「主の祈り(6)第五の祈り」
マタイの福音書6章9〜13節
◆今日は、「私たちの負い目をお赦しください。私たちも、私たちに負い目のある人たちを赦します。」と新改訳2017で記されている第五の祈りを学びます。
◆先人たちの教え
1.ルター小教理問答
「私たちはこの祈りにおいて、天の父が私たちの罪に目を留めようとはされないように、またこうした罪のせいで私たちの祈りを拒まれないように、と祈ります。というのは、私たちは祈ることにさえ値しない者で・・日々多くの罪を犯しており、その報いとしてその罰を受けるのが当然であるはずの存在だからです。ですから、同様に私たちもまた、私たちに対して罪を犯す者たちを心から赦し、喜んで親切にすることを真に望むのです。
2.ハイデルベルク信仰問答
「・・私たちのあらゆる過失、さらに今なお私たちについてまわる悪を、キリストの血のゆえに・・私たちに負わせないでください。私たちも・・私たちの隣人を心から赦そうと固く決心していますから、ということです。」その大切なポイントは、
@私たちは罪人ですという告白。
A私たちの罪に目をとめず、赦してくださいという謙遜な祈り。
B隣人を赦す決意表明です。
◆順序が大切
文語訳では、隣人の罪を赦すことが、私たちの罪の赦しの条件であると理解されがちです。しかし、イエス様は、まず、「私たちの負い目をお赦しください」と祈れと教えました。次に、私たちも・・赦しますと続きます。この順序が大切です。神様が、私たちの罪を赦して下さったことを体験するとき、赦しますと祈ることができるのです。
◆負い目
罪は、借金、負債のようなものだという、聖書の理解があるのです。確かに、私たちは、毎日、神様の赦しをいただき、神様に、返すことの出来ない負債を抱えて生活をしているのです。犬養道子さんの祖父犬養毅さんは、五・一五事件で暗殺されました。この事件を契機として、彼女は、キリストを求め、カトリックの洗礼を受けました。邪魔者は暴力に訴えてでも排除すべきと祖父の命を奪った将校たちと同じ心が自分にもあることに、彼女はアメリカ留学中に気づきます。自分はきよく正しく生きるのだと肩ひじを張っていた時には、神様の愛と赦しが、これほど豊かなものだとは気づかなかったと言います。
◆赦します
新改訳聖書第三版では、「赦しました」と記されていました。ギリシャ語では、不定過去という時制が使われています。単純に考えると、「ゆるしました」です。しかし、赦します、という決意を表す不定過去であると新改訳2017は理解し、現在形に訳しているのでしょう。