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地植講座
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地植薔薇の剪定と整枝
  




   (註)


目次   

第1部 品種グループ別剪定法と整枝法


1.剪定
(1)春剪定
   a.ブッシュタイプ
ハイブリッド・ティ
フロリバンダ、ポリアンサ
ミニアチュア、パティオローズ、ミニフローラ
ティローズ
ハイブリッド・チャイナ
1.5mまでのポートランドとブルボン
ロサ・アキキュラリス・ニッポネンシス(タカネイバラ)
ロサ・ルゴーサ、ハイブリッド・ルゴーサ、ハイブリッド・ガリカ
ロサ・キネンシス、オールド・ブラッシュ、キネンシス・ミニマ、
キネンシス・センペルフローレンス他
ロサ・マイカイ
ペルシアンローズ系、カニナ節系、ロサ・ガリカ・オフィシナリス、
ロサ・ガリカ・ヴェルシコロール、ロサ・スピノシッシマ、ロサ・ルブリフォーリア、
ロサ・ニティダ、1.5mを超えるポートランドとブルボン
ロサ・セリケア・プテラカンサ、ロサ・セリケア・オメイエンシス、ロサ・ロクスブルギイ

   b.シュラブタイプ
1.頂芽の決定 
2.四つの原則 

   c.クライミング、クライマータイプ
一季咲き種 
繰り返し咲き種 

(2)秋剪定
   a.ブッシュタイプ
ハイブリッド・ティ 
フロリバンダ、パティオ、ミニフローラ、ポリアンサ 
ミニアチュア、ティ、ハイブリッド・チャイナ 
   b.シュラブタイプとクライミングタイプ
半つる種とつる種 

2.整枝
Aグループ  HT / F / ER / T / P / HRg 
Bグループ  S / Pol / HSp / D / HCh 
Cグループ  HG / A / C / B / Min 
Dグループ  M / N / HP / LCl(ランブラーも含む) 






第2部 生育の Security として

A.整枝のケア
1.クラウン整枝をまちがえたとき     ~ ベーサルシュートを出させるために ~
2.栄養整枝の切りまちがい             ~ 一季咲きで切りすぎたら ~
3.生長整枝の切りまちがい             ~ 頂芽の選択 芽には目を ~
4.減数整枝の切りまちがい             ~ つる薔薇の生長力 ~
5.分枝抑制整枝の切りまちがい          ~ Y字とW字 ~
6.分枝促進整枝の切りまちがい            
7.高さ整枝の切りまちがい             ~ 枝の伸長力と芽の個性 ~
8.開花抑制整枝の切りまちがい          ~ 花付きが多い薔薇に対して ~
9.咲き殻整枝の切りまちがい            ~ 花が終わったら グループ別の咲き殻切り ~
10.生殖整枝の切りまちがい            ~ シュートの切り方 ~
11.整枝フリーにしてはならないとき       ~ つる薔薇への刺激 ~
12.開心整枝の切りまちがい            ~ 三つのケア ~


B.病虫害別の対処法-鋏の入れ方、入れずにおく見きわめ方


第1部 品種グループ別剪定法と整枝法


鉢栽培の薔薇と地植栽培の薔薇との最大の違いは何であるか、おわかりでしょうか?
根の発達です。
用土に何も問題がないとき、鉢の根は容器の端に沿って回るように降りていきます。
底があるために、精いっぱい伸びた後はクラウン下から伸ばす数で水養分を得ていき
ます。それしか方法はありません。そして用土替えの際に、根数が多くても少なくても
根の先端を1/5~1/3ほど切り取られるし、容器を大きくしない場合にはクラウンへ
の付け根からいくらかを切除されます。すると、鉢栽培の薔薇は、そうした実行が冬で
あれば何ともなくとも、他の季節ではある程度のショックを受け、根の発達という大きな
課題を背負って生育していくことになります。多くは、そうした減数や短縮がリフレッシュ
となり、しばらくは動かない地上部とは逆に根の生育を活発に行います。一般に樹勢が
強い薔薇ほど、より活発な根の発達へ向かいます。
ところが地植栽培では、施肥などの際に根が切られることはあっても一部ですし、障害
物がなければ、原則的に言っていくらでも長く伸び、また品種ごとの個性や違いを表し
つつ、細根や、主根からの一次根・二次根(これらもいずれ主根となったり、あるいは
主根と変わらない働きをする主根の一部となっていきます)をあらゆる方向へ伸ばして、
広い範囲で水養分を得ますし、また地上部を支えるための脚となり、広がれば広がる
ほどクラウンと幹を大きくできる能力を発揮していきます。
こうした地植の薔薇では、剪定・整枝による枝への刺激は鉢栽培以上に強いものがあ
ります。皆さんも経験しておられましょう、苗を植え付けた初年度と比べて、翌年の枝
がはるかによく伸びたこと、品種によってはずいぶんと太い枝になったりしたことを。
それは根が一年間でかなり伸びて数も増えたからです。
そこで、鉢植講座でのグループ別剪定整枝法と基本的には同じやり方をしていくので
すが、まったく同じというわけにはいきません。枝葉の発達に見合った実践をしていく
ことになり、しかも鉢栽培以上に根系の実際を意識しながらになります。この意識は、
慣れてくればくるほど楽しいのですが、同時に、土壌のことや施肥について鉢栽培よ
りもはるかに大きな視野と強い緊張をもたらすものでもあります。
さらに、鉢植えでも重要な生育のことですが、シュートの発生と伸長、およびその処理
が剪定整枝と深い関わりを持ちます。また、生育環境からの影響と施肥や病虫害等
からの影響も大きいのですが、今回はシュートのことのみを加味して、他のことは別
の回へ譲ります。
ただ、以下に述べる内容は、実は薔薇栽培を最高のものへ近づけるための道標、
つまり過程だと思ってください。そのメルクマールからさらに登るのは、あなた自身で
す。もっと深い観察と、豊富な経験が必要となり、愛情のこもった正確な判断が要求
されます。予告でお知らせした「わたしの到達点」とはメルクマールであって山頂では
ありません。あなた自身で山頂をめざしてください。あなたの薔薇たちのことなのです
から。
Lecture 鉢植講座 剪定と整枝
検索 Q&A  薔薇は剪定で切りすぎてしまうと花数が減るのか?
検索 Q&A  剪定時によい芽がなかったら?
Onepoint  根と剪定の関係 
なお、随所に海外における事例や考え方、推奨法を紹介していますが、それぞれ
の内容について当事者に確認はしていません。そのことをご承知おきください。
いかにわが国の薔薇栽培者がきめ細かな手入れをしているかがよくわかります。
もちろん、わたしたちが海外から学べることも多いのですが。
 
 
 
 



 1. 剪定


基本的な考え方
鉢植講座で「開心」という方針のことを述べました。要点は、薔薇が株立ちするゆえに高さではなく広がりを求め
るという特徴を理解することです。枝を開いていくのです。すると樹形とは、どのように開いたかという形であり、
樹勢とはどこまで広がったかという意味であると理解できます。開心欲求があればこそ、つる薔薇が生まれたの
ですし、しっかりと伸びていこうとしてブッシュ性(木立ち性)も発揮されるのです。
そうしたことを踏まえると、剪定が単に外芽を選んで行う目的だけでなく、偏った樹形、たとえばあなたから見て
左右いずれかへ傾いたり、手前と奥への広がりだけで横へ伸びてくれないような形になることを避け、全体にま
とまりのよい、いかにも健全な姿になることを本来の目的として行うことだともわかるでしょう。
鉢植えでは少しおおらかに考えればよかった樹形のことが、地植では厳密に考えなくてはなりません。そして地
植の薔薇はおおむね開心剪定に応えてくれます。
また、誘引をするつる薔薇などでも、前講座で説いたように、誘引を解いたときの樹形を理解し、少なくとも想像
できねばなりません。その労を省いた手入れは、やがてつるの更新を切り過ぎへと導いてしまいます。09年か
ら10年にかけて、各地各所で切りすぎと放任の双方をかなり見せられました。憂慮しています。


(1)春剪定

   a. ブッシュタイプ ……HTやF、そしてMin等のブッシュが広く好まれてきたのは、花の魅力だけでなく
剪定の行いやすさ、すなわち切るポイントの判断に迷いにくいことが挙げられます。
クラウンからの初段または第二段目の枝の中から芽の一つを選んで切り下げればよ
く、狭い範囲で決断しやすいのです。しかし、苗の購入時や翌年の冬にはそれでよ
くとも、それ以後は狭い範囲でのみ決めていくと問題が生じてきます。
以下に、二年目以後の方法を解説します。
 
 ハイブリッド・ティ

    1.前年の生育がよかったと見ているものの、ベーサルシュートが出ず、主幹が一本のみ

  ……決して生育がよかったとは言えません。特に三年目以後にもかかわらず一本のみであるのは、成長力が衰えている
     と見るべきです。また、購入後に植え付けたとき、クラウンから出ている細く短い弱小枝は付け根から切除しておき
     ましょう。それも剪定行為であり、シュート発生への刺激となります。その結果残ったのが太い一本のみであるとき、
     まず、クラウンと幹の付け根辺りの剥がれかけている古い樹皮はゆっくりと取り除きます。必ず手で取り去れる範囲
     とし、無理に浮かすようにして広く取ろうとするのはまちがいです。ここまでと判断したら、園芸鋏または剪定鋏で切り
     取ります。こうしておくと、春になってからベーサルシュートが出やすくなります。厳冬期や厳寒地では、作業後に藁
     あるいは腐葉土、その他の堆肥などでクラウンを被うようにしておきます。気温上昇期に入ったら、すぐに取り除いて
     日光がクラウンにも当たるようにします。たとえその後に下降期が来てもです。シュート芽の分化は、最初の寒さで
     惹起されることだからです。暖地でも、2月または3月の気温の底を春剪定のタイミングと判断します。もちろん正確に
     判断するのは至難の業ですが、あなたの庭の冬の迎え方と推移を覚えるようにしてください。
     それから頂芽を選ぶわけですが、幹の太さで判断を分けます。親指よりも太いときにはクラウンから数えて3~6
     番目の外芽の中から選びましょう(外芽のみの数です)。単一主幹の薔薇は、総じてベーサルを出しにくくなってい
     ると言えますが、それはクラウンへの付け根部分が、枝であるにもかかわらず、クラウンの一部と化しており、事実上
     クラウンの役目と機能を担っていると見なせるからです。剪定後の手入れさえ十分なら、3~6番目で選ばれた頂芽は
     動き出すときになると非常に強い「ホルモン生産能力」を茎頂の重要部分として発揮し、強力な刺激をクラウンへ伝
     えていきます。もしも、6番目よりも上の外芽を選ぶと、その能力が、暖地では1/2、標準地で1/3、寒冷地で1/4
     程度を喪ってしまいます(この割合は、同一品種を同一条件下で育てた複数株でのシュート発生率から算出しました
     )。もちろん、単一主幹というケースのみの話です。
     さらに、このような生育の薔薇に対しては、一部で行われているようなげんこつ剪定は絶対にしないでください。あ
     の剪定法の最大のまちがいは、枝の基部の見方を疎かにしていることです。クラウンが根頭であることを理解しない
     かぎり、なぜベーサルシュートが伸びてくるのかという最も基本的なことを理解できるものではありません。(このことに
     ついては、第2部で再び解説します。)
     また、内向きである芽は頂芽とすべきではありませんが、地植環境によっては該当芽が「そっちへ伸びてくれない方
     がよい」と思う場合もあるでしょう。そのようなときには候補芽よりも上ではなく、下の外芽を選びましょう。成長におけ
     るリスクは高まりますが、やむを得ません。つまりその芽が頂芽となってくれない場合があるのです。それでも上位芽
     を選ぶよりもベーサルを出す確率が高くなります。



    2.主幹が複数立っていても、前年の生育があまりよくなかった

 ……この場合、花付きが悪いときがあったとか、開かないまま落ちた蕾があったとか、サイドシュートが出なかったという内容
    は、必ずしも生育不良ではありません。そこを注意してください。多くの場合、肥効の不良であり、天候の不順であり、
    土壌の質の緩やかな悪化であったりするのが原因です。表土を軽く耕すのを一度もしなかったときですら、生育不良と
    見なしている姿になりやすいものです。複数主幹での生育不良とは、ハイブリッド・ティにおいてはクラウンからの三段
    目以上の枝と花梗の充実の停滞であり、過敏感反応による枝枯れ、キャンカーの止まらない進行、土壌の化
    学性の急速な悪化による根の異常が引き起こした新芽の萎れという四つのことを指します。
    もしもあなたのHTがそれらの一つに該当するなら、と同じ芽の選別をし、同じ剪定をしましょう。
    該当しないのであれば、立っている主幹の太さにバラツキがないとき、クラウンから数えて4~8番目の芽で外 
    向きのものを頂芽とすべく剪定します。外芽の数による順番ではありません。芽の総数の話です。ただし、三年
    目からはクラウンからの初段の幹は除外することになります。つまり二段目での下から数えて4~8ということになり
    ます。二段目の付け根が、言わば仮のクラウンであると見なすのです。あくまでも、花梗だった枝の基部にすぎません
    が。このとき、複数主幹では残した頂芽の高さがバラバラになるのが普通ですが、それでかまいません。複数主幹で
    は芽の位置が芽の伸長力に格差をもたらしにくいからです。ただ、主幹の太さが太いものと細いものとにはっきりと分
    けられるような立ち方だと、芽の高低差は、多少であれ伸長力へ影響します。このことが鉢植えで顕著なので、前講座
    の解説では「必ず初段で切るように」としたわけです。これは茎頂で作られるホルモンの量と送られる速度のことで
    あって、幹の太さがほぼ同じであるとき、クラウンに近い方の芽が、二つの段であれば均等になりやすく、一段のみでは
    均等にならないということです。もし皆さんが同一株を二つ以上お持ちなら、切り分けて以後の観察をしてみてください。
    あまり変わらなかったというときには、そこの土の団粒化が非常によい状態であるとわかります。団粒度は、生育全般
    を良好なものにするだけでなく、樹勢を根本的に強めるからです。


 

    3.前年の生育はたいへんよかった 土の状態はよくわからない

 ……ほとんどの人は、薔薇の生育がよいと思うとき、当然土の状態もいいだろうと考えます。その際に重要なのが前回の
    「地植方法」で植え付けたかどうかになります。Step2のA~Hのいずれかで地植した人は、前年の生育の良さに、実
    にたくさんのことを見つけて楽しかったはずです。しかしご自分のやり方で、いずれの考えも方法もとらずにすでに植え
    てあった人は、Step1の「共通項」を細かく検討してみられた方がよいでしょう。
    そして生育良好の一年間を前年に送ったHTでは、どの段のどの芽もよさそうに見えて、特に多くの幹が複数回シュート
    処理されていて初めの二段が短めであるとき、つい三段目の中から芽を選びたくなります。しかし、第2部でもくりかえし
    ますが、二段目は一段目よりもいくらかでも長く残す処理をすべきで、その二段目の中から外芽を選んで剪定しまし
    ょう。普通は、残した頂芽がまさに頂芽として強く伸びていきます。だからさらに翌年にはその下の芽で剪定。
    しかし、施肥が順調に行われ、量も適切だったとき、頂芽以外の下の芽もいくつか動くことがよくあります。この場合に
    は、皆さんが頂芽としておいた芽よりも下位から伸びた三段目の、中程から下の芽の内で選ぶことになります。そし
    て、そのHTが横張り性の品種であったなら、ますますサイドシュートが横へ張り出していくでしょう。「この場所でそうい
    う成長をしてくれたら困るんだが」という場所であるなら、そもそもの品種選定をまちがっていたことになります。あるいは
    隣りあう株との距離の取り方に問題があったことになります。
    一方、アップライト樹形になっていくHT品種であるとき、良好な生育を続けさせるためには、上記の剪定法を続けると共
    に樹勢を維持するためにあらゆる工夫をしていく必要があります。そうしないとこのタイプのHTは、剪定後の一年間を
    通して若い枝の充実が鈍りやすく、良花を咲かせにくくなりやすいからです。元気よくたくさんの分枝をし、花梗数も多い
    のにどういうわけか大輪にならない、綺麗に開かない、というようになりがちなのです。
    さらに、そうした元気な株の状態で、樹形を無視したように低く倒れるようなシュートが前年に出ていて残してあった
           場合には、春剪定時に付け根から切除しましょう。惜しいと思えても、こうした枝あるいは幹は、他の主幹へ回される
    はずの要素を多めに使いやすいのです。風雨の力で寝かせられてしまった枝も切除です。どれほど他の主幹の上部の
    繁りが旺盛であっても、薔薇の開心性=広がりを求める欲求、が非常に強いことを忘れてはいけません。春先に、
    折れて下垂している枝からさえも、どんどん芽が伸びてくる光景を目にした人も多いでしょう。ブッシュであっても、決して
    なるように伸びていく力をHTが持っていないわけではないのです。これは潜在性のことです。



    4.中剪定と弱剪定について

 ……1~3はいずれも強剪定の話でした。地植のHTは強剪定することが原則です。ではどんなときに中・弱の剪定をするの
    かというと、

    (1)何らかの原因でひ弱な感じに育ってしまっているとき
    (2)デザイン剪定(特殊な場所にふさわしい樹形づくり)
    (3)成熟期に入っているだけでなく、まもなく老熟期へ入りそうであり、ベーサルシュートが出なくなっている
    (4)若々しい株であり、初段から四段目までの枝を太く大きくしたいとき(グランドフォームづくり)

    以上の四つです。以下のようにしましょう。
    (1)→植え付け初年度と翌年の二年間を除き、移植します。つまり再植えつけをするのです。新しい場所での丁寧な
        手入れによって、元気にしてやりましょう。  植え付け初年度と翌年の二年間では、場所を変えず、天地返し
        してから植え付けるのが最善です。天地返しによって根が当面接する土をリフレッシュさせ、元々の微生物相を
        壊すことなく団粒化へと導くことに努めます。
        移植後も天地返し後も、3~6段目の枝の中からよい芽を選びます。動いていないしっかりした芽を選ぶのが
        ポイントで、高さの違いや芽の方向は問題にしません。いずれも、樹が丈夫で元気になってから揃えればよいの
        です。四季咲きであればこそ、そんな考え方ができます。
    (2)→くれぐれも、いびつな樹形、窮屈に混みあう分枝、見た目に不健全な傾き(たとえば土の方へ伸びはじめる芽)に
        ならないような剪定にしてください。切りすぎ、残しすぎ、奇妙な誘引は、HT本来の花をわずかにしか咲かせない
        状態にしてしまいます。逆にその一株の日照がよい場所での光屈性をほぼ完全に理解できると、まことにみご
        とな樹形と花を見ることができます。経験の浅い人は、剪定後の生育を必ず毎日観察してください。そうしない人
        はデザイン剪定をすべきではありません。
    (3)→人で言えば壮年期であり、主幹の数にかかわらず、強と中弱の二つの剪定を年々交互に実施します。これは
        ベーサルが出ないことによる負の処置ではなく、まったく反対で、樹形にある種の壮麗な姿を現しつづけさせる
        ことになります。交互法では秋剪定を行いません。また、クラウンがかなり立派なものになっていなくてはすべ
        きではありません。ベーサルを出さないクラウンであっても、栄養生長と生殖生長の二つの力はまったく変わらず
        に発揮されています。つまり、樹形の創造をすでに脱したと見て、樹勢のすべてを枝の充実と花の整いにのみ
        向けさせるのです。これこそ人為の醍醐味であり、その品種の幸福へ最善の手助けとなります。
    (4)→グランドフォームとは、一言で言えば鉢栽培では100%無理なことになる「サイドシュートの大規模な発生と
        充実」により、真横から見たときイチョウの葉のような形をした樹形へ育てていく大株づくりです。このやり方は、
        剪定経験が10年未満の人はしないでください。ほとんど失敗し、強剪定へ戻ることになります。
        具体的には、枝の直立性の強い品種で、主幹の太さも頂芽の位置の高さも無視し、美しい開心を円のようにつく
        ってくれるであろう芽を残し、いずれかの芽が伸びずにその下位で伸びてきたら掻き取り、ひたすら、株を真上か
        ら見たときの円形を追求していきます。そのための剪定であり、そもそも何らかの悪条件がある場所や、樹勢に
        強い素質がない品種では無理です。ところが究極の開心剪定であるこの「グランドフォーム」へ成っていく過程
        そのものが迫力に満ちており、最も整枝に迷わない樹の形へ向かい、やがて庭のシンボルツリーのような薔薇
        へと育ちます。そのような品種選定が肝心で、薔薇園等できちんと見て判断してください。
        候補としては、クリムゾン・グローリー、クィーン・エリザベス、ピース、アントニア・リッジ、ホワイト・クリスマス、
        シャルル・ド・ゴール、クライスラー・インペリアル、ドフトヴォルケ、エスメラルダ、ガーデン・パーティ、ホワイト・
        マスターピース、グランパ・ディクスン、コンラッド・ヘンケル、ランドラ、ローラ、オクラホマ、プリマ・バレリーナ

        など。

   もちろん、皆さんがHTを前にして、それぞれの判断で中・弱剪定を行うのも、良いでしょう。その判断によってその後の
   生育を丹念に観察し、翌年へ反映させていく向上心は尊いものです。ただ、なんとなくであるなら、気まぐれな剪定にな
   ってしまいますから、それをくりかえしていると予定外の問題がいろいろと起きてきます。対処の仕方もわからなくなりま
   す。ですから、HTは次のフロリバンダ同様にできるだけ統一した剪定法にすべきだとも言えます。


 


-春剪定-
 フロリバンダ、ポリアンサ

    1.フロリバンダは強剪定

 ……FはHTと違って、同じブッシュ樹形であっても前講座のように内向きの枝(向心枝)を切除しません。原則的に、花枝
    (花梗)をすべて生長させて咲かせます。ただしよほど混みあって花冠が押されて潰れるものが出てきたり、ある
    房が別の複数の房に埋もれてしまうような場合には、早めに潰れる花・陰になる房を摘みましょう。
    ということですから、剪定時にすでに内向きで動いている芽があるとき、掻き取らずに残します。
    そこで春剪定では一段目または二段目で頂芽を選び(外芽)、それ以上の段では剪定しません。その根拠は、
    新しい出芽とシュートの発生を促し、また複数主幹の太さを揃えることにあり、フロリバンダとポリアンサのほとんどは
    この剪定法に応えてくれます。そこには、直立性でありながら房の数と広がりを求めて成長しようとする両グループの
    基本的性格がはっきりとあらわれています。この性格を無視した剪定は、数年で房数の減少、花首の弱さ、下垂しや
    すい葉という弱小枝の性質ばかりを見せる枝を増やすことになります。それでもFは、ベーサルシュートの発生によっ
    てその弱点を解消しようとする生育を保持し続けます。この場合、いかに適確なシュート処理ができるかが成長全体
    を左右します。
    そして、剪定では頂芽が動いた後に下位で動き伸びてくる芽もそのまま伸ばし、いくつか腋芽も出ますが除去せず
    に伸ばします。この腋芽が高い位置で出現するほど、また多いほど将来美しい樹形となっていく鍵です。ふつう、
    それらの花梗は弱々しく見えるし、花も小さく見えるものです。花首が短すぎることもあります。それでも隣の枝へ衝
    突するようなもの以外はすべて残しましょう。
    それからは花後の整枝がポイントになります(整枝の項を参照)。
            冬が来るたびに強剪定ができるためには、毎年のようにシュートが発生してくれなくてはなりません。たとえば短く
    ても三年間は発生してくれれば、それからの二年間は一本ずつだったりゼロであっても、常の切り方をすることでよい
    樹へと育っていってくれます。そしてその次からの三年間、またシュートがよく出てくれれば、もう大丈夫です。がっちり
    とした、立派な樹形のフロリバンダとポリアンサの完成です。主幹を古いものから更新しながら、楽しい剪定、かなり
    自由度の高い剪定を行うことができます。この「3/2/3」という年数を頭に入れておいてください。ちょうど八年経っ
    たころに、いかなるFもPolも成熟期へ入ります。(鉢栽培では、よほど大きな容器へ拡大していかない限り、地植のよ
    うな樹形はつくれません)




-春剪定-
 ミニアチュア、パティオローズ、ミニフローラ

   1.大型のミニは強剪定

 ……20世紀に生まれたミニアチュアブッシュのうち、樹高がおよそ30cmを超えるものはここに含まれます。ボックスやス
    テップの造形花壇、園路沿いの列植などが施され、わたしたちの目を楽しませてくれる小輪の薔薇たちです。これら
    は中・弱の剪定をしていると、数年と経たないうちにちぐはぐな花の並びになってしまいます。それを避けるための強
    剪定です。
    パティオでもミニフローラでも、ミニアチュアブッシュに比してはるかに大きな葉を持つ品種がたくさんありますが、事実上
    のフロリバンダへ含めてよいものの、彼らの生育は実はFと決してそっくりではありません。そこでここに含めます。
    さて、ミニタイプの薔薇は、主幹の更新を毎年のように行うことが肝心です。長くて二年しか残しません。その理由は
    分枝力(ミニではそのまま花梗数のことになる)の60%以上の減退にあります。一年から二年経つと、それほど分枝
    する力が落ちるのです。何しろ小振りな姿の薔薇ですから、多くの人は「大きさが変わらない」ことにのみ囚われてしま
    いがちで、同じように細い枝の、一つ一つの充実度の違いまで見ていません。実は二年目までの切り口と、三年以上
    の枝から出た新枝の切り口は相当違っています。花殻を摘む花後の整枝をするときに、比較してみてください。
    三度目の冬から更新主体の剪定を行っていくと、その年の春から夏にかけて、地植であればこそシュートを盛んに出す
    ようになります。この事実は、実はその株の成熟と安定を表現しています。それが数年続き、やがてシュートを出さなく
    なるときが来ます。それが老熟期であり、数年続いてから寿命を迎えます。ところが鉢栽培の株の方がもっと長く老熟
    期を送ることも多く、その理由は土替えにあります。ミニタイプの薔薇の根は、他のタイプのそれほど長く伸びませんし、
    特に地植では根数も限られてしまうからです。では地植でも土をたくさん変えてやればよいではないかというと、稀にそ
    ういうことがあっても、多くはやはり寿命を迎えます。なぜかというと、鉢栽培ほどには新しい主根や細根を発生させられ
    ないからです。根の伸長力が、根の更新力を抑えてこそ得られていることにあります。最も大きなパティオローズで
    すら、根の最長は3mが限界です。たとえみごとな大きさの台木へ品種を切り接ぎしても、ミニタイプは一年以内に品種
    が台木をコントロールする側になりますから、もはや変えられません。
    ただ、地植の土壌が耐水性団粒として揺るがない良質なもののとき、何かの原因で弱らせられない限り寿命が倍にな
    ることもよくあります。老熟期の延長が起きるのです。だから10歳を超えて、まだわずかでもベーサルを出し続けている
    なら、以後は強中の交互剪定をしましょう。前年が強なら当年は中、そして翌年が再び強です。その薔薇は、幸せい
    っぱいに生きつづけるでしょう。


 

    2.大型以外のミニは中剪定

 ……この中剪定とは、秋の終わりの姿で、最上段からの次段もしくはその下段の芽の中から選んで行う剪定です。この
    とき、クラウンからの段数に多くのバラツキが生じていると、強剪定へ変更しなくてはなりませんが、非常にもったいない
    と言えます。たとえばある初段からは合計五段、ところがその隣の初段からは一段で、計二段でしかない、といったケー
    スです。また、ミニフローラなどでも八段と三段という具合になってしまうこともよくあり、こうした株でも、剪定で、最少の
    段数の枝はすべてクラウンから切除します。このやり方をするからこその剪定による更新であり、若返りであり、その
    年の根の生長力も左右します。
    最上段から数えるという考え方は、当社独自の方法です。常識ではありません。ところが、アマチュアの皆さんの多く
    が、無意識の内にこのやり方になっています。小さな姿が剪定によってますます小さくなることへの抵抗感であり、春に
    なってからの芽吹きによる花梗数の多さを期待しています。そのことは、結果的にミニの剪定の理に適っているのです。
    ただ、そうしておいて後に順調に生育し、今度は主幹数が多すぎるように思えてくることがあります。このとき皆さんは
    切りすぎています。減らしても、残った幹の数が多くて何の心配もないように思えてしまいます。ところが、切りすぎは
    ミニにおいてはその品種の開心欲求を人の手で壊していることになります。その状態が数年間進行すると、よく直立し
    てくれる品種ほど、一時期下位の芽も活発に動いて伸びた後、前年にシュートであった幹ですら、上位の芽ばかり伸び
    て、下位の芽は黙ったままになりやすくなります。開心を妨げた影響です。ミニとフロリバンダの最大の違い、それは
    樹の大きさの違いによる「分枝する位置の違い」です。活発であればこそ主幹が減らされて整った樹形として美しくと
    も、実は分枝するはずだった基点の喪失を人の手が行ってしまったわけです。ミニ薔薇の本当のすばらしさを、皆さんに
    きちんと理解してほしいと思います。


 


-春剪定-
 ティローズ

    1.成長における繊細さと伸びやかさ

 ……ハイブリッド・ティほどがっしりとせず、チャイナよりも伸びやかな性格を持つティローズ。多くの人が剪定で試行錯誤を
    くりかえし、よくわからないままに生育を眺めています。それだけ栽培困難なグループかというと、そうではありません。
    むしろ、わたしたちがティをブッシュの性格の中にシュラブの性質がしばしば現われる薔薇だと認識していれば、栽培
    者がどう育てようとしているかが第三者として最もよくわかるタイプです。人を映すのです。
    具体的に言うと、クラウンからの初段の幹から出て花を咲かせた花梗が枝となり、三段目の枝となる花梗を出す返り
    咲き性(一番花の連続としての二番花)
に関わることです。この性格の強弱が品種ごとに異なっているのはよく知
    られているところですが、気候や生育環境によっても同一品種の返り咲き方が変わり、しかもそれがそのときどきの
    勢の強弱に左右されないという事実があります。HTは繰り返し咲き性をたいへん強くすることによってティのこの繊
    細さを克服しているとも言え、そこにハイブリッド・パーペチュアルの返り咲き性の強さが影響を与えました。そのような
    TとHTとの差は花冠にも花容にも現われており、HTが整型花を安定的に咲かせるのに対し、ティのその二つは、いつ
    咲いても不整型になりやすい。ド・ディジョンド・ブラバンアルシデューク・ジョセフマダム・アントワーヌ・マリなどと
    いったティの人気品種で、皆さんもご存じでしょう。ジェネラル・ガリエーニでも、どうしてこんな花弁の重なりになってし
    まうのかと、嘆きは一度や二度ではないはずです。
    しかし見方を変えれば、そうした不安定感をもたらせているもの、樹としての言わば内向的な意味での頑丈さこそ、後
    のHTを確立させたティの天性なのです。その源はハイブリッド・チャイナにあるのですが、ティローズというジャンルが
    確立したのは、チャイナの持ちつづける「性向の混乱」をかなり克服できているからだったのです。そうでなければ
    ティは誰からも尊重されない運命になったかもしれません。性向とは、
    (1)どのような樹形になろうとしているかの不明確な分枝パターン(=分枝力の不安定)
    (2)不明確な頂芽の出方(=シュラブ的な芽の動き)
    (3)生育の諸条件が良好であっても、ある種のストレスを常に抱えている(=諸事情への過敏感)
    以上の三つのことです。ティローズは三つとも好ましい方向へと性質へと、進みました。日照がよく、土も肥沃であれば
    ティのシュートや第二段の枝は、まさにグイーッという感じで伸びていきますし、そこから細いままにサイドをいくつも出し、
    それらも直進したりしなったりしながらどんどん伸びていきます。しかもそれが、樹高を稼ごうとしてのことではない。実
    は広がり欲求のあらわれなのです。この伸びやかさこそ、ティの生育の本質であり、その後のこじんまりとした樹として
    のまとまりさえ、わたしたちにとって納得のいくような収まりに思えます。伸長と抑制のバランスを、ティから見て取る
    ようにしたいものです。


 

    2.剪定は、中と弱の使い分け

 ……ティの剪定の基本は強剪定を避けることにあります。ベーサルシュートの出方において本数が少ないからです。HTは
    そういう弱点を持ちにくいタイプなのですが、ティは一、二本という数で、ゆっくりと太くしながら長さを求めて伸びていく
    姿となります。ですから毎年のように初段まで切り下げる剪定を続けると、その刺激がよい方へ出ることもありつつ、し
    ばしばストレスにもなりやすいのです。その結果、各主幹は老いやすくなり、そこの芽がほとんど動かないということも
    よくあります。それでは何のための剪定かわからない。
    a.前年のサイドシュートは処理しても(五つ以上の芽を残してピンチ)、ベーサルは処理しないのが基本。フリーと
      誘引のいずれかを選ぶのですが、樹高が1.3~1.5mの品種が多く、通常はフリーにした方が花付きはよくなく
      ても良花を咲かせます。その狙いでは、剪定ポイントは前年に出た二段目または三段目の最先端の外芽を選
      んで、そこから下を残しておきます。この切り方により、クラウンから出て五年以上経っているやや古い主幹が切除
      されていれば、その株はストレスを感じにくく伸びやかさの方を選んだ生長を始めてくれます。
    b.ベーサルもサイドもフリーにしない誘引形の場合、まず比較して弱そうな枝として残っているもの、短いものを付け根
      から切除します。グリーン支柱を立てて枝を固定しているだけのときにもです。それから残っている枝全部をじっくり
      観察し、充実していて強いと思われる枝は中剪定、それほどでもないと思える枝は弱剪定をします。つまり前者で
      は第二段の中間の高さの芽、後者では第三段の上位の高さの芽を頂芽として決定します。よく返り咲いている
      株でもそうしておき、芽の向きは考慮しません。よいと思える方向の芽を選んでも、ティはちょっとしたことですぐに
      そこより下の芽を動かすからです。そしてそうなった場合、HTでもよくあるように、後から頂芽が伸びてくるので、先
      に動いたところまで切り下げる必要はありません。一か月も経ってから伸びてくることも多いのです。
    c.前年のストレスや寡肥の影響から、五年間ほどの期間で活気を無くした古い幹はクラウンから切除します。もしも残
      すと、他の若い主幹の足を引っ張る存在、すなわち後述する栄養整枝に応えにくくさせてしまうようになります。たと
      えばレディ・ヒリンドンでは、いくら肥培がうまくいっていても、短枝などを除去しているにもかかわらずサイドに育つ
      はずの芽がブラインドになりやすく、樹形が遠目にひょろっとしたものに見えがちです。
      逆に、何年経っていようと、活気を喪っていない古い主幹は、決して切除しないでください。その株はその幹へ
      も樹勢を割いており、大きな開心形を作ろうとしているのですから。この状態こそ、地植であることの凄みです。


 


-春剪定-
 ハイブリッド・チャイナ

   1.低くても強剪定

 ……こじんまりした樹形になりやすいHChはよく鉢植えにされていますが、地植にしても基本的にそうした樹形の傾向は
    変わりません。変われないのです。すべての薔薇において、枝と花梗との違いが最もよくわかる点が節間の長さ
    (節間長)です。多くのグループが、各部位の生長が全体の成長を示す様態へと進むにつれて節間長を長くします。
    ところがHChはその長さの差異に乏しく、樹として大きく育つ速度が遅く、華奢な外見で推移していきます。しかしな
    がら、では枝の充実に向かう力も乏しいのかというと、決してそうではありません。逆に、品種差はあるものの、他の
    グループよりもはなはだ魅力的で美しい充実をします。たとえば粉粧楼イレーヌ・ワッツグルス・アン・テプリッツ
    などの花冠がみごとな美をほころばせるのも、その花首も含めた、花梗と下位の枝ともどもの充実度のすばらしさが
    あればこそです。花殻を摘んだときの切り口の美しさ、剪定鋏で切ったときの切り口の完璧さは、たとえようもないほ
    どになります。
    仮に、大きくなってもらおうとして浅い剪定をすると、どうなるか。内向きの懐枝まで伸ばすとひどく混みあうので、それ
    らを間引くでしょう。すると次第に、何とも締まらない形の樹へ向かいがちになります。これが節間長の制約の結果で
    す。そうなってしまった翌年の春剪定で、強く行いますが、それは冒険だと思ってください。わたしは、薔薇は前年の
    自分の姿を覚えているとまでは思いません。しかしある種の固有の分枝発現パターンを示すのは確かです。この
    伝承があるので、チャイナは高い樹になっていかないのです。
    したがって、クラウンからの初段の最上位の外芽、または第二段の最下位の外芽で剪定となります。そして、
    弱々しい初段で三年を経過しているものはクラウンから切除し、前年のシュートの最下端の太さと変わらない
    太さをしている主幹は、すべてチャイナ剪定をして残しましょう。たとえばシングルに見えるセミダブルのグロワール
    ・デ・ロスマニスなども、この剪定後の春の気候によってぐんぐん成長してくれますし、2.5mの、クライマーやシュラブ
    とはまた違うおおらかな姿の樹へと、その年の各部位の生長を果たしてくれます。これが剪定という刺激に応えたHCh
    の底力であり、薔薇が持つ漲る素質の華麗さです。


 


-春剪定-
 1.5mまでのポートランドとブルボン

   1.強剪定から中剪定へ
 
 ……樹高が高くないポートランドとブルボンは、実のところたいへん難しい判断を迫られます。その原因は彼らが持つ先天的
    なブッシュ性にあります。たとえばオノリーヌ・ド・ブラバンラ・レーヌなどのようなブッシュ性を極限まで抑えたシュラブ
    に属する品種群を持っています。ところが多くはスーヴニール・ド・ラ・マルメゾンローズ・ド・レシュのように、強いけれ
    ども揺れるブッシュ性の樹です。その強弱が一年の間にも揺らぎます。去年がっしりとした成長傾向の方にあったか
    ら、今年は細い枝から細い枝を次々と出す姿になるだろうと思っても、そうならなかったりします。あるいは春から夏にか
    けて横へ張り出す枝が多かったのに、秋からは既存の枝の充実にのみ向かうといった変化があります。
    そこで一つの目安として、植え付けから(購入時からとは限りません)三年間は強剪定し、四年目からは中剪定を続
    けましょう。自己判断でグルグルと換えない方がよいのです。一般に樹高が低くて葉が密度よく繁るタイプの薔薇は、
    前年の姿を既定のものとして期待しがちになるのですが、花の時期とそれ以後の成長の間に、実は観察の視点を変
    えざるを得ないような判断の修整が必要です。
    揺れるブッシュとは、つまりは繰り返し咲き性の低さを持っているからであり、弱い生殖生長がほどほどの強さの栄養生
    長に奇妙に入り交じることなのです。それを毎年確認させられることになります。何とも悩ましい不明確な性質ではある
    のですが、繊細とも言いきれぬこの性質ゆえに、コント・ド・シャンボールラ・マルメゾンマダム・ピエール・オジエなど
    が見せる、典雅とも言える絶妙な美の極みを生むのです。ローズ・デュ・ロワの花のような彩度の高い花色ですら、光の
    下でなめらかな綺麗さを湛えます。
    ともかくも、二つの生長間に横たわる入交りの問題は、剪定では解決できません。前回に解説した植え付け方をしたと
    しても、土壌がどんどんよくなっていかない限り、解決できないでしょう。解決例は当園にあります。
    なお、以上のようなことゆえに、弱剪定はすべきではありません。ますます樹をわかりにくくするだけです。


 


-春剪定-
 ロサ・アキキュラリス・ニッポネンシス(タカネイバラ)

   無剪定と強剪定

 ……つる性のない完全に木立性の原種です。わが中国山地でも自生を見ることがあり、花は実にくっきりとした濃桃色の
    一重で、かなり遠くからでも4cmの花径を見つけられます。
    この薔薇は、基本的には咲き殻摘みのみの無剪定栽培をします。切ることによる刺激をほとんど受けず、頑固に自 
    分の生育スピードを守りつづけます。花以外はすべて、わたしたちの目にはもの足らなく映りますが、八年目辺りから
    そろそろこの原種のすばらしさに気づけるようになります。それは分枝パターンの整然としたリズムであり、広々とし
    たところでよりも、ひしめくように育つ他の植栽とのバランスの取り方の巧みさです。これは通常モダンローズでは得よう
    としても得られず、タカネイバラの根が土との間に交わしている微生物相の完成が為せる技です。
    しかし、およそ十年に一度という推測をしているのですが、樹勢が衰える年があります。その確認は樹齢が30年以上
    の自生種で、クラウンから遠い新枝がぼろぼろに見えるかのごとく衰弱している現象で行えます。これは自然状態で、
    この薔薇が末端の分枝力を大きく喪失していると考えられます。そのようなときが訪れるのです。そんなときに古い枝
    のいくつかを切除してやると、分枝力はよみがえり、樹はリフレッシュのステージへ入ってくれます。だから7年目ごと
    のペースで、一部の幹に対してのみですが、更新してやりましょう。春の間に必ずベーサルシュートを出してくれます。


 


-春剪定-
 ロサ・ルゴーサ、ハイブリッド・ルゴーサ、ハイブリッド・ガリカ

   強剪定による整型

 ……ルゴーサ種は原種もハイブリッド種も枝が硬く、ブッシュ性がつる性を追いつめているようなところがあります。それでも
    長く遠くへ伸びようとする枝の伸長力は強く、それをあふれんばかりの急激な生殖生長力の発現によって途中でストップ
    させています。ハンザのアルバム頁で紹介したように、そのような質的転換がこのグループ特有の開心形、つまり上か
    ら見渡したときの美しさをもたらしています。欠損のない緑一色のモザイクのようであり、そこに花期になって花色が明滅
    するように加わると、薔薇以外の花園ではまず見られぬ、しっかりした土台を思わせる翠の海に見え隠れする花色の、
    染め上げるのではなく輝きを高みへ届けるというドラマのすばらしさが描かれます。しかも翠と呼応して翠の奥深くへ浸
    透してもいくような花の効果であり、整型感がもたらす美の奥行きを生き生きとわたしたちの目に焼き付けてくれます。
    この整型を樹形に求めるには、春剪定で必ず強剪定をする必要があります。
    ただ、ここで言う強とは、クラウンからの初段や二段目という意味ではありません。冬までに定まった段数の中間より
    で頂芽を選ぶ強です。つる性がないからそのようなポイントができるのです。そして多くの場合、頂芽より下位の段の
    芽も動き始め、やがてまっすぐに伸びていく新枝になります。したがって春剪定をすると、そのような枝はすべて残ること
    になります。そしてそれらから伸びた春の花梗と、頂芽とその付近の芽から伸びた花梗とで、翠の海の花のたゆたいを
    表現します。
    無剪定にすると、いずれ樹形はかなり煩雑なものになり、主幹が分枝力を無くしていき、ついには花付きそのものが大
    幅に落ちてしまいます。それは、ハイブリッド・ルゴーサの多くは自家受粉をよくするタイプであり、無剪定で古い枝が
    残り続けると、生殖生長力がそのまま老いてしまうからに他なりません。たとえ咲き殻摘みを続けていても、樹そのもの
    は成長の老熟を推し進めるのです。
    HGlは、全品種で強剪定が必要なブッシュです。ティローズやハイブリッド・パーペチュアルとは別の道筋を歩み、特に
    樹高を求めない生き方の中に現代人の嗜好に適った性格として見えるところです。それはしなやかさをつるではなく、
    木立へと表現し、そして無雑作な開きの花冠の中に、ガリカカラーの奥行き、枝の香り、咲き誇るというよりまとまりの
    よさを屈託無く表現してくれます。花からそうした諸々のことが感じられるというそのことに、わたしなどは薔薇の強い
    意志を見ています。
    したがって、ガリカローズは木立性への刺激を、ある決まったパターンとなる剪定法で与えます。それが上に述べた
    までに定まった段数の中間より下で頂芽を選ぶという剪定です。これはイプシランテにしろベル・イシスにしろ、シャル
    ル・ド・ミルカーディナル・ド・リシュリューでも、初段や二段目の中から頂芽とするとしばらく芽が動かないでじっとして
    いるからです。そのような剪定は鉢植え向きになります。地植では、上記の頂芽としたものと下位の芽は一斉に動き、
    寒い春でさえもその原則を守ろうとします。気温と肥料で速度も増し、枝を長く伸ばす品種はするするとやわらかな調
    子で伸びていきます。そのことが見えたなら、剪定箇所が正しかったと思っていいでしょう。たとえばトリコロール・ド・フラ
    ンドルタスカニーでも明らかなように、剪定後に伸びてくる枝は決してやわらかで繊細な性質のものではありません。
    むしろ、しっかりした枝であり、花梗にのみ優美にうなだれる性格を表現して終えようとしています。


 


-春剪定-
 ロサ・キネンシス、オールド・ブラッシュ、キネンシス・ミニマ、キネンシス・センペルフローレンス他

   中・弱混合剪定
 
 ……鉢植えでは強剪定をするブッシュですが、それをこの原種とその変種のグループで行うと、いつまでもどこか殺がれた
    ような樹形になります。地植では、古くなって生育がすっかり鈍った主幹以外は強く切り下げずに育てる方が賢明です。
    キネンシスグループがチャイナ色の濃い、樹を低くする素質のグループと、のびのびと高くなっていくティ色の濃い素質
    のグループの両方を生んだ源と言ってよいでしょう。それゆえ、キネンシス・ミニマキネンシス・アルバといった、まる
    ごとキネンシスそのものである変種群が、圧倒的にブッシュの優性遺伝を発現させながら育つのです。つまり、チャイナ
    のコンパクト指向を自分たちの中で打ち消しています。
    だから中剪定と弱剪定を一株へ同時に実施します。すると、ブッシュ性が強いだけに、木のように立とうとする枝枝
    の間に条件差が生じます。それゆえ、どの主幹を中にするか弱にするかの選別が重要です。
    (1)その主幹が三本以上の次段を出していれば中剪定…この場合、外向きの下から三番目の枝の中間から上の外芽
                                       を頂芽とします。
    (2)その主幹が三本以内の次段を出していれば弱剪定…この場合、次段の最先端の外芽を頂芽とします。
       以上のようにしておき、それぞれに剪定したところよりも上の主幹部分は切除します。これはキネンシスグループ
    にとっては強剪定に等しいのですが、わたしたちの感覚はそうではありません。
    それから全体を眺め、もしも突飛に張り出している枝があれば、全体のバランスがよくなるように切り戻しておきます。そ
    うした枝を付け根から切除してはなりません。切除すると、キネンシス系は真横でなく下垂方向で直進する春の枝
    出すようになります。薔薇園等で、よく地面すれすれに枝葉が匍っている光景を見ますが、あれはほんとうは黒点病
    罹りやすくしているだけです。このグループは、必ず黒点病を発症します。そのきっかけを減らすべきでしょう。
    なぜ混合させた方がよいかは、まさに横張性にあります。例外なくこんもりとした、お椀を伏せたような樹形をめざすグ
    ループですので、まっすぐに伸びようとする枝の性質を利用し、同時に制限してやるのです。


Salon   品種別耐病性一覧表 


-春剪定-
 ロサ・マイカイ

   無剪定と強剪定

 ……アキキュラリスとの違いは、このタイプは緑のままのシュートを伸ばすし、古い枝や弱小枝の多くがうなだれるように下垂
    しがちだからです。つまり、そのような枝があればクラウンの付け根から切除し、なければ無剪定で見守ることにしま
    す。
    この原種は学名に「×」が付いているように亜種であり、マイカイの起源には不明なところがあります。欧米ではほとん
    ど栽培されておらず、ロゼット咲きの花は色も型も美しいのに、開花してすぐにうなだれ、またステム全体のみずみずし
    さがどんどんなくなって、汚れたようになってしまうのも好かれない一因でしょう。ところが、第2部でも触れますが、シュ
    ートの緑を密集させながらのじっくりとした直立の伸長は、それだけで至芸の美を感じさせます。最大の鑑賞ポイン
    トであり、その姿を一度見てしまった人は決して手放せなくなるでしょう。
    強剪定後には、決してまばらな株立ちにならないのがマイカイですから、繁み感がすぐに発揮され、またシュートを出す
    刺激によって、5月であるにもかかわらず完成型のように感じられるほどです。シュートが伸長中でも、その速度が遅い
    ために一気に大人になったような風格が現れます。そのことを楽しみましょう。


 


-春剪定-
 ペルシアンローズ系、カニナ節系、ロサ・ガリカ・オフィシナリス、ロサ・ガリカ・ヴェルシコロール、ロサ・スピノシッシマ
    ロサ・ルブリフォーリア、ロサ・ニティダ、1.5mを超えるポートランドとブルボン

   無剪定と中剪定

 ……フェティダのグループはともかく、なぜカニナのグループもなのかと思われるかもしれません。そのわけは、オフィシナリス
    を栽培した経験のある人ならわかっているように、シュラブ性の枝が、年々先端の枝の充実をかなり損なっていく成
    のパターンにあります。首を傾げたくなるような最新の枝の弱々しさ。これは、素直に考えれば自分でかけたブレー
    キでしょう。わたしたちに更新を促しているのです。ブレーキ痕のない枝に対しては無剪定でかまいません。しかしサイン
    が出たものは、主幹から数えて二段または三段目の、付け根よりの芽を頂芽とします。そのことによって、たとえば
    ヴィコロールでもカニナでも、秋の終わりからじっとしていた芽の内、どこからともなくいくつかが、まるで張りつめた緊張
    感を漂わせるような感じで動き出します。必ずしも鋏を入れた枝の芽とは限りません。そこがおもしろいところで、ベーサ
    ルの突き出るような形の飛び出しとも併せて、どこか後のダマスクローズの樹形づくりのような味わいを持っています。
    これらの薔薇は、見た目にシュラブでも、実質はブッシュの性格の小ささのなかに頑固な木立性を表現し尽くしてしま
        おうとしています。その点を見すごすと、後述のシュラブ剪定となる人が多いわけですが、その場合には成熟期の後半
    から花付きががくっと落ちてしまいます。
    無剪定は、樹の勢いが端々に感じられるときです。春だけでなく夏から秋の半年間ですら多数の芽が伸び、葉もしっか
    りしていて大きく、微生物資材や液肥の効きもよかったと思えた後の冬には、無剪定でかまいません。
    スピノシッシマとルブリフォーリアに関しては、ブレーキがペルシアンほどではありません。しかし芽の動き出しが樹形を
    作ろうとしないかのような偏った方向や高さの枝になって行きやすい面で、通年での枝の伸び方を見ておき予想を立
    てましょう。必要なら中剪定を行い、暖かい春になったら剪定をしてよかったかどうかを判断し、寒い春になったら(2011
    年のように)剪定結果よりも整枝を重視して経過を注視します。
    ニティダは成長全体にブレーキ痕があるような速度の遅さがあるので、枯れ枝のみの切除とし、剪定は春の花後に兼
    用させます。必ず中剪定とし、中途半端な弱剪定をしてはいけません。それをすると、ほとんど刺激にならないのです。
    葉に何とも言えぬ野性的でありつつ、おとなしい味わいがあり、そのまま秋近くになっての紅葉を見るのも楽しいもので
    す。しかしそれを望まないときには無剪定にするのを控え、中剪定しておきます。切る箇所は二段目の最上位の外芽
    のすぐ上です。
    樹高が比較的高いポートランドとブルボンは、できるだけ無剪定とし、通常の咲き殻摘みをするときや主として12月
    中剪定の方法で整枝しておきましょう。なぜかというと、2~3月に春剪定で中の切り方をきちんとしておくと、6~7月に
    かけて暴れるような分枝となることがしばしばあるからです。生育環境がよいほどそうなりやすく、枝が伸びすぎたり多
    すぎたりすることが、かえって盛夏の温度による疲弊を招きやすくしがちです。たとえば、インディゴブール・ド・ネージュ
    ジプシー・ボーイマダム・イサク・ペレールなどです。このうちイサク・ペレールはつるにあまりしなやかさはないのです
    が、例外的につる薔薇扱いをした方がよい結果が出ます。(Mailing Bouquetを参照)。鉢植講座で述べたこととは異な
    るので注意してください。


 


-春剪定-
 ロサ・セリケア・プテラカンサ、ロサ・セリケア・オメイエンシス

   完全無剪定

 ……アマチュアの主導権が強い薔薇愛好者の世界で、かつて公式分類として「ロサ・セリケア・プテラカンサロサ・オメイエン
    シス・プテラカンサ」という名称が付けられていたために、流通段階での混乱が生じてしまった経緯があります。たとえば
    Peter Beales 社はいまだにその分類に従っています。
    それほどに両者は似ており、わたしも時々まちがえます。そもそも1890年に両者が同時にヒマラヤから中国都市部へ
    持ちこまれていて、取り扱った人々によくわからなかった者が多かったせいでもあります。立ち会ったのか主導したのか
    はわかりませんが、その場にはイギリス人もいました。中英での見分け観も異なっていたでしょう。唯一の見分けるポイ
    ントは、この原種の最高の鑑賞ポイントでもある刺の形です。だから困難になるのです。

                ロサ・セリケア・オメイエンシス

                       ロサ・セリケア・プテラカンサ
                                              (Peter Beales,CLASSIC ROSES より)

    ご覧のように、よく似ていても刺の「高さ」が微妙に違います。プテラカンサの方がふっくらして高い。
    まるでこの刺を作るために生きているような薔薇で、できたばかりのときの色の透き通るような美しさは、他の薔薇では
    見られぬものです。また枝はつるのように長く伸びますが、ほとんどしなることはなく直進を続けます。地植でおよそ2m。
    細いのですが猛烈に硬く、小さく鋭い刺毛がびっしりと生えます。葉が刺に遠慮しながら付いているような形と言い、非常
    に特異な薔薇です。そして無剪定にしない限り、まともには育ちません。つまり剪定の刺激には応えてくれないので
    す。わたしたちが鋏を使う唯一のときは白い一重の花が散った後の、咲き殻摘みのときだけです。剪定を冬に行うと切る
    ポイントがどこであれ、一か月以上動きません。気温の関係ではなく、花芽分化のタイミングのことでもなく、おそらくはど
    の薔薇にも植物全般にもある茎頂分裂組織の生長点能力に、異常な何かが停滞として起きていると考えられます。
    また、このような原種が存在していること自体が、薔薇の持つ原初的性格としてのブッシュ性、すなわち木として立とうと
    することも天分であると言えますまいか。
    なお、このような原始的な薔薇であっても、稀に一本の枝がクラウンからまるごと枯れることがあります。その枝はいつで
    も切除してかまいません。


 




   b. シュラブタイプ ……鉢植講座では剪定方法を細かく分けて解説しましたが、地植栽培では、半つる種
の一部を除いて、シュラブ系はすべてこのグループへ含めます。ERやアルバ、樹高の
低いモスも低いダマスクなども含めます。
春剪定の基本が同一です。もちろん仕立て方の違いによる切り分けがあり、そのことは
以下の解説中で述べます。
シュラブ性とは、要するに枝の性質のことであり、薔薇の二大性質の一方である遠心指
向を直進性の中に獲得しているもののことになります。もう一つが木立の直立力であり、
開心指向の中に直立性を獲得しているもののことです。1.ブッシュで示したように。
いずれも広がる力であり、剪定とは広がる力を見きわめることでもあります。


-春剪定-

    1.頂芽の決定

 ……しなるように伸びたり下垂しつつ進む性質を利用して、フリーにすることも誘引をすることもできる薔薇のグループでは、
    シュートを別にして既存の枝のどの芽を頂芽に決めるかは、かなり自由度の高い剪定です。それだけに樹形における
    原則的なことをわきまえておかないと、その薔薇がいったいどのように生育しようとしているかがわからなくなります。シ
    ュラブの枝はほどほどのつる性があるゆえに、わたしたちが決めた頂芽に対して、ブッシュとは比べられぬほどの初期
    の生長力を集中させます。しかも同時に、頂芽の生長中に、徐々に、後の新枝の茎頂へ伸長力を分散させていくとい
    う、木立性の性格を表わしていきます。その結果、一番花の開花中か、または閉花の直前でサイドシュートある 
    いは二次シュートをどんどん伸ばし、しばらくは直立性を見せながらしなるように伸び続けます。
    そうなることを予想した剪定をするのです。
    ここに言う二次シュートとは、活力のある樹勢によって、最初のベーサルまたはサイドのシュートがかなり伸びたころに、
    遅れて芽を出し伸びはじめたシュートを言います。基本はこのシュートもつるとして伸ばすか、あるいは途中で止める形
    にすべくシュート処理するかのどちらかになります。
    もしあなたが広がりを制限した樹形を求めるならどのシュートも一度だけ処理をすることになり、広がり続けさせたいとか
    あるいはその年の誘引形を拡大させたいのであれば処理をしないことになります。ただし、品種と土壌の肥沃度によっ
    ては、処理(ピンチ)した方がよりいっそう広がったり高くなったりすることもあります。その判断については、第2部で説
    明しましょう。
    そこで、頂芽をどれに決めるかということと深い関係にあるのが、まずはフリーにするか誘引するかの決断です。

    フリーで伸ばす場合(品種によっては途中で特定の枝を支えておく固定の支柱が必要となります)、前年までの主幹、
    すなわちシュートだったものでの初段の芽の内、最先端の外芽か、あるいは最頂端の上向き芽(外芽とはかぎら
    ない)のいずれを剪定ポイントの芽に選ぶかをまず決めましょう。フリー樹形は、特に悪い条件がない限り前年よりも大
    きくなると予想しておきます。そして、そのように大きくなってくれているときには、毎年の一番花後に、最も古い初段
    を持つ幹を、クラウンから切除するかどうかを判断します。庭が広いとき、土壌の質がよいとき、残した方がよかったと
    きと切除した方がよかったときとに分かれるでしょう。その観察は、定期的な定点観測で判断します。つまり、毎日
    であろうと一か月に一度であろうと、決めた時刻に、決めた立ち位置から観察します。雨天でも、強風下でも。なぜかと
    いうと、そのようなときのようすも樹形だからです。よくある図解は、生きている絵ではありません。概念の端緒に過ぎま
    せん。
    誘引してある場合、誘引状態で剪定箇所を判断します。このときの剪定がフリーとはまったく異なるのが、春の花後
    あること、つまり5月か6月であることです。咲き終わりかけてからの剪定です。   そこで、それぞれの枝の中間点よ
    りも上位の芽を選び、ビニタイのようなもので目印を付けておきます。それから誘引を解き、伸ばせるものは伸ばすよ
    うにして置き、伸ばせないものはフリーにしておきます。離れた位置から眺めてみましょう。誘引中には感じられなかった
    姿と、樹の形にきっと驚かれると思います。これは何度経験しても新鮮なものです。じっと見つめていると、皆さんが思い
    もしなかった「その一株の裸の姿」が見えてきます。真実があります。   さて、頭に入ったならば、一つ一つの剪定
    予定箇所を片手で持ち、本当にそこで切ってよいかどうかをその後の成長の姿として想像してみましょう。必ず、いくつ
    かは箇所を変えたくなるはずです。それは誘引後を想像しているからであり、そこに、もう一つの楽しい真実がありま
    す。これら二つの真実こそ、皆さんとシュラブとの剪定時の対話、一年間で最も意味深い対話です。

    初心者の方や自信のない方は
       以上のことを守って経験を積み、それから初めて下記のことに取り組んでください。



 

    2.七つの原則

  (1)コンパクトとは、決して小さくすることではない
    ……グラハム・トーマスへのアクセスを頂戴していて思ったのですが、多くの人がコンパクトにすることへ大変関心が
       高い。そのうちわたしは、皆さんのうちのいくらかの人たちが、コンパクト樹形を縮めた樹形のことだと理解してい
       たり、あるいは小さくしたがっている傾向を持っているのではと思うに到りました。たとえばどんなに地植で大きく
       なる品種も、鉢植えにすると小さくならざるを得ません。いや、小さくはない、鉢からこぼれるように、あるいは鉢
       の四倍も五倍もの高さになってくれているではないか、と思う人も多いでしょう。そういう人は是非とも薔薇園へ
       行ってみてください。そしてトーマスの地植の大きさを知ってください。
       なぜ、かつての中国のように、幼い子どもに纏足を履かせるような考え方をするのでしょうか。大きさを抑制する
       ことと、小さく育てることは同じではないはずです。薔薇は物ではありませんよ。生きものです。
       立派に太くなった主幹を持ちながら、栽培者が枝をどんどん切りすぎをする例が、あまりにも多すぎます。

  (2)誘引面積と樹高の整合
    ……今、薔薇はまだブーム期の中にあります。バブルとさえ言えるかもしれません。経済で起きたことと似たようなこ
       とが、薔薇栽培に起きています。すなわち、不釣り合いな誘引で、薔薇の素質を歪めていると見受けられます。
       カタログや図鑑、インターネット上でも、各品種の樹高が必ず載っています。その意味を理解しましょう。エメ・ヴィ
       ベールを2mのフェンスへ誘引したり、メイドンズ・ブラッシュでポールを作ろうとしたりするのは、これらの薔薇の
       生き方を歪めるようなものです。エメはシュート長を頑固に守りますから、そのうち栽培者はもてあますのが嫌に
       なって元から切除するようになるでしょう。メイドンズは背伸びを強制され、望まない短い半つるを多発させられて
       しまうでしょう。
       樹高 × 3.14 × (n) =誘引に必要な面積
       この式がシュラブタイプの薔薇(俗称でつる薔薇と見なされ呼ばれる)を誘引するに当たっての基本です。たとえ
       ばモスのガブリエル・ノワイエでは、
       180cm × 3.14 × (n) =565.2㎠ × (n) となります。 3.14はまさに円周率πであり、品種を上
       から見たときの面積、n とは整数であり、あなたが求めて与える広さの係数のことです。
       実際には、言わば文章や図形で言う「余白」が生じますから、誘引デザインによっては別品種のつるを誘引するこ
       とも可能です。相手によっては、n の値次第で二品種で花を混在させる誘引もできるでしょう。そうした自由度も
       誘引にはあります。ただ、オベリスクのような立体誘引は、あくまでもポールの延長であり、複数品種でと考えな
       い方が賢明です。
       そしてたとえば、上の式で言うと、2.3mの樹高のシュラブでは少なくとも7㎡が必要で、それ以内の面積である
       とつるを波打たせたり、弧にしたり、くねらせることになります。つるどうしの交差も増え、花の密集感は増しても、
       窮屈な様子であるなら広さを見直しましょう。なぜなら、つる種も半つる種も、薔薇は曲げられることでの刺激を
       必ず受けるからです。後述するクライマーでは、シュートはまず立てるようにして支柱を与えておき、それから冬に
       倒して誘引するわけですが、この場合には支柱に支えられていることがシュートの伸長力を増します。そのことと
       似たようなことが、何らかの曲げる誘引をすると、春に起きるのです。もちろん無理な曲げ方でなければ、すべて
       薔薇にプラスの刺激となります。
       このように、(n)はあなたの心の広さのことだと思ってください。

  (3)シュラブの誘引形ではデザイン剪定もできる
    ……前講座でデザイン剪定を紹介しました。七つの基本を説明しました。以下に、前講座との相似と違いについて述べ
       ます。
       a,bについては今回のこの項には当てはまりません。
       c.シュラブ性の枝が細く軟らかい品種
         …鉢植えでは用土が互いに独立しているため、複数品種で混在誘引をデザインできることを述べました。その
           場合、両方の剪定ポイントを揃えられるかが重要だと記しましたが、地植の単一種での誘引では、その問
           題が無い代わりにシュート処理してあった枝であるかどうかが剪定を分けます。処理をして次段以降を
           伸ばさせてあったなら、常に、クラウンからの第二段の最先端グループの芽の中から、最もよい芽だと思
           える芽を選びます。多くの場合シュラブ性の半つるは二段目の伸びで終わっており、二次処理までして三段
           以上になっていることは稀でしょう。
           処理をしていなかった場合、クライマーと同じく、先端を数センチまたは数十センチ摘みとるように切りま
           す。これは剪定というより整枝の意味の方が大きく、ちょうど花後の枝先の摘み方と同じ目的になります。
       d.シュラブ性の枝が硬くて長く伸びる品種
         …大がかりな誘引をしても良し、最少限度の器具でフリーに近い誘引をしても良し。
           常に二年経っている枝の硬さや伸びている長さから剪定ポイントを判断しましょう。一年経っただけの若い
           枝は基準になりません。そして、このグループは大胆な誘引形に無理に枝を従わせると、一般にその後の
           分枝形がデザインを壊すものです。多くの人は見込み違いになった姿や模様を前にして、そもそものデザイ
           ンしたときの狙いがカスミのように頭から消えやすく、あきらめやすいものです。
           ところが、そこで時間をかけて観察し、以後の分枝のことも想像しながら冬になったときの剪定ポイントに
           ついて、考える時間をたっぷり持つのが最善です。その際に決め手となるのが、そもそも剪定前に各枝を
           無理なく広げて置いてみたかどうかです。実施していて、しかも記憶していれば、最良のデザインを考え
           つけるでしょう。
       eについては今回のこの項には当てはまりません。
       f.モダンローズのシュラブタイプで、強い横張性によって半つるを長く伸ばす品種
         …たとえばポリアンサやハイブリッド・ムスクの一部が含まれます。これらは、場所によっては樹としてのサイズ
           が不似合いなほど大きくなるため、似合うようにと一部の半つるを切らなくてはならなくなります。たとえば
           ラブリー・フェアリイエレン・ポールゼンなどで、小山のように盛り上がる分枝から、ほぼ同時に低く長く枝
           の先端を遠くへ届けようとする分枝形へ変わっていきます。この場合、春剪定で、葉をすべて取り去った状態
           にしてから、8割以上の数の枝を芽ごとに点検してみます。そして上下左右のいずれかへ伸びていった
           後の姿を枝ごとに想像し、残すか切るかを判断します。10年以上経っている株では、その一株に三日間
           判断日を割きましょう。拙速な判断は禁物です。
           HMuskの一部とは、モーツァルトバレリーナのような、比較的コンパクトにも育てられる品種を指します。
       gについては今回のこの項には当てはまりません。

  (4)ORのフリーは弱剪定、MRのフリーは強剪定
    ……シュラブ性品種では、フリーで繁らせ咲かせたいとき、決して強中弱の三つを混在させてはなりません。逆
       に、開花中や花後から冬になるまでは、実にいろいろな整枝法を駆使できます。
       オールドローズのシュラブタイプは、一季咲きと四季咲きの区別なく、フリーであればできるだけ前年までの枝を
       残すようにするのが最善です。その狙いは、たとえばモスローズでよくわかるように、下段の枝から出る新しい枝
       の多くが下段よりも長く伸びやすい反面、にぎやかなほどの分枝力を持たないからです。その座はクライミングタイ
       プに譲っており、むしろ土表から上へと離れていこうとする樹高欲求の強さを表します(その点が見えないような
       手入れは、どこかに問題があります)。つまり弱剪定をすると、自らが決めた頂芽とその近くの芽の一部だけが
       樹を大きくし、葉を大きくしようと伸長し始めるのです。
       ダマスクやセンティフォーリアであればそのことがもっとよくわかるでしょう。これらのオールドローズでは、リン酸が
       生長点へ送られる力がとりわけ強いからです。

                     オマル・ハイヤーム

       他方、モダンローズのシュラブタイプで気まぐれな剪定ポイントを選んでいると、たとえは゛プロスペリティヌル・マ
       ハルコーネリアといった品種は、必ず何割かの弱小枝や、異常なほど小さい下葉を生じやすくなります。頂芽に
       なる芽の位置が枝ごとにバラバラになり、やがてフリーであればこその問題である「樹形の中に空洞ができてし
       まう」ようになります。特にサリー・ホームズなどは、ある方向へのみ偏った繁みを作りやすく、ローブリッターでは
       整ったつる薔薇のように見えてくれないことになります。
       そこで、MRのシュラブの春剪定は、新しい枝ほど強く切り下げます。他の枝もそれに準じた強い切り方にしま
       しょう。そうしておけば、ブッシュで横張性を強く見せる品種へ伝えた、このタイプの基本的性格   遠くへ達する
       ことよりもクラウンを中心にした或る範囲でしっかりした半つるを広げようという開心の能力が活かされます。
       その最高の発現は、スケープローズが束になっても敵わないほどの美しい樹形にあります。たとえばのぞみや
       ジョリー・フェアが秀逸で、ラベンダー・ドリームもポップで華麗な姿を見せてくれますし、エルベショーンなどが作り
       出すローズボーダーは薔薇だから作れたと言える世界を表現してくれます。


 




   c. クライミング、クライマータイプ ……ここには分類上シュラブであっても、半つる性が低くてつる性の
強い品種のすべても含まれます。
わたしたちが一般に「つる薔薇」と呼んでいるものであっても、2.シュ
ラブタイプのつる薔薇と、以下のつる薔薇とでは剪定方法の異同が
あります。
目安としては、樹高(つるの長さ)が2.3mを超える品種だと考えて
よいでしょう。
 
 
-春剪定-
 一季咲き種(一部返り咲くものも含む)

   秋剪定以後の春剪定として

 ……一季咲きのつる種は7月に行う秋剪定が本剪定であり(寒冷地でも同様)、1~3月の年間最低気温の時期に行う
    春剪定は副次的なものです。本剪定以後に生じた弱小のつるを後述する整枝法で切除してもよいのですが、多くの
    場合何かへ誘引してありますから、切除をこの時期まで待つことになります。しかもクライマーにしてもノワゼットにして
    も、夏から秋にかけて整枝をくりかえしていると、樹勢の強い薔薇ほど分枝力の分散が起き、かえって短いつるを出し
    やすくなるせいでもあります。
    ということで、春剪定では誘引形を崩さぬように、どのつるを残してどのつるを切除するかを慎重に検討する必要が
    あります。特にシュートではなく飛び出したり跳ね上がったりしている様子のつるを、どう選別するかを考えます。
    次に、三年以上経った比較的太い、主要なつるであったものへ切るか残すかの判断をします。ノワゼットやハイブリッ
    ド・ムスクおよびスケープローズは残し、ラージフラワードクライマーや原種のハイブリッド種、ハイブッド・パー
    ペチュアル、ランブラー
は決して残さずに切除しましょう。その根拠は二つのグループにおけるつるの性格の違いに
    あります。地植の場合、その違いは非常に顕著です。そこにはオーキシン・サイトカイニン・ジベレリン・ストリゴラクトンの
    四つのホルモンの生産量と働きの質の違いがあります。後者の方が前者よりもはるかに多くの4ホルモン生産量を持
    ち、そこには前年の秋からの4ホルモンの出し方使い方のバランスを翌年へ持ち越さない性格が強く出ます。対して前者
    では4ホルモン生産量は比較的少なくても、秋までのバランスをほぼ翌年へ持ち越しています。この差がどういうことに由
    来するのかはわかりません。わたしの推定では、葉の密度と働きの違いから来ているのではないかと思います。その
    違いが、サイドシュートの出方にも現われているのではないか。一般的に、たとえばピエール・ド・ロンサールブラッシュ
    ・ランブラーなどではたっぷりとした長さのサイドは秋の間はせいぜい1~4本程度です。ところがHMskなどは原種の性
    質がたいへん強く遺伝しているにもかかわらず、たとえば容器植から地植に変わった途端にサイドを倍以上の数で発生
    させ、わたしたちを喜ばせます。その代わり、ベーサルシュートの数は少ない。冬を境にした、それ以前と以後とでバラン
    スを引き継いでいるからです。もちろん以上のことは土壌の質や肥培に大きく影響を受ける話ではあります。
    また、一季咲きでも返り咲きの多いグルーブでは、誘引やフリーによって地面に接しているようなつるを、この時期のタイ
    ミングで切り上げておき、土からは離しておきましょう。浮けばよいのです。元から切除する必要はありません。
    

 


-春剪定-
 繰り返し咲き種

   弱・強の使い分け

 ……つる品種で秋にも咲くものは真冬の剪定で弱と強を使い分ける必要があります。
    まず、エバーゴールドクレール・マタンハンデルといった純種のクライマーでは誘引を解かずに、弱いつるを
    切除しておきます。それから誘引を解いて、古くてサイドシュートをほとんど出さなかったつるのうちの半数を、ク
    ラウンから切除。たとえベーサルシュートや十分な長さのサイドが一、二本しかなくても、その強剪定をします。
    それによって、樹勢さえ強い年になってくれれば全体に活力が出てくるからです。そのことが最重要であり、誘引
    具(フェンス等)を被ってくれないという不満は、薔薇たちの足を引っ張ることになります。それから次に、十分な長
    さの若々しいつるの最先端を、誘引によるつるの配りをしておいてから切り取ります。これが弱剪定です。こ
    うしておくと、前年の秋の終わりに若い生長点が喪われたことで、このグループのつる薔薇は春の生長点を作る
    強い刺激を受けます。
    次に、つるアイスヴァーグつるオフェリアといったスポーツ種のつる薔薇と、アンジェラバタースコッチローゼ
    ンドル
フ・シュパリーツホップといった繰り返し咲き性がかなり強いつる薔薇の春剪定では、それぞれの樹高の半
    分程
度に止まっている弱いつるを残し、弱剪定をしておきます。そしてどの長さのつるでも、三年が経過して
    いたら元から切除して更新するか、それとも残すかの決断をします。残していって誘引がうまく運ぶかどうかで考え
    てみてください。コンパッションのような大型のクライマーでも、その考え方を適用します。さらに言えば、マダム・ア
    ルフレッド・カリエール
のような格別に多花性のノワゼットもここに含めます。ただし、アーチやポールに誘引し、特に
    多くの花とひっきりなしに咲く様を見たい場合のみ、中剪定をしておきます。
    




(2) 秋剪定

   a. ブッシュタイプ ……この剪定は通常整枝とほとんど変わらない意味のように思えますが、厳密に
考えると同一ではありません。春剪定が休眠中の切除であったのに対し、秋剪定
は成長中の切除だからです。薔薇の各部位がそれぞれに生長していたり充実し
て安定していたりするときに切るので、薔薇は即座に反応します。この刺激と反応
に一定の秩序を与えること、それによって樹としての成長全体へ好ましい影響を
与えるために行うのです。


-秋剪定-
 ハイブリッド・ティ

   1.開花日の調節よりも、大きく丈夫にするために

 ……ばら会の指導などでは、秋剪定を「切り花コンテスト」に出品するべく、開花日調節のために秋剪定をするようにと指
    導しているところが多いでしょう。出品のためであるなら皆さんもそのように考えてかまいません。しかし当サイトは、
    人間が天候を左右できない以上、あまりにも不確かな目的であると考えます。平均日を割り出す試みも空しく、集う
    ことの意義のみが輝くことでしょう。それよりも、わたしたちの薔薇はわたしたちの庭でこそ美しく咲いてほしい。元気
    でいてほしい。そう、願っています。集いを庭に求めながら。
    では、具体的にどのように考えてどんな剪定をすればよいのでしょうか。

    a.剪定日を定めるタイミングは、二種類のシュートの生長ぶりを判断して決めます。つまりHTは両シュートを伸長
      中に処理しているのが普通なので、残している各段それぞれの長さに目を向けます。たとえば二段であるとき、
      下段よりも上段を長く残してあるなら   処理後の各段はこの時点までに処理直前よりも太くなり、やや長くなっ
      ているはずです   .そのシュートは最上位の本葉で外芽になっているものの5mm上で切ります。三段
      あるときには、三段目の方が二段目よりも長い場合、二段目の最上位の本葉で外芽になっているものの5mm
      上で切ります。前講座では五段という数を境に説明しましたが、地植では四段目を境とします。四段以上ある場
      合には、必ず三段目の最上位の外芽で切ります。いずれも先端にある花梗が蕾を付けていてもいなくても、落と
      すことになります。その目的は、本格的な秋が来る前に頂芽を伸ばさせてやり、そこから下の各段の充実や
     分枝を促す
ことにあります。まさに8月の末から9月の始めにかけてのタイミングこそ、その目的に適う時期なのです。
    b.といっても、株の育ち方によってはもう少し早く剪定したり、遅らせた方がよい場合もあります。早い場合とは樹形
     全体が
急速に生長しつつあるというとき。遅らせるとは、病虫害や天候不順によって樹形全体の生長が思
     わしくないとき
です。いずれの場合も、当年に出たシュートも前年までに立っていた枝も、段数にかかわらず最
     上位の枝の下から二番目の外芽を頂芽とすべく切ります。
この剪定により、よい生長へは拍車がかかり、よく
      ない生長へはすべての枝の充実が起こりやすくなります。
      もしもbではなくaの切り方にすべきかどうか迷ったら、aを選びましょう。その方が無難だからです。
    c.主幹が大きく傾いていたり偏向しているときには、剪定ではなく整枝をくりかえして樹形の改善に取り組みまし
      ょう。
    d.成長が見られず、いろいろな原因で貧弱に育っていたなら、それでもためらわずに各枝の最上位の外芽で切
      ります。何段であろうとも、先端を摘む剪定をします。その時期は、9月になって開きそうな蕾が見えたときとし
      ます。いっこうに蕾が付きそうにない場合には、剪定を行わず、冬を待ちましょう。その根拠は、貧弱な株では生
      殖生長の衰えが栄養生長力の低下によって引き起こされており、そして分枝力をほとんど喪わせているからです。
      皆さんがすべきことは土壌や環境の改善であって、剪定ではありません。もし剪定をすると、蕾を上げないほど
      弱っている四季咲きのHTは、枝の充実もままならぬままに、残りの力が刺激を受けて新たに弱々しい枝を立てよ
      うとしてしまいます。そのことは諸耐性のさらなる低下を呼ぶだけです。


 

    2.古い枝の充実の判断

 ……成熟期以後のHTは、まずクラウンからいったい何本の主幹が更新されて切除されているかにより、最初の判断
    します。若々しい思春期では、たとえば二、三の更新があったとしても、残している枝は特別の事情がない限り99%
    充実しつつあるものです。それが成熟期以後では、更新跡が多ければ多いほど、活力が衰えていないのに枝の充
    実に難があることを告げていると考えてください。これは生殖生長ではなく栄養生長の能力の低下です。そのこと
    が目に見えたからこそ、更新を毎年のように続けざるを得なかったわけです。仮に10年も20年もその状態が続けば、
    株は目に見えて衰えていきます。決してむやみに春の更新をしないように。
    ところが更新跡の比較的少ない春剪定を経験してきた薔薇では、いかに古い枝も、「栽培ワンポイント063.HTにお
    ける古くて太い幹の残し方」で解説したように、たとえば最下段の枝ですら、休眠期以外のすべての時期に充実を続
         けています。では、どこをどう見るのか。
    a.古くてみずみずしさが無くなっているとはいえ、かつては勢いのある、若々しいシュートだった部位です。そのとき
      の名残があり、あなたが古いと見る段すべてで本葉の托葉の付け根を押し下げ、色を見ましょう。綺麗な白
      い色をしていれば、そして複数の付け根で確認ができれば、充実という名の生長が続いています。
    b.白くなくてくすんだような色になっていたら、そして複数箇所でそうなら、他の箇所がいくら綺麗でもその枝はもは
      や充実を終えています。ただし、だから更新した方がよいとは言えません。他の主幹との兼ね合いで判断しまし
      ょう。もちろん、秋剪定期に更新するものではありません。
    c.刺の白化を見ます。すでに多くの人が気づいてるでしょうが、新しいシュートの間の刺は多く、古くなってくると減
      っているものです。しかもどの枝でも境目である節のそばほど、落ちずに踏ん張っている刺がいくつかあります。
      白化していて、ただ鋭いだけだったり、先端が欠けていたりするだけであると思われるかもしれませんが、小さす
      ぎなければ手で割ってみましょう。簡単に割れたなら、充実を終えつつあります。かなり力を入れても割れなか
      ったなら、その枝は充実を続けています。
      両方が混在している場合も、充実することを可能性として持っています。このことは200品種以上のHTで確認し
      ました。


 


-秋剪定-
 フロリバンダ、パティオ、ミニフローラ、ポリアンサ

   すべての枝に弱剪定

 ……このタイプは、分類名どおり「花束」の樹形になることを求めて成長しているものです。春剪定では高さを揃えられま
    せんが、秋剪定ではそれが可能です。何段になっていようと、徒長している枝があろうと、偏向枝も、すべてほぼ
    揃う高さの外芽
で切ります。必ずしも整型的な樹形にはなりませんが、バラバラな高さになるよりもはるかに美
    しい樹形となります。実施するタイミングは夏の終わりで蕾が小さく揃い始めたときです。その直前や蕾がよく
    ふくらんでというタイミングだと、それだけ樹の形は損なわれやすくなります。
    ただし、株が若い間だけは秋は無剪定にしておきます。なぜなら、若いフロリバンダは、HTよりも生殖生長から
    栄養生長への転換が早くなり、その結果秋の最良の時期を逃したり早すぎたりしてしまう生殖生長への戻りが起
    きるからです。これはフロリバンダの植物生理であって、スピード感へブレーキをかけたときに起きる反動であると
    も言えます。天候が順調であればあるほど、そのことが顕著になります。たとえばストロベリー・アイスのように
    高が2mを超えるもの
で明確です。庭にフロリバンダを植えたいが一株だけにしておきたいという人は、そうした
    品種を選ぶと春だけでなく秋にも豪華な花数を得られるでしょう。
    衰弱株のフロリバンダにも鋏を入れますが、秋剪定ではなく盛夏から初秋にかけての整枝のことになります。そ
    れをしていなかったなら、そのままにするよりも秋剪定としてすべての枝をできるだけ長く残す弱剪定をしておきま
    す。なお、どちらが薔薇のためによいかは決められません。


 


-秋剪定-
 ミニアチュア、ティ、ハイブリッド・チャイナ

   秋剪定はせず、秋から冬は整枝法で

 ……樹形の大小にかかわらず、ミニは低く切りつめることを夏の終わりにしない方が正しいと言えます。その理由は、
    ミニは気温下降期に入ると枝葉を多数失うことによるショックがあるからです。刺激ではなく。刺激はあくまでも
    整枝によって与えて済ませます。
    ティローズも同様で、晩夏から初秋の一日に剪定を行うと、おしなべて樹形がアップライト型へ向かいやすくなり
    ます。その資質はティにとって実はあまり楽なことではなく、月日が経つにつれて言わば負荷のように、枝ごとに
    時期をずらした生長停滞を起こしていきます。無剪定でもある程度そうなるのですが、秋剪定がいっそう強めてし
    まうのです。そもそもHT以上に華麗な樹形を作りやすい素質を、繊細さが上回るようになります。たとえばグロワ
    ール・ド・ディジョン
であれば停滞をくいとめるのは日照だけになっています。しかし秋の日照は春ほどたっぷりで
    あるとは保証できないところです。植栽場所としても日照が厳しければ、諸耐性がゆっくりとでも下がっていきます。
    




   b. シュラブタイプとクライミングタイプ ……このタイプは秋剪定が主になります。行うとどうなるかについて以下に解説
します。
後述する整枝については、特に正確な判断に基づいて実施しましょう。


-秋剪定-
 半つる種とつる種

   秋剪定はせず、秋から冬は整枝法で

 ……一般に、つる性の強い原種や品種は、よく生育しているほど7月につるの更新を図ります。そうすれば残したつる
    の充実が進み、またそれらのつるから出る二次シュート(ベーサルシュートから新しく出たシュート)やサイドシュート
    (前年のベーサル及びサイドから出たシュート)を発生させて伸ばす樹勢が、更新の刺激によって強まります。夏に
    入って暑い時間帯に休眠しそうな時期が来たら、誘引してあるままに花を終えて残っているつるのうち、三年以上経
    っておりサイドシュートを出さなかったもの、花期に腋芽を付けたけれども伸びなかったり短く止まったもの、細すぎて
    弱々しいままだったものを切除します。付け根からの切除でなく切り下げで済ませる場合もありますが、それは樹勢
    がその年にたいへん強く推移してきたもののみとします。
    このような更新により、残されたつるの充実やシュートのさらなる発生が期待できます。
    更新にならない切り方は、この時期においてはほとんど剪定ではなく整枝になります。ですからつる数の多い生育ぶ
    りのものだけでなく、つる数の少ない生育ぶりのつる薔薇に対しても一部のつるを付け根から切除しておきましょう。
    この時期であればたいへん強い刺激となって、樹形を大きく成長させようとする力が発揮されます。
    ただし、肥培の失敗や罹病、土壌の質の悪化その他の原因で弱々しくなっているものに対しては剪定することをや
    め、一部のつる先を少しだけ切り落とすにとどめてください。剪定よりも弱った原因の除去の方が重要です。
    もし判断が付けにくく、切ることに迷ったなら残しておきます。生育期であればこそその方が正しく、決断は春剪定で
    行いましょう。
    以下にグループごとの注意点を挙げます。
    誘引してあるダマスクでは秋の切り下げは節間長を長くし、葉の密度を下げる影響が現れます。そのことで光合
    成量が低下し、生育が鈍くなります。寒冷地ほどそうなりやすいでしょう。剪定よりも誘引を解いてフリーへ戻しましょ
    う。生育がよいとそのままにして、冬に剪定をします。あるいは夏の高温期が始まったら休眠を確認し、しかもその
    日の最も暑い時間帯に剪定します。これにより、剪定後の休眠しなくなった季節の間で、つる薔薇扱いのダマスクは
    分枝力を存分に発揮するようになります。つる薔薇扱いしない場合には整枝のみにとどめます。
    枝を倒してあるセンティフォーリアは、若い間はむしろ秋剪定によく応えて、繁みの濃い育ちになりやすい面があ
    ります。しかしそれも画期的なほどではなく、年々春剪定の方が伸びやかで優美な樹の姿になってくれます。つる
    薔薇扱いであることを強く意識して切り下げたことがよかったかどうかは、そうした翌年に枝をフリーにして生長させ
    たときに判別できます。通常は誘引形を楽しむことにこだわらない方がよいでしょう。2.5mに伸びるツール・ド・マラ
    コフ
ですら、フリーの方がよい場合が多いものです。
    勢いのないシュラブは秋剪定がサイドシュートの発生を抑えてしまいがちで、樹形の一部に徒長枝がよく出たり、
    中途半端な広がり感ですっきりしません。健全な生育をしているほど、鋏を入れる箇所が多くなります。つる長とは
    見なさず、枝として切るポイントを判断します。一般に、冬まではよい枝ほど長く残してある方が全体の充実にプラス
    していくことになります。株に勢いがありさえすれば、よい枝のうち数本を強く切り下げておくと、年内の分枝力
    大きく増大するはずです。施肥量がものを言うことになります。
    原種とそのハイブリッド種は、つる薔薇でなくとも秋剪定をしてはいけません。自然に任せます。たとえばハイブ
    リッド・ムルティフローラであるランブリング・レクターなどは、いちはやくベーサルシュートの先端で分枝が起こり、
    いわゆるホーキになってしまいます。また、ルゴーサのコンラッド・フェルディナント・マイヤーでは、実質的にランブ
    ラーへ分類してもよいような品種で、秋剪定をすると主要な枝の充実がぴたりと止まりやすく、そのことは本葉の
    先端の小葉がかなり下垂することでわかります。うなだれるのです。
    ともかく、ハイブリッド・スピシーズは枝枯れですら、病気由来でなければすぐに切除せずにおきましょう。気温が
    かなり下がってから切除します。
    ハイブリッド・ムスクとノワゼットは、地植では鉢栽培とまるで違う反応が、9月という期間に多くの枝を切り下げ
    たときに起きます。見た目には頂芽から新芽が次々と出てきます。ところが腋芽がほとんど発生しなくなることから
    もわかるように、実は枝の基本的な伸長力はかなり落ちています。むしろ栽培者には静観してもらい、意外なところ
    からサイドをぽんと出したり、その時までに伸びていたベーサルの充実を見ていてもらう方を喜んでいます。つる
    薔薇として引き続き生育させるのであれば、必ず7月に剪定をしてください。切るポイントは各最上位になる動
    いていない芽
の上5ミリです。このグループであればそれだけでも強いプラスの刺激となります。
    モスでは、たとえばスーヴニール・ド・ピエール・ヴィベールの花が代表するおおざっぱな花冠という特徴が、翌春に
    ますます雑な花を生みだします。ウィリアム・ロブなどでも乱れから美しさが消え、ラネイは花首を弱くしてしまいま
    す。この原因は秋特有の茎頂ホルモンの生産と働くときの仕組みの変化を、秋剪定が招くとしか考えられぬと
    ころです。それがどういうことなのか、まだよくわかりません。ところが秋剪定をしなかった翌春の花には、そうした危
    険が少ないことで納得できます。したがってつる性のあるモスに対しては秋剪定をしないでおきましょう。
    アルバであれば、主幹からの枝のうち数本が生育の最初から弱小枝となることで悪影響をみとめられます。ブライ
    ンドは無関係です。とりわけフェリシテ・パルマンティエのように大株にはなりにくいアルバで、充実を問える前の段階
    において枝を伸ばすのをやめることがあります。したがって秋剪定では翌年の樹形を考え、幹の立っている数が多す
    ぎる
と思える場合のみ、秋剪定をしておきます。必要なければ、それぞれの最上段の枝から頂芽を選んだ軽い切り
    下げにとどめておきます。
    ガリカではカーディナル・ド・リシュリューについて言うと、秋剪定後にフリーでも誘引形でも土表へ向いた芽がたく
    さん伸びるという現象が起きます。しかも長くならない。春剪定のことを考えれば、せり出すような方向の伸長をこそ望
    みたいところです。そこで、ガリカの場合つる長の長いものの中から、クラウンからの全長の中程から少し上の芽
    秋剪定のポイントになります。ただし鋏を入れるつるの数が多すぎないようにしましょう。多すぎるとその後の新枝の
    発生も伸長も抑えられてしまいます。
    クライマー、クライミングフロリバンダ、クライミングHTにおいては、ピンチ(摘むこと)とカット(切り下げること)と
    では、まるで意味が違います。ピンチでは悪い刺激はまったくありませんが、カットをすると単に枝葉が増えずに減る
    というだけでも、光合成能が落ちます。夏に施した肥料の効きが、春の半分ほども感じられないことでわかります。
    もちろん、分枝力や伸長力に陰りがあるのではなく、根張りのよさが鉢植えの根と逆転したかのような現象になりま
    す。前講座でのように鉢栽培であれば秋剪定が行えます。しかし地植だとすべきではありません。新根が出にくくな
    るのですから。そこで秋剪定の考え方としては、弱々しいつる、短いまま伸びなくなっているつる、キャンカーなどの
    症状が現れているつるなどを付け根から切除しておきます。この刺激は元気な株ほど非常に強い刺激があり、ド・ロン
    サール
なども残してある主なつるがますます栄養生長力を高めてくれます。
    なお、誘引に困るからといってそうしたつるを強く切り下げると、冬までの分枝力を落としてしまうことになります。その
    ような切り方は春剪定で。
    ランブラーの場合、ラージフラワードクライマー以上に秋剪定のよい影響が強く出て来ます。つまりベーサルシュート
    が複数伸びてきたり、サイドシュートの伸長が旺盛になります。ただしこの剪定では、大幅なつるの削減になる減数
    を避けてください。若い間は平気でも、成熟期以後では伸長力が落ちていきます。しかし見定めた数本のつるを、夏
    という季節に減数すると、まったく逆の伸長力発展の刺激となります。判断においては、かなり混みあっている誘引形
    ほど、誘引を大幅に解くか、または慎重で入念なつるの選定をしましょう。軽率に鋏を入れてはいけません。


 





  2.整枝   


基本的な考え方
   地植の薔薇の整枝法も、用語の面では鉢植と同じです。
しかし実践では以下のように注意すべき点が多々あり、実施による効果の程度は皆さんの
観察眼にかかっています。
まず、このようなグループ分けを頭に入れてください。

Aグループ    HT / F / ER / T / P / HRg  グランディフローラも含む
Bグループ  S / Pol / HSp / D / HCh ルゴーサを除く
Cグループ  HG / A / C / B / Min パティオ、ミニフローラも含む クライミングMinを除く
Dグループ  M / N / HP / LCl クライミング-F,-HT,-Minも含む


 Aグループ
 (1) 花殻摘みはそのまま開心整枝として行う。懐枝になりそうな芽の伸びと腋芽を早めに掻き取る。
 (2) シュート処理は生長整枝となる。ベーサルシュートの本数が三本以内のときには早期に蕾が付くので、処理せずに蕾のみのピンチ。
 (3) 夏季に行う咲き殻整枝の時には、必ず同時に弱小枝を切除。ただし長さが十分なときにはそのまま残す。
 (4) 春と秋に行う分枝促進整枝は、太さが十分である分枝に対してのみ行う。
 (5) 減数整枝は基本的に行わない。ただし樹形に左右いずれかへの偏りがあるときには行う。
 (6) 鉢植えとは異なり、生殖整枝はシュート以外も含めて行わない。
 (7) 主幹から上位で分岐した枝の中から、二本を限度として栄養整枝を行う。つまり複数の分枝の中から二本だけ切除する。その主幹
     の全枝が立派とは思えないときには行わない。
 (8) クラウンから切除してしまうクラウン整枝は、ブラインドになったものに対してのみ行う。
 (9) 整枝する枝が見当たらなければ、順調な生育をしている。整枝フリーが理想(123を除いて)。


 Bグループ
 (1) 花殻摘みは栄養整枝になる。懐枝だけを早めに掻き取り、腋芽は取らない。
 (2) シュート処理をするものとしないものとに分ける。処理は栄養整枝になり、同時に分枝促進整枝にもなる。
 (3) 春の咲き殻整枝は生長整枝でもある。咲き殻を摘んだ直後から、その枝のどれかの芽が動くはず。
 (4) よほどいびつな樹形になろうとしているのでない限り、高さ整枝は必須になる。
 (5) ベーサルシュートが五本以上出たら、前年までの枝の中から三本を限度に減数整枝をする。
 (6) サイドシュートが五本以上出たら、二本を限度にシュート処理をし、分枝抑制整枝とする。
 (7) 夏季を元気に乗り切れたなら、主幹の一本のみ生長整枝を行う。最上位の分枝の付け根のすぐ下の芽で切る。
 (8) クラウンからの主幹総数が20本を超えた翌年には、できるだけ整枝を抑制する。しかし完全フリーにはしないように。
 


 Cグループ
 (1) 花殻摘みはそのまま開心整枝として行う。懐枝になりそうな芽の伸びと腋芽を早めに掻き取る。
 (2) 苗からの栽培で6年を過ぎたら、クラウン整枝を検討する。健全に育っていない主幹を切除するかどうか。
 (3) 春の咲き殻整枝は生長整枝でもある。ただ、気温にもよるが芽の動き出しは鈍い方。
 (4) 混みあう枝を切除する減数整枝は行わない。よほど風通しが悪い場合のみ実施。
 (5) サイドシュートの処理は慎重に行い、ベーサルシュートの処理は大胆に行う。生長整枝となる。
 (6) 樹高の高い品種は分枝促進整枝を行う。クラウンから三段目の芽でふっくらしているものを選ぶ。小さい芽は避ける。
 (7) 樹高の高くない品種は分枝抑制整枝を行う。枝の交差を花梗の段階で判断し、該当すれば付け根から切除。このグ
     ループはそういう枝が伸びて来やすい。
 (8) 高さ整枝は行わない。しかしシュート処理する位置における高さは揃えたい。
 (9) ベーサルが出なかった翌年は開花抑制整枝(一部の蕾のピンチ)を常に意識し、タイミングをまちがえないようにする。
 


 Dグループ
 (1) シュート処理を行わない、あるいは行わなくて済むグループ。
 (2) クラウン整枝も必要ないが、つるの更新を図らねばならぬときは必ず来る。その際、クラウンにも十分陽が当たるので
     あれば、敢えて実施しない。
 (3) 咲き殻整枝は栄養整枝になる。肥培に成功していればベーサルシュートとサイドシュートの両方が同時に伸びてくる。
 (4) 高さ整枝は行わないが、花梗が枝になってから後に2~3の範囲で生長整枝は必ず行っておくこと。そうした枝の中間
     の芽を選ぶ。
 (5) 分枝促進整枝を行えばサイドがたくさん出てくれる。ただし勢いの弱い枝に対しては行わない。基本は切除。
 (6) 開花抑制整枝の効果は大きい。房のいくつかを咲かせずに摘みとることだ。必ず本葉を一、二付けて。
 (7) たとえば実を鑑賞する目的もあれば、一年間整枝フリーを通してもよい。勇気が要る。年齢が20歳を超えたころに検討
     する。





第2部 生育の Security として


基本的な考え方
 誰でも、見込み違いをして、薔薇を切りまちがえてしまうことがあります。しかもそのことに気づくのは切ってからずいぶんと時間が
経っていたりもします。
 栽培とは、目の前の薔薇の現実に接して、「どうしてなのか?」と考えることでもあります。薔薇に向かって疑問を持つから、どん
どん自分のやり方を疑問に思うようになるものです。そのくりかえしの中から、自分のやり方のどこがどう正しかったのかを知って
いくこと   それが育てることの最大の歓びの一つでしょう。経験とは、考察があってこそ経験と言えます。
 つまり、なぜ、どのようにして切りまちがったのか、あるいは、まちがいではなかったが、どうすればもっとよかったのか、と考える
ことが薔薇を育てていくことにもなるのです。
A.整枝のケア

1.クラウン整枝をまちがえたとき

  ……この整枝を行うときとは、主幹の本数の多さに比べてクラウンの肥大が追いついていない場合です。つまり小さい。また、
     あまり広がらずに盛り上がり続けるクラウンもあります。ただ、クラウンに陽が当たるかどうかには下枝の出方も関係して
     いますから、品種の特徴によっては下枝の一部を途中から除去するだけで解決することもよくあります。
     ただ、クラウンへ日光が当たることの結果とは、実はクラウンにおける「花芽分化」の促進のことです。この光周性のことに
     ついては最終回で詳しく解説するとして、ここではクラウンから出ている幹の一部を切除すると、薔薇にとってはたいへん
     大きなショックをもたらされると理解してください。それはその後の一年間の生育リズムを左右するほどのことなのです。
     国内外の薔薇園でよく育っている品種が、枝葉を接地させてクラウンをまったく隠してしまっているのをよく見ます。それを
     樹勢として誤解してしまっています。実は植物学では決してその姿はベストではありません。ワーストでないのも確かなの
     ですが、薔薇が樹としてどのように生涯を送ろうとしているかをよく理解していないと考えられます。
     確かに隠れていても、地上部に引きずられるようにして根頭がシュートを出してくれます。しかしこの進行は、薔薇にしてみ
     ればリスクがあります。自然条件、就中、天候のことです。自然はあらゆる恵みであると共に脅威でもあるのですから。変
     化が起こるという摂理に、薔薇は立ち向かわねばなりません。だから枝葉によってシュートの出を促される進行よりも、ク
     ラウンそれ自体が光刺激を受け、大気の温度刺激を受けて発芽させる進行とその継続の方が、はるかにリスクは少ない
     のです。鉢植えの薔薇がよく育つのも、実は鉢のおかげでクラウンに日光が当たりやすいことが大きいのです。
     したがって、枝葉を接地させる樹形になってきたら、短くて三年がかりで日光がクラウンに当たるように仕向けていってくだ
     さい。そうすれば、ガリカやダマスクがどうして木立性へと向かったのか、理解できます。スケープローズの多くが、あんな
     にもつるを広げて進もうとする理由もわかります。…たとえばロベール・ル・ディアブルのやわらかな枝を、君はガリカだろ?
     と声をかけながら支柱を与えれば、窮屈なシュートでなくのびのびしたシュートを出してくれるようになるのです。
     さて、第1部で触れたげんこつ剪定の誤りのことですが、以上の説明から明らかなように、クラウンへ日照による刺激を与え
     ることは言えても、茎頂がホルモンを出して水養分を送るよう根に促し、同時にクラウンからベーサルの出芽をも促すという
     仕組みのバランスが、あの剪定では崩れてしまいます。まったく幹がない状態からの出芽では、株がまだ幼い間のみ悪影
     響が軽微に済みますが、いずれのグループの場合でも出芽はごく少なく、しかもその年を通じての出芽回数も大きく減じま
     す。それではリスクが大きすぎます。病虫害。災害。うっかり……。何より、科学的な根拠のない剪定法をしてしまうことに
     なり、薔薇を虐待することに慣れてしまいます。それを当たり前のように思いこむ危険な実践となります。幹が立っているか
     らこそ   残された長さによっても微妙に変わることですが   前年の茎頂からの生育という受け渡しと光周性の確保が
     できる。そのことを無視した剪定が、無知以外の名で呼ばれるはずもありません。したがって、病気に冒された幹しかない、
     というような場合のみ、やむを得ないこととして行なってください。


2.栄養整枝の切りまちがい

 ……ある枝を切除して別の枝へ養分を補うのが栄養整枝です。この切り方は、本来葉の密度との関連で理解されねばなりませ
    ん。一般的に、その日その時に付いている枝と葉の1/3以上を喪うと、薔薇は栄養生長ではなく生殖生長へ舵を切ろう
    とします。生存が危機にさらされるのですから。それが一季咲きの品種であるとき、何が起こるかと言えば、生殖生長への
    転換の中止です。これは厳しい。四季咲きであれば生長にチャンスがあっても、一季咲きにはたいへん困難な育ちにくい
    状況です。だとすれば、一季咲きでこの切りまちがいをしたなら、ほとんど芽が動かないままになった株になっていますから、
    早めに剪定をせざるを得ません。そうして栄養生長へ戻してやるのです。たいへんつらい姿になりますが、傍観している
    よりもよいのです。
    そして、時間がかかっても残っている芽が動いたなら、すぐにその芽の所まで切り下げます。複数あれば完全に回復基調
    にあり、上位の動いている芽の上5mmで切ります。
    いずれも先の強剪定の一環としての鋏の入れ方であり、そうすることで事実上の栄養整枝となります。クラウンで作られ
    たホルモンも残した茎頂で作られたホルモンもあなたの肥料によって力強く働くでしょう。ぼかし肥料にし、少量ずつ四日
    間連続で株元へ施してください。
    この後は四季咲きであれば蕾をピンチし、一季咲きであれは゛決して鋏を入れないでおきましょう。葉の生長が鍵です。


3.生長整枝の切りまちがい

 ……動こうとしている芽、そして伸びつつある芽に勢いを与えるための整枝です。薔薇は、根も枝も葉も花も、すべて細胞生長と
    細胞分裂によってそれぞれの植栽地で大きくなろうとする植物です。皆さんも、ご自分の薔薇と公園や薔薇園の同一品種
    が、何もかもはるかに大きいのをご覧になったことがあるでしょう。大きさの差とは、生長差です。多くの人が、目の前のサ
    イズが品種と環境の兼ね合いによるとしても適正なサイズであると、思いこんでいます。その結果として、シュート処理や
    蕾のピンチも実は生長刺激である整枝だと気がついていません。前講座で述べたように、いずれも「選別」なのです。処理
    もある枝の切除や切り下げも、頂芽の決定という選択なのです。
    ですから処理や切り下げをまちがえたと思ったなら、残した頂芽が伸びてきた後、もうまちがえないでください。概ね、まち
    がえた下段よりも倍の長さで残すか、倍の長さで切り下げたりピンチすることで解決できます。たとえば原種でも、適切な
    長さを枝に残す切り方ができていると、すぐに頂芽が動いてくれる可能性にはたいへん高いものがあります。しかも見て
    いて嬉しくなるほどぐいぐいと大きくなっていってくれます。あなたによって、樹勢の選択までも行われ、樹がリフレッシュの
    プロセスへ入ったのです。
    しかし、もしもう一度まちがえると、もはや樹勢の抑制となり、枝の充実が遅れる結果出るはずのサイドシュートも出なくな
    り、ブラインドや弱小枝が多くなります。その場合には春剪定でカバーしましょう。つまり翌年の生育ステージを新たなも
    のに変えてやるのです。肥料も惜しまずに与えて。
    すると偏伸びが起きるかもしれません。栄養生長力が一部の枝へ集中しています。この場合、伸びるだけ伸ばさせてやり、
    他の比較して低い枝の芽も動いたタイミングで偏伸びの枝の頂芽を選択します。


4.減数整枝の切りまちがい

 ……主としてクラウンからの三段目以上の枝葉がかなり茂ってきたとき、時期はともかく減数整枝が必要かどうかを判断しなく
    てはなりません。ブッシュでの切りまちがいは少なく、シュラブやクライミング種で起こりがちです。というのも、スペース
    誘引形を優先させるからです。その方針にはまちがいが無くとも、実際に枝を切除した後で、切らなかったその後の枝の
    生長ぶりから、しまったと思うことがあります。つる薔薇で栽培経験を積んでくると、その見方がだいたい当たるようになり
    ます。しかもなお、アーチでもオベリスクでも、花後の体裁を考えてしまいます。形よくオブジェを見せたいがために。それ
    でどんどん切り落としてしまいます。
    このまちがいでは、薔薇の多くはあなたが予想もしなかったところの芽をいくつも伸ばし始めます。喪失をカバーするためで
    すし、つるが固定されているだけに全体の生長力を発揮しやすいからでもあります。
    そうしたプロセスを確認しますが、肝心なのはその動きが一部で、あるいは途中でストップしてしまうかどうかを見守ること
    です。止まらないと確認できたなら、新しいつるの誘引を優先して配ったときのオブジェ(フェンスなども含めます)を想像し、
    邪魔になる場合のみ誘引してある中の一部のつるを付け根から切除します。ただし、その株の樹齢の数を半分にした数
    以内にとどめます。それ以上は切りすぎになります。切りすぎると分枝力が完全な状態になる前に冬が来ます。


5.分枝抑制整枝の切りまちがい

 ……この切りまちがいには二種類あり、一つは字形や字形に分枝している複数の枝の中から長い方を切除してしまうこと
    です。混みすぎを避けたいあまりにそうするのですが、このケースはしばしば分枝促進整枝になっています。そうなる前に
    つる(枝)の配り直しをしておけばよくても、誘引の仕方によっては不可能なことがあるでしょう。そこで、切りまちがえた場
    合にはいっそうの混み合いになるのを待ち、今度は最も短いもののみ付け根から切除しておきます。
    もう一つは、フロリバンダやポリアンサ、ノワゼットなどで起こる、伸ばしすぎた弱小枝の付け根切除です。手遅れの切除
    であり、切ったことでベーサルシュートの出が遅くなります。シュートの出現は主幹構成のための花芽分化、つまりは生
    殖生長力の発現を意味しています。花芽の分化がその生長力を惹起し、生殖生長力が栄養生長を惹起するという関係に
    あります。シュートの出遅れは、季節がいつであろうと伸長を途中でやめることにつながりますが、それは生殖生長力がシ
    ュートに分枝を促すためです。そこには水養分を利用するすべてのシステムの働きが、弱小枝を伸ばしたときの諸酵素の
    流れを決定しており、守ろうとする仕組みが働いています。結果的に分枝が多くなります。
    そうなったなら、長い主幹の中から一本を選んで支柱を与えてみてください。50%の確率で、弱小枝の発生が減ります。
    この場合、ブラインドでない芽も含めて弱々しい枝が出るつど切除します。


6.分枝促進整枝の切りまちがい

 ……促進整枝では通常切りまちがいになることはありません。


7.高さ整枝の切りまちがい

 ……樹形を調えるために高さを揃えるわけですが、図形のようなわけにはいきません。そこで失敗が生じるものの、原因は各枝
    の伸長力についての想像にある場合がほとんどです。ガリカやセンティフォーリアなどは想像が困難であり、HTでも思いが
    けず樹形が乱れてしまうことがあります。そして枝が暴れやすいタイプでは、高さを揃えるのは不可能です。理由は伸長力
    にあります。枝の充実がたいへん速いから枝が暴れるのです。この場合伸長力とは枝から枝を生む能力のことではなく、
    上へ遠くへ達しようとする意欲のことです。それが多くの枝で起きます。
    ポートランドで樹高が低いものの場合、高さ整枝が容易に行えそうに思います。しかし切るところをまちがえると伸長ではな
    く充実へ向かう力が働き、サイドシュートがブラインドになりやすくなります。
    以上のようなことがあったときのケアは、一か月間はどこにも鋏を入れないことです。開花期であれば咲き殻さえ摘まず
    におきます。その間に枝の充実がほぼ終わります。するとどこを切っても伸長への刺激となり、多くの芽が動くでしょう。
    この方法は、切りまちがいへの対処の仕方がわからないときの最善の方法でもあります。観察を無数の芽のみへ集中して
    みましょう。枝ごとに芽に個性があることもわかるようになります。その結果、次回から適切な整枝ができるようになります。


8.開花抑制整枝の切りまちがい

 ……モッコウバラノイバラ、ERのスノー・グースジョン・クレアなどといった花付きのよい品種を育てていると、倒れている
    枝や意外な方向へ飛び出している花梗を取ってしまいたくなります。ところが開花中に切れば、ただちに薔薇は枝の内部と
    葉の付け根で防御活動を始めます。損害への備えであり、害虫対策です。切り取った花梗の数だけ活性酸素が増え、そ
    れは確かに花持ちを長くすることにもつながるのですが、一方で、シュートの発芽にブレーキがかかります。しばらくは動か
    ぬことになります。スーパー・エクセルサなどはとくに顕著です。
    この場合、花がすべて終わるのを待ちます。それから咲き殻整枝をするとき、頂芽として最も適切であったはずの芽から
    つ下の外芽を頂芽にしてください。するとその後の生育は早々に順調なペースへ戻ってくれます。
    また、ラベンダー・ラッシーフェリシテ・エ・ペルペチュといったハイブリッドスピシーズの花付きがよい薔薇では、花後は
    盛夏になるまで整枝フリーとします。待つことで、樹勢が増す動きが活発になります。咲き殻のみを房で摘みとっておき、
    本葉のところで切るという整枝の基本を守らないわけです。その根拠は、原種のハイブリッド種が大がかりな生殖生長を
    終えたらすぐに栄養生長を始めることにあります。そのスケールは大きく、樹高とは無関係に展開されていきます。新枝が
    どんどん増え、サイドが多発し、ベーサルの直進性はかなり長い期間保たれます。


9.咲き殻整枝の切りまちがい

 ……おそらく皆さんは「花が終わったら、その花茎を、本葉一、二枚付けて切る」と教わることが多いでしょう。このことは、さらに
    細かい咲き殻切りのスタートです。いつでも、どんな薔薇でもそのように切れば済む、ということではありません。
    たとえば、
    周囲の枝との、高さや向きの比較をしながら切れば開心整枝でもあるし高さ整枝にもなります。
    その花梗が付いている下段の枝に注目して切れば生長整枝になるし、開花抑制整枝や分枝促進整枝ともなります。
    クラウンからの段数を数え、他の花梗のそれと比較して切れば栄養整枝になります。

    このように考えるのも、つる薔薇では花梗の付け根から数えて本葉一、二枚の5mm上で切るという咲き殻切りの基本を、
    そのままブッシュやシュラブや原種に当てはめるわけにはいかないからです。剪定とは、ある方針を樹全体へ適用する
    との意味を通す切り方のことですが、整枝は、切る場所によってその後の枝の生育が変わる、望ましい方へ変え
    る、という考えを適用する切り方です

    もちろん、好影響ばかりではないし望む枝の生育・生長になってくれる保証はありません。ちょうど、人間関係や食事と健康
    のことのように。
    しかし、たとえばレダが咲き終わったとき、ブルー・ムーンが咲き終わったとき、よほど好条件の環境や土壌でない限り、
    実はまだ遅く上がってきた蕾がいくらか残っていたり、房の中でいくつかの花首が黄色くなってぽとりと蕾のまま落ちたり、
    二段で処理したシュートの先端に蕾が付きそうだとわかったり、さまざまな散花後の状況に違いがあるのが普通です。
    咲き殻・花殻の摘み方には以下の方法があります。

    (1)子房の5mm下で摘む
    (2)房の中央の一輪が散り始めたら、その一輪だけを花首で摘む  
    (3)腋蕾が出たら数がいくつであっても中央の本蕾以外を咲かせない
    (4)房咲きであるなしにかかわらず、本葉を一枚か二枚付けて摘む(または一、二枚だけ残して上を摘む)
    (5)処理後のシュートに咲かせた花を、その花梗の中程で切る  
    (6)花梗の芽の内、最も向きのよい芽を選んで切る

    この六つの使い分けができるだけで、皆さんの薔薇は見違えるような育ち方になってくれる可能性があります。

★原種・亜種およびそれらの変種 (1) (5) 
★ハイブリッド原種 (3) (4) (6)
★ガリカ (2) (4) (5)
★ダマスク (1) (3) (6)
★アルバ (3) (4) (5)
★センティフォーリア (2) (5) (6)
★モス (1) (4) 
★チャイナ (2) (5) (6)
★ポートランド (3) (4) 
★ブルボン (2) (3) 
★ノワゼット (4) (5) (6)
★ティ (1) (4) (5)
★ハイブリッドパーペチュアル (4) (6)
★イングリッシュローズ (2) (3) (5)
★シュラブ (3) (5)
★クライマー、クライミングスポーツ
  ランブラー
(1) (4) 
★ハイブリッドティ (3) (4) (5)
★グランディフローラ (4) (6)
★フロリバンダ (2) (4) (5)
★ポリアンサ (1) (5)
★ミニアチュア (1) (2) (6)
★パティオ (2) (3) (4)
★ミニフローラ (1) (4)

    
10.生殖整枝の切りまちがい

 ……前講座での説明どおり、この整枝はリン酸エネルギー(ATP)を生殖生長から栄養生長へ、生殖生長力をあまり落とさせ
    ずに転換させていく切り方のことです。シュート処理がまさにそれに最も該当し、無意識あるいは無雑作に摘むと、ATPは
    減じつづけていきます。その幅が大きくないために目に見えるようなことにはなりません。しかし、もったいないことをしたく
    ないものです。なぜATPが減るかというと、すでに前講座でも述べましたように、ATPが生長点へ集中する力の強さにあり
    ます。他の植物との比較は容易ではありませんが、薔薇の場合シュートの色や形状からもわかるように、ものすごい強さを
    見せます。これこそ木立性となった直立力とともに、長く遠くへという原初からのつる性の存在を証す事実です。そして忘れ
    てならないのは、そうした集中力が終極の目的を花へ置いていることです。品種の多くは、わたしたち人間の手で最終的な
    虫媒受精能力を限界まで抑制されてきました。それだけ花が最終目標の地位になったといえるでしょう。なぜあれほどの
    花を咲かせるのか、皆さんはもう、おわかりになったでしょう。リン酸は到達点である花へと集中するのです。
    そこにわたしたちが処理という転換法を実践すると、薔薇のシュートは次段を作るためにATPエネルギーの消耗を減らさず
    におこうとします。ところが処理する位置や数がそのつど変えられると、処理口から侵入してくる病原菌とも闘わねばならず、
    残された長さに応じてATPの使い方を変えていくので、しだいに他の既存の枝の充実へエネルギーを割いて生存を図るよ
    うになります。そこに関係して大きく働くのが、栽培ワンポイント「032.シュート処理の真実」で触れた花成ホルモンです。
    おそらくはシュート全体で生産されているだろう花成ホルモンは、喪失されると補うように増産されることは当面無い物質で
    す。だからシュートの下段は常に緑色の枝へとなっていき、花成ホルモンの指令から解かれてATPの多くの部分を充実
    振り向けるのです。そこから先へ、新たなシュートの次段を発生させるために。
    ポイントは、各処理位置の長さが30cmを超えないようにということにあります。この数字は、次段も枝となったときに、部位
    として持つ芽の数が必ず単数ではなく複数になることを保証する限界長です。
    ところが隣のシュートとの処理の位置の差が50cmや60cmにもなると、それだけ残した芽の数も多くなります。すると、シュ
    ートでは茎頂に値する部位が先端のみならず芽も含みますから、芽の部分で作られるホルモンの量とそれが働く速度に、
    大きな差が生じてきます。このことが、生殖生長と栄養生長の両方の仕組みやリズムを狂わせます。
    シュートを処理する位置=高さ=長さを、常に揃えましょう。もしも摘み位置が不適切であったなら、シュートがまだ軟らかい
    うちに低い方へ揃えてください。硬くて枝になっていたら、もうケアは間に合わないし揃えてはいけません。芽でのホルモン
    生産を減らしてしまうわけだから、ますます次段の伸長力あるいは花梗形成能力が落ちます。どうしても切らねばならぬ事
    情があるなら、枝部となってから三週間後に行なってください。状況は変化しているでしょうが。


11.整枝フリーにしてはならないとき

 ……これは主としてつる薔薇についてです。花後、そして秋の剪定前、という二つの時期が該当します。
    花後に咲き殻さえ摘まずにおくと、つる薔薇は生殖生長を継続させて結実へ全力を向けるようになります。もちろん新枝が
    発生したり、分枝だけでなく葉も大きくしたりすることもあります。しかしもう主要な生長ではありません。生殖とは成長の
    カテゴリーから脱することですから。そうしてブラインドシュートとなったり、いくら整枝しても芽が応えてくれなかったりする
    ことになります。
    次に、花が終わっていて夏の途中から秋いっぱいにかけての諸生長を促すための剪定を行うまでに、整枝を何もしないで
    いるのもまちがいではありません。しかし正しくもない。これは放任です。剪定後にしっかり育ってもらうために行う整枝は、
    たとえば弱い枝を減らしたり、ブラインド芽を掻き取ったり、花梗の付け根から遅くなって伸びてきた腋芽を爪で除いたり、
    混みあう短いつるを減数する、といったことなどです。それらによる生長への刺激は小さいものです。しかしつる種は年数が
    経てば経つほど樹形は一定程度をめざして大きくなっていくものです。つる総数も増えていきます。すると次第に整枝によ
    る刺激も大きくなっていきます。先端ばかりで盛んに分枝していたつるの途中から、サイドの発生も起きるようになります。
    そのことはランブラー種で顕著です。


12.開心整枝の切りまちがい

 ……前講座での開心整枝についての説明が、思わぬ誤解を各地へ生じさせてしまったようです。「仮想中心軸を思い浮かべ、
    年数をかけて偏りを無くしていきましょう」の記述のことです。誘引形のことはともかく、つる薔薇や大型のシュラブで、切り
    すぎ切りまちがいをしてしまった人たちがかなりいました。
    あらためて説明はいたしませんが、肝心なのは、開心整枝では伸びた芽の方向だけで正否を判断できないことです。つる
    であってもなくても、樹の広がりとは総合的なことですから、全体を見て部分の将来を想像できなくてはなりません。その
    意識のないまま、切りすぎてはならないわけです。また、当年に出たシュートを向きや太さがたりないというだけで切除す
    るのも、切りまちがいになります。
    以上のことが当てはまるなら、ケアとしては肥培と誘引方向や日照方向の見直ししかありません。肥培ではNPKにミ
    ミズ糞
を加えること、誘引方向では器具の下部へ多くの枝(つる)を配り直すこと、日照方向では移植   ということに
    なります。
    そして、冬が来るまでは剪定に相当することはやめておきます。たとえ満足のいくように生長していても。





B.

病虫害別の対処法-鋏の入れ方、入れずにおく見きわめ方

アブラムシ  
予防や対処が間に合わず、アブラムシによって芽の先端部、蕾の首、花茎が被害を受けたら

……いずれの場合もアブラムシがいないところまで切り下げる必要はありません。

スリップス
スリップス(アザミウマ)は花弁の吸汁者  

……通常の対策をしていれば広範囲に被害を受けることはほとんどありません。しかし一輪で見かけたら、子房の下から摘んで水に入れ、房であれば最初の本葉まで切り戻しておきます。

ハダニ
葉の吸汁者 

……蜘蛛の仲間ですから数が増えると糸を張るようになります。そこまで被害が進行したら、被害葉から二枚下までの葉を取り去ります。鋏を入れる必要はありません。彼らの行動はほとんど上下のみです。だから最も下の被害を確認すればよいことになります。

カイガラムシ
数が多ければ枝は痩せたままになる 

……カイガラムシがいないところまで切り下げる必要はありません。大発生した場合には主幹をクラウンへの付け根から切除します。

ゾウムシ
花弁と蕾の首の吸汁者 一輪に二匹以上いることはめったにない 

……萎れたなら最初の五枚葉のところまで切り下げます。

チューレンジバチ
葉の食害  被害のスピードは遅いものの、彼らの数が問題 多いと別の枝へ移っていく 

……被害葉を摘むだけで、鋏で切ることはありません。

バラクキバチ
花茎の吸汁と産卵 幼虫は中を食べ進む 

……品種によって花茎の太さが違いますから、太いものでは本葉を二枚付けて茎を切り、細い
ものでは最初の三枚葉の付け根のすぐ下で切っておきます。

ヨトウムシ
まだ若い下葉の食害者 近隣の作物からやって来る 

……被害葉を取り去るだけで終わりにします。

カミキリ
幼虫は太い枝と太い根の食害  成虫は緑色の部分ならどこでも囓る 

……枝も根も切除する必要はありません。薔薇の自然治癒力に任せます。もしも枝が枯れたなら、下段の枝の最上位の芽まで切り下げます。  つる薔薇の途中に受けた食害痕があっても、
そこから先を切除する必要はありません。稀に痕が枝を一周していることがありますが、その際は切除しておきます。

コガネムシ
成虫は花を食べ、幼虫は土の中から根を食べる 

……退治あるのみです。鉢植えと違い、地植での根の食害は少なく、特に掘り返す必要もありません。

バッタ
移動しながら葉を食べるので、被害葉は集中しない 

……退治あるのみ。どこかを切る必要はありません。

ミノムシ
集団で緑の部位を食べ尽くすまで広がる 枝も食害する 

……被害が大きいと、枝はもう生育しません。その枝の付け根で切除しましょう。

うどん粉病
枝葉に被害 うどんこが見えなくても、葉が要素障害を引き起こされてよじれ、波打つ 

……見苦しいほどでなければ治療に専念し、鋏は入れません。

ベト病
施設栽培でのみ発病を見かける 

……もし発病したら下段の最下端の外芽5mm上まで切除します。

斑点病
花弁に赤い小さな斑点を付ける 広がるのに時間がかかる 

……大規模な被害になることはなく、前講座で紹介した予防と治療を普通にしておくだけでかまいません。

灰色カビ病
花と葉の病気 

……一度発症するとそばの花や隣の株の花へも広がるので、見つけ次第健全なところまで切り下げておきます。

黒点病
葉の病気 被害は広がりやすい 

……被害葉を除去するだけでよく、鋏は用いません。神経質に切り下げていると、かえって薔薇を弱めてしまいます。

キャンカー
枝の病気 枝の上から下へゆっくり進行する 離れたところにある株へも移る 

……下段の最上位の外芽で切ります。鋏は必ず消毒するように。よくあるまちがいは、発病初期に健全なところまで数センチ切り下げて済ませるやり方です。これでは進行が50%以上の確率で止まりません。


今回予定した「海外の剪定整枝法」の紹介は
項をあらためて行います。クライストチャーチ大 
地震により、詳細な情報を入手できなくなった
ためです。
同地震で犠牲になられたA.N氏に哀悼の意  
を捧げ、ご冥福をお祈りいたします。



   
次回は肥培についてです。第3回と第4回との関係が深く、土づくりでもあり、薔薇の成長に欠かせぬ内容です。
                            どうぞ、お楽しみに!





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