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* 5月下旬から開き始めるやや遅咲き。若い間は枝を旺盛に伸ばして
行くが、偏伸びもしやすい。地植でも容器植でも伸びきった枝先に8
~15輪の房を付ける。この品種に特異なのは、伸びきった枝の背中
と、さらには本葉の葉柄の背中までもぱっくりと裂けてそれぞれの木
部を見せるところで、この特徴は知るかぎり本種だけである。またス
ケープ種の中でもとりわけ生長も成長も速くて、株全体に不思議なス
ピード感がある。それだけに、開花中に上に記したような亀裂現象が
起こることとともに、地植で陽あたりがよければかなりの大株になる
ので目立つ。革質の照り葉は光をよく反射し、一枚一枚がどっしりと
して見える。
* 病虫害の発生が少なく、稀にアブラムシや黒点病が広がることもあ
るものの、耐性は年々増強されていくので安心できる。治療・予防に
木酢の50~100倍散布で済むことが多い。ただし、肥培で手を抜
くと全体が小さく育ち、抵抗力も弱まってしまう。元気で丈夫なとき
はガン腫病に罹っても数年で枯死したりしないが、弱っているときに
は発病の翌年には枯死する。かなり水分を欲しがる方であり、土が乾
き気味になると新葉に亀裂が入らなくなる。また開花中であれば花弁
はすぐに萎れる。
* 元肥には硫安250g、過石300g、硫酸カリ150g。Nをや
や多めに与えるように。礼肥は不要だが、追肥として7,10月の各
中旬に油粕と骨粉をそれぞれ200g、250gで。8月の元肥には
油粕300g、ヨーリン200g、塩化カリ100g。Kはあまり多
くを必要としない。根から吸収されたKは、他の薔薇よりも働きがよ
いようだ。MgやCaも少量で十分。
また堆肥類については近年市販されるようになった馬糞堆肥が最も
合う。当市には競馬場があるので厩舎からのものを手に入れやすいけ
れど、自家製を作ろうとするなら匂いや蛆の問題があるから、密閉容
器を使っての嫌気発酵とし、EMを使わなくてはならない。
液肥は何でもよく、薄めに希釈してたびたび与えると効果がすぐれ
て現れる。濃度が濃ければ亀裂が深くなり、また葉色が悪くもなる。
品種によって効果にややムラのあるグアノタイプ( コウモリの糞 )
は、この薔薇において肥効はなかった。
* 這性のスケープローズの剪定の基本は一部の弱小枝を取り除くこと
と、どの枝も短く切りつめるようにはせず、先端の枝分かれを制限す
るように中央の分枝のみを残して他を掻き取るように切除すること。
これによって年々サイドシュートを出しやすくなり、全体が広がって
いく。
花後の摘み方は房から最初の本葉の所で切るように。どの枝も葉付
きがよいように見えても、バサバサと切ってしまってかなりの数の葉
を落とすと、その後の新陳代謝は衰えてしまう。若くても。
なお、剪定・整枝後に、魚滓と米糠をとぎ汁でこねて団子を作り、
さらにカニ殻をまぶして表土へ埋め込むと、老熟株でないかぎり必ず
と言っていいほどシュートを出してくれる。特に容器植で効果が高い。
* この薔薇も側根性が強く、横に長く根を伸ばす。ところが株の真下
にも、短いが多数の健全な主根を出すので、地植から鉢上げするとき
などには長い側根を切り、中央の主根は一本も切らずにおくこと。容
器の中で伸びていくのはその根たちだ。鉢上げして最初の春の花付き
が抜群によくなったように見えるときには、その根がたっぷりと伸び
てくれている。
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(馬糞堆肥は乾燥させてある市
販品もある)
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-栽培ワンポイント-
「偏伸びについて」
いつでもどんな品種でもというわけではないが、シュートも含めて、薔薇の樹はしば
しば枝を偏伸びさせる。つまりすべての枝が均一の長さ太さに伸びるわけではなく、勢
いには差がある。
この原因については実は正確なところが不明だ。それでもたとえば日当たりも水分不
足も原因ではないし、施肥の内容と量についても関係はあるが決定的な理由ではない。
そうしたことは経験上知り得たことで、植物学上の知識からの推測ではない。
わたしの考えは、ほとんどが自根ではなく台木に接がれていることに主な原因を見て
いる。どういうことかと言うと、芽であれ穂木であれ、すでに偏伸びした親木から得た
ものである。そこには親木とその祖先からのDNAの継承と積み重ねがある。品種誕生
以前の時点ですでにそのような樹形形質遺伝が備わっていた。もしもわたしたちの手元
に届くはるか以前に種子から生まれ、そのときすでにすべての主幹、すべての枝・花梗
がサイズも何もかも揃っていたら、その株から得た種子、穂木、芽からの子は同様に揃
うことがほとんどになり、稀に台木の影響を受けて乱れることになる。
事実、当園にあるHTの「初恋」や原種・原亜種のほぼすべてが整った樹となってい
る。方向や芽の伸びていく位置はさまざまでも、それぞれの長さと太さが揃う。毎年。
つまり、原種・原亜種を除き、ORもMRも「たまたま」揃う遺伝を持った個体だった
ということだ。
では不揃いな樹形となっているブッシュやシュラブを前にして、当サイトで言う弱小
枝や短枝をどうしたらよいかと言えば、他に理由がなければ付け根から切除してほしい。
これも経験上わかったことだが、10年以上( 品種によっては7年以上 )そのような剪
定・整枝を続けると、およそ1割の確率で揃い始める品種が出てくる。わたしたちの期
待に応えてくれるのだ。惜しんではならない。特に剪定によってこれはと見込める株に
対しては、前年のベーサルシュートのみ残し、他を切除する。そして残したシュートに
対してはかなりの強剪定を行う。春でも秋でも。秋剪定でも強く切った方がよいのは、
揃い始めた樹形への欲求をその薔薇自身が持っているからだ。その力は相当に強い。も
ちろん30歳以下であるのが条件となる。それを過ぎると秋に強い切り方ではショック
が大きすぎる。
以上のことは株が若い段階で数本の主幹を揃わせたのに、そのままにして更新しなか
ったために二段目から上の枝が揃わなくなったという場合にも当てはまる。そのような
ときは必ず古い主幹を切除しよう。

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-栽培ワンポイント-
「クラウン直下根」
上記の記述と矛盾するようだが、地でも容器でも直下根を何本も伸ばす品種はもとも
と容器植には向かない。その理由はクラウンの真下が、クラウンの径の範囲で乾きやす
いことにある。灌水当座は用土全体が同じように水分を含んでいても、やや乾き気味に
なってくると容器の用土内で水分含量の差が生じる。すると他の品種のように側根を伸
ばす薔薇としての特性により、直下根の伸びが制限される。そうしてますます直下が乾
きやすくなる。
ただそうなる前に灌水や降雨で十分に水分を含むことが続けば、今度は直下根の伸長
力が側生根の伸長力を上回り、鉢の中を細根として回るようになる。もちろん側根もよ
く伸びるのは確かだ。すると樹勢が条件よく強ければ強いほど、今度は根詰まりの危険
がある。
だからこのような品種では、鉢上げや地降ろしをあまりくりかえさない方がよい。変
更せずに育てることが特性に応えてやることになる。
ところで一般に、薔薇も地植や大容器植で大株になってくると、ほとんど直下根を新
しく出さなくなる。これは側根のみで十分だからであり、真下へ伸びてから横へ広がる
ような根の伸長はなくなる。これは、もはやクラウンの真下がかなり深くまで乾くよう
なことがもし仮にあっても関係なく、生育に何ら影響しないからだ。いずれ講座でも触
れるが、大株になった薔薇の株元へは施肥をしない方がよいと言える。もし施しても、
あまり役に立たない。
実地には、およそこの辺が根の先端だろうと地上から見当を付け、施す。するとそこ
に根の先端は、まず存在しない。あなたの見当よりもはるか先にまで、根は伸びている。
しかしその肥料は、根から不断に発生する細根やヒゲ根によって、まちがいなく吸収さ
れる。ポイントは同じ場所に3年以上与え続けないことだ。その場合には無駄に終わる
こともあると心得たい。前年や前の季節の箇所を覚えておき( 記録しておき )、施肥の
つど場所を変えた方がよい。同じことがくりかえされるよりも、薔薇は変化の方を望ん
でいる。それが「環境適応の最適値」への早道だからだ。もしも都合で、たとえば施肥
箇所が二箇所ほどしかないような状態なら、交互に施そう。それでも薔薇は十分によろ
こんでくれるだろう。
そして大切なことで、しかも優しさの発揮どころは、施肥した以外の、あなたが踏ん
だ場所をそのままにせず、軽くでも耕して終えることだ。

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-栽培ワンポイント-
「バットク゛アノについて」
2009年6月、肥料研究者からアドバイスを得て、グアノ肥料に関する現在の理解を
進めることができた。
研究者の説明によれば、海魚を食べる海鳥の糞から作られるチッソグアノは成分に公定
規格が定められているが、コウモリ糞由来のものには規格がないとのこと。そのため、も
ともとチッソ肥料としての一般通念に応えるだけのバットグアノの中には、リン酸もカリ
もはなはだしく少ない製品があるらしい。また、グアノ肥料は素材が海岸等で長年にわた
って堆積したものであり、その間に腐植化が進んでいて使用を安全に行えるというメリッ
トを持つもの。ところが製品の品質によっては、微生物と天候による腐植が十分進んでい
ないものが混ざりやすいことの影響を受けている。それは石灰岩の洞窟に堆積されるコウ
モリのものの場合にも言えるとのことで、製品内容に不安定な要素があれば、大量でない
限り有害というほどにはならなくとも、効果が顕れないことは大いにありうるそういう話
だった。
確かに、コウモリが糞の中へ主に排出しているのは昆虫類である。コウモリの胃の中で
消化されて出て来たものであっても、土の中に混ざって初めて土壌に有効な分解が進むよ
うになっている。その結果、公定規格を定めようがないとも考えられるのである。
さらに、バットグアノは必ず石灰分を含んでいる。したがって土へ与える際に土のpH
や化学性が、迎えいれるにふさわしい状態であればチッソ養分も効くが、そうでなければ
ほとんと゛効かないことになる。
以上のことから、もしも使用を考えるのであれば、先行して効果を確かめている人の意
見を聞いてからにした方がよい。わたしたち薔薇の栽培者にとっては、どんなものでも未
熟なものや化学的に或る種の偏りがあるものに対して慎重なのが当たり前である。

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