2005年11月26日 NO.293 「高校3年生」
「あのー、お店の前にはってあるポスターを見て、電話をかけているんですが、
”歌声喫茶” ひとりでもよろしいんでしょうか?」 年配の女性からの電話だっ
た。今日行われた”歌声喫茶”の問い合わせである。昨日も午前中、開店準
備中の午前10時過ぎ、おはようございます、と階段を上って来る女性がいた。
ドアーを開けると彼女は「明日の”歌声喫茶” は未だ空いていますか」と予約
しに、一人でやってきたのだ。私が一番歓迎したいお客さんはこういう人たち
なのである。全く、見知らぬ人たちだ。ひとりでじっくりポスターを見て、こんな催
しなら参加したい、と素朴な気持ちでやってきてくれたのである。顔見知りの
人など全くいないわけだから大したものである。よく、観察してみるとこういう
行為は男性はなかなか取れない。ポスターの前で立ち止まり、じっとながめて
いる男性が何人もいたが彼らは決して階段を上って来やしない。彼らは一人
で参加するだけの勇気を持ち合わせていない。情けないねー。
そして、”歌声喫茶”が始まった。もちろん、初めてお目にかかる方が何人もい
た。 皆さん、3〜40年前の自分に戻っていた。声が生き生きとしている。歌に
酔っている。アルコールなしで酔っている。そして皆、実にうまい。いい声を
している。青春を共有しているのだ。みんなで歌いながら自分に酔うのだ。私は
たまらないほどこの光景が好きだ。カラオケでは決して生まれてこない感情なの
である。学生時代にキャンプなどをして、夜になるとみんなで歌った経験は私た
ちの年代の者は誰でも経験をしていることだ。そのときに歌った曲は情景ととも
に心の中に深く残っている。
今日、参加した人の中には、体調を崩しスランプ気味の方もいた。外見上は明
るくハッピーに見えても人はそれぞれ他人には言えぬ悩み事を持っているもの
だ。そんな時に青春時代に湖のほとりで歌った歌がどんなに心を癒してくれる
ことか。 とにかく歌っている皆さんの顔の表情は本当に爽やかだった。