鉢植講座
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    Lecture3-1
 


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                             第3回

                       水やりについて

                         ( 水培 1 )


   前2回の内容に、これまで各種のテキストや各地のセミナーなどと接してきた方たちの多くが戸
   惑っていらっしるようです( 2007年3月 )。また初めての容器植を早く試してごらんになりたい方も
   多いでしょう。
   しかしこのシリーズの終了後までお待ちください。あわてて前回までの記述だけで試すことのな
   いようお願いします。すべての記述が完了してからどうぞ(全10回、2007年10月終了の予定 )。

   さて、それでもこれまでのご自身のあるいは担当部署やグループでの容器栽培について、あら
   ためて振り返り、生かしてよいと思うことをお伝えしなくてはなりますまい。今回からの内容は、し
   ばらくの間、日常の鉢植えの手入れについても知っておいて応用しやすく、また実際にそれぞ
   れの鉢植えの薔薇の生育に合わせて実行された方がよいことを述べていきます。
   今回は灌水について述べましょう。


1. 薔薇( 植物 )にはなぜ水が必要なのか?
   ① 今さらそんなことをとお思いかもしれませんね。どなたでも正解を用意できる質問です。
      けれども、案外多くの人が答に含めるのを忘れてしまう事柄があります。それは    .
      水分の働きのことです。
      90%以上を葉で行っている蒸散がなくては、根毛からの吸水は不可能です。毛細管
      現象だけではなくて、葉から蒸発することが最大の役割だと言っても言い過ぎではあ
      りません。気温の変動という案件を伴いながら、薔薇は光を浴びることによって蒸散活
      動を行い、土中の湿度と地上の湿度の影響を受けていると見ることができます。
      猛暑に遭っても葉の全細胞から水分が失われないのは、クチクラ層という細胞壁が
      あるからですが、葉の周囲の湿度が高すぎれば、それだけ空気中にいる悪玉菌たち
      がたくさん群がって、その防御壁を突破して侵入しようとします。もちろんほとんどの菌
      類は突破できません。水蒸気を通さないほどのクチクラ層は健全に保たれていること
      が多いわけです。その結果、環境や気候等のさまざまな条件に応じた蒸散力が保た
      れ、根から過不足のない水分吸収ができています。
      何らかの原因で吸収が進まなければ、ご承知のように芽や花は萎れてうなだれ、放っ
      ておくと枯れてしまいます。このような場合、葉がまず気孔を閉じて蒸発を止めます。
      体内の水分を逃がさず保とうとします。これは水分の働きの停止です。薔薇は自ら、水
      分不足による枯死を免れようとして花や芽を先に萎れさせ、葉と導管内にできるだけ
      残そうとします。それでもからだ全体の乾燥が進めば、次には葉を黄変させて落葉さ
      せようとします。そのことは一部の葉から始まり、次第に広がっていきます。このとき薔
      薇は何をしようとしているのか? 実は、根と地際部だけでも生かそうとしています。再
      生力の源である部分だけでも、生きている状態に保とうとするのです。
      葉を落とし、枝を枯れさせ、水を待つ瞬間が連続する忍耐期です。
      多くの人は、花や芽の萎れによって鉢に水が足らないのだと知れば、急いで水をたっ
      ぷりと与えるでしょう。その段階ですと100%ではなくともそれらは回復してくれます。
      ほっと胸をなで下ろし、安心できる嬉しさに充たされます。わたしもよく経験しました。
      では、上に述べた最後の段階ではどうでしょう。
      安易にあきらめてはおられませんか?
      株元( クラウン )と根の数本でも生きていれば、それらは水分の訪れを待ちわびている
      「心臓」だと思ってください。それらの細胞間膜、細胞壁には最後の命の水が保持され
      ています。動物であれば、人間による医療が心臓を救うことができるように、薔薇もこ
      の状態でまだ救える余地はあります。なぜなら、水分自体が自然の動力なのですか
      ら。
      次のようなご経験はありませんか?    薔薇の地上部が枯れてしまった。鉢から抜
      いてみた。すると、ほとんどの根が枯れてしまったにもかかわらず、2,3本の根がまだ
      白くて、生きていた!     というケースです。
      a. この場合ただちにすることは、その数本の白根を傷めないように根全体を流水で
         ゆっくりと丁寧に洗い、日陰で根をたっぷりの水へ浸けておくことです。
      b. 次に、枯れた根を付け根から切除します。そしてさらに三日以上水の中に浸しっ
         ぱなしにしておきます。その間に、できるだけ水から出さないようにして、株元の
         古い樹皮をできるだけ多く取り除きます。この作業は、ベーサルシュートを出させ
         るために必ず必要なことです。ただし、樹皮の下の肌を決して傷つけぬようにして
         やります。できれば光を透さない加工をしてある花瓶や、底穴のない容器に真っ
        直ぐに立てるようにして
入れておいてやります。
      c. ときおり、乾きすぎぬようにクラウンへも水を軽くかけてやります。入れ物から出す
         必要はありません。季節によって日数が違ってきますが、毎日か2,3日おきに新
         鮮な水と入れ替えます。このとき、メネデールのような溶液を2000倍の希釈とな
         るように毎回垂らします。
      d. 水替えのつど、根を観察します。もしも一週間以上経っても根に伸びが見られず、
         あるいは新しい「根生え」が見られないときには、あきらめます。しかし、確率は定
         かでないものの、そうした復活を見ることのできることがあります。もしそうであれ
         ば、新しい根がもともと残っていた根ほどの長さにまでなったとき、または以前か
         らの根が最初の長さの二倍以上になったときに初めて、植わっていた土へ再び
         植えてやります。ただしそれはこのシリーズで述べた埴培土だったらであって、そ
         れ以外の植土だった場合は新鮮な鹿沼土にします。赤玉土でも代用できますが
         復活の確実さは鹿沼土よりも劣ります。
      e. ここからが、あなたの真の忍耐が試されるときです。ひたすら、新鮮な水分と空気
         が用土へ行き渡るように心がけてください。そのために重要なこととして、植える
         前に d.の土を一度乾ききった状態にしておきます。それから植える直前と直後
         にたっぷりと灌水します。この手間をかける理由は、根が減りつつ衰えていった過
         程で、根酸分泌によって増殖を抑えられていた菌類が増えている可能性が高い
         からです。乾燥は土壌の粒子表面にいる彼等を死なせたり増殖力を奪います。
         それからどのくらいの日数でよい徴候が見えてくるかはわかりません。しかしつい
         に、クラウンから芽が顔を出したとき、あなたはもう立派なローズドクターです。い
         や、それにもまして、薔薇を生き返らせた歓びはかけがえのない大きなものだと
         思います。たとえそれが台芽であって品種芽でなかったとしても。
      f. 埴培土のときはそのまま待ち、他の用土のときは無施肥の赤玉土と堆肥の混合
         土へ換えておいて待ちます。何を?    葉の展開と、そしてあなたに向かって咲
         く、復活した命の花を!

        以上述べたことから、皆さんはあることにお気づきになろうかと思います。葉は気孔から
   二酸化炭素を取り入れ、代わりに何を排泄しているか、ご存じですね……? 水分が減れば気
   孔を閉じる。仮に全植物がそうしたら、わたしたちは生きてはいかれません。ちょうど、わたした
   ちのからだから水分が30%以上失われたら生きていかれぬように。わたしたちは水のあるとこ
   ろまで行くことができるし、造りだすことだって可能です。ところが、薔薇は……。水のたいせつさ
   とわたしたちの果たすべきことのたいせつさを、今一度噛みしめましょう。たとえ地球上の酸素が
   植物によって2000年かけて新しいものと入れ替わっているから、それだけの余裕があるのだと
   しても。自然界における生命の摂理、それは水を中心に動いているのです。まさに海水から原
   始生命が誕生したように。

   ② 水分が必要な理由のもう一つは、言うまでもなく養分吸収にあります。土壌中の養分
     には、土の中で有機態から無機態へと変わってから根に吸収されるものと、根から吸収
     された後に薔薇の体内で無機化されるものとがあります。いずれも水分を伴わなければ
     根は取り入れることができません。炭水化物の合成にも、諸々のタンパク、とりわけ酵
     素も水分なしでは自己を生成できませんし、働けません。
     ところで多くの方は常識として、日中の光合成から作られた炭水化物、デンプンはその
     まま根へ送られて蓄えられ、一部は薔薇のからだの生長に消費されて( 正しくは別の物
     質に変化して ) いることをご存じでしょう。蓄えの大きな根菜を、わたしたちは食用として
     いますね。薔薇の根も、夜間に土の中で根冠に保護されながら伸びています。先端ほど
     密度の高い根毛を生やしながら。何らかの原因で根の先が切られて失われても、養分
     の蓄えさえあればすぐに根冠を形成して伸長を再開しています。
     このことから、灌水を夜間行うことが合理的ではないとおわかりになるはずです。根の
     役割は地上部を支えること、水養分を吸収し、また光合成産物を蓄えること、の三つで
     す。このうち、二つ目の役目は、それがたっぷりと含まれているところまで伸ばしさえす
     れば、完了してしまいます。ところが、降雨以外に人の手でも夜間に与えられていると、
     限られた世界の容器内では、根は少ない本数で長く伸びることをためらうとともに、例外
     なく、本数も抑えるように努めます。ですから夜間灌水を習慣にしていると、根をあまり
     増やさないでおくことに手を貸してしまいます。
     ただわたしたちは、夏季の夜間気温が非常に高ければ通常夜間にも容器内へ灌水しま
     す。このことは、実は用土における夜間の水分蒸発を補っていることなのだと理解してく
     ださい。つまり、補う以上に与える必要はないのです。むしろ根の伸長を阻害することに
     もなるでしょう。このことは、日中の葉の気孔の開閉のこととも関係します。年間を通じて
     気孔は午後2時頃には一旦閉じて、午後4時前後に再び開きます。特に暑い季節には
     閉じている時間が多少長くなる傾向もあります。これは体内水分の調節の仕組みで
     あり、動物のような意志も欲望も持たぬ植物は、自由に変更などできません。( わたした
     ちの自律神経のようなものです )。仮に鉢を腰水のまま夜間も置いておくと、地方により
     曙光が当たり始める時間帯はいろいろでも、気孔開閉のリズムを狂わせる原因となりま
     す。どのような薔薇であっても、例外なく朝陽が最も重要な日光であり、からだ全体で
     のあらゆる仕組みや物質が一斉に活動を始めるための刺激でありエネルギーとなって
     います。そしてほぼ季節にかかわらず、一日の内午前11時頃から正午にかけて気孔の
     開き方のピークを迎えています。容器植では、このとき根の数が問題となります。薔薇
     の地上部の活動に促された根は、十分な数があれば光合成のみならず他のあらゆる
     活動( とりわけ養分の移動 ) に応える働きをします。ところが長さどころか数も足りない
     根は、上半身の欲求に応える度合いや効果が低くなってしまうのです。このような下半
     身は、つづいて上半身の生長を抑制します。花付きや分枝力さえ鈍らせていきます。こ
     うして、たとえ極端にではなくとも、薔薇へ悪循環をもたらします。
     ですから天候や気温、用土の量などを睨みながら、午前11時に、直射日光の射さな
     い明るい場所へ鉢を移動させてから灌水するようにすれば、幼い苗や老熟株はものす
     ごく喜ぶでしょう。曇天の時や急激な気温上昇となった日を避けて、快晴の、最高気温
     が28℃程度までにしかならない日のその時刻にたっぷりと水やりをすればよいわけで
     す。たくさんの薔薇をお持ちの時にはそのすべてについて実施することは困難でしょう。
     その場合は、この最適灌水をしてあげる薔薇を選ぶことになります。
     もちろん、通常よく行われている早朝灌水も的確でないはずはなく、薔薇にとって大い
     に嬉しいことです。わたしたちの目覚め後のコップ一杯の水のように。とりわけ、雨が降
     らずに乾燥した日々が続いたときの早朝と11時のダブル灌水は、薔薇へ目を見張るほ
     どの活気と成長をもたらします。そのとき上半身全体に漲る活力に接して、わたしたちが
     幸せでないはずはありません。そしてそのとき根は    暗闇の中で    光へ応える
     最大限の活躍をしています。このリズムは、快適な生育を招き、99%美しい花の開きと
     なってあなたの愛情に応えてくれるでしょう。もちろん、常に水と共にある養分の力で。

    以上のことを整理しておきましょう。薔薇が喜ぶのは、次のような順序となります。
( 1 ) 天候と気温を把握しながら、真冬以外の朝陽が当たる時刻と午前11時の二度灌水
    ……灌水日の間隔さえまちがえなければ、この水やりが最善です。理想的な生育へのチ
       ャンスを与えていることになります。この灌水で注意すべきことは、病虫害等が原因
       で弱っている薔薇へは行わない方がよいという点です。弱っている理由をさらに増幅
       させかねません。元気な株であればますます元気になります。
( 2 ) 冬、春、秋の三季節における午前11時灌水
    ……朝陽が射さない場所で鉢植え栽培をしている人たちの薔薇が、それでもしばしば美
       しい花を咲かせているのは、この時刻前後に日照があるからです。この灌水で注意
       すべきことは、日照時間が計5時間を切っている状況では過湿にならないようにして
       ください。むしろ米のとぎ汁や薄い液肥を少量与えることとたっぷりの灌水を交互に
       行うなどの工夫がたいせつです。
( 3 ) 春、夏、秋の三季節における早朝灌水
    ……氷点下になることがあまりない地方では、冬も有効です。この灌水で最も注意すべ
       きことは、施肥や病虫害予防などの手入れを前日に済ませておいたり、灌水の直前
       にでも可能であれば済ませておくことです。また、置肥やマルチ材などの施用後の
       変化を、薔薇のようすとともに観察するよう心がけます。
( 4 ) 気孔がまだ開いている時刻の、春夏秋冬四季節における夕暮れ灌水
    ……やむを得ない状況がある場合を除き、できるだけこのやり方を避けてください。特に
       黒点病を広げてしまう可能性が高くなります。できれば予防措置を講じておいてから
       灌水するのが最善でしょう。その詳細は 『 鉢植えの病虫害予防 』 の回に譲りま
       す。
( 5 ) 夏の夜間灌水
    ……最低気温が20℃を超えることが稀な地方では、降雨次第です。与えずに済ませら
       れる方がよいのです。灌水のたいせつさは、灌水中に目の前の薔薇を丹念に観察
       できる時間が持てることにもあります。夜間に行うのであれば、なお一層時間をかけ
       て観察することをお薦めします。周囲を明るくしてどうぞ。また、蚊や蛾の飛来状況に
       も気配りを。庭などであれば、もしもカミキリ成虫を見つけたりゴキブリを発見したとき
       は猫を放す習慣をお薦めします。猫の尿は、ゴキブリだけでなくナメクジも嫌う傾向が
       ありますし、カミキリも猫のいる庭を敬遠するからです。( ただし、その猫が毎夜のよう
       に庭をうろついてくれなくてはなりません。その場合はそこでの排尿の習慣があり、
       たまにであれば尿を出していないはずです )。なお、この猫の効用については、最近
       になって( 2007年3月14日に )確認済みです。

       以上のことが水やりの原則だと言ってよいでしょう。次に、用土が埴培土であるかないかに
   かかわらず、品種によって異なる基本について述べます。








                                                                      
  
                             Iceberg

                                                                    
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