2006年11月07日 NO.331 「神宮外苑」
久しぶりに神宮外苑を歩いた。歩道に”銀杏まつり”というのぼりが立っていた
が紅葉はこれからで葉っぱは緑色だった。銀杏並木の通りを歩いていたら強風にあ
おられてパラパラというよりバサバサと上から銀杏の雨が降ってきた。歩道は銀杏
一色で,何ともいえない匂いが漂っている。ふっと,兄を思い出して、ニヤニヤしな
がら歩道を歩きつづけた。兄は銀杏の実がなる頃になると、朝の4時ごろ起きて駒沢
公園にバケツと棒切れを持って出かける。前から目をつけていた、これはと思う場
所に行ってみると,もうすでに先客がシートなどを広げて準備に入っている。相手は
半プロのようだ。木に登って揺らしにかかっていた。すると銀杏がばさっとシートの
上に落ちてくる。兄はシートからはみ出た銀杏をすばやくかき集めてバケツに放り
込んだ。すると「私たちの銀杏を何するんだ。」激しい口調で先客が食って掛かっ
て来た。「私たちの銀杏????ここは駒沢公園だ。あなたの庭ではない。駒沢公
園は東京都の施設だ。」 兄も黙ってはいない。事前に調査して夜中起きしてやって
きたのだ。このまま引き下がるわけには行かない。たまたま相手の方が現場に早く
きていただけのことである。兄はシートの外にはみ出た銀杏を黙々と拾い続けた。
どうやら先客は拾い集めた銀杏を何軒かのお店に売りさばいているらしいことが、後
でわかった。薄明るくなったころにはセミプロの姿は見当たらなかった。公園はジ
ョギングをする人や犬と散歩する人でにぎわってきた。兄は銀杏の実でいっぱいに
なったバケツを引っさげて意気揚々と家に向った。その貴重な銀杏を届けに町田ま
でわざわざ持って来てくれたのだ。毎日、兄の教えどおり、銀杏の実を封筒の中に
数粒入れてレンジでチンして食べている。
まっすぐに伸びた外苑の銀杏並木、銀杏を拾う人は誰もいない。開店前のレストラン
の支配人らしき男の人が降り積もった銀杏の実を箒で掃いている。秋のスポーツも
終わり、国立競技場も神宮球場にも人はいない。秋の陽を浴びながら金髪の女性
が走っている。
町田の片田舎で見る光景と大分、違う。たまには良いもんだ。一時間、歩き回り、ベ
ンチに腰掛けて藤沢周平の単行本をぺらぺらめくった。来年の正月はラグビーを観
に国立競技場に来よう。でも、駅伝と重なるな・・・・・・
帰りはロマンスカーでビールを飲みながら周平の続きを読んだ。