来月、Erika で開催される「歌声喫茶」は今回で11回目になる。開催しなかった
年もあったりしたから、スタートして約十年近くになるだろうか。ネットで調べてみた
ら、日本全国、津々浦々で開催されているようだ。団塊世代が仲間入りしてどこも
大いに盛り上がっている。大変、結構なことである。やっと次回用の歌詞を打ち終
わった。前回、歌った曲の半分近くを入れ替えるので、少々、手間がかかる。今回
は「小さな喫茶店」を入れてみた。昔からよく聞いていたコンチネンタルタンゴであ
る。アルフレッドハウゼやマランドの演奏でよく聞いていたが、さて、みんなで日本
語の詩で歌うとなると、どうなるんだろうか?手元にある歌集には載っていない。
そこで「ユー・チューブ」に頼ることにした。調べてみて意外な事実を発見して、何だ
か心が浮き浮きしてしまった。面白かったのはタイトルのことだった。原題はドイツ
語だ。「In Einer Kleinen Konditorei」 直訳すれば 「小さなケーキ屋(喫茶店)で」
とでもなろうか。中年の方が Konditorei がMusik と同じ女性名詞なのになぜ、モー
ツァルトのように Eine Kleine と言わないの?と首をかしげていたが、場所を表す
前置詞 in の後は3格なので冠詞 ein は1格の eine ではなくて einer
になるの
だ。コンディトライ(Konditorei)か。昔を思い出すね。ドイツの南部の片田舎にいた
時 kleine(小さな)Konditorei を経営していた未亡人のワルターさんにはいろいろと
親切にしていただいた。質素に暮らしていた日本の若者をある日、正式なレストラ
ンでの食事に招待してくれた。ビールを飲みながら食べたり歌ったり踊ったり・・・・
今でも太めの女主人の笑い声が耳にはっきり残っている。
この曲「小さな喫茶店」は第2次大戦前の1934年頃からドイツ国内で歌われてい
た。喫茶店は若い男女のデートの場所だ。お茶とケーキを前にして、黙って音楽を
聴きながらじっと見つめ合っている。こんなシーンは日本もドイツも変わらない。なつ
かしい日々が思い出される。渋谷の道玄坂にあるライオンもそんな喫茶店だった。
この曲をユーチューブで検索していたら、なんと私の大好きな石川さゆりが歌ってい
るではないか。冬景色の”さゆり”が「小さな喫茶店」を歌っている。彼女のイメージ
からは想像もできないことだ。私と趣味が完全に一致している。何とも言えない爽
快感が全身に伝わってきた。そういえばこの間のステージで、昔、街中で耳にした
納豆売りや金魚売りの声、どこからともなく聞こえる風鈴の音色、そんな生活感の
ある音が消えてしまったのがさみしい、と彼女はしみじみと語っていた。「小さな喫
茶店」 はそんな時代を表す名曲である。カフェテラスErika は町田でいちばん小さな喫
茶店だ。こんなちっぽけな空間だけれど、長い階段をとぼとぼ上ってきてくれる顔な
じみのお客さんがいる。嬉しいね。当分、やめられない。
2009年10月26日 NO.403 「小さな喫茶店」