あっという間に2月に入ってしまった。この日記のペースを最低、月2回は・・・と
思っていたら、月日の方が先に進んでしまった。ま、いっか。
2月に入ると一日過ぎるのが楽しみになる。「ああ、これで寒さもあと28日だ・・」
と太陽の温もりを待ち焦がれながら3月までのカレンダーの日にちに丸をつけるので

ある。
この一か月、いろいろなことがあった。そんな中で、特に心に残ることがあった。ほ
ぼ一年ぶりであろうか、Aさんが突然、やって来た。まさかAさんの元気な顔をこんな
に早く見ることができるなんて。私は彼の顔を見た瞬間に、あっと声をあげてドアー
    
の前に立っているAさんに 「いやー、びっくりしました。」 と思わず叫んでしまった。
しばらく姿を見せないAさんが気になって半年に一度ぐらい電話をかけたりしたが、呼
び出しのベルは鳴り続けているものの受話器は一度も取り上げられることがなかっ
た。一年前やっとの思いでやって来た時、いろいろと話をした。帰るときはすっかり元

気になって「今日は思い切って出てきて良かった。こうやって人と話すのは本当に久
しぶりなんです。少し自信が持てました。」 あの時もかたい握手をかわして別れたの
が・・Aさんが元の状態に戻るのはそんなに簡単なものではなかった。本人なりに
は努力しているのだけれども、メンタルな病気からの脱出には、たくさんの障害物を

乗り越えなければならないのだ。
過去にそのような病歴など一度もなかったAさんがその病気を告白してくれたのが3
年前、思い当たる原因を彼は理解していた。専門家のカウンセリング、薬の処方、健
康管理など・・・・・・彼はあらゆる努力を重ねてきた。

今年になって彼は目覚めたのだ。詳しいことはさておいて・・彼は閉め切っていた窓を
開け、外の冷たい空気を胸いっぱい吸い込んだ。「さあ、表に出よう!」
彼は中古の自転車を買ってErika めざして走り出した。ペタルをゆっくりこぎ、山あり谷
ありの道のりを、前をしっかり見つめて進む。程よい汗が心地よい。1時間30分のサ

イクリングはまるで子供時代の遠足のように心弾むものだった。
「Aさん、長い人生の中で3年なんて短いもんだよ。ゆっくり冬眠していたんだよ。第二
の人生は始まったばかり。たっぷり休養をとって、これからできなかったことをやろうじ
ゃないか。」 コーヒーを飲みながら私は言った。半ば自分に言い聞かせるように・・

彼はこの後、ハローワークに行くと言う。「可愛い孫に何かプレゼントしたい。」 彼の口
元がゆるんだ。
「マスターからいただいた”アドロ” 毎日、聞いています。いいね。」
私は彼を元気づけるために何枚かのCDを贈った。その中に、フランク・プゥルセルのCD

があった。何年か前の「今月の音楽」で書いたことがある”アドロ”はそのアルバムに入
っている。シャンソン歌手がよく歌っている曲でもある。
長い間、彼は音楽を聴く気持ちになれなかった。それが今、こうやって気持ちよく”アド
ロ”を聴いている。
就職が決まったら、ワイフと3人でランチをすることになっている。
     
 2009年02月02日  NO.392 「マスター、あの曲、聴いてます」