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 春から夏にかけておよそ二か月間咲き続ける。花保も3週間~4週
 間と長い。6月になるころから咲き始める遅咲き。ただし4月から5
 月にかけて気温が高めであれば、開花は早まる。梅雨期にも咲き続け
 るが多雨の影響をほとんど受けない。湿度の高さにも強く、よほどで
 なければうどん粉病には罹らず、花にうどん粉が見えることはまずな
 いと言ってよい。
 「シャポー・ド・ナポレオン」のような萼を持つが、全く別物であ
 り、イザヨイバラのそれは別名のようにイラガであり、実質的に刺で
 ある。硬く鋭く、それは全身に及ぶ刺にも言える。かなり鋭い刺で、
 砂漠の自生のサボテンの刺のようだ。太古の薔薇の進化の過程で、熱
 砂の時代があったかもしれないことを思わせてやまない。
 しかも、一部の薔薇に共通のように、各枝は二年目以降白化していき、
 その樹皮の色はやがて黒褐色となってから自然に剥がれ落ちる。それ
 らの枝はどれもかなり硬く、若い間でなければ曲げるのは不可能。無
 理をすれば折れてしまう。そして折れるときには途中で折れずに、そ
 の枝が付いている付け根から必ず折れる。
 かなりのワイルドさを持ちながら、自家受粉はしにくい。ときにハナ
 ムグリが花芯へ潜りこんで受粉が行われることもあるが、受精するこ
 とは少ない。
 渇水にも冠水にも強く、また病気とも無縁。害虫ではカミキリムシ
 とコガネムシ幼虫に注意。しかしそれらの被害に遭うことも少なく、
 彼らが好まず、他に好む薔薇が多くありさえすれば目もくれない。
 かなりの耐病性は何によっているのか。樹としての特長から考えられ
 るのは、葉の細胞壁と根のそれが強固であることだろう。わたしの知
 るかぎり、センチュウによる被害の全くない唯一の薔薇だ。もしも遺
 伝的にその力を取り出せれば、しかも他の品種へ導入できれば、真に
 最強の薔薇が誕生するだろう。
 モッコウバラのように、初めの植え付け時に少し肥料を与えるだけ
 でよく、後は無施肥でしっかりと育つ。容器植でも年に一度わずかな
 置き肥で済み、実に手がかからない。これはタンパク質を合成する酵
 素と、他の働きに向かう他の酵素の能力が、モッコウバラ同様あらゆ
 るMR、ORとはまるで違うことを意味する。生きる仕組みが異なる
 のだ。施肥でも土壌改良資材でも、それらでわたしたちが余計なこと
 をすればルーティングシュートの生育が途中でストップしてしまった
 り、一部に生じた小さなうどん粉の病班が( それさえわずかにすぎな
 いが )広がることからもわかる。通常行い馴れているいろいろな改善
 策を講ずることなく、静かに見守るだけの方がよい。よほどの危険因
 子がないかぎり、この薔薇は常に生き生きとしている。これは大きな
 驚異だ。
 ただ、花後から冬季の間の整枝については、何もしないでいると短
 枝ばかりになりがちであり、しかも各枝はにぎやかに混み合う。細枝
 でなければ強風でも揺れないほどの原種であっても、混み合えば自分
 の刺で自分を傷つける。だから蕾形成の直前から混んでくる枝を、細
 いものに限って間引くこと。それも最小限度にとどめる。切りすぎれ
 ばベーサルシュートの数が半端ではない。特に地植では一気に数十本
 も伸びはじめ、わたしたちをあわてさせるほどだ。
 咲き殻切りはブッシュタイプと同じでよい。すぐに芽が動くものの、
 主として伸びるのは秋になるまでであり、気温が下がっていくと伸長
 はすぐに止まりやすい。また年間を通じて分枝も少なく、それもこの
 原種の特徴の一つだ。この性格は施肥などによって変わらず、分枝が
 目立ったときだけ減数する。
 花梗が短く、一般的な薔薇品種に接することの多い人であれば「ど
 うしてか」と思うほどだ。しかも花は一部が欠ける。不可解なことば
 かりだ。それでもこの原種は、原始の薔薇はこうだったのだと、いろ
 いろと考えさせてくれる。
 それをわからせてくれるのは上に述べたことだけではない。地植の場
 合、春先と花後に土壌へ堆肥を混入したとき、一か月後に掘り返した
 人はびっくりするだろう。根は、その新しい堆肥が入ったところさえ
 敬遠している様子に。堆肥投入はそのような時期を避けて行うように。

















Lecture 2 地植薔薇の施肥設計と実践

Onepoint  ルーティングシュートとは 


Lecture 2 地植薔薇の剪定と整枝



    花弁の散り方はさらりとしていてかわいい。  まるで、この薔薇が、キネンシスが持たなかった「淡麗さ」を     すみずみまで獲得していて表現するかのようだ。




                  -栽培ワンポイント-

                    「野性の姿」

 イザヨイバラやグリーンローズが近代的な洗練された薔薇だとは誰も思うまい。
なめらかな気品などどこを探しても見つからない。花壇でも違和感を醸し出して
しまう。
 ところで人の手で植えられたのではない野性の姿の薔薇をご覧になったことが
あるだろうか。林の中や山の中、川岸にある野ばらのことだ。ほとんどの人は見
向きもしない。目立たないし、形がいびつなことが多いからだ。周囲に他の植物
が生い茂っていれば気づくことも稀になる。
 ところがそれが彼らの最も美しい姿だ。人の手がかからないままに、最も環境
に適合しているのだから。わたしたちはそれを美しいと感じる心をいつのまにか
喪ってはいないか。美しさと「綺麗に見えない」こととの一致は、わたしたちが
どれだけ自然のままの環境になじんでいるかによって、思える思えないのことが
違ってくる。
 どう適合していると言えるのか   生きているという事実がまず適合を物語
る。適合しなければ種子は発芽しない。発芽しても育たない。根がすべて伸長を
妨げられれば新しい根を盛んに出し、それも許されなければ樹全体が大きくなる
ことなく生きていく。そのようにして生き延び、繁殖し、進化してきた。薔薇は
自己の身体の更新に見合う成長しかしない。その点ではほとんどの自然界の植物
と同じだと言っていい。ただし、他の中心主幹を持って上や横に伸びて繁ってい
く広葉樹や針葉樹とは明らかに異なり、株立ちする薔薇は低木で生き延びる進化
を選んだ。蔓は自ら他の植物に巻き付くことなく、下草の上を匍い、地に接すれ
ばそこから根を出し、棘で自分や他物に身を固定し、荊となって動物の接近を拒
んだ。

 そのような野性から「栽培」に、何か役立つ知恵など在るのか。
 在るはずもないと考える人は薔薇栽培をしない方がよい。在ると思う人は、日
照と水分に対する寡少の限界を自分の薔薇から教えてもらうことをお薦めする。
ぎりぎりを見極めるのだ。それは難しいことではない。雨天や曇天が何日続いた
ら新葉の大きさがストップしたか、また何十日雨が降らなかったら枯れ始めたか
を知るだけでいい。それがあなたの薔薇が生きている環境としての自然のありの
ままだ。栽培株を枯らしたくなければ、それらの品種から挿し木を採って植えれ
ばよい。地でも鉢でもよい、挿し木して後成長が始まってから、断水や日光の遮
断を試みる。萎れたり、葉が黄変しだした日数とその季節を覚えておいてから栽
培株を観察するようにすれば、その記憶が活かされよう。つまり通常の手入れを
続けている薔薇たちの身体を日々観察しているときに、その薔薇が自分の身体の
中のこと、状態を語りかけてくる。それを聴き取ればよい。あなたの友、あなた
の子どもの声だ。聴き取れぬはずがない。
 いずれにしても、山に分け入り、林の中をめぐり、川岸を丹念に見回って、野
性の薔薇を見るようにしていただきたい。何度もである必要はない。一年に一度
でも十年に一度でもよい。野にある薔薇を見つめてもらいたい。そのときあなた
は、自身が野に還るだろう。心は身の置き所にこそ在る。そしてその心は、薔薇
の生命力に感動すればするほど、ますますその薔薇を幸せにしていくだろう。そ
うなった薔薇は、あなたの心をよりいっそう美しくしようと懸命になるだろう。
あなたと薔薇とが共に生きることのすばらしさは、そこに生まれてくる。

                                                  
 
                                                



                 -栽培ワンポイント-

               「花首が告げていること」

 この薔薇を二年以上育てている人はすでにご存じかと思う。花殻を摘むとき、
すでに事実上の咲き終わりになっている花が、片手で花をつまみ、花首への付
け根で折り曲げるようにすると簡単にもぎ取れることを。やや取れにくいとき
にも、半回転ほどつまんだまま捻るだけで取れる。
 このことは、他の薔薇、特にオールドやモダンの、花首が少しでも長いもの
のときには無理である。空いた手で花首を摑み、ちぎるようにしないと取れる
ものではないし、そんな乱暴はしない方がよい。
 ではなぜイザヨイバラは「ぽろりと」取れるのか? 
 それは通常とは異なる仕組みを持った花柱の構造にある。
 一般的には、受精するためには子房と花首が離れやすいのは不合理だ。誰で
もわかる。しかしこの原種は咲き終わりの時期が来ると、まるで殖存を形成し
たくないとでも言うかのように、子房とステムの境界の細胞が死ぬ。この事実
は、自然界の原理からすれば、不合理なだけでなく、或る自然な推測を成り立
たせる。つまり受精したくないという方針のことだ。わたしたちが咲き殻とな
ったものを取り去るのでなくとも、境界はやがて朽ちるようにして花を落とす。
他の薔薇で、花枝の下に咲き終わった花が子房ごと転がるように落ちているの
を見ることはない。
 初めての時にはゾウムシやアブラムシを疑ったが、2001年の植え付け以
来一度も彼らの姿をこの薔薇に見たことがない。
 これはいったいどういうことなのか? 何をこの薔薇は告げているのか?
 今回( 2009年 )わかったことに、「境界」が実はカルスになりつつある
との結果が証明された。通常強風で折れたり、わたしたちが鋏を入れたり、害
虫に囓られたりするときにできる、あのカルスである。カルスと聞いたとき、
鳥肌が立った。なぜなら、この薔薇は生殖を拒む特殊な能力を持っていること
になるからだ。
 ますますわからなくなった。
 だとすると、人が時期を見越して( あくまでも、そっと軽く )もぎ取るのは、
この薔薇が望んでいることをしているわけだ。放っておくと、境界から上がま
るごと腐ったように黒くなる。萎んでしまう。それが殖存だと言いたいかのよ
うに。
 なお、ここでの栽培ワンポイントとは、他のいかなる薔薇の花も、鋏を使わ
ずして素手で咲き殻をもぎ取るようにしてはならないこと。そんなことをすれ
ば必ず悲鳴を上げる。なぜなら花柱は子房の下へも降りているからであり、そ
れはどの薔薇も決して喪うまいと頑丈に、精魂込めて作り上げている器官だか
らだ。花の目的を忘れてはならない。
 同様に、ステムや花梗の途中をわざわざ折り曲げて、新たな芽の伸長をその
下から行わせる「折り曲げ法」も誤りである。あまりにもいたましい、あの姿
をわたしは決して見たくない。わが子やペットにそんなことをするのは、人間
ではない。

                                              
                   -栽培ワンポイント-

                    「根系と根圏」

 この二つのことについては地植講座第4回でも触れるが、これまで薔薇栽培者
の皆さんと話してみると、たいへん多くの人が土と微生物をめぐり、またそれら
と根、特に根毛との結びつきにおいて同一視していると思われる。
 しかし実際には決して同じではない。薔薇の根は成長につれて四方八方へ伸び
ていく。主根のいくつかも伸びるし、細根(二次根)も伸びる。地植ではどの根
もそっくりにならないことは、土壌内のさまざまな事情によって推察できるだろ
う。ただし、根系が支配している、または水養分を吸収している範囲と言える領
域は、クラウンを中心とした同心円状内全体のことではない。
 一方根圏とは、根毛を挟んでのわずか5~8mmの範囲を指す。たったそれだ
けの幅しかないのに、根毛は数の多さによって水養分を吸収できる土の範囲を膨
大なものにできている。そして根系は、一本の薔薇の全根毛での範囲の総体であ
る。
 以上のことをしっかり認識しておいてほしい。そうすれば、菌根菌のような共
生菌が菌糸を伸ばして薔薇の根に侵入し、根からは炭水化物をもらう見返りに菌
糸を土の中へと伸ばして土の無機養分を根毛細胞へ送りこむということもわかり
やすくなる。つまり、菌根菌も生きやすい土壌であれば、根が支配できる土壌内
領域は1.3~1.6倍ほどにまで増える。これが事実上の根圏の体積総量だと
言える。
 すると、薔薇のそばに薔薇以上に水養分を吸収できる多種の植物があったとし
ても、薔薇の根はそれらの植物の根が及ばない範囲へまで伸びていくことによっ
て、水養分の吸収の問題を解決できていることがわかる。
 ただし、ここでコンパニオンプランツのことが浮かび上がる。すでに説明した
けれども、薔薇にとっては短く小さい根を多数伸ばす植物はコンパニオンになら
ず、むしろ細さに関係なく長く根を伸ばしてくれる植物の方がふさわしい。なぜ
か。想像していただければわかるだろう。つまり、植物の個体数にもよるが、短
くて多数根の植物が薔薇の根系内にびっしりとあると、その範囲内で薔薇の根は
二次根三次根を出しにくいのだ。それだけ遠くへ伸ばさねばならず、何かが起き
て根が途中から切断されることがあったとき、生存に関わるようなリスクが発生
しかねない。
 それよりも、薔薇の根を上回る速度や到達範囲を根として持つ植物と共存する
方が、互いに根圏を減らさずに済むわけだ。
 また、わたしたちが手入れによって薔薇の根のないところを掘ったりかきまぜ
たり、あるいは堆肥等何かを投入したりする行為が、当然根系及び根圏の外であ
るわけだから、二次根三次根が水養分を求めて伸びていったときに、根にとって
当然歓迎される状態の土になっている。しかも、たとえうっかり根を途中で切断
してしまっても、薔薇の根はただちに新しい主根あるいは細根を出したり分岐さ
せて、根系と根圏を拡大する成長をやめない。それだけの強さがある。
 もちろん切る数が多すぎれば、ダメージがある。地上部の生長が一時的に停止
したり、咲いている花が萎れたりする。

 
Onepoint  根毛 (1) 
                                              

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       Road to Rosa synthesis
Cultivation
Rosa roxburghii イザヨイバラ


        Album


    mp. 中桃色  
    チェストナット・ブール( クリのイラガ )ローズ
    径6~9cm  1.5~1.8m( 高 )
    中香







  耐病性