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* ノイバラを母親とし、ツクシイバラを父親としてわたしが交配して
生まれた。花弁基部( 弁底 )は白く、範囲は小さい。そこにだけ母親の
花色の血筋が出ていて、後はすべてツクシイバラの遺伝子が強いのかと
思えても、やはり全体はノイバラの血が濃いのだと推察できる。シュー
ト処理をあえて試みてから出た枝の頂芽とその下部の芽が伸びた枝の先
端に生まれる房は、写真のようにほとんどが50輪前後の巨大なものに
なって咲く。わたしの知るかぎり、こんなに多くの花をつける房咲きの
薔薇は他にない。これもまた、花の驚異だ。また、房が咲きそろって数
日後、花色が黒ずむようにくすんでいく。このこともまたユニークな褪
色と言え、通常の褪色とはまるで見え方が異なる。
* 5月下旬から咲き始める遅咲き。花保は8~13日間。花期は2年
目まで1ヶ月だが、それ以後は2ヶ月前後まで伸びる。しかも雨の日が
多いと期間が長くなる傾向を持つ。
* 本葉の節間が長く、ステムも長い。葉はライトグリーンで、両親と
同じように下葉が大きく、蔓の先端へ行くほど小さな葉になる。閉花の
折りはみずから花弁を落とす。このとき風が強いと、真っ赤な花吹雪が
見られる。火粉の舞、とでも言うか。園から少し離れた道路を走ってい
たクルマの同乗者の人がそれを目撃し、わざわざわたしの家まで引き返
してきて、興奮を伝えてくださったことがある。
* 元肥は何でもよいが、たっぷりと欲しがる。このことも両親と同じ。
無施肥で十分に育つとしても、与えたときの効果にはめざましいものが
ある。地植の場合、植え付け時に穴底に木炭と大粒の赤玉土または日向
土を入れると、いっそう根張りがよくなる。NPKの比率は1:2:1
でよい。堆肥と混合するかどうかは無関係。礼肥には油かす200g、
骨粉300g。梅雨入り直前に草木灰を、土表をうっすらと覆うぐらい
に撒いて耕す。追肥は隔月でよく、粒状化成肥料の一握り( 高度化成で
ないときはその3倍 )か、または油かすと過リン酸石灰を各100g、
塩化カリ30g。夏期に有機液肥の200~500倍液を10日おきに
灌注。
* 剪定は必要ない。オールドやモダンクライマーのような更新を必要
としないのだ。咲き殻切りと枯れ枝の切除のみ。花後にすぐ結実が始ま
るので、本葉を2~4枚残して切る。シュートの出は両親を凌ぐ活発さ
であり、エスパリエ( 生け垣 )やトレリス仕立ての時は方向の合わない
ものを切る。シュートに支柱は必要ない。フリーで十分。両親はどちら
もできればひたすら長く伸ばそうとの生育をするのに、この春紅は支柱
を与えても必ず途中で止まる。また、その年の二段目以降はあまり長く
ならない。
* モッコウバラ同様に、耐性は完璧に近い。両親のよいところだけを
受け継いでいる。ブッシュとクライマーの中間タイプであるシュラブは、
薔薇の交配の歴史の中で、一方は耐性を失う方向へ進み、また一方では
強耐性を受け継ぐシュラブへと進んだ。微妙な形状をしている株の春紅
は、おそらく基本的には株立ちをするシュラブに近い。進んだ方向は後
者だった。すべての抵抗力がハイレベルであり、どんなときにも樹勢は
弱まらない。最大の敵はテッポウムシ。クズが少ない間なら、ニームオ
イルを染みこませた綿棒刺し。気づかずにいるうちに多く出ているよう
なら、ティッシュに原液をしみこませて穴の中へ挿入するか、または湿
布巻きで対処。成虫のカミキリ同様、何にでも噛みつき、体内へ入った
ニームオイルはすぐに消化能力を奪う。
* この薔薇がわたしの最初の作出花。種から芽が出て来たとき、実は、
胸が熱くなったのではなかった。淡々と見つめていた。だが、10cm、
30cmと成長するにつれて、よいところばかりが目につき始め、蔓の
長さが2mを超えてまだ伸びようとしているのを見たとき、しかも下葉
から徐々に大きくなっていくのを見たとき、初めて胸に熱いものがこみ
上げてきた。この薔薇が親から最もすぐれたものを継いでおり、寿命が
短くとも50年はあることが、そのときわかったのだ。
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