鉢植講座
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      Lecture 7


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            第7回
          病虫害対策
           ( 害虫編 )  
    前二回では施肥について細かく見ました。お読みになって、まだ経験が十分でない方たちはい
   ったいどの与え方をすればよいのかと、迷われたでしょう。その解決は、まず第一に、最初どのよ
   うな用土で薔薇を育てるのかを決めれば、かなり解決していくことになろうと思います。二回の解
   説は、そのことに沿って記したものだったのですから。土づくりは住宅内での模様替えと同じでは
   ないが似ています。部屋に何か新しい家具が加わったり別のデザインのものに取り替えたら空気
   が一変したというご経験があるはずです。そのこと以上に土は生きています。肥料を与えるとそれ
   は新しい住人となり、必ず何らかの変化を土全体へ及ぼします。そしてわたしたちの生活にとって
   まずどのような住まいを選ぶかがスタートとなるように、どの用土でスタートするかをあなた自身が
   決めなくてはなりません。基本用土が決定すれば、それぞれの特徴に合わせた施肥をすればよ
   いのですから、解説はその点を述べました。
    これまで土づくりとは土壌と堆肥との関係だと考えてこられた方たちにとって、実は肥料もそこに
   加わるのだということは、新鮮な記述に感じられたでしょう。ただし市販の複合化成肥料のみで施
   肥を済ませている方たちにとっては、鉢内の土づくりはほぼ土壌と堆肥の関係に限られてしまい
   ます。残念ながら一年後、土の総替えを避けられません。薔薇にとって最善の用土となっていな
   いからです。微量要素を補いすれば、という簡単なことではありません。団粒構造さえしっかりつく
   られていればよい、というものでもないのです。
    埴培土のように数年間に亘って用土がよい方向へ向かって進むという選択をしなかったときは、
   一年間であれ二年間であれ、有機質肥料も必ず与えるようにしましょう。化学肥料のみに頼って
   いては得られない「土の生き生き度」が違います。微生物と薔薇の根との間に好ましい関係がつ
   くられていくからです。もちろん有機肥料であっても、通常の用土であればほぼ一年間で限界が
   来ます。
    実は、土が生き生きしていればということが、薔薇の耐病虫害性を左右します。むやみなダイエ
   ットがわたしたちの身体を病気に弱くさせるように、土を酸化以外ほとんど変化させない施肥は薔
   薇を病虫害に対して弱くする原因ともなります。反対に食事も運動も環境も整えば、人の身体の
   免疫力は天才的なものです。風邪さえ引かなくなります。薔薇にもそれが言えるのです。
    また普通、多くの人が薔薇にはなんと病気も害虫も多いのだろうかと嘆いた経験をお持ちだと思
   います。しかし視野を広く持ってください。そうすれば、他の果樹や田畑の作物が被るような病虫
   害が薔薇に無縁なものばかりだと気がつかれるはずです。病原菌や昆虫たちの側の選択性だけ
   ではありません。被害原因生物やそれらが引き起こすほとんどの反応を、薔薇は撃退しているの
   です。原因生物のほとんどを退けるためにも、薔薇は進化を遂げてきたと言えます。今回と次回
   の解説をお読みになるに当たり、まずそのことを最大限意識しておかれることを希望します。する
   と、予防や治療の結果に満足のいく結果が出れば出るほど、「薔薇の病気も害虫も、何と数が限
   られていることか」という、実に快いためいきをつくことになるでしょう。一人でも多くの方がそうな
   りますように。
  
    ところで、一般の薔薇栽培マニュアル本ではこれまで病虫害対策として必ずと言ってよいほど、
   農薬使用を指示してきました。2007年現在でもその内容はあまり変わっていません。どうして変
   わらないのでしょうか? 指示する立場の人たちの怠慢なのでしょうか? 農薬のほとんどが安
   全であり、問題ないのでしょうか?  もし園芸上も安全であるなら、そのデータを示すべきではな
   いのでしょうか? 薬害がないことを証明すべきではありませんか? それとも現行法のように、
   レッドゾーンの使い方は自己責任でという枠組みを、是としたままにするのでしょうか?
    多くの人々がしばしばうっかり忘れている基本的なことがあります    農薬とは「農業のため
   の薬剤」という意味のことです。農作物の生産能力を上げるための薬として開発され使用を奨励さ
   れてきたものです。ところがわが国では、戦後に海外からどっと入ってきたときDDTを子供たちの
   全身へ振りかけたことに代表されるように、本来の使い方ではない使い方をしばしばされて来た
   歴史を持ち、つまり今日まで園芸へも当然のようにして援用されています。国家が園芸薬品も農
   薬に登録するように仕向けてきた一面もあります。しかし昔も今も、農政理念も一般常識も、農業
   と薔薇栽培などの園芸とを区別し、社会における生産価値の大きさは全く違っているはずです。
    そして今、わたしたち愛好家の間だけでなく一般「消費者」としても、農薬アレルギーが蔓延して
   いるところです。農薬に対する不信感が広範囲に行き渡っています。無農薬や減農薬であること
   を産品に表示していなければ消費者が買い控えることが、あたりまえになりつつあります。
    どうしてこんなことになったのでしょうか? なぜ農薬は悪魔になったのでしょうか? わたしなり
   に答えるとすれば    自然のままの健全さや人間一人一人の健康よりも胃袋を満たせばよい、
   生産効率を上げ、また消費者が好む味を持てばよい    そういう価値観を維持してきたからでし
   ょう。肥料においても同じです。使用した場合の経過と結果の検証内容のどこかに、まちがいを持
   ちつづけてきたのです。農業においてそうだったのですから、園芸にもそのようなまちがいが維持
   されてきたのは当然でしょう。こうして薔薇栽培は周囲へ農薬加害するとんでもない園芸だという
   誤解も、広く行き渡りました。アレルギー反応です。
    そもそも根本的な問題とは? それは菌や虫に対して、根絶を図る考えに基づいてきたことで
   す。増えてくれては困り、減ってくれなくてはなりません。しかし絶滅すべきなのでしょうか? 自
   分の薔薇さえ無事であればよい    この要望の背景には、かつて自然への無知がありました。
   その要望が大規模かつ長期に亘って正義であったために、今日においては、大規模かつ長期に
   亘る大自然からの反逆に会い始めています。崩れた生態系も、わたしたちの肉体と同様すべて
   物質によって成り立っています。一部でもバランスが崩壊すれば、必ず修復が行われます。農薬
   をたとえ少量でも使い続けた薔薇の鉢植え用土をどこかへ捨てれば、その土地の土へ何らかの
   作用を必ず及ぼします。ただそれが微少で目に見えにくいために、不安を高めているとまでは言
   えません。しかし自分のからだへ降りかからないように頭から爪先まで「防護服」に身を固め、ゴ
   ーグルを付け、マスクをし、薔薇へ散布したり土壌消毒を行う。その姿はまるでサリンから身を守
   る兵士たちのように見えます。異様です。
    もちろん過剰で行きすぎた反応を、農薬のすべてに対して示すのは同じぐらい問題がありましょ
   う。ただ、企業も研究機関や国も、これからますます「検査、検証」を義務づけられることになりまし
   ょう。当然です、わたしたち薔薇を栽培する者を悪魔にしてしまわないために。そこでわたしたちの
   側は、自身が安全を確認している物に限って、それが農薬であろうとなかろうと、当面自己責任
   において使用すべきです。もし誤っていたらどう責任を取るのか、取れるのか? その薬剤使用
   を直ちに中止し、より安全で安心な、薔薇が歓びますます元気になっていく物に代え、やり方に変
   えていくことで責任を取れるのです。どうしてそんなふうに思わねばならないのか    薔薇たち
   がわたしたちの心の子供たちだからです。放任も虐待も薔薇とそしてわたしたちの心を苦しめるだ
   けです。すでに日本の農家は変わり始めています。わたしたちもより健全なやり方へ変えていか
   ねばなりません。
  
       以下に害虫たちに対する予防と治療について、個別に記していきます。できるだけきめ細か
   く述べているつもりですが、さらに記述内容にそぐわない事態があったときには、ご遠慮なくお知
   らせください。共に対処法を考えてみましょう。なお、害虫たちと被害の画像はさまざまなもので
   見ることができるので、お手元の本や図鑑、当HPの World Link でご確認ください。
   また、対処材・薬剤名についている数字は有効順位を表すものではありません。単なる便宜上の
   番号です。



1、アブラムシ

          発生初期であれば、できるだけ有翔の親( ♂♀ )を見つけて捕殺するとかなりくい
          とめられるのですが、発見は難しいでしょう。というのも、一庭一園に一組しかい
          ないからです。通常、無翔の親を見かけたときにはすでに無性生殖による子供た
          ちが何匹もいるはずです。そしてその後、たとえば蕾の首に多数群がっていると
          いう場合は、無翔の親( ♀ )がその子供たちと有性生殖をくりかえしていて、次々
          と産んだ後です。
          したがって予防としては、有性生殖をする前の段階で、つまり最初の有性生殖を
          する有翔の雌雄から産まれた第一世代を、誕生後まもなく昇天させることになり
          ます。以下の方法は、ヒゲナガアブラムシ、ワタアブラムシ、モモアカアブラムシ三
          種共通です。

        タバコニコチン

          薔薇も他の植物同様、身を守るためにアルカロイドを持っています。ところが量が
          少なく、効果も限定的です。特に蕾とその近辺にはまったくありません。それはア
          ルカロイドが窒素を含むアルカリ化合物だからです。窒素もアルカリ性も花へ大き
          な影響を与えることはご存じでしょう。薔薇は美しく華麗な花を咲かせるために、
          たとえば雑草のほとんどが持つ強力なアルカロイドを持たない植物なのです。
          そこで、三月下旬から四月上旬の快晴の日に、タバコの葉1本分を1リットル
          の水でコトコト弱火で煮だし、煮詰まったら火を止めて冷まし、薬剤や肥料のボト
          ルに付属しているような計量カップで5ccをすくい、鉢の表土へ置きます。5ccは
          鉢のサイズにかかわらずです。灌水や降雨後に根が吸収し、蕾がふくらむまで
          窒素を多く含むアルカロイドが薔薇を守ります。そして蕾が色づくよりも前に効果
          は消えます。つまり花に対して弊害はありません
          なお、アブラムシの厄介なところは、彼らが吸汁と同時にウィルス類を薔薇へもた
          らしてしまうところにもありますが、タバコニコチンはウィルスには効きません。そ
          れでも薔薇は元もとほとんどのウィルスには強いのですから、心配は要らないで
          しょう。

         ③アルムグリーン

           当市で開発されたこのアルムグリーンには、どうやら安心できそうです。当園で
          も徐々にこの「生薬」へ変更しつつあるところです。混合生薬抽出物液剤で、「 
          植物成長調整剤」として主に芝生の育生に用いられることを想定したものでした
          が、現在では広く農作物に用いられていて、その方が主になりつつあります。今
          後は園芸の分野でも盛んに使用されるようになるでしょう。
          12種類の漢方型生薬から抽出されています。クララなども含んでいます。ところ
          が、マトリンにしてもアルカロイド全般にしてもそれらに対して酵母を介在させて
          それぞれを有機酸に変えており、それらは薔薇の体内で植物ホルモンに似た働
          きをすることです。アミノ酸や核酸と同じようなもので、ホルモン的に根と枝葉に蓄
          えられます。この状態でアブラムシなどが吸汁すると、有機質状態で彼らの身体
          に入り、消化能力によって分離します。するとマトリンなどが本来の力を出すふる
          まいに変わるのです。
          薔薇の成長を促進する働きに関しては、わたし自身まだ現在調査中です。いず
          れ結果をご報告しましょう。
          ともかく、大型の害虫なども少し囓っただけで来なくなるところを見ると、予防とし
          ての忌避効果にはかなり高いものがありそうです。用法用量については添付の
          指示を守ってください。

         ④ニンニク木酢液

          最も簡便であると同時に安価で済むのはこれです。市販の木酢液で、信頼のお
          ける純度の高い原液にニンニクの鱗片をできるだけたくさん浸けておきます。
          ニンニクの薄皮は取っておきます。浸けておく期間は三か月以上。それ以上でも
          決して液が傷むことはなく、いつでも安心して使えます。また、注意点としては
         ず密封
で置かないと、効果はありません。
          ニンニクのアリインと木酢のフェノールとが木酢の有機酸の中で一緒に害虫忌避
          効果を発揮します。チャイブも加えるとさらに効果が増します。特にアブラムシへ
          は。
          散布して用いるわけですが、木酢は農薬とは認められておらず、農作物に大量に
          使うことは農水省の実験結果で疑問視されています。しかしわたしたちが家庭園
          芸で100倍で散布することには何ら弊害はありません。木酢散布による健康被
          害も聞いたことがなく、蕾へアブラムシが集まる前に部分散布しましょう。花壇や
          株全体へ散布しても、ゾウムシ、蛾の幼虫類への効果は限定的ですし、蜂類に
         はあまり効果はありません

          なお木酢について少し述べますと、炭の粉が多数浮き沈みしていたり、タール分
          によって黒く濃く濁っているような木酢を使わないようにしましょう。農作物であれ
          ばかまわなくとも、薔薇では枝葉や花への付着による悪影響があります。透明
          感のある純度の高い木酢を使うべきです。そして薬剤でも肥料でもない、一緒に
          与えるもの・散布するものの効果を高める媒介液のつもりでいましょう。
          ちなみに、タールもフェノール類の一種ですが、水を始め他の液体には全く溶け
          ない成分であるために厄介なのです。

         ⑤唐辛子アルコール

          唐辛子のカプサイシンは水には溶けなくともアルコールには溶けます。そこでア
          ルコール濃度の高い酒類、たとえば泡盛や鐵龍などに唐辛子を刻んで浸けてお
          きます。季節により幅があるもののおおむね一か月で散布使用できます。わたし
          は毛筆を用いて10倍で花首などに塗布します。展着性を高めるには黒砂糖を溶
          かすかまたは市販の展着液を一滴垂らします。筆で塗る際はすでにいるアブラ
          ムシをこそぎとり、同時に忌避効果の塗布も済ませることができます。
          なお、アブラムシ程度の害虫に対して、大量の液剤を噴霧器で散布するのは無
          駄が多すぎます。大規模な園に限るべきでしょう。

         ⑥ヨーグルト発酵

          一般に人が食するものを使うことに抵抗感のない方であれば、この方法も試して
          みることをお薦めします。
          ヨーグルト100gに水1リットルの割合で混ぜ、そこにタマネギをみじん切りに
          してすばやく入れます。薄皮も入るようにします。ニンニクと唐辛子も同様にして
          入れ密封して冷蔵庫に保管します。期間は三か月。ヨーグルトの乳酸菌は多け
          れば多いほどよく、タマネギ等の有効成分をヨーグルト乳の中で有機発酵させて
          いきます。
          蓋を取って匂いを嗅ぎ、つんと来る刺激臭がしたらまだできあがっていません。で
          きあがっているときには甘い香りがします。これを500倍でアブラムシの身体や
          来そうなところへ散布します。100%ではありませんが忌避効果が得られます。
          発酵が遅いと思われれば、糖蜜液を原液のまま10ccほど注いでよく攪拌してお
          きます。発酵が早まります。糖蜜には展着効果もあります。

         ⑦薔薇の種子

          薔薇は害虫を死滅させるほどの成分を何も自分で作らないのかというと、そうで
          はありません。種子の中に作る青酸があります。一般に青酸化合物は猛毒に
          なりますが、薔薇を始めバラ科の植物の青酸は配糖体の形で種子のみに保持し
          ます。言わば薔薇の最後の武器であり、もしもこの種子を食べて消化してしまおう
          とする害虫などが現れますと、青酸と糖が遊離して毒の力を出します。わたしたち
          もですが一般にこうした種子を口にしてもそのまま排泄するのが動物や鳥です。
          そのまま排泄してくれれば、薔薇は新しい場所で繁殖できることになり、それをこ
          そ望んでいるのです。
          そこでご自分の所などで育てた薔薇が付けた実を採取し、中の種子を取り出しま
          す。幼児用サイズの茶碗一杯分ぐらいの量が必要です。この種子を潰し、まず
          完全乾燥させます。電子レンジを使えば早いでしょう。それから水へ一晩浸けて
          おき、そのまま1リットルの水量にして煮詰めます。水が半分の量になったらでき
          あがりです。よほど大量でない限り、青酸ガスの心配はありません
          あらためて5倍に薄め、液に植物石鹸を加えて展着剤とし、部分散布します。ほと
          んどの害虫が青酸には敏感であり、そばまで来ても逃げていくようになります。一
          度試みて効果がなかったら、種子が小さすぎたということであり、その場合は青
          梅の種子を2~3個ペンチなどで潰して加え、再度作ってください。
          くれぐれも害虫を殺すつもりで使用しないでください。その意気込みは、逆にあな
          たへ災いしますから。また、煮出した後の種子をそのまま花壇などへ入れないよ
          うにしましょう。微量の青酸でもミミズたちを困らせます。
          ちなみに、青酸は種子全体に含まれているわけではなく、種子の中の胚芽部分
          のみにあります。つまり極めて少ない量であり、ローズヒップティに入れる一粒か
          二粒の種子では飲んで害がありません。入れるのはわたしたちにとってちょうど
          よい刺激となるからです。もちろん、飲食店で出されるティには種子は入っていま
          せん。

         *コンパニオンプランツ……アブラムシにはペチュニアアニスチャイブ
  
  
2、スリップス( アザミウマ )

          ハナアザミウマもミカンキイロアザミウマも、スリップス類は花弁を吸汁するので、
          アブラムシと同じ物で忌避させられるとは限りません。

         ④ニンニク木酢液……発生期に200倍で週二回散布を一か月間続けると忌避
          効果が高い。なお、ニンニクの匂いは2~3日で完全に消えます。

         ⑦薔薇の種子……スリップスの防除にも高い効果があります。花にやってくる益
          虫には無害です。それは雌しべの出す蜜や雄しべの葯には青酸が浸透していか
          ないからです。その理由は現在わかっていません( 2007年 )。

         ⑧植物エキス配合有機酸製品
           漢方薬の長年の研究・蓄積は、農業や園芸にさまざまな恩恵をもたらしていま
           すが、その恩恵に最も浴しているのがわたしたちでしょう。人間の健康によい働
           きをする植物エキスという発見と歴史がなかったら、化学薬剤に頼らざるを得な
           かったわけですし、それは都市型の公園や大規模な薔薇園の造園をしにくくし
           てしまったはずです。
           ブームに乗って、さまざまな製品が市場へ登場しています。ここではそれらの効
           果において最も敏感なスリップスへ効くものすべてを挙げますが、どれを用いる
           かは、他の害虫対策を兼ねることも考えて選択してください。
           またこれらの製品は、いずれも対症療法的に用いられることを想定していませ
           ん。持続的な使い方をして本来の力を発揮するということを覚えていてください。

           HB101……杉、檜など4種類の植物から抽出したエキスで、化学処理をして
           いません。有益菌を活性化させる点が主な使い方となり、スリップスにはサポニ
           が効きます。花を汚さず傷めない透明の液を1000倍で花へ散布。ゾウムシ以
           上の大きさがある害虫には効果はありません。大豆や茶葉に含まれるサポニン
           を追加してもよいが、効果はさほど高くなりません。
           アグリチンキ……上記と異なり、35種類もの植物を用いてあります。ただこれ
           も活性剤としての使用が主であり、たくさんの種類の害虫忌避効果があります
           が、成虫への忌避効果は低く、幼虫の発生初期で彼らの活動を鈍くさせる狙い
           で使うことになります。 一時に大量に発生したときには被害を防ぐことはできま
           せん。したがって予防として用いましょう。薔薇を徐々に丈夫にし、特に抗菌物
          質を活性化
させる能力にはかなり高いものがあります。
           注意点は、35種類もの有機酸の総合剤ですから、HB101のような活性剤と
           の併用には問題がなくとも、他の性質の有機酸、特に有機液肥などとの併用・
           混用は避けた方がよいことです。近接使用は可能。しかし使用に当たっては化
           学処理をまったくしていないものと併用するのが無難。また薔薇の枝葉へ散布
           するとその場所に皮膜を作るから、他種の必要散布を済ませたあとにしなくて
           はならないのも欠点といえば欠点。
           ニューベルキング500……独自の特許製法で作られている植物由来の抗菌
           ・害虫忌避剤。これも有機酸によるエキス液の化合物であり土に混合してスリッ
           プス等の小型害虫から被害を受ける前に退散させます。根の伸長力を増加さ
           せ、特にビタミン類が含まれていることから、土壌微生物の有益菌を活性化さ
           せます。農薬類と近接・併用すると全く効果がなくなるどころか、逆に災いする
           力を出すことになるので注意しましょう。アグリチンキとの併用は無駄であり、ど
           ちらかに絞った方がよいと言えます。
           ピカコー……作物の品質向上面での特許を持っている製品。毒性はまったく
           ありません。他の製品と併用も可能で、海藻由来の抽出物との相乗効果を期
           待できます。害虫の気孔をふさいでしまうことで窒息死させるものです。ただ花
           への散布は高濃度にすると液肥効果が出て弊害があります。用法を間違わな
           ければスリップスはすぐ死滅しますし、副作用もありません。
           この製品も農薬と併用すると全く効果がなくなります。害までは及ぼしませんが
           薔薇を汚してしまいます。必ず単独使用を。
  
  
3、ハダニ

          ③アルムグリーン……散布でなく1000倍灌注で発生初期に防除できます。ハ
           ダニのかなり高度な薬剤耐性能力も全く刃が立ちません。連用せず、一度で
          済ませましょう


          ④ニンニク木酢液……ハダニという害虫には概ね複合剤が効きにくいと見て良
           いでしょう。むしろ単独使用でニンニクのアリインが継続的に効果があり、忌避し
           て発生しなくなっていきます。100倍で散布。展着剤は不要。身体にかかった
           だけで木酢との相乗効果を嫌がります。なお、被害葉が大量の時ならともかく、
           できるだけそれらの葉を取って水に浮かべて溺れさせ、残っているまだ被害を
           受けていない葉へ予防的に散布すればよいのです。水だけでのシリンジをも嫌
           がるぐらいなので、シリンジのつもりで散布を。欠点は肉食性の益虫の蜘蛛たち
           まで逃げ出すことです。蜘蛛類全般を生理的に嫌う方でしたら、役に立つでしょ
           う。

          ⑧植物エキス配合有機酸製品……ニューベルキング。ハダニにも効果。

          ⑨コーヒーシリンジ……益虫の蜘蛛類が嫌がらないシリンジ。安価なブレンド物
           ではなく、必ずストレートコーヒーで実施しましょう。ハダニがカフェインに弱
          い
のは、人間のようなカフェイン代謝機能を持たないからです。
           特に高濃度に煮出す必要はありません。通常喫茶店で出される程度の濃さで
           十分です。大量に作れば高コストになるので、被害葉を取り去った後に、霧吹
           きなどで葉裏へ。

          ⑩漢方生薬……ハダニはアルカロイドの中でもベルベリンで死滅します。ミカン
           科の高木キハダに含まれているものを直接抽出した物は人体に有害。そこで
           健胃整腸剤として市販されている漢方薬を利用しましょう。粉末の黄伯( おう
          はく )
として販売されている物を水で200倍に希釈して、散布。展着剤は必要
           です。死滅させることはできないが忌避させられます。また、アブラムシやコガ
          ネムシの幼虫
にも有効です。

          ⑪堆肥による間接効果……モミガラ堆肥、モミガラ燻炭を用土へ1割程度混合
           して薔薇を育てると、二年目からハダニに対して効果を持ちます。これはそれら
           に薔薇のファイトアレキシン生産を活性化させる力が強いためで、薔薇を丈夫
           に育てればハダニが寄りつきにくくなることを示しています。
  
  
4、カイガラムシ

         寄生虫として知られているカイガラムシですが、この害虫が大発生しているときに
         は環境に問題があります。近隣にバラ科植物がたくさんあって、放置されているよ
         うな所がありませんか。所有者に善処を依頼するか、自治体へ相談しましょう。

          ⑫こそぎ落とし……足があって移動するカイガラムシもいます。しかしほとんどは
           張りついたままで食害する種類です。指先やブラシで落としてしまえば、後は
           何もしなくても死にます。径数ミリ程度のものを見つけて処置したとき、そのそば
           を必ず点検しましょう。針の先ほどの小さなカイガラムシが複数いることもありま
           すから。
           彼らは成長すると蛹となり、やがて小さなまま羽を持つ成虫の♀♂となり、交尾
           をするとそのまま♂は死に、♀も産卵すると二日目には死にます。普通は彼らを
           見かけることは稀で、捕殺も難しく、やはりブラシの世話になるしかありません。
           薬剤では有機リン系や魚毒性Aのマシン油しかなく、それらを使うべきではあり
           ません。手で済みます。
  
  
5、クロケシツブチョッキリ( ゾウムシ )

          ③アルムグリーン……非常に小さな身体つきなのに、薔薇の被害は甚大になり
           やすく、甲虫であるために身体に付着させる薬剤は効果がないと言ってよく厄
           介な害虫です。そこで薔薇の体内の方から忌避させる方法で撃退しましょう。
           暖地や標準地ですと5月初旬から規定の倍数で二度、寒冷地では5月中旬
          から
二度根に吸わせておきます。

          ⑧植物エキス配合有機酸製品……アグリチンキまたはニューベルキング
           有効です。ただし忌避効果はゾウムシに対しては50%程度が限界だと思って
           ください。それほど彼らは鈍感なところがあり、またルーペで観察しないと見えに
           くいものですが、手で追ったとき下に落ちると死んだふりをします。このような賢
           さ( 擬態力 )は加害する新芽の中から自分たちが選択できる能力をある程度備
           えさせています。

          ⑩漢方型生薬……複数年単位で見れば、これらを用いるのが最も効果が高い
           と言えましょう。と併用すればゾウムシにとって最も「まずい」薔薇となります。
           陳皮( チンピ )……ミカンの皮。紫外線を吸収する役割を持つフラボノイドを含
           み、主にピシウス菌を抑制する。ゾウムシはこの菌やブドウ球菌がしっかり繁殖
           しているかあるいは繁殖しそうな所を好む。そこで間接的に嫌忌する薔薇の身
           体をつくることに努める。
           葛根湯……風邪の引き始めにわたしたちが服用することの多い葛根湯も、フラ
           ボノイドをたくさん含んでいる。湯で溶かし、冷ましてから鉢へ注ぐ。
           樟脳……酸化テルペノイド。衣服の虫除けとしてタンスなどに収める樟脳を鉢
           の表土に置いておく。一個でよい。水には溶けない成分の香りが、ゾウムシを
           敬遠させる。匂いによる燻蒸法。

         
6、チューレンジバチ

        ①タバコニコチン……これに限らずアルカロイド系の植物生薬はすべて有効です。
         ちなみに、市販されているたばこ肥料はニコチンを全く含まない「たばこ屑」であり、
         NとPが1%、Kが5%。良質なカリ肥料です。

        ③アルムグリーン
        ⑧植物エキス配合有機酸製品のうちアグリチンキ……いずれも最も簡便で効果
         の高い対策と言えます。使い続ければ年々被害葉は減り続けます。アルムグリー
        
と一年ごとに交代使用し、どちらがご自分の薔薇に向いているかを検討するのも
         よいでしょう。また石灰硫黄合剤散布前後各一か月間はいずれも使用不可です。
         アルカリ性農薬と近接にならないように注意してください。

        ⑬ニーム……栴檀の木から採れるアザディラクチンを利用することは、中国でも日
         本でも古来からすでに知られていましたし、用いられてきました。ただ日常的に大
         量にかつ安価に入手できるのは製品化されたインド栴檀によるニーム類でしょう。
         有害な蜂類へ用いるのはオイルの散布です。
         注意点は、⑧植物エキス配合有機酸製品⑩漢方型生薬と混用・併用しない
         ようにということです。どれも植物性だからとして一緒に扱うと、それぞれに有機酸
         ですから薬害が生じる懼れが高いと言えます。
         ニームを始めこれらは有毒の殺虫剤ではなく、摂食阻害剤、生育阻害剤として分
         類されています。つまり訪れた害虫を根絶するのではなく、訪れにくくさせていく物
         です。その点に共鳴するからこそ使うのですし、毎年のように土替えをする容器栽
         培においては、その年に使用する製品を絞って使うことをお薦めします。そして数
         年間使い続けるのも変えてみるのもあなたの自由ですし、自己責任で使用してく
         ださい。

        ⑭自家製生薬……チューレンジバチには、簡易な対策としてスイカの種子が有効
         です。夏の果菜として食後に残った種子を集め、それぞれを半分程度に割り、8時
         間以上水に浸けておきます。常温でかまいません。それから被害株へ薄めずに散
         布しますと、種子の苦み成分ククルビタシンによって健全な葉へ寄りつかなくなり
         ます。
         なおこの生薬は①~⑭すべてと混合使用できます。
         同様にニガヨモギも全草を水に浸けておいてアブサンを溶け出させ、くりかえし散
         布すれば成虫が嫌ってこなくなります。ただしこちらは⑧植物エキス配合有機酸
        製品
⑬ニームとの混合や併用は不可です。

        *身近な物の利用……効果は低くても簡便で、試してみてよい対策があります。
         一つはミカンの皮を土表へ置くこと。降雨や水やりでフラボンリモニンが土へ入
         り、忌避効果を出してくれることがあります。もう一つはワケギ。こちらもそのまま土
         表へ置くと、硫黄化合物を含むアリウムのせいで寄りつかなくなることがあります。
  
  
7、バラクキバチ

      かつては山間部のみにいて、日本の原種薔薇だけで細々と生きていたのに、わたした
     ちがせっせと薔薇を増やしたことによって喜んだ生きものと言えるでしょう。飛来は年に一
     度だけですが、たいせつな蕾をダメにしてがっかりさせてしまいます。付いたあだ名があり
     その名も「ニックキバチ」。
      一度味を占めた場所へ山間部からくりかえし来る習慣があり、また運良く( ? )わたした
     ちの所で孵化して成長し成虫にまでなると、今度はご近所の薔薇へ向かい被害を広げま
     す。

        ①タバコニコチン……煮詰まる前に火を止めて冷まし、被害を受けたくないところへ
          刷毛か筆で塗布します。早朝訪れる直前に行えばあきらめてくれますが、早起き
          が鍵。

        ③アルムグリーン……500倍液を株全体へ散布します。ここぞと決めた期間に
         日間連用
すると忌避効果も殺虫効果にも高いものがあります。また1000倍液を
         灌注
すれば孵化した幼虫はすぐさま死にます。しかし被害に遭っている部分は目
          に見えているので、切除の方が簡単で確実です。萎れたり枯れたりしてしまった
          部分から下へ本葉二枚分下がったところで切除しましょう。卵は必ず潰しておくよ
          うに。放置してはいけません。

        ④ニンニク木酢液……ニンニクの入らない木酢でもよく、300~500倍で期間中
          連日のように広い範囲で散布しておくと、バラクキバチはフェノール類の独特の
         臭気
を嫌がり避けるようになります。ただし少しでも風の強い日はご近所のことも
          考えて中止しましょう。

        ⑤唐辛子アルコール……根から吸わせておき、吸汁した途端に逃げ出すように仕
          向けます。と併用することをお薦めします。③アルムグリーンとは決して混ざ
          らないようにしてください。花色が濁りやすくなります。

        ⑧植物エキス配合有機酸製品……アグリチンキの皮膜がある程度成虫を混乱さ
          せるようです。

        ⑬ニーム……三日以上の間を空けて一日に二度、被害に遭いそうな部位へ塗布
          しておくと忌避効果があります。ケーキ( パウダー )と併用すればなおよいようで
          す。との併用は不可。
  
  
8、ヨトウムシ

      ホソオビアシブトクチバの幼虫バラノシャクトリムシもヨトウムシの仲間です。捕殺が簡単
      ですし、当園ではアマガエルたちの餌になっていて捕殺することはあまりありません。他
      のヨトウムシと違って日中も薔薇の葉や枝の上にいるからです。他の種類は夜間にしか
      食害しないので、防除が必要となります。

        ③アルムグリーン……農家での使用によれば、ハスモンヨトウの成虫に対する忌
          避効果が高く、予防としては最善でしょう。また薔薇でも卵からの孵化数が減って
          いきます。

        ⑥ヨーグルト発酵……500倍で散布。一般的に言って有害蛾のほとんどが発酵
         状態を嫌います
。ヨトウムシの場合もタマネギやニンニクの辛み成分が食害行
          動そのものをどんどんやめさせていきます。ただ、目の前でそうならなかったとい
          って、過剰に散布するのは余分です。ゆっくりとした着実な効果を望みましょう。

        ⑩漢方生薬……黄伯のベルベリンが効きます。この粉末を表土へ撒いておき、灌
          水するだけで幼虫は死にます。量はひとつまみで十分。12号以上の時にふたつ
          まみに増やして。

        ⑬ニーム……摂食阻害効果がかなり高く出ます。ヨトウムシは最大で4cmになりま
          すが、そこまで成長する前の小さい間に死滅します。

        *コンパニオンプランツ……庭があれば一角にニガヨモギを植えておくと、成虫
          の蛾がしだいに寄りつかなくなります。
  
  
9、カミキリ

   薔薇の害虫の中で東の正横綱と言えるほど、大型で、成虫も幼虫も大規模な食害をします。
   ナシやクリといった木と違い、薔薇では普通一株に一個ずつ、成虫の♀は産卵します。それ
   ゆえ一度に何本もが被害を受けるわけで、しかも蛹から成虫となって薔薇の幹やクラウンか
   ら出て来ると、近親お構いなく交尾して次の産卵をします。薔薇の数が多ければひきつづき
   その場の薔薇へ。少なければ他の場所へ飛行または歩行で移動します。
   早朝であれば、また夕方暗くなってきた頃も、成虫の動きは鈍く捕殺が容易です。このとき
   通常の昆虫は蝉のように、捕まって鳴き声を出すのは♂なのですが、カミキリでは♀です。
   体格は♂♀がほぼ同じで見分けはつきません。そして捕殺した時点でほぼ産卵を終えてい
   ると見た方がよいでしょう。なにしろ一晩で100個を超える産卵ですから。最大で400と言わ
   れます。
   ちなみに、松枯れ病の原因生物であるカミキリはマツノマダラカミキリであり、薔薇のゴマダ
   ラカミキリとは別種です。そしてマツノザイセンチュウは薔薇に関係の深いセンチュウたちとも
   似ているだけで別種。

        ⑦薔薇の種子……これにアサガオの種子も加えます。アサガオの樹脂配当体と
          青酸が結合し、より強力になります。いずれも用意できたら水へ一晩浸しておき 
          ( 水の量は1リットル )、その水に展着剤を一滴垂らしておいてから直射ができる
          ノズルの付いた噴霧器や霧吹きで、勢いよく孔の中へ吹き付けます。

        ⑬ニーム……オイルと同じように用います。ただしこのやり方はまだ事例数が
          少ないので、効果についてはコメントできません。試用してみる価値はありましょ
          う。

        *カマラード・ショック……この手の害虫は仲間の死骸に敏感です。そこで捕殺し
          た成虫を薔薇の枝の途中に置いたり、株元へ寝かせておきます。あるいは捕ま
          えたらすぐに二本の触角を途中から鋏で切り落とし、その状態で庭や薔薇の間
          へ放します。方向感覚を失ったカミキリはあてどもなくうろつき、無事な成虫と遭
          遇してくれればショックを与え、その一帯から逃走させます。ただし成功率は20%
          あるかないかです。死骸は鳥や蟻に任せましょう。あるいは生きたまま捕らえたと
          き、潰したりせずに庭土や用土の中へ突き入れるように埋めれば、決して自力で
          脱出できません。窒息死します。親になったら土の中で自由自在の能力が消え
          るのです。土へ還してやりましょう。
  
  
10、コガネムシ

    西の正横綱。一口にコガネムシといってもたくさんの種類がいます。しかし対策においては
    共通だと見なせます。
    コガネムシ類は一般にすべてのアルカロイドに弱く、これを含む物であればどんな物でも有
    効であり、死にます。ただし最初に述べましたように、根からの吸収は開花期であれば花を
    乱します。そこで成虫に対しては散布で、根を食害する地中の幼虫に対してはアルカロイド
    系以外で対処することになります。

        タバコニコチン……五月上旬までと限って前年から地中にいる幼虫へ効きます。
         ♀の産卵が夏なので、子供たちは地中で越冬しています。その期間は冬眠して
         いて、いかなる薬剤も効きません。しかし春になって目覚めると猛烈な食欲が出て
         来ますから、そのときに効かすわけです。

        ③アルムグリーン……幼虫よりも、成虫への忌避効果に高いところがあります。た
         だし花だけでなく全体へ散布しましょう。常用していると、成虫が来なくなります。

        ⑥ヨーグルト発酵……9号鉢以下のサイズの時、土の浅いところの一角で継続発
         酵させておくと、産卵は防げませんが、幼虫が小さい内は死滅します。少し大きく育
         っていると効果はありません。

        ⑧植物エキス配合有機酸製品……HB101以外の製品はすべて有効です。ど
         の種類の幼虫も摂食を続けている内に死んでいきます。しかし、成虫へは無効
         す。というのも、かなり被害を与えた後で効果が出て来るからです。産卵を忌避さ
         せることも不可能です。ただしいずれの製品も薔薇を丈夫にしていきますから、被
         害によるダメージに対して強く育てられます。その点では退治後に本来の力を発
         揮するのだと理解しましょう。

        ⑩漢方生薬……幼虫対策専用に黄伯を用います。漢方の黄伯を土表へ直接、小
         さじ一杯分の量で置きます。すると灌水などでベルベリンが徐々に用土へ浸透して
         いき、その間に幼虫たちが次々と摂食阻害を起こします。根絶ではなく数を減らし
         ていくのです。

        ⑪堆肥による間接効果……緑肥堆肥( 青草堆肥 )が雑草構成であるとき、一般に
         天然のアルカロイドを含んでいます。これを用土へ混合ではなくマルチ材として敷
         くと、成虫が産卵しにくくなります。たとえばアグリチンキなどをあらかじめその堆肥
         へたっぷりと染みこませておいてから敷けば、幼虫への効果が高くなります。

        ⑬ニーム……オイルケーキの併用によって成虫が食害しにくい生育経過とな
         ります。一部を除き摂食阻害効果は全成虫へ及んでいきます。幼虫もほぼ同様で
         あり、効果があったときには幼虫は苦しがって土表へ出て来ます。そのままにして
         おいても、回復して再度地中へということはありません。
         ニーム製品は複数の企業が製品として流通させており、用法が少しずつ異なるの
         でそれぞれの指示に従ってお使いください。またこの製品グループをわたしが
         含めていないのは、本来農業専用製品だからです。今日では広く園芸用にも用い
         られています。

        *産卵防止法……容器植だからこそ簡単にできる産卵防止法があります。材質は
          ご自由に選択してよく、わたしは寒冷紗を自然なごわごわ状態で土表へ敷いて
          います。この生地ですと、成虫の足の先にある爪が寒冷紗へ絡まって身動きが
          難しくなるだけでなく、そもそも土へ産卵管が届きません。

        *早朝捕殺……よく言われるように早朝見かけたときには、それは前日からもいた
          ♀であり、すでに産卵を終えたと見ていいでしょう。動きが鈍く、簡単に捕まえる
          ことができます。足で潰したりせず、ピンセットなどで挟んで用土深く突き入れるよ
          うに埋めます。カミキリの成虫と同じで、土中から脱出する能力はもはやありませ
          ん。窒息して土の一部となっていきます。
  
  
11、バッタ類

     現在ではバッタによる被害は軽度であり、わたしたちをあわてさせるほどの大きな被害を
     もたらすことはありません。それは天敵が実に多いからです。小鳥、トンボ、カマキリ、カ
     メムシ、コオロギなど、肉食の鳥類と昆虫たちすべてが天敵だからです。
     しかし自然の生態系は少しずつ狂ってきているのですから、いつ薔薇に向かって大量に
     押し寄せるようになってもおかしくない状態が間近に迫っています。
     当面はこれまで述べてきたいずれかの方法を他の害虫へ用いていれば、それらのすべ
     てがバッタ類へも効果を持ちます。しかも彼らの忌避能力は非常に高く、農薬でなくても
     ①~⑭の処置に対する感受性がすぐれていて、早々に退散していきます。

        *カマラード・ショック……バッタ類にも仲間の死骸などを見せるのは有効です。天
         敵が多いだけに敏感なのです。一匹を捕まえたら、羽を一枚切り取るかまたは首と
         胴体を切り離して薔薇のそばへ置きます。残酷に思われるかもしれませんが、天
         敵から守ってやりながら退散してもらうよい方法です。
  
  
12、ミノムシ

     成虫の簑蛾は多い地方とほとんど見られない地方とに分かれるようです。発生すると薔
     薇の緑の部分をすべて食べ尽くしてしまうほど大きくなりますし、また大量の卵から次々と
     孵化します。被害は大きく、裸になった薔薇は枯れてしまいます。
     簑の色でカムフラージュしますが、わたしたちの目には見つけやすく、数が少ない内は捕
     殺で間に合います。

        ③アルムグリーン……800倍で散布しましょう。食害をある程度続けてから死に
         ます。

        ⑩漢方生薬……桂皮末( セイロン桂皮末 )のシネゼラリンが有効。高い忌避効果
         が得られます。表土へこの漢方薬を一つまみ置いておくだけです。

        ⑬ニーム……アブラムシとは発生時期が少しずれているのがミノムシです。しかし
         薔薇の一番花から二番花への移行期にまず発生します。そこで一番花の前から
         定期的にニームを使用していると、ミノムシが卵から孵化する頃に効力がちょうど
         よくなっており、幼令幼虫を難なく死滅させられます。
  
  
13、その他の害虫

      バラハキリバチ→アブラムシと同じ対処を。
      ハマキガ→バッタ類と同じ事が言えます。
      ハモグリガハモグリバエ→ヨトウムシと同じ対処で。
      マイマイガ→街路樹によく発生し、ついでに薔薇へもという害虫です。ミノムシと同じ
               対策で。
      イラガ→アゲハチョウの幼虫のように、最も鳥が嫌う色と形を持ち、体長が数ミリ以上
            になると毒を持ちます。対処法はカミキリと同じです。また成虫に産卵させない
            ためには、50倍の濃度で夕刻以後に木酢を散布します。薔薇の株だけでなく
            広く周囲へも。
  
  
  
  
  
  
  
  
  
                     -害虫編の終わりに-
  
     今からおよそ一年前の2006年の夏、わたしは頻繁に、たくさんの女性ブロガーの方たちの
    ブログへ訪問していました。その方たちの中のお一人のことで、忘れられない事があります。
     それはバラハキリバチについてでした。ハキリバチが薔薇の葉をせっせと切り取る連続写真が
    載せられ、その円形にすばやく綺麗に切り取っていく、まさに自然がもたらした「神業」にその人
    は感動し、多くの人たちに見てもらおうとしてアップしたのです。
     そこでわたしは自分のコメントの中でこのハチを害虫に含めたところ、完璧にご機嫌を損ねて
    しまいました。このハチは害虫ではない! というお気持ちが伝わってきて、剣幕の強さに圧倒
    されてしまい、たじたじとなりました。もちろんわたし自身、この頁の冒頭にも述べたように、害虫
    たちへの憎しみなど毛頭持ち合わせません。彼らもわが子たちのために懸命に生きている尊い
    生命なのですから。ただ薔薇の悲鳴を聞いては、何とか被害・傷を最小限にと願い、いろいろと
    試してきただけです。
     その後その魅力的な若い女性とは、ブロガーとゲストの関係として修復ができ、ことなきを得て
    います。このちょっとした「騒動」で気がついたことがあります。それは結局自分と同じように、薔
    薇への温かくやさしい目を昆虫たちのすべてに向けられる人が、ちゃんといるではないかという
    ことです。もしもより多くの人たちがそのような目で薔薇を栽培し守っていくならば、薔薇をめぐる
    生態系の崩壊は起こらないのではと思えます。「根こそぎにする、根絶やしにする」……この考
    えの根底には愛ではなく憎悪があります。薔薇たちの心も、被害に遭っていて果たしてそうでし
    ょうか。違うと思います。なぜなら、どんな植物も動物も、生き残るための厳しい戦いそのものを
    無くそうなどとは絶対にしないからです。それは進化を否定することです。戦いの中からより高い
    生存能力を身に付けてきました。それは害虫の側も同じであり、結局わたしたちの仲間なので
    す。
     そしてわたしたち人間こそが、その能力の頂点に君臨しています。人間という名の生態系の
    王者にもし憎しみしかなかったら、生命の大王国はやがて滅びていくでしょう。ただ、自身はこ
    のままでは進まないと思っています。滅びないと考えています。自然は厳しいけれども愚かでは
    ない。必ず平衡を保とうとします。レッドゾーンの果てしない拡大も、やがて逆転するでしょう。で
    きうれば、そのときにも王者のままでありたいものです。
     この頁の最後に、わが国政府が定めている「販売禁止農薬リスト( 害虫関連 )」を掲げます。そ
    れぞれに禁止された理由をお知りになれば、憎悪がいかに醜く、痛切な事態を招くかをあらため
    て明確に認識できましょう。ただ、いつの日か何の心配もなく農薬を園芸にも使えるようになる
    かについては、今のわたしにはわかりません。
     ひたすらそうなるようにと、願うばかりです。







       次回は「病害編」です。個別の病気への対策だけでなく、薔薇が生育過程で得ていく耐性
   とその増進についても解説します。読めば薔薇への信頼が特段に増すことになりましょう。どうぞ
   お楽しみに!





販売禁止農薬リスト( 殺虫剤 )

●ガンマBHC      登録昭和24年    失効昭和46年    失効理由残留性
●DDT   登録昭和23年    失効昭和46年    失効理由残留性有機汚染
●エンドリン   登録昭和29年    失効昭和50年    同上
●ディルドリン   登録昭和29年    失効昭和50年    同上
●アルドリン   登録昭和29年    失効昭和50年    同上
●クロルデン   登録昭和25年    失効昭和43年    同上
●ヘプタクロル   登録昭和32年    失効昭和50年    同上
●パラチオン    登録昭和27年    失効昭和47年    失効理由急性毒性
●メチルパラチオン   登録昭和27年    失効昭和46年    同上
●TEPP   登録昭和25年    失効昭和44年    同上
●プリクトラン   登録昭和47年    失効昭和47年    失効理由催奇形性
            ( 2003年現在 )
            ( 2012年現在 )








           
 
                          Maria Callas



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Link  農薬の基礎知識
Link  農薬だけに頼らない病害虫防除
Bouquet  「指導方針」 
Flower   センテッド・ゼラニウム 
 
Flower   イヌサフラン    
 
 
Flower   ヤクモソウ   
 
Flower   ミント  
 
 
Flower   オウレン  
 
 
 
 
 
Flower   キンポウゲ   
Flower   キャットニップ   
Refer  アルムグリーンの安全性 
Onepoint  薬剤散布のタイミング   

Bouquet  「散布時間帯」  
 
Bouquet 「散布のローテーション」
 
Bouquet  「アルムグリーンとアルムEX」 
Onepoint  木酢について 
Refer  HB101 
Refer  アグリチンキ36 
Refer  ニューベルキング500 
Refer  ピカコー 
検索 Q&A  ベルベリンの忌避効果は? 
検索 Q&A  ハダニの弱点は? 






Flower   カラスウリ   

Flower   ハゴロモジャスミン  








Flower   ニガヨモギ  











Flower   ギシギシ  

 
 
 
 
 
 
 
 
 
Flower   アルカネット   
 
 
Flower   きゅうり  
 
 
 
 
                     
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Flower   タンジー   

Flower   イチジク   



Onepoint  カミキリ成虫対策  











Album  コガネムシ幼虫被害対処法 



















Flower   ダイオウ  
 
 
Flower   キササゲ  
 






























 
 
 
 
 
 
 
 
Bouquet  アリについて
 
Flower   フィーバーフュー   
 
 
 
 
 
 
 
Onepoint  害虫防除後の処置   
Onepoint  イラガに刺されたら   
 
 
 
 
 
 
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