにカルシウムを犠牲にしてでも酸性
 寄りの肥料や堆肥を投入しなくてはいけない。


Salon 耐寒性















Lecture 2 ブルボンの施肥設計と実践








Lecture 2 ブルボンの秋剪定



















Lecture 2 ブルボンの春剪定














                  -栽培ワンポイント-

                    「土の酸性度」

 上の解説の最後に触れた、土のpHについて確認しておこう。
 すでにご存じのことだろうが、アルカリ性という主体的な状態は存在しない。
この言葉はどれだけ酸性度が弱いかを示しているに過ぎない。土に含まれる水分
の水素イオン濃度が、同じ水分の中で酸化されたもの=水酸化物イオン濃度、よ
り大きいと「酸性である」と表現される。そしてアルカリ性であると表現される
こととの境がpH7だ。一般にこの数字を中性というのは便宜上のことに過ぎな
い。
 しかも土の状態は塩基の状態つまりバランスによっても成り立っているので、
酸性の対語が塩基性という言葉になる。
 ところでそこまでの基本から次の基本が理解されるはずだ。すなわち、すべて
生物はなんらかの酸化を施さない限り土の中の物質( 栄養、または栄養準備物質 )
を利用できないから、それぞれの種に固有の酸性化を営んで生きている。簡単に
言えばわたしたちの胃液のような働きを必ずしなくてはならない。それは酸素と
化合するためであり、言い換えれば土の中にその化合物が増減することでもある。
薔薇の根も含めて、すべての虫や微生物が土中の酸素を利用して酸化物を増やし
たり減らしたりしている。そして一般に、減るよりも増えることの方が多い世界
であり、それだけ生物は土の永続的な酸化に対抗して暮らしている。水素イオン
濃度が高くなりすぎないようにしているのだ。
 と同時に、水酸化物イオンが増えすぎて酸性度が弱まりすぎると( アルカリ化 )、
実に多くの種が暮らせなくなる。塩基化が進むのは、酸と反応した塩が増え続け
ることだ。この塩分は、土中のすべての生物が出す以上の水酸化物イオンを発生
させる。すると酸素が減っていき、ほとんどの生物が生命活動を行いにくくなっ
てしまう。土が酸化しすぎたときにわたしたちが施す石灰こそ、その最大の影響
がある塩基性物質に他ならない。
 酸化それ自体は生物の都合におかまいなしに起こる物理的状態であって、しか
も土の組成にさえ変化を与える化学的状態でもある。土に塩類集積を最も激しい
規模で行わせるのが化学肥料。つまり多用しすぎれば土の塩基のバランスが崩れ
て、土から多量の酸素を失わせる。その結果微生物が激減し、やがて根も弱る。
 その状態を最も簡便に改善する方法が土の耕しなのである。耕起することで土
中の空気が新鮮なものと入れ替わる。だから耕せば生物相が変に偏らないで済む
ことになる。科学が未発達の昔から、営利栽培であってもなくても耕すことを人
びとがしてきたのは当然のことだった。
 また、pHの数値は単純な等分の目盛りではなく「対数」であることにも気を
つけていたい。N=a² この数式を思い起こしていただきたい。倍数ではない
ことを。
 だからpH7とpH6との間にはこの二乗関係があり、わかりやすく言えば、
49と36の違いがある。1ではなく13の差がある。pH6.8とpH6.3
との間には6.55もの差がある。そのことを理解できれば、7.0と6.8と
の差、2.76よりもいかに大きいかを簡単に理解できる。
 それはpHの数値が下がる酸性化が、いかに激しい状態であるかも告げている。
人間の胃は胃酸によって溶けないようにできている。ところが微生物も根の細胞
も、それに適応したときと種だけが生存できる。
  

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